【SUFU紹介記事】バスケットボール練習ドリルの「総選挙」、最優秀賞は蓜島元夢氏。入賞作品、投稿作品が公開中!

0、背景となる情報

ドイツ人のアーティスト、ヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys)は、「拡張された芸術概念」で知られる存在だ。絵画や音楽等に限らず、教育・政治・宗教活動等、「全ての人は芸術家である」と語る。そして、『あらゆる人間は自らの創造性によって社会の幸福に寄与しうる』として、『社会彫刻』という概念を提唱し、『誰でも未来に向けて社会を彫刻しうるし、しなければならない」と呼びかけた。

◇『あらゆる人間は自らの創造性によって社会の幸福に寄与しうる』

同氏の考えに基づくと、バスケットボール界には、様々な芸術活動が存在する。華麗な選手のプレー、ゲームでの的確なコーチング、公平で白熱した試合を支えるレフリーやテーブル・オフィシャルズの方々は勿論、興行の企画や運営も含まれる。現在、日本各地、各カテゴリーでは、様々な交流戦や大会も企画され、バスケットボールを愛する人が集い、体育館で汗を流している。それらも、企画や細かな調整をされた方が「社会に彫刻した」風景だと言える。

GSL編集部は「バスケットボールに関わる方々のバスケット体験の充実や彩り」・「バスケットボールに関わる方々のバスケット体験の充実や彩り」を社会に彫刻したいと強く願っている。そのアプローチには、直接的な事、及び、間接的なことがある。コーチ向けのクリニックであるEuroBBAへの開催協力も、コーチへの機会創出を通じ、上記の理念の実現に繋がると感じている為だ。他には、素晴らしい活動をされている方々を取り上げることを通じ、人と人とが繋がることも目指している。

◇『SUFU』の理念は「スポーツの未来を創る」

上記の視点で、LIFULLグループによる『SUFU』に注目している。同プロジェクトは、「スポーツの未来を創る」を理念とし「スポーツ現場での、選手の充実した時間」を彫刻しようとするプロジェクトである。「スポーツの現場で役立つ価値ある練習メニュー・トレーニング方法を提供することで、選手・指導者 ・コーチ・トレーナー・保護者などスポーツに関わる多くの方の助けになることを目指す。」の言葉通り、バスケットボール部門では株式会社ERUTLUCがコンテンツを提供する形で、指導現場で有益な様々な知見が発信されている。

◇ERUTLUCの3つのミッション

ERUTLUC社は「より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する」・「チームスポーツだからこそできることで教育に貢献する」・「世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」という3つのミッションを掲げている。SUFUを運営するLIFULLグループの理念は「あらゆるLIFEを、FULLに。」である。両者の理念が、スポーツの分野で重なりあい、革新的なプロジェクトが着々と進んでいる。

◇SUFUとERUTLUCならではのシナジー

2022年11月1日より11月30日の期間、SUFU にて、SUFU会員による投票型のドリルコンテストが開催された。

現在(2023年2月末)、コンテストの結果と共に、各ドリルの動画、詳細の説明が公開されている。題材は、同システムの中で、バスケット関係のコンテンツを提供する エルトラック 指導員が考案した各種のドリルである。

詳細は会員ページより視聴可能で、14日間の無料登録期間もあり。無料期間中の退会も可能である(https://sufu.lifull.net/)。

より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する」・「チームスポーツだからこそできることで教育に貢献する」・世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」を掲げる同社らしく、多種多様なコーチにより、様々なドリルが公開中だ。本稿では、入賞作品を簡単に紹介したい。

1、入賞作品

全てドリル名より。

◇最優秀賞
1on1部門:ペイントフィニッシュ判断(蓜島元夢コーチ)

◇優秀賞
シュート部門:プルアップドリル(堀勇聖コーチ)
ドリブル部門:ためるドリブルからリアクション(遠藤航太郎コーチ)
パス部門:キックアウトパス判断ドリル(遠藤航太郎コーチ)
1on1部門:動き出しの駆け引き勝負(遠藤航太郎コーチ)
ディフェンス部門:1on1始まりの設定|フライバイ〜クイックストップクローズアウト(遠藤航太郎コーチ)
戦術部門:ハーフコートゲーム水野ルール(水野慎士コーチ)
ファンドリル&能力アップ部門:ボール弾きパス(蓜島元夢コーチ)

以下は、JBAが提唱するゲームモデルに照らし合わせて分類を試みた図である。

2、各ドリルの特徴(投稿者の視点にて)

① 1on1部門:ペイントフィニッシュ判断

最優秀賞は『ペイントフィニッシュ判断』のドリル。考案者は蓜島元夢コーチ。名前の通り、フィニッシュを試みる際、バスケットボールの試合中で実際にプレイヤーが対峙する負荷が発生するドリルである。駆け引きが絶妙に入り混じり、一定のルールの中での混沌さもある。ゲーム形式で取り組め、時間効率も良い。

2023年1月に開催されたJBAコーチカンファレンスでは、『代表活動を通して感じる育成年代からのコーチングの重要性』のセッションに登壇した鈴木良和氏からもU12・U15世代で多様なフィニッシュを習得する事の意義や重要性が紹介されている。また、詳細は割愛するが同講義での「複雑な状況にシンプルに対応するために、選手自身が複雑であること」とも繋がる素晴らしいドリルである。

②シュート部門:プルアップドリル

ドリブルからのプルアップショットを60%以上で決め切る能力が重要だ。ここの脅威があれば、ゴール下へのアタックや、キックアウトからの3Pショットの場面も作りやすい。コーン等を使って特定の条件が発生。DFの動きを見た上でプルアップシュートをする訓練となるドリルとなっている。

③ドリブル部門:ためるドリブルからリアクション

バスケットボールの戦術に変遷がある中で、現代のバスケで重要なプレーがドリブルをしながらの状況判断である。コート上の状況を見極め、次のプレーを選択する事は容易ではない。ドリブルを継続すること、パスの選択、シュートの選択等、ボール保持者は的確なプレーは得点に直結する。

本ドリルでは、上記より、パスの能力を鍛錬するドリルである。ドライブイン後のHelp DFとの攻防や、PnRを使った際のポケットパスの礎となりそうな素晴らしいドリルであった。

JBAでは、PnRの攻防を、「構造をやっつける」・「構造を作らせない」と区分けして表現。Step1として、「構造をやっつける」ことを提示。それには、ハンドラーの能力が極めて重要。本ドリルは、PnRの「構造をやっつける」準備にもなりそうなドリルである。

<参考>【JBA公開資料】U18指導方法論より On Ball ScreenのDF攻略は「構造をやっつける」能力の向上から!

④パス部門:キックアウトパス判断ドリル

パス部門では、ベースラインドライブからのパス能力の鍛錬を意図したもの。JBAのゲームモデルでは「BREAK局面」となるだろうか。

コート上にコーン等を配置し、DF役に特定の動きの選択肢を与える。DF役の動きにより、オフボール選手、及び、ボール保持者がプレーを判断する設定。コーナーへのパスでは、身体の幅の外からのパス出しが徹底。こちらも考案者は遠藤航太郎コーチである。本コンテストでど同士の入賞作品は多い。種田山頭火がSUFUドリルコンテストを見た際に「分け入っても、分け入っても遠藤航太郎」と詠んでも私は驚かない。

⑤1on1部門:動き出しの駆け引き勝負

1on1部門では、「動き出しの駆け引き勝負」としてリアクション・対決系のドリルが優秀賞に。ピボットをしてからの鬼ごっこ的なドリルである。相手の動作、上半身の動き、タイミング等を読み取りながら反応する要素が織り込まれており、実演するU12世代?の選手も楽しそうである。

Step2としてドリブルとの組み合わせも映像で紹介。考案者である遠藤航太郎氏の説明によると、プロテクトヘジテーションなどにも繋げようとする意味合いもあり、とのこと。バスケットの変化に合わせ、2線ポジションの位置取りも変わってきた。プロテクトヘジテーションでボールマンDFと2線を欺ければ、得点期待値の高いショットに繋がる。

⑥ディフェンス部門:1on1始まりの設定|フライバイ〜クイックストップクローズアウト

ディフェンス部門では、「1対1の始まりの設定」として、クローズアウトの局面の鍛錬。『フライバイ(絶対にキャッチ&ショットの3Pを打たせないようにジャンプをしてでも守る)』と『次のローテーションがあるので直ぐにコートに戻る』の習慣化を強調したもの。ドリルとしては、最終的に1対1に落ち着くが、ゲームで必要となる習慣を体感できる。考案者は、SUFUの動画にも数多く登場する遠藤 航太郎コーチである。

⑦戦術部門:ハーフコートゲーム水野ルール

戦術部門では「ハーフコート水野ルール」として水野慎士氏の考案したドリルがノミネート。近年、サッカーやラグビー等で注目されている「制約主導型のアプローチ」の練習ドリルと区分けできるだろうか。

やや数的優位の状況下(3対2.5のような形)でオフェンスがスタートする中、ドリブラーには制約条件が課されている。このドリルをクリアする事で、ドリブルからのワンハンドパスの判断能力が育まれそうである。ここで重要なのは、「ドリブルからのワンハンドパス」の能力向上だけではなく「パスの可能性を伺った上で、自分でゴール下にアタックをする」能力の向上も意図された設定であることだ。

ワンハンドパスを鍛える要素はあるが、「ドリブル中の状況判断能力と遂行能力」を育めそうな素晴らしいドリルであった。近年、サッカーやラグビー等、判断を伴うスポーツでの技術・判断能力の習得方法として『制約主導型のアプローチ』という考えが提唱されることも増えた。本ドリルも、それに大別されるだろう、

ドリルの解説ページでは、ルールのバリエーション等も豊富に提示されている。
考案者の水野慎士コーチはスペイン等への訪問経験も豊富。また、男子ジュニア代表の「サポートコーチ/通訳」も兼任。パス能力、特に、ワンハンドパスはアレハンドロHCも #JBAコーチカンファレンス で指摘した内容で、合宿でも重点的に組み込んでいた項目でもある。このようなドリルやアイデアが数多く流通する事の意義を強く感じた。

⑧ファンドリル&能力アップ部門:ボール弾きパス

コーディネーショントレーニングとファン部門では、2人一組&ボール2つでの面白く、愉快なドリルが登場。ボールでボールを弾いて目的とする場所に届けると同時に、間髪入れずにパスをするという設定で、非常にリズミカル。簡単なように見えて、様々な感覚が求められる。

コーディネーショントレーニングは、若いうちに取り組んでおきたい事柄の筆頭としてバスケ界でも紹介されることや、活用されることも多い。SUFU会員のファンドリルの引き出しの一つになりそうだ。

また、末尾として、本ドリルが見るからに楽しそうなドリルであることも強調しておきます。実際、実演をしている指導員も楽しそうであり、ドリル実演動画では、元気さと楽しさが溢れ出ている。ウォーミングアップの一環として採用された際には、体育館に笑顔と歓声が飛び交う事が想像できる。

2、編集語記

本稿では、ドリルコンテストの入賞作を紹介した。今回、合計で111個のドリルがノミネート(GSL編集部の調べ)されている。111といえば、『水滸伝』にて、梁山泊に集った豪傑の108を3つも上回る数である(!?)

本コンテストの本質は「ノミネート作品を見たSUFU会員コーチが、日常の指導現場で活かせるアイデアを得る」こと、そして、「コンテストに投稿をしたERUTLUC指導員が、日常の指導現場の中で、よりよいコーチングに繋げること」にあるのではないか。いずれも、選手がELUTRUC体育館で過ごす時間の充実へと繋がる。冒頭で紹介した、SUFUとELUTRUC双方の理念を果たすものだ。以下は、ドリルコンテストの実施フローに伴う、各関係者への影響を考察した図である。

本稿筆者は、本コンテストの関係者にお話を聞く機会に何度か恵まれた。細かな部分は憶測の域は出ないが、完全に的外れでもないはずである。勿論、正式な見解でもない。絶妙なラインを探った図である。

この記事の著者

片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。