【JBA公開資料】U18指導方法論より On Ball ScreenのDF攻略は「構造をやっつける」能力の向上から!

0、背景となる情報

「バスケで日本を元気に」を理念とする日本バスケットボール協会では、積極的な情報発信を通じ、コーチの育成にも精力的に取り組んでいる。

その中、知る人ぞ知る情報発信ページが「指導内容資料」である。東京五輪2020を戦った男女各代表の取り組みや、競技会での戦いを克明に記したテクニカルレポート等も公開されている。

2022年秋頃に「U18指導方法論」という動画資料が公開された。「いつ、何を、何処まで教えるべきか」という問いにJBAとしての指針として年代別指導カリキュラム等が発表されている。例えば、On Ball Screenについては、U16世代からチェックがある。その中で、U18指導方法論の中では「On Ball Screenの攻防で、特にU18世代の選手が優先して習得しておくべき能力」が、明瞭な理由と共に分かりやすい映像や解説と共に示されている。

(指導内容指針の資料より)

講師は、東京五輪2020を戦った男子代表チームACを務め、現在はパリ五輪での金メダル獲得を目指す女子代表チームACと共に、日本バスケットボール協会指導者養成員会、同技術委員会ユース育成部会の委員も兼任されている鈴木良和(エルトラック代表)氏が務めている。

JBA公開資料 U18指導方法論について

1、主な項目

※あくまでも視聴した人の個人的なメモになります。詳しく知りたい方は、動画を参照ください。

U18指導方法論について
①JBAが提唱しているゲームモデルの説明
JBAが提唱している年代別カリキュラムを踏まえ、U16、U18世代で大切な事

③それらが導き出された背景
・代表チームの海外の上位チームとの対戦等に由来する。その上で、U16-18で大切にしたい『punishment(代償を払わせる)』という考えの紹介。

④『punishment(代償を払わせる)』を念頭に、U16,18年代で必要な攻防の駆け引き(On Ball Screenの攻防を事例に)
・Show Hard
・Contain
・Switch
・Iceに対する攻防の事例
(女子代表チームの資料、考え方、実際の合宿映像を事例に)

⑤ ④を踏まえ、実際に指導風景。東京成徳大学女子バスケ部の映像より(同チームの許可の上で)
⑥まとめ。U18世代で抑えておきたい基本的な構造の整理

2、動画視聴者としての感想

 
本稿の投稿者は、本コンテンツでいかのような情報が得られると感じました。

①女子代表チームが目指す『COUNTER BASKETBALL』の背景を知ることが出来る

 
今回、女子代表チームACの鈴木良和さんにより、女子代表チームの情報や映像もふんだんに利用しながら、惜しみない情報が公開されています。女子代表チームがワールドカップの舞台で目指したことをより鮮明に知ることで、出来たこと、現時点では出来なかったことをより鮮明に把握することに繋がります。
 
また、ワールドカップ前の強化方針発表会にて、女子代表チームの恩塚HCは「パリ五輪までの挑戦が、『次に、どの様な始まりになるか』という事を見据えていること」及び「ただ、メダルを取れたね、素晴らしかったね、という以上の世界を見据えている。」と語っています。そして、以下の3つの風景を日本中に増やしたいと発表されています。
 
<パリ五輪での金メダルを目指す過程で、日本中に増やしたいと考えている3つのこと>
 
a,「やってみよう!」等言葉と共になりたい自分に挑戦するプレイヤー
b,.暴言なく、なりたい自分へ挑戦するプレーヤー 選手を導けるコーチ
c,.自分も「やってみよう」という言葉を発する仲間
 
 
U18世代というテーマの中で、代表チームの取り組みが紹介されることで<パリ五輪での金メダルを目指す過程で、日本中に増やしたいと考えている3つ
のこと>に確実に繋がっていく、とても濃い内容の講習でした。
 

②女子代表チームの事例を踏まえ、On Ball Screenの攻防についてのフレームワークを知ることが出来る。

『U18指導論」というテーマの通り、年代別の指導方法を提示する事が本動画の一つです。その上で、見どころの一つとして、女子代表チームのOn Ball Screenの攻防についての全体像を示しているマインドマップも見どころの一つのように感じました。面白かったのは、その区分けです。

On Ball Screenの様々な守り方に対し、DF側の目的を示した上で、スクリナー側の攻防、ボールマンDF側の攻防について記載。攻略方法として「構造をやっつける」と「構造を作らせない」とに区分け。その上で、スクリナー側の視点、ボールマン側の視点、残りの3人の視点で、それぞれの『punishment(代償を払わせる)』についても明瞭に示されていました。

 

③一般のメディアでは抽象的な言葉で報じられることが多い女子代表チームの実務的な部分の深淵に迫れる

「選手の自主性」・「ワクワクが最強」・「世界一のアジリティ」等、メディア的にも映える言葉で女子代表チームが語られることが多いです。ワールドカップで苦戦している際には、「メンタル的な話だけで、戦術が無い」等々のコメントもSNSやYoutubeのコメントで数多く見掛けました。

試合の感想は人それぞれですが、上記のキーワードの背景に潜むロジカルな世界の一端が本講習会で把握できます。元々、恩塚コーチの戦術的な知識等は、同氏の講習会に参加された方や、過去のJBAコーチカンファレンスでも奥深い世界が語られています。各局面ごとに、細かく分類し、理路整然と整理されていることを改めて把握できる講習でした。メンタル的な事柄を哲学的な側面というのであれば、本講習会では、実務的な部分の一部が紹介されています。

④On Ball Screenの攻防について、U18世代で習得する能力についての、より深い解像度での把握

指導ガイドラインでは、U16世代よりOn Ball Screenの攻防がスタートすると推奨されています。オフェンス側の視点に立った際に、上述の「構造をやっつける」・「構造を作らせない」という視点があります。

本講習会では、「構造をやっつける」能力の重要性が、「補償性と非補償性」という概念で説明されます。その視点でOn ball Screenの攻防を紐解くことは、下級生時代の指導や、U18世代に選手を送り込むU15世代のコーチにとっても、様々な示唆を与える内容であるように感じました。特に、『punishment(代償を払わせる)』する為に必要な能力の割り出しが明瞭になり、U18カテゴリーへの準備も明瞭になるはずです。

この記事の著者

片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。