ラマス・ジャパンも使うのか? アルゼンチン代表が用いた「フレックスオフェンス」完全ガイド:②フレックスオフェンスの基礎とエントリー
前回『Basketball for Coaches』から紹介した「フレックスオフェンスの概要」の第2弾となります。今回はフレックスの基本プレイとエントリープレイについて取り上げます。
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目次
フレックスオフェンスのセットアップ
あなたがまず学ぶべきことは、フレックスの基本的な連続性の動きです。 この動きこそがフレックスの核であり、すべてのエントリープレイ、カウンター、コーナーオプション、セット、およびバリエーションは、この動きから派生します。
基本的なフレックスの連続性は、コートの2カ所からオープンショットを得るように設計されています。
- フレックスカットからのレイアップ
- ハイポスト近辺からジャンプシュート
基本的なフレックスの動きの間、プレイヤーはコート上の6つのスポットを常に埋めなければなりません。トップオブザキーには常に2人のプレイヤーが、ウィングには2人のプレイヤー。そして最後の1人がボールの場所やオフェンスの段階に応じてローポストを埋めます。新たにフレックスを教えるときは、この6つのスポットにコーンを置くことを強くお勧めします。
基本的なフレックスの連続性
フレックスは、トップオブザキーの2人のプレイヤー、2人のウイング、そしてストロングサイトのローポストの1人から始まります。
- フレックスはボールを持った①が、逆サイドの④にパスを出すとスタートする
- このパスが⑤のスクリーンを使ってフレックスカットを行う③へのトリガーになる
- ⑤の③へのスクリーンの後、①は⑤がトップオブザキーへ開くためのダウンスクリーンを行う
- ①はウィングに開き、③は新たにローポストを埋める
注意点:フレックスカットを行う③は、⑤のスクリーンに対し、ディフェンスの動きに応じてどちらサイドからでもカットできる
ここまでがローテーションの半分です。あなたの理解を促すために、ボールを逆サイドに展開してみましょう。
- ④はフレックスのトリガーとなるパスを⑤に出す
- ③は②がイージーなレイアップを打つためのフレックスカットのためにスクリーンをかける
- ④は③にダウンスクリーンをかける。③はパスを受けてオープンショットを打てるようにトップオブザキーに開く
- フレックスの最初の位置に戻る。この間、いくつかのオープンショットを打てる得点機会を得られる
このシンプルな動きが効果的な理由
これらのアクションが非常に効果的なのは、フレックスカットを行うプレイヤーのディフェンダーは、1人だけで守ることが難しいからです。多くの場合、イージーレイアップを防ぐためには、スクリーンをセットしたプレイヤーのディフェンダーによるヘルプが必要になります。
スクリナーのディフェンダーがカッターのヘルプに出ると、スクリナーはトップにカットするか、ボールに対してフラッシュします。このときディフェンダーは「カッターのヘルプにいくか」それとも「スクリナーにつき続けるか」の判断を迫られます。
これらは止めるのが非常に困難な動きです。特にこうした動きを、1つのポゼッションでディフェンスが崩れるまで3-4回と繰り返し行うためです。
フレックスオフェンスのエントリー
フレックスオフェンスの連続性の基礎を理解したところで、フレックスのエントリーを見てみましょう。フレックスが優れている理由の1つが、ディフェンスを欺く多くの方法があることです。
私はタイムアウト明けやアウトオブバウンズの後に以下のエントリーを利用して、スムーズにフレックスへと移行させることをお勧めします。
ゲーム全体を通して、フレックスのためのポジションにまっすぐ向かうのは簡単です。 プレイヤーはコミュニケーションをとりながら、コートを上がりつつ素早くセットアップする必要があります。
エントリー1:1-4ロー(1-4 Low)
1-4のエントリーでは、ポストにパスするか、ウィングにパスするかの2つの方法があります。
ロー1-4-ポストオプション(Low 1-4 – Post Option)
2人がローポスト、2人がウィングからスタートします。ポイントガードはコート中央から入り、どちらかのウィングに向かってドリブルでスライドします。ポイントガードがどちらかのサイドに向かったら、逆サイドのポストプレイヤーがトップオブザキーに素早くカットし、ポイントガードからボールを受けます。これでフレックスが開始されます。
ロー1-4-ウィングオプション(Low 1-4 – Wing Option)
スタートは上と同じです。ポイントガードがコート中央からどちらかのサイドにドリブルで進みます。逆サイドのポストプレイヤーが素早くハイポストにフラッシュしますが、ポイントガードはポストプレイヤーではなく、ストロングサイドのウィングにパスを出します。この場合、ボールサイドのポストプレイヤーはUCLAカットのためにポイントガードにスクリーンをかけます。ウィングからポイントガードにパスを出せなければ、ウィングはトップオブザキーにパスを戻し、フレックスを開始できます。
エントリー2:ボックスエントリー(Box Entry)
このエントリーは、ボールを持っていない4人がボックスの形でスタートします。ポイントガードがボールを運ぶと、ハイポストのプレイヤーが外側に開いてパスを受けます。パスを出したポイントガードは素早くカットしてボールサイドのウィングを埋めます。ポイントガードがカットすると同時に、ウィークサイドのハイポストのプレイヤーは、開いてボールを受けられるようにローポストのプレイヤーにスクリーンをかけます。これでフレックスが開始できます。
エントリー3:ハイ1-4(High1-4)
ハイ1-4のエントリーでは、ポストにパスをするか、ウィングにパスをするかの2つの方法を用いることができます。
ハイ1-4-ウィングオプション(High 1-4 – Wing Option)
ハイ1-4から開始する場合、ポイントガードはどちらかのウィングのプレイヤーにパスを出し、ボールサイドのハイポストのプレイヤーのスクリーンを利用してUCLAカットを行います。もしパスを受けられれば決めてしまおう。もしパスを受けられなければ、ボールをトップに戻してフレックスを開始できます。
ハイ1-4-ポストオプション
ウィングプレイヤーにパスを出す代わりに、どちらかのポストプレイヤーが外に開いてパスを受けます。これをトリガーとして、もう一方のポストプレイヤーはボールサイドのローポストにカットし、ポイントガードはそのポストプレイヤーのポジションを埋めます。ポイントガードにパスを戻せばフレックスを開始できます。
エントリー4:ベースライン・アウトオブバウンズ(From BLOB:Baseline Out of Bounds)
ベースラインからのアウトオブバウンズプレイから、直接フレックスに移行する2つの方法があります。
BLOBプレイ1(BLOB Play 1)
1つ目は、プレイヤーが下図のように並びます。ローポストの2人はダイアゴナルスクリーンをセットし、逆サイドのハイポストはローポストに、ボールサイドのハイポストはウィングにカットしてボールを受けます。インバウンドパスを出したプレイヤーは、トップオブザキーでボールを受けられるようにポストプレイヤーのスクリーンを使います。ガードがトップにパスを展開することでフレックスを開始できます。
BLOBプレイ2(BLOB Play 2)
ロー1-4セットから開始します。パッサーは、ディフェンダーをシールした近い方のローポストのプレイヤーに向け、トップ方向にロブパスを出します。このとき別のポストプレイヤーも同様にトップにカットします。ここでガードからガードへのパスを出し、パッサーはコートに入りフレックススクリーンをセットします。これでフレックスをセットアップできます。
エントリー5:サイドライン アウトオブバウンズ(From SLOB:Sideline Out of Bounds)
サイドラインのアウトオブバウンズから、すぐさまフレックスに移行できる、私のお気に入りのプレイです。
SLOBプレイ(SLOB Play)
ボックスの形でスタートします。近い方のハイポストのプレイヤーがガードにダウンスクリーンをかけ、トップに開いたガードがパスを受けます。このとき、逆サイドのハイポストのプレイヤーは、パスをもらうフェイクを入れてから、ウィークサイドのローポストのスクリーンを使いゴールにカットします。ロブパスを受けられるならシュートを狙いますが、スクリナーが開いてボールを受けるなら、カッターはウィングに開いてフレックスの形をつくります。
続きは第3弾で。
出典:Flex Offense – Complete Coaching Guide|http://www.basketballforcoaches.com/
※本記事は出典元の許諾を得た上で、全文翻訳の形で掲載しております。
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