バスケットボールにおけるインテンシティ(強度)の意味と高め方

バスケットボールにおけるインテンシティ(強度)の意味と高め方

先日とても引っかかる投稿があった。

私から見れば、「単なるラフプレー」であり、私が知るところの「インテンシティ」とは異なるものだと感じたからだ。

とはいうものの、「インテンシティとは何か?」と聞かれたら、はっきりと正確に説明するのは難しいというのが実際のところであった。そこでスポーツ、特にバスケットボールにおけるインテンシティが意味するところを調べ、まとめてみることにした。

ザッケローニで注目されたインテンシティ

実際はもっと前から使われていたかもしれないが、この言葉が注目されたのは、元サッカー日本代表のザッケローニ監督が使ってからだろう。これが2013年の頃だ。

私の場合は、2012年にアメリカで著名なスキルコーチ、ギャノン・ベイカー氏のDVDを翻訳したのだが、その中である女性コーチが「○○をすることによってインテンシティを高めることができる」と指摘し、ベイカー氏がGood Pointだと賞賛するシーンがあった。このとき私は結局「強度」と訳した記憶があり、つまりニュアンスで伝わるとしても、本当に意味するところを正確に訳せなかったのだ。

ザッケローニ監督の話に戻ろう。ザッケローニとインテンシティに関する記述はこの記事が詳しい。

ザック発言で話題。『インテンシティ』の本当の意味とは? 曖昧な単語が流布して起こる危険性

この記事はスペイン在住のサッカー指導者・坪井健太郎氏の解説とともにまとめられている。要約すると下記の通りだ。

  • バズワードとしてインテンシティという単語が使われている
  • インテンシティという単語は「スペインの現場でも、話し手によって違う定義がある」
  • 一般的に語られるのは、フィジカル的な強度。例えば球際の激しさ、スピード感もインテンシティに挙がる
  • 難しい状況でのトレーニング、狭いスペースでのトレーニングでは脳にかかる負担が高くなるため、戦術的なインテンシティという使い方もされる
  • 慌てている状態は、プレッシャーが掛かっている、負荷が掛かっているという意味でメンタル的なインテンシティと捉えられる

こうした状況を踏まえ、筆者の澤山氏は指導現場で「万国共通の単語と同様に『インテンシティ』を使うと、人によっては違うものをイメージしてしまう」と述べ、「単なるプレッシャーを掛けることがインテンシティであると考え、さらに「インテンシティが高い=善、インテンシティが低い=悪」という単純な二元論に落とし込まれ、要するにシゴキを正当化することになりはしないだろうか?」と指摘している。

そして「インテンシティという単語をきちんと定義づける必要があるように思う」と述べる一方、「インテンシティという言葉がなくても、これまで不便はなかったはず。定義があやふやなのであれば、使用しないでも表現できるプレーに関しては、とりあえず従来の表現を使用すれば足りるのではないだろうか」とまとめている。

これには私も同意できる。チーム内でインテンシティという言葉の意味を明確に共有できるのならばともかく、曖昧な状態で使う必要はないだろう。しかしながら、インテンシティの意が含まれるだろうある種の言葉も、今では指導現場に曖昧なまま溢れている。

  • 「気合いを入れろ」
  • 「集中しろ」
  • 「ダラけるな」

意味するところは理解できるが、非常に主観的かつ抽象的であることは否めない。プレーや練習の質を高めるために指導者はどう対処すべきだろうか?

インテンシティの本来の意味

本来的には運動生理学上の「運動強度」ということで間違いないだろう。有酸素運動であれば酸素摂取量や心拍数、ストレングストレーニングであれば挙上重量などで明確に数値化できるものである。こうした運動強度を測ることで、各自のフィットネスレベルの認識・向上・調整に役立てられる。

例えばバスケットボールに関して、basketball91.comによれば「バスケットボールは、方向転換や素早い動きといった高いスピード下でのプレイが求められるため、高い強度(high-intensity)のスポーツとみなされている」とのことだ。

バスケットボールは、American Dietetic Association(米国栄養士会)によって、8つの動きが組み合わせれていることが報告されている。多くの動きは急停止・急加速が含まれ、平均して2秒ごとに異なる動きがなされており、試合を通じて約1,000回の動作を実行している。これらの動きは、ジャンプ、ランニング、ストップ、ダッシュ、スプリント、ジョギング、ドリブル、シャッフルが含まれる。

と述べる一方、

バスケットボールは高強度のスポーツと見なされているが、Kinesiologia Slovenica(2010)によれば、プレイヤーは実際には歩く、ジョギングするなどの低強度の動きが含まれており、高強度の動きが実行される実際の時間は、全体のわずか15%である。

であると述べている。しかしながら、

American Dietetic Association(米国栄養士会)によると、プレイヤーが低強度の動きに多くの時間を費やしていたとしても、短時間の高強度の時間が強度の指標となる。『Journal of Sports Sciences』によると、ほとんどのプレイヤーの心拍数は、試合の75%の時間で、最大心拍数の85%以上となっている。

と指摘する。最後に

低強度の動きに時間のほとんどを費やしている場合でも、強度の高い動きが必要なときのペースの突然の変化に備えて、準備をしておくことが重要である。試合中に必要とされる強度の高い動きを実行することを助ける1つの方法は、無酸素運動によるコンディショニングである。『The Sports Digest』によると、バスケットボール選手は、ストレングストレーニング、敏捷性トレーニング、無酸素トレーニング、およびプライオメトリクスを含む、バランスのとれたトレーニングを受ける必要がある。

と、生理学的な運動強度のケースで、インテンシティを説明している。これに関しては専門家ではないので、さらなる情報は各自で検索していただければと思う。

異なる文脈での「インテンシティ」

上記の例や、近年よく聞かれる文脈は明らかに本来の意味とはかけ離れているようだ。例えば、先日バスケットボールの家庭教師を主催するERUTLUC代表の鈴木良和氏と話す機会があったが、鈴木氏曰く「空間認識や状況の認知に関しても、インテンシティが強い/弱いという使い方をされることもある」とのことだ。

ますます混乱が助長されてしまうようだが、今回は集中力や意識といった、練習(あるいは試合)の質を高めるという意味でのインテンシティについてヒントを紹介したい。

曖昧な言葉だけで練習の質を高めることはできないだろう。より具体的な言葉や方法が、練習をより効果的にし、怪我を防ぎ、成長を促進するだろう。さらにこうした取り組みが、生理学的な「強度」の強化にも帰結するだろう。

練習の強度を高めるための6つの方法

サウスアラバマ大学のアシスタントコーチRuss Willemsenは、「インテンシティと意欲は、シュートやボールハンドリングのように改善できるスキルであり、コーチこそがその触媒である」と述べ、以下の6つの点を強調している。

1.コミュニケーション

  • 練習をより激しくする一番の方法は、コミュニケーションの改善である。お互いに信頼しあうチームとお互いを信頼するチームメイトは、互いに熱心に練習する。
  • ボストン・セルティックスのケビン・イーストマンは、コミュニケーションがチームにとって役立つ6つのポイントを指摘している。
  1. 相手チームの攻撃を脅かす
  2. 素早く対応することができる(例えばスクリーンの攻防で、迅速なコミュニケーションにより、スクリナーが接触する前にスクリーンに対処し始めることができる)
  3. ボールマンのディフェンダーはより自信を持てる
  4. ディフェンスを引き締められる
  5. 起こる前に間違いを理解できる
  6. チームを活性化できる(私たちの最高の練習は最も騒々しい練習である)

2.ドリルのバリエーション

  • 選手は同じトレーニングをすると退屈に感じるようになるため、様々なドリルを使用することで練習をより激しくすることができる。

3.競争

  • 競争は本能的に激しい練習を促進する。ハーム・エドワーズ(NFL)は「我々は試合に勝つためにプレーする」と述べている。
  • すべてのドリルは、勝者と敗者を持つべきである。危機感を持たせることにより、選手は驚くべきほど激しくプレイするのです。

4.お気に入りのドリル

  • 練習で動きが遅くなったように見えるときは、喝を入れるための「お気に入り」のドリルを使う。練習が単調に見えるときにチームに活力を与えることができるドリルを準備する。

5.時間の管理

  • 練習時に2つの時計を準備する。1つは練習全体の時間の残り時間、もう1つは今行なっているドリルの残り時間。どれだけの時間を練習しなければならないかを正確に知ると選手は激しくプレイする。

6.コーチの激しさ

  • より激しい練習を促進する最終的な方法は、コーチの肩にかかっている。バスケットボールのコーチは、練習の強度を保つ役割を果たしている。
  • すべてのスキルを促進する練習を戦略的に計画するだけでなく、それ自体を激しいものにすることもコーチの責任である。
  • プレイヤーは、一緒に汗をかくコーチが好きだ。コーチが激しくなければ、どうしてプレイヤーは全てを捧げることができるだろうか?
  • チームはヘッドコーチの人格が反映されると確信している。より激しい練習をしたい場合は、練習中にもっと激しくなることを学ぶべきだ。

Intensity in Practice|basketballhq.com

練習にプレッシャーを与える方法

著者は「コーチとして、できる限りゲームライクな練習をして、試合と同じようなプレッシャーと強度でプレイさせるために最善を尽くすべき」と述べ、その方法について詳説している。

1.文化を確立する

  • 練習中にあなたが期待する前例を作り出す。それがなぜ重要であるのか、何が必要なのかをプレイヤーに説明し、すべてのプレイヤーに責任を負わせる。
  • 文化が構築されれば、プレイヤーは責任を負い始め、練習がエキサイティングなも