インタビュー:片岡秀一(株式会社UPSET) 後編

インタビュー:片岡秀一(株式会社UPSET) 後編

先ほどのような『ゴールドスタンダード』を通じての発見や学びと、ご自身の仕事、マーケティングとの関連性について教えてください

自分の会社(UPSET。バスケット/サッカーウェアのチームウェア製造販売)のサービスやオリジナリティを必要とする場所、これまで届いていなかった場所、既に存在は届いていたけれど、きちんと伝わっていなかった場所(空間・領域)にインパクトを持って届けていく、ということです。

傍目には営業部なんですが、伝えて行くこと、ニーズをきちんと把握、バスケ界、スポーツ界の課題を一つひとつ、自身の仕事を通じて少しでも改善、向上させていくことを目指し「マーケティング部」という部署を新設してもらいました。

また、自社のスローガンでもありますが「shape your imagination/そのイマジネーションを形に・・・」ということで、革新的なこと/面白いこと/これまでに前例のないこと/革命的なことを考えて未来を想像していくときのゾクゾクする感覚や経験を1つでも多く世の中に創り出したいと考えています。ブランドの名前がコンセプトを全て表しています。UPSET–番狂わせ/下剋上/大金星などなど。

自分が頭の中で考えたことが現実の世界に存在していく瞬間の、心の中の方からニヤニヤしてしまう感覚を自分は過去に何度か味わいました。あの何とも言えない感覚は最高です。1人でも多く味わって欲しいと思っています。

そのために、今は、会社としてはチームウェアの販売をしています。デザインの色ですとか、プリントの場所とかの制限がなく、フルオーダーでの価格帯で発注して頂ければリバーシブルで6,980円~(サイズにより変動あり)、ユニフォーム濃淡上下で15,000円~(同)という価格帯で提供させて頂いています。宣伝になってしまいましたが(笑)。

http://www.upset-emg.com/

ウェアの販売以外にも、現時点では公表できないことまで、様々なPROJECTを水面下で準備中です。『life create company』となれるよう精進中です。

また、最近、特に注目しているのがNBAの地域活動であり地域で行っているプロモーション活動です。「sports for smile」という団体の中でもsportsを活用して地域社会の課題を解決していく動きが数多く紹介されていますが、アメリカで問題となっている「識字率」の問題を「NBA」と「地域の教育機関」とで連動をして解決していく「read to achive」という活動などに感動しました。

NBA選手が実際に小学校に足を運び、詠み語りの時間などを設ける活動です。普段は本を読みたがらない生徒も、スターと一緒に本を読む機会を通じて、本を読むようになる。それだけではなく、本を読んでのレポートコンテストも開催しており、入賞した生徒はNBAのホームゲームに招待される。そして、ハーフタイムで紹介される。単発のイベントではなくシーズン中でも継続して行われる。

バスケットを愛していない人にも、バスケットやスポーツの潜在する価値を活用していくという取り組みです。日本は識字率が高いので馴染みは薄いですが、国家の課題として掲げるぐらいなのでアメリカでの識字率問題は重要な課題であることも推察しました。

そして、NBAのチームにとっても、地域社会との接点を作る活動にもなっていて入場者収入や、グッズ販売の収入増、ブランド力の向上に繋がる。地域社会を分析し、NBAが出来ることや使える
価値をフル活用して、自分たちのビジネスに繋げ、ステークスホルダーの社会環境を整えていく。これらは大局的な視野に立ったマーケティングが成せる業であると感じています。

最近では、仙台にできたゼビオアリーナですね! 地域の行政との連動でもあるので簡単には言えないですが、建設予算やゼビオ関連店舗での売り上げ増とで、収支計算で何年ぐらいでプラスになるんだろうか、とか、投資やスポーツ環境への寄付・貢献ではなくて、収支でプラスになったら凄いなと感じています。頭の良い方々が仕掛けていることなので、計算が合ってのことだろうと。

あのモデルが成功したら、日本国内にアリーナが数多く誕生する成功モデルにもなりますし(笑。なので、最近は、プロテインなどを買うときはゼビオや系列のビクトリアに行ってます。あとは、Jリーグのリーグとしての制度設計に強い関心があります。ですが長くなりそうなので、この辺で。。。(笑)

コーチKの哲学と、ご自身の哲学との相違点はありますか? また自身が持つゴールドスタンダードについてご教示ください

非常に恐れ多いです。人によって価値観は違うので、コーチKさんとの価値観の相違というのは勿論あります。良いと自分が納得できた考えについては、自分の中でも取り入れられるように精進中です。

自身のスタンダード/哲学についてですが、一番の基幹を為すのは、「どんな時でも解決策は100万通りある」です。座右の銘みたいになってしまいましたがコーチKのような表現をすると

  • 自信
    問題や課題に立ち向かう自信
  • 分析
    情熱を持って、冷静に対処する
  • 言い訳をしない
    どんなことでも、解決策は見つかる

また、尊敬するOSS株式会社の半田裕さんから教わった以下の言葉も自身のスタンダードにしています。

  • Break the rule
    常識/ルール/前例を打ち破れ
  • Make a difference
    違いを出せ

また、これはTED TALKの「How great leaders inspire action」でも語られていますが「start with why」という言葉です。

片岡さんはゴールドスタンダード・ラボのプロジェクトメンバーでもありますが、このコミュニティを通して発信していきたい価値や今後の展望などお聞かせください

偉そうな発言ですが、まず、自分が育ち、そして愛しているスポーツの世界をより良くしていきたいというのが根本にあります。そして、より良くするためにスポーツの世界に存在しているグループ/組織/チームの問題を解決していければ、より良くなると考えています。

例えば、規律のあるチームには自由がなく、自由のあるチームには規律がないケースも多いです。組織の中で無気力になる人間もいるし、志と夢はあっても組織を牽引できないケースもあります。

「ゴールドスタンダード」を読んだとき、自分の関わる世界で解決したい事柄や築き上げたい関係などに思いが巡りました。同じように、この本の読者や、それぞれのフィールドの解決策や解決の糸口にあるアイデアを見つけたのではないかと考えました。

書物という1つの共有物を通じ、そこから様々な現実とのリンクがある。その中の1つでも多くを吸い上げ、この本を読んで共感をした人間同士で分かち合えたら、スポーツの現場にある問題、組織の問題の解決をする上での『集合知』になる、と考えました。

『ゴールドスタンダード』という書物が、読者に新しい発見や知識を与える。それを、読者や、著作に関心のあるコミニティで共有する。他人の発見などを知り、再び、著作へ立ち戻り、最初とは違った知恵を得る。

その積み重ねで、コーチングや、各チームのチームワークが向上すれば良いなという想いを抱いています。

(interview 岩田塁)

インタビュー前編はこちら

片岡秀一(カタオカ シュウイチ)
株式会社UPSETマーケティング部。埼玉県バスケットボール連盟競技委員。全日本総合選手権競技スタッフ(05年~現在)。バスケットボールの誕生日実行委員。BMG(Business Model Genaraion) for sports委員長。1982年4月28日生まれ。埼玉県春日部高校バスケ部在学中に、小藤保男(現白岡高校バスケ部顧問)氏の指導に感銘を受けバスケットボールへの好奇心を募らせる。埼玉県クラブ連盟をプレイグラウンドとして競技を続け、初年度から参戦している埼玉県の私設トップリーグであるEIGHTLEAGUEでも4年目にして念願のファイナルに出場決定。
また、2004年頃から、報道機関の無いクラブチームのバスケット界でのローカル情報発信基地としてブログ「片岡タイムズ」を開設したところ、一部でカルト的な支持を受ける(本人も困惑)。趣味は老舗の蕎麦屋で蕎麦を食べる事。と同時に、立ち食い蕎麦屋の中でも美味しい蕎麦屋を見つける事(小諸そば、箱根そばがお気に入り)。
http://www.upset-emg.com/

この記事の著者

岩田 塁GSL編集長
元・スポーツ書籍編集者。担当書籍は『バスケ筋シリーズ』『ゴールドスタンダード』『シュート大全』『NBAバスケットボールコーチングプレイブック』『ギャノン・ベイカーDVDシリーズ』『リレントレス』他