Torsten Loibl HCが国際大会で使用したオフェンス①『ファイブ』

2018年4月上旬、男子日本代表U-16チームはFIBA U16 アジア選手権大会へと挑みました。本大会での戦績上の目標の1つは、上位4チームに与えられる2018年U-17ワールドカップ(夏・アルゼンチン)出場権の獲得だった事でしょう。ジュニア世代から世界大会での経験を積むことが、選手個々の可能性を拡げると共に、日本全体のレベルの底上げにも繋がります。その為には4位以上が必要、そして決勝トーナメントの組み合わせに影響を与える予選リーグでの戦いが非常に重要になります。

そんな中、日本代表チームは予選リーグのレバノン、インドと連勝すると、予選1位を賭けた韓国戦でも見事に勝利。予選リーグを1位で通過、最高のシナリオで決勝トーナメントへ。いざ、ワールドカップ出場決定戦となる運命のフィリピン戦では、210cm超の大型センターや、突破力のあるアウトサイド陣の前にリードを許す展開に。終盤、脅威の追い上げを見せるも70-72で惜敗。あと一歩で世界を逃し、順位決定戦へと回りました。

失意の敗戦から、残された戦いへ。レバノンに勝利し、5位決定戦では韓国と対戦。残念ながら、第3ピリオドにリードを許し、韓国にはリベンジを許して惜敗。最終的には6位で大会を終えました。

この中のメンバーから、実力のある選手は今夏に開催されるU-18アジア選手権へと選出される可能性を秘めています。選手個々の戦う姿は非常に逞しく、彼らの今後の活躍を願わずにはいられません。
(※大会開催時期が遅れに遅れた為、U-16アジア選手権という名前とは裏腹に、実際には、早生まれの高校2年生から中学3年生までのメンバーでチームが構成されています)

さて、トーステン・ロイブル氏がHCを務めた本チーム。筆者は、EuroBBAなどを通じてロイブル氏の提唱する内容に数多く触れる機会に恵まれている為、ディフェンス、オフェンス共に、同HCの提示する様々なスキルや、チームファンダメンタル、エッセンスを感じ取る事が出来ました。

そんな中、本稿では、U-16代表チームがハーフコートオフェンスの中で頻繁に選択をしていた「ファイブ」のプレーをご紹介したいと思います。同プレーは、10位に輝いたU-19ワールドカップ(2017)でも使用されていたプレーであり、オールラウンダーの八村塁選手、シュート力、クイックモーション、シュートエリアの広さで活躍をし、主にPFで活躍していた増田啓介選手、ピックプレーでチャンスを創出した西田優大選手、杉本天昇選手が上手く活用していたプレーになります。U19ワールドカップ後のEuro Basketball Academy Coaching Clinicでも扱われていたトピックスとなります。

※フォーメーションプレーを強調したいわけではありません。比較的にWEB記事で表現しやすい事が理由です。前述の通り、Euro Basketball Academy Coaching Clinicでも、あくまでも「紹介」という形でクリニックの末尾の時間を使って情報共有されていました。

U-16,-18,-19日本代表チーム ファイブ

<図1>

仕掛けのプレーをスタートする際のスペーシングは下図を参照。このような形を構築した上で、PnRを起点としたプレーでスタートします(どのようなチャンスが想像できるでしょうか??)。

<図2>

(少し戻って)<図1>に至る道のりを説明します。エントリー方法としては、パスをしてコーナーへと向かうケース、そして①がドリブルで45度へとダウン、2番の選手がコーナーへと向かうケースの2種類があります。

※コーナーのディフェンスをサイズ(X1、X2)の小さな選手とする事がポイントです。

<図3>

ボールを45度に落すと同時に、5番が3番(PnRプレーの上手い選手)にダウンスクリーンをセット。そして、45度からトップへボールが入るタイミングと同時に、再び3番へオンボールスクリーンをセットします。(注:1番がコーナーにいるケースのみ図解しています)

<図4-1>

黄色のスペースを活用する攻防です。ディフェンスの対応次第で、選択肢が変わります。
①単純に3番のドライブ、またはDiveをした5番へのパス。3番のプルアップジャンプシュート。
②X1の選手が5番に対してHelpに来たケースです。
a:コーナーへのスキップパスを狙う
b:X1と5番のミスマッチを攻略!、パスを入れる。※ミスマッチを攻略する事は非常に重要です。

<図4-2>

U-19ワールドカップでは、「ファイブ」のプレーで八村選手のPOPプレーが目立ちました。③から八村選手へパス。X5のクローズアウトを予測し、3Pシュートかドライブを賢く判断して得点チャンスを創出していました。

<図4-3>

U-19チームでは相手チームがアンダーした場面では西田選手が非常に高確率で3Pシュートを沈めていました。U-16チームでは、PnRプレーからの3Pシュートを得意とする選手が多くなく、アンダーで守られた場合には直ぐにRe-Pickで対応をしていました。※その際、ウィングの2番の選手はコーナーへと向かいます。四角い黄色いスペースの攻防を巡る戦いへと状況がシフトします。PnRプレーでリング方向への侵入が成功した際、X2選手がボールを守れば2へパス。コーナーの2番を守っていれば、そのままリングへとアタックします。

最後に

上記で紹介をしたケースは、様々なオプションが考えられるケースでの代表例に過ぎません。ディフェンスの対応やローテーションに応じて、他にも別のプレーも試合中には発生していました。気になる方は、是非、各種動画などを参照して頂ければと思います。

また、もう一点、読者の方にご紹介したい事があります。Euro Basketball Academy Coaching Clinicでは、<図4-1>のケースの際で、インサイドの5番の選手へパスを出すのか、コーナーへとパスを出すのか(コーナーのX1が早めのHelpディフェンスをしている事を判断をして)を、実行をするドリルが紹介されました。

ドリブラーが確保すべき視野、判断材料、どのようなパススキルが必要になるのかが紹介された上で、ドリル形式で次からつぎへと反復練習へと展開。フォーメーションの導入と同時に、それの遂行の為に必要なスキルが提示されました。スペーシングの理解、判断の要素、スキルの練習が合わさった非常に効率の良い練習であると本稿筆者は強く感じた次第です。
<参考> U-19ワールドカップ(2017年夏)開催時、FIBA大会公式サイトで各国のオフェンスが紹介された記事で、本記事のオフェンスも紹介されました(動画あり)
http://www.fiba.basketball/world/u19/2017/news/this-is-how-the-best-u19-world-cup-scorers-are-scoring

また、FIBAが配信しているコーチ向けの動画でも欧州バスケ界の名将 Željko Obradović氏を講師とし『Match-Up Offense – Željko Obradović- Basketball Fundamentals』として、同じ形式のオフェンスが紹介されています(英語/約50分)。

 

<U-16男子日本代表についてのFIBA公式アカウントの投稿など>

 

 

 

 

この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。