「小さなことを積み上げることでしか結果は出ない」千葉ジェッツ 石井講祐選手の講演レポート

「小さなことを積み上げることでしか結果は出ない」千葉ジェッツ 石井講祐選手の講演レポート

「世界に通用する選手やチームの輩出」を使命の1つとして掲げているB.LEAGUEでは2017年1月下旬、2017年6月上旬と、プロを目指す選手を対象にB.DREAMプロジェクトを実施している。大河正明チェアマンも第1回目の開会式に登壇。冒頭、「Bリーグは、大きな夢と高い志を掲げ、未来に向かって挑戦していくと開幕戦で宣言しました。B. DREAMプロジェクトも、未来への挑戦の一つです。皆様の挑戦を心から応援しています」と語り、リーグの意気込みと、選手へエールを贈った。

B.DREAMプロジェクトの特徴は、トライアウトを実施するだけではなく、著名なコーチによるクリニックや、B.LEAGUEで活躍をするプロ選手による講話を通じ、プロを目指す選手へ心構えや、実体験に基づくアドバイスを伝える時間を設けていることだ。

第1回目では横浜ビー・コルセアーズの細谷将司選手や、当時、日本バスケットボール協会のテクニカルアドバイザーを務めていたルカ・パヴィチェヴィッチ氏も登壇。全国3都市で開催された第2回B.DREAMプロジェクトでは、広島会場では広島ドラゴンフライズの北川弘選手、仙台では秋田ノーザンハピネッツの田口成浩選手、チーム、地域を代表する選手が選出された。

東京会場に講師として登壇したのは千葉ジェッツの石井講祐選手だ。2016-17年シーズン、平均出場時間では26分、平均得点10得点、46ゲームでスターティングファイブとして出場。天皇杯優勝、シーズン序盤での地区2位争いに大きく貢献し、日本代表重点強化選手にも選出された名選手。本記事では、講義内容の一部をレポート形式でお届けする。

東京会場に講師として登壇したのは千葉ジェッツの石井講祐選手

市選抜、県選抜とは無縁の学生時代。努力の末に東海大学でシックスマンとして活躍するも、プロで活躍する確信を得られないと卒業後は関東実業団へ

冒頭、中学・高校・大学時代と、市や県の選抜チームの選出や個人賞の受賞などの輝かしい戦績とは無縁であることが語られた。東海大学時代にはBチームを経験した後にAチームへ昇格。最終学年では、シックスマンとして試合に絡める選手へと成長を遂げるも、スターティングメンバーとして試合に出場することは叶わない。

進路を決定する時期では、プロの世界で戦っていけるという確信を得られずに、大学を卒業後は、関東実業団連盟に所属する会社へ就職を決める。バスケットボールは続けていく予定もあったが、一定の線を引いたことを意味する。社業とバスケットの両立は充実していたが、平日の練習は週に1回、木曜日の夜だけ。仕事で参加できないときもある。

「社業とバスケットボールの両立としては、何1つとして不満や、不自由は無い素晴らしい環境だった」と語るが、心の奥底でバスケットボールへの想いが充満していくことを感じ始めるプロ挑戦を決めるまでの1年間は、今後の生き方を悩みながら過ごす日々であったという。そんな中、NBLが合同トライアウトを開催することとなり、参加を決意。「50歳、60歳になったとき、もっと挑戦すればよかった、と一生後悔するよりかは、思い切って挑戦しよう」と当時の心境を語る。

GSLも開催協力のTamagawa Training Camp 2014 supported by UPSETより。2013-14シーズン、NBL転籍後の千葉ジェッツは20連敗を喫するなどで大苦戦。石井選手自身、スタートでの出場は8試合。出場時間も決して多くはなかった
GSLも開催協力のTamagawa Training Camp 2014 supported by UPSETより。2013-14シーズン、NBL転籍後の千葉ジェッツは20連敗を喫するなどで大苦戦。石井選手自身、スタートでの出場は8試合。出場時間も決して多くはなかった

練習生を経て、プロ契約

その後、地元である千葉ジェッツから練習生としてのオファーを得て、練習生としての歩みをスタート。憧れの舞台に限りなく近い環境とは言え、練習生の置かれる環境は、ある意味で、過酷で残酷だ。練習生は、チームのウェアも支給されず、チームウェアで揃えるプロ選手の中、大学時代のウェアで練習に挑む。ホームゲームには帯同するものの、ベンチには入れない。ベンチの裏、ほぼ観客席で試合を観戦する日々が続いた。

主な収入源はスクールコーチとしての活動だ。可能性の塊である少年・少女にバスケットボールを指導することにやりがいを覚えつつも、練習時間の確保や、肉体的な疲労という意味合いでも、厳しい時代であった。社会人時代の貯金を切り崩しながら、活動を続けていた。後述するが、リーグを代表する選手として活躍する現在の礎は、この時代から始まる地道な努力に起因する。

「信念の強さが、ある意味自分のスタイルなどに拘り過ぎることを防ぐ。だからこそ突如やってくる勝負所で結果を出し、どんなHCにも信頼されてきた。何よりも”チャンスの神様”に好かれた。講祐はそんな男です」

半年間の練習生期間を経て、正式にプロ契約に。bjリーグ時代に横浜ビー・コルセアーズを優勝に導いたレジー・ゲイリー氏、日本代表監督の経験もあるジェリコ・パブリセビッチ氏、監督代行の佐藤博紀氏、そして現在のHCでもある大野篤史氏の元でプレーする中で、徐々にチームの中での存在感を高めていく。

島田慎二社長は「決してエリートではないが、目標や期間を定め、常に最善の準備をする。試合に出てなんぼ。信念の強さが、ある意味自分のスタイルなどに拘り過ぎることを防ぐ。だからこそ突如やってくる勝負所で結果を出し、どんなHCにも信頼されてきた。何よりも”チャンスの神様”に好かれた。講祐はそんな男です」とSNS内で評している。

2016-17シーズンには、天皇杯優勝に貢献するとともに、日本代表の重点強化指定選手に選出されるまでに成長を遂げた。堅実なディフェンスと、素晴らしい状況判断から放たれる高確率なアウトサイドシュートは、B.LEAGUEの試合を見ている人であればお馴染みの光景だ。

練習生から、日本代表候補選手選出までの約4年近い道のりの中、そこには石井選手の努力があった。やむくもに努力をするだけではなく、意識を向けるべき領域を見定め、自分自身を分析、感情の揺れを観察し、工夫と試行錯誤を繰り返した歩みだったようだ。そこには、石井講祐選手の競技哲学、もとい、人生哲学が色濃くにじみ出ていた。現在でも思考錯誤中で現在進行形だ。

B.DREAMプロジェクトの講演の中で強調された、石井選手の価値観、考え方を紹介したい。石井選手本人は「皆さんも聞いたことがあったり、本で読んだことがある考え方かもしれませんが……」と前置きしたうえで、非常に謙遜して語るが、競技レベルや、カテゴリー、プロを目指す目指さないに関わらず、非常に重要なメッセージ性を持つように筆者は感じた。3つのキーワードを、本人のエピソードと共に紹介する。

千葉ジェッツ 石井講祐

①人や環境のせいにしない
(コントロール不可能な事にエネルギーを浪費しない。自分が決めた事に最善を尽くす)

以下、本人の弁を交えて説明。

千葉ジェッツの練習生時代を「言い訳を探そうと思えば、いくらでも探せるのできる環境」と語る。ウェアの支給はなく、チーム内の5対5に参加できないケースもある、週に5回ほどスクールのコーチをする責務がある。やりがいはあるが、肉体的な疲労は溜まってしまう。

勿論、「探そうと思えば」という前置きが示す通り、実際には、そのことを言い訳にしたわけではない。

この時期、「人や環境のせいにしない」と決め「コントロールが出来ないことに捕らわれず、コントロール出来ることに集中する」ことを強く意識したという。目標はプロ選手になってプロの舞台で活躍する。決めたことは「自分自身が頑張ること」と言い切る。練習生契約からプロ契約へと昇格させる、チーム内の5対5に参加させるということはコーチやGMが判断することで、自分自身にはコントロール出来ない。自分が出来ることに最大限のエネルギーを注ぎ込んだ。「時として、自分が何かを達成できない理由を、自分がコントロール出来ないことに押し付け「自分は悪くない、周りが悪い」と自己正当化してしまうケースは無いですか?」と穏やかな口調ながらも、警鐘を鳴らす。

「探そうと思えば言い訳が、いくらでも見つかる」と冒頭に語った環境であるが、チャンスを探そうと思えば、チャンスも数多く転がっている。練習を指揮するのは、百戦錬磨のプロコーチである。練習の前後、コーチに時間を取って頂き、足りないことや必要なことを質問をする。その上で、課題克服に向けて、チームに帯同するトレーナーに質問をする。メニューや栄養の知識を教えて頂き、それを着々と重ねていく。

これは、次に続く項目にも関連する。どのような状況に置かれても、自分の考え方はコントロールできる。そのときの立場、状況で最大限の努力をし、自分の出来ることに、最大限のエネルギーを注いだ。そのことで、突破口が開けた。

コントロールできることに集中をした上でも、具体的に、何を、どのように取り組んだのか。それは2つ目のキーワード「小さなことを積み重ねることでしか結果は出ない」という確信にも近い、石井選手の競技哲学・人生哲学へとつながっていく。

②細かなことを積む重ねることでしか結果は出ない

コントロール出来ることに集中をしたうえで、やるべきことは、日々の小さなことの積み重ね。「日々の積み重ねでしか結果は出ない。積み重ねが、いつか大きなチャンスをもたらしてくれる」と言い切る。

バスケットのチーム練習は2~4時間程度。それ以外の時間の過ごし方・使い方も成長するために非常に重要になる。そのためには、常に前向きにポジティブな態度で、成長のためのアンテナを張っておくことが重要。

例えば、時間的・体力的な側面だけで見ると、成長の阻害要因と考えがちなスクールのコーチを担当する時間も、子どもに指導をする上で責任や活力を得ると共に、ジェッツの試合を楽しみにしているファンのピュアな気持ちに触れることも出来るし、将来的に指導者になったときに役立つ経験であると前向きにとらえることも出来る。練習前後の空き時間でコンディショニングにも取り組めることに気が付く。移動など、ちょっとした空き時間には、NBAの動画を見て、スキルや戦術の勉強をし、選手としての引き出しを増やすことも可能だ。

前述の通り、チーム内のゲームに参加できないことは、HCに時間を取ってもらって、足りない部分やフィードバックを頂くことからスタートした。あるときは、あと5kg体重を増やす必要があると言われ、トレーナーと相談をして、筋力アップのためのメニュー、栄養の知識を細かく教えてもらい、愚直にやり続けた。トレーニング、栄養、休息を経て、パワーアップにも成功。「小さなことの積み重ねが、大きな結果を生むために唯一の方法」という信念の中で、とにかく、具体的なことまで細かく落とし込む。本人がその気になれば「何処にでもチャンスは転がっている」と断言する。「言い訳を探そうと思えば、いくらでも見つかる」という警鐘とは対照的だ。

それを行動に落とし込むために、石井選手が取り組んでいるのはバスケットボールノート、さらに言えば、感情の記録ノートであるという。考えるべき領域、やるべきことを決めていても、どうしても、人間なので感情があり、一時の感情に流らせてしまうこともあった。

その日の自分の感情をコントロールするために取り組みをスタートしたことで、ビジネス手帳を活用して記録することにした。1日の横軸の時間スケジュールの中で、その日の行動や感情をメモし、無駄なく、有効活用できたかどうかを自分で振り返る。特にお勧めなのが、「出来たことを5個、出来なかったことや、失敗から学べること」を描き出す作業だという。出来たことは、単純に、時間通りに起きれたなど、何でもいいという。これを繰り返すことで、コントロール出来ないことにエネルギーを浪費せず、自分がコントロールすることに集中する。そして、小さなことを積み重ねることでしか大きなことを成し遂げることが出来ない」という人生哲学通りの行動が出来ているかを振り返るようにしているという。

これにより、競技中、試合、練習中の感情の揺れが少なくなり、やるべきことに集中しやすくなった。時間の使い方や意識も変わった。高い志を持ち、刺激しあえる様々な出会いもあり、活力の1つになっている。行動変容を起こした。「目に見えて取り組みが変わった、大きな成果があった」と語る。

③苦しいときこそ、人は姿勢を問われる。苦しいときに、どれだけもがけたか。それによって、次に登れる山の高さが変わってくる

自分にはコントロール出来ない事柄にエネルギーを浪費せず、コントロール出来ることに注力する。やることを具体的な行動に落とし込み、小さな行動の積み重ねが大きな成果を生み出す唯一の方法と信じ、愚直に継続する。そして、それを鍛錬するために記録をとって常に振り返る工夫を怠らない。2つの考え方の次に語られたのは、石井選手が人生を歩む中で、困難との向き合い方、競技哲学を越えた人生哲学ともいえる内容であった。

それは「苦しいときこそ、最大限の努力をして、もがくこと」が石井選手の大切な価値観であるという。「苦しいときに、どれだけもがけるかで、次に登れる山の高さが変わると信じている」と力強く語った。

やるべきことをやっても、スポーツなので結果が出ない時期もある。そこで、もがく」という生々しい表現で、あと1歩の努力、あと1日の努力の継続を表現。苦しいとき、パワーの源となるのが「なりたい自分の姿」を見直し、考え直すことだという。

そのときに、なりたい自分を決めておくことの大切さを語る。苦しいときに、ふてくされる選手か、そうではないか。試合に出れない時期に、ふてくされるか、そうではないか。ゲームに出た際も、シュートが外れたら委縮してしまうかどうか。ベンチにいるときに、どのような態度で試合に挑むか。なりたいプレーヤー、人間像が決まっていれば、取るべき行動・態度がおのずと見えてくる。そのときは、プロで活躍をすることで、どんな存在になってバスケ界を盛り上げたいのか、どんな影響を日本社会の中に与えたいのか、そういうレベルまで考えて目標設定をしてもよいと語る。そういう目標設定が滲み出るのが、苦境の場面だ。「ベンチでの振る舞いを見て、GMやコーチが評価してくれるケースもあるかもしれない」とも語る。

石井講祐

※同じくGSL開催協力のTamagawa Training Camp 2014 supported by UPSETより。玉川大学バスケットボール部とのスクリメージの様子。この写真からも、約3年の時を経て、現在の筋肉隆々な体型との違いが伝わるはずだ。当時の様子はUPSET社のブログ内に元安コーチのコメントと共に掲載
※同じくGSL開催協力のTamagawa Training Camp 2014 supported by UPSETより。玉川大学バスケットボール部とのスクリメージの様子。この写真からも、約3年の時を経て、現在の筋肉隆々な体型との違いが伝わるはずだ。当時の様子はUPSET社のブログ内に元安コーチのコメントと共に掲載

今、どの位置にいる人にもチャンスはある。自分が想像しえなかった領域まで到達できる

締めくくりとして「今。どの位置にいる人にもチャンスはあると思っています。自分が想像しえなかった領域まで、到達できることもある。今日、B.DREAMを受験して、いきなり選手契約をし、すぐにスタメンになれる選手は少ないかもしれない。でも、近い将来にそうなるために、やれることは、今日から、今からある。今、B.DREAMプロジェクトに参加している方も、夢が必ず叶うとは言い切れないが、可能性は『ゼロ』ではない」と参加者へエールを贈った。

以上が、石井選手が講義の中で語った3つのメッセージである。以下、上記で記載しきれなかった部分や、当日の質疑応答から印象的な内容を記載する。

石井選手の講演を聞く中で、内向きの思考と外向きの思考を上手く共存させているように感じた。目標設定、問題解決、自己実現については常に内向きな思考やエネルギーが向かい、外的要因に惑わされない。

反面、自分が置かれている立場、果たすべき役割を考える際には、ファン・ブースター、コーチ、チームメイトの言動をよく観察し、相手の立場になって考え、相手を理解しようとする姿勢を強く持っているように感じた。

例えば、プロ選手になった喜びを「地域のイベントに参加し、ブースターの方に喜んでもらえる。自分のプレーを見て、元気をもらった。自分のプレーを見てバスケットを始めたと言ってもらえることは本当に嬉しい。責任と共に、本当にいい仕事であり、プロになってよかった」と語る。

また、『苦しいときに、人は姿勢は問われる』では「自分も様々な谷を経験したつもりだが、自分なんかの谷よりも、もっと苦しい状況を経験した人は沢山いると思う」と前置きした上で「バスケットをやりたくても、環境だったり、大きな怪我を抱えて出来ない人もいる。もし、その人が健康な状態だったら、もっと細部まで、やるんじゃないか……」と考える。自然と、自分の使命や役割を思い返し、責任感が芽生える。それが自分を鼓舞する活力源にもなるようだ。

「苦しいときに、最大限にもがく。どれだけもがけるか」

「苦しいときにこそ、最大限にもがく」という言葉は、日本バスケット史の中で多大な功績を残された吉井四郎氏の「バスケットボールの神を信じる」で語られている哲学とも非常に似ているようにも感じた。

「バスケットボールの神の存在を信じる」

私は、ゲームに勝ちたいために一生懸命練習したし、また練習を指導した。しかしその結果は、あるときは勝ち、あるときは負けたのである。

ゲームに勝つことができたときには、我々の努力は報われたものであると感じて、ますます次のゲームに対して意欲的になるであろう。

ところが、もしゲームに勝てなかった場合はどうであろうか。

もちろん、我々のこれまでの努力が足りなかったか、努力の仕方が間違っていたかについて大いに反省するであろう。しかし、努力が足りなかったからとて、今まで3時間練習していたものを、その倍の6時間、または3倍の9時間練習したからといって、それは次のゲームの勝利を少しも保証してくれない。あるいは2時間の練習でも勝つことさえあるのである。

人は、努力の報いが確実にあるものについては、どのようなことについてでも努力を継続する事は容易である。もし、今までより2倍努力すれば必ず次のゲームに勝てるという確固たる保証があれば、おそらくほとんどの人は努力する事に耐えることができるであろう。しかし、そこに何の保証もなく、いかに努力しても勝てないかもしれない可能性が十分にあるときには、誰でもが最善の努力をつくし、それを継続する事ができるであろうか。それを継続しているうちに、自分の弱さに妥協してしまう事が多いのではなかろうか。

私は、スポーツマンの真の苦しみはここにあり、そして、スポーツマンがスポーツを通じて人間的に鍛えられる最も大きな場がここにあると思っている。

我々はいかに努力したとしても勝てないかもしれない。しかし、我々はより努力しなければ絶対に勝てないのである。我々が勝つことができるかもしれないただ一つの方法は、最善の努力を継続する事以外にはないのである。

このような場面において、人間の弱さを克服して自己の最善をつくすことを継続することができるためには、人は神の存在を信ずるようになりやすいのではないだろうか。自分の心を自分で律し得ないということは、その人の心が弱いからといわれても仕方がないが、私は神の存在を信じることによって、とかく弱くなりがちな自分をある程度律することができるようになったと思っている。
すなわち、我々の努力は、それを公正に審判してくれる神が見ているものであり、我々の努力がもし勝利という形で報われなかったとしても、決してその努力を無視しているのではなく、もし我々がなおも努力を継続し、我々の努力の集積がゲームの勝利に価すると神が評価するときには、必ずその努力に対しての報酬を保証するものであると信ずるようになったのである。

このように信ずることによって、私は神を畏れるがゆえに、一日一刻の練習もなおざりにすることなく、練習に対する厳しさを保つ事ができるようになったと思っている。

また、NBAのサンアントニオ・スパーズで長期にわたってHC、アメリカ代表チームのHCを務めるポポビッチHCも「Rock and Hummer」として努力の継続の尊さを説く。

パウンディング・ザ・ロック(Pounding the Rock)

救いがないと感じたとき、私は石切工が岩石を叩くのを見に行く。おそらく100回叩いても亀裂さえできないだろう。しかしそれでも100と1回目で真っ二つに割れることもある。私は知っている。その最後の一打により岩石は割れたのではなく、それ以前に叩いたすべてによることを。

“When nothing seems to help, I go look at a stonecutter hammering away at his rock, perhaps a hundred times without as much as a crack showing in it. Yet at the hundred and first blow it will split in two, and I know it was not that blow that did it, but all that had gone before.”

これも、すぐに成果が見えない時期に、最善の努力を継続することの積み重ねを語った内容である。本稿の筆者は、石井選手の母校であり、東海大学の陸川章監督の講演会を通じて、この考え方を知った。

シューターとして信頼している。自分のタイミングだと思ったら打っていい。外れても、使ってるコーチが悪いと思って打ち続けていい

続いて、質疑応答の内容へと移る。プロチームで指揮を執る若手コーチが挙手。学生時代とプロ時代とで、コーチの方の役割や、選手とのコミュニケーション方法の違いについては「基本的には変わらない」と返答。ただし「プロの場合は、モチベーションが下がっているとしても、そこからやり続けるか、そこでやめるかは、本人次第。学生の場合とは、そういうときの声掛けやアプローチが少し異なる」とプロフェッショナルならではの責任領域を表現。

コーチに掛けて頂いた言葉で印象的な言葉を問われると、練習生、プロ選手へとステップアップする過程の中でのコーチとの関係性を語る。

レジー・ゲイリーHCの信条は「ハードワークをすることが、結果を出すための唯一の方法である」と言い、「日々の練習に取り組む姿勢や、それ以外の言動・振る舞いに対し、プロフェッショナルとして評価している」と石井選手も認められていたことが印象に残っているという。続き、ジェリコ・パブリセビッチ氏は、選手の自主性や、フリーランスなシステムを数多く採用するコーチだったという。その中で、自分の特徴や、色を出すことに苦労するが「シューターとして評価している」という評価を得た。

続いて、今シーズンのHCでもある大野氏だ。大野氏からは「3Pシューターとして期待している」とストレートに伝えられ「自分のタイミングだと思ったら打っていい。外れても、使ってるコーチが悪いと思って、打ち続けていい。それぐらい信頼している」と全幅の信頼を寄せられた。結果、その期待に応えたいと思うようになり、コート上での迷いが消えたという。

千葉ジェッツ 石井講祐

最後に

この催しは、B.DREAMプロジェクト参加者以外にも、熱意のあるコーチや一般の方にも無料で開放された。部屋の一室には、千葉ジェッツのファン・ブースターと思われる方々や、両親と共に訪れている少年の姿もあった。

講演後には、選手がトライアウト会場へと向かう。石井選手も、講演を終え、緊張から解放されたような穏やかな表情を浮かべた。廊下では、石井選手とブースターの方、他プロチームのコーチなどが談笑する場面が見られた。講義に参加した少年も、石井選手と共に写真に納まっていた。自分がやるべきことをやる。自分自身をコントロールする。夢や目標に向かって努力をする。小学校の授業や、ミニバスケットボールチームの活動でも、きっと教えられていることであろう。普段、コートの中で冷静沈着にシュートを沈める石井選手の思考回路に触れ、感じることがあったはずだ。もしかすると、石井選手と同じように、1日の自分の行動を振り返るちょっとした時間を設け、自分の夢や目標に向かって、自発的な努力を始めているかもしれない。

千葉ジェッツファンの少年を含め、この取り組みは、さらに先の未来にまで繋がっていると確信を持てる素晴らしい講演会となった。

日本のバスケットボールをもっと強く、世界を目指すために、このプロジェクトをスタートさせました

「日本のバスケットボールをもっと強く、世界を目指すために、このプロジェクトをスタートさせました。明日はいよいよスクリメージです! 精一杯頑張ってください。みんなで日本のバスケットボールを変えませんか? 一緒に日本を強くしませんか? もっと世界に近づきませんか? 一緒にやろうよ!」

B.DREAMプロジェクトの開催目的の1つは、「世界に通用する選手を輩出するため、高校生年代から挑戦する意欲に溢れる選手を発掘する」ことだ。第1回目のB.DREAMプロジェクトにて、当日の運営や開閉会式の司会進行を務めたB.LEAGUE運営本部・強化育成部の塚本鋼平さんは、締めの言葉として熱く語りかけた。

「日本のバスケットボールをもっと強く、世界を目指すために、このプロジェクトをスタートさせました」。国際大会などで、世界の強豪国への道のりは、まだまだ遠いという現実を突きつけられることもあるのが事実。それでも、日本のバスケットは、確実に一歩一歩と前進している。本プロジェクトを通じて、私は強く感じた。

第3回目を迎えるB.DREAMプロジェクトも先日に情報が公開された。https://www.bleague.jp/news/37210.html

石井選手の講義については、B.LEGUE公式でも全45分ほどの動画が公開されている。


※石井選手のオリジナルモデルのTシャツも本人のSNSなどで情報公開中。”carpe diem”とは「今を生きる」を意味するラテン語。

この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。