強力な1-3-1ゾーンディフェンスを目指して −実践の方法と狙い−
今回はゾーンディフェンスの中でもなじみの薄いことの多い、1-3-1ゾーンディフェンスのローテーションの仕方、ポジション取り、狙いを紹介したいと思います。NCAA(アメリカの大学バスケ)を見ていても、そんなに多くのチームが使っているわけではないのですが、そのローテーションの仕方やコンセプトは非常に面白いです。最近は渡邊雄太くんがいるジョージ・ワシントン大学もこれを使っています。
ディフェンスで目指すべきポイント
- ボールを守ること(アウトサイドでもインサイドでも、相手がパスを受けた時には守れるポジションにいること)
- ドライブに対するヘルプに行けること
の2つの状態を、チームとして常に達成し続けることだと考えています。こうすることで、楽なキャッチアンドシュートやゴール下のイージーショット、レイアップをなくし、結果として相手のシュート確率を下げるのが目的です。この目的を達成するための手段が、マンツーマンやゾーン、またはマッチアップゾーンディフェンスになります。
一般的に、マンツーマンでは常に5人がそれぞれのマークマンにマッチアップしているため「1.ボールを常に守る」ことが達成しやすく、ゾーンでは基本的に真ん中に常にディフェンスがいるので、「2.常にヘルプを用意しておく」ことが達成しやすいと言えますが、どちらのディフェンスを用いるにせよ、両方とも達成し続けることが肝になります。
しかし1-3-1は、常に定位置にいては上記の1、2を同時に達成し続けることは不可能です。したがってボールの場所によって1-2-2、2-3へと形を変えます。今回はサンディエゴステイト大学の1-3-1を例にとって説明したいと思います。
サンディエゴステイト大学の1-3-1ゾーンディフェンス
基本的には、
- トップのプレイヤー(大きい、もしくは手が長いプレイヤー)→サイドを変えるパスコースを塞ぐ
- ウイングのプレイヤー→コーナーへ落ちるパス、またはコーナーから戻すパスを塞ぐ。ボールが逆サイドにある時はゴール下付近(最低でもブロック)まで下り、ゴール下を守る
- 真ん中のプレイヤー(5番)→ハイポストを守る。ボールがコーナーに入った時にローポストを守る。ローポストにボールが入った時のダブルチーム
- リング下のプレイヤー(1番)→ボールサイドのローポスト、コーナーをケアする
ことが各プレイヤーの役割になります。1番がリング下なのは、ケアする範囲がコーナーからコーナーと幅広く、素早さが必要とされるためです。その分シュートが打たれたら全員でリバウンドを取りに行きます。
まず前提として、ボールマンがシュートエリアにいる場合は、「フリースローラインの幅まで」はトップがつきます。それより端にいる時はウィングがボールマンにつきます。
①(左上):以上のようにセットします
②③(右上・左下):ボールがフリースローレーンよりもサイド側に移動した場合は、ウイングがボールをマークします。したがってボールが中央から片方のサイドに動くと、
- トップ→サイドチェンジのパスを塞ぐ
- ウィング→ボールマンをマークし、かつコーナーへのパスを塞ぐ
- 真ん中(5番)→エルボーに移動しハイポストへのパスを塞ぐ
- ゴール下(1番)→ボールサイドのローポストへのパスを塞ぐ(コーナーへもすぐ移動できるよう、フロントで守る)
- 逆サイドのウィング→ゴール下付近まで下りる
この時(ボールがウィングにある時)1-2-2の形になることが分かります。
④(右下):ドライブは真ん中へ誘導し、5番がヘルプします
①(左上):できるだけコーナーに落とされないよう努力しますが、もしコーナーにボールが落ちた場合は
- 1番がローポストからコーナーへ移動し、コーナーをカバー(ローポストから、というのがポイント。ウィングにボールがある時に真ん中にいると絶対間に合わない)
- 5番がハイポストからローポストに下りてローポストをカバー(これもフロントで守る)
- 逆サイドのウィングがローポストの裏パスをカバー
- トップとボールサイドウィングはキックアウトのパスをカバーして対応します。
②(右上):この時(コーナーにボールがある時)2-3の形になります。
③(左下):サイドチェンジされた時の全員の動きです。
④(右下):ハイポストフラッシュには真ん中の5番が対応します。常にフロントに立ちボールを入れさせません。
①(左):もしハイポストにボールが入ってしまったら、5番が一人で守り、あとの選手はキックアウトに対応する準備をします。1番だけはヘルプポジションを保ちます。
②(右):もしローポストに入ってしまったら、5番がローポストに下りてダブルチーム、他の選手はキックアウトに備えます(もし1番がローポストのディフェンスに優れていれば、チームによっては1番1人に守らせてもいいかもしれません)。
以上が基本的なローテーションになりますが、1-3-1の場合特に
- サイドを変えさせないこと
- コーナーにボールを落とされないこと
が重要になります。これらをやられるとボールマンにつき続けることが難しくなってしまうためです。そのためトップ、ウィングはボールをケアしながら常にパスコースを塞ぐことが求められます。難しいですが、きちんとポジション取りさえできればかなり強力になり得ます!
最後に1-3-1を敷いてから、11分で16点差を逆転したサンディエゴステイトの実際の動画をご覧ください。(最後の11分だけです)
ちなみに渡邊雄太くんは、この図でいうところのx3(トップ)かx1(ゴール下)でプレイしていることが多いようです。トップにいる時は彼の手の長さを生かしてサイドチェンジのパスを減らせますし、x1のゴール下にいれば、彼の機動力を生かしてコーナーからコーナーをカバーしながら、リバウンドも取れるというわけです。以上、駆け足になりましたが、1-3-1の具体的なローテーションと狙いでした! 何か質問などありましたらぜひコメントをお願いします!
今回紹介したサンディエゴステイト大学のプレイブックのpdf版はこちらからダウンロードできます。
この記事の著者
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1989年生まれ、香川県出身。香東中学校-高松高校-東京大学-ウェストバージニア大学大学院アスレティックコーチング専攻。小学校からバスケを始め、大学3年次までプレイヤー4年次には学生コーチと主務を兼任しながら、株式会社Erutlucで小中学生の指導にあたる。現在はアメリカDivision I 所属のウェストバージニア大学大学院でコーチングを専攻しながら、男子バスケ部でマネージャーとして活動中。
コーチMのブログ http://ameblo.jp/tamorimorimori83/
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