インタビュー:塚本鋼平(能代市バスケの街づくり推進委員会 副委員長) その2

インタビュー:塚本鋼平(能代市バスケの街づくり推進委員会 副委員長) その2

ゴールドスタンダードの中で、印象に残っている部分は何処でしょうか?

たくさんあるのですが、『ゴールドスタンダード』の中で印象に残っているのは、試合前のミーティングにおいてコーチKが話す言葉です。

準々決勝の試合前に選手に話した「他の人たちが何と言おうと関係ない。問題なのは私たちが何を実行するかだ。チャンピオンは実行するものだ」。という言葉と、決勝戦前日に選手に話した「…ただ勝利するためだけでなく、自分たちのスタンダードを体現するために、明日しっかりやろうじゃないか」という言葉です。

指導者として現場に立ったとき、目標としている戦いが目前にあるとき、重要なことなのですが、抜け落ちがちなことが「何のために」だと思います。

試合に勝つということばかりが先行して、練習から積み上げてきた技術以外のことが消えてしまうことが多いのではないでしょうか。試合前に「何のために」をしっかりと確認することで選手が地に足をつけてプレーすることができるのですね。

自分たちが積み上げてきたチームとしてスタンダードを試合で体現できるチームは見ていて感動するものです。1つの目標に向かっているようで、その目標達成のためにスタンダードを体現するのですね。試合に勝つために準備した戦略や戦術を選手が行って勝つというだけでは、勝利しても無味乾燥なのではないでしょうか。

リーダーシップやビジネスの部分に置き換えると、いかがでしょうか?

ビジネスにおいてもリーダーシップにおいても「何のために」を確認する作業は特に必要だと思います。部下に仕事を「何のために」行わせるのか、「何のために」指導をするのか、この答えを明確にして共有することがスタンダードを形成していくことにつながるのです。

スタンダードには反対語がありません。そして日本語訳もぴったりと当てはまるものがありません。チームにおいてスタンダードにすることをスタンダードの意味を考えながら、選手と共に決めていくことが重要なのかもしれませんね。

また、コーチKのDVDや技術書などを見たり、読んだりすると頻繁に「Discipline(ディシプリン)」という言葉が登場してきます。これも日本語訳にぴったりと当てはまるものがありません。規律や訓練やこだわりなどという訳が一般的です。例えば、練習においてパスをしっかりと出す。それはキャッチからリリースまで、そして直前から直後までの動き、目線、構え、指先…挙げたらキリがないほど基本に忠実にしっかりと練習することをコーチKは「Discipline(ディシプリン)」という一言で表現しています。

私自身がコーチとして現場に立ったとき、常にABCDEを自分に言い聞かせています。AはAction(行動)、BはBehavior(振る舞い)、CはConfidence(信頼する)、DはDiscipline(規律・こだわり)、E はEnthusiasm(熱い気持ち・情熱)です。

中でもDは重要だと考えています。スタンダードを忠実に実行するために必要な、細部にまでこだわり、規律を作り上げていくことは、本書でも簡単なものではありませんでした。ましてや「リディーム」とまで呼ばれた今回のドリームチームにおいてのコーチKは、会社の経営者としての顔でコーチできるものではなく、各子会社を束ねる経営者としての存在でした。高校などの部活動においても、このDisciplineをスタンダードに引き上げ、選手と共に実行していくということはとても重要だと思います。

私の高校の恩師は「当たり前のことを当たり前にしなさい」と教えてくださいました。難しいこともDisciplineでスタンダードに引き上げ、チームの当たり前とし、当たり前に行えるチームが強いチームと言えるのではないでしょうか。昨年からTVでは、お笑いコンビによる「あたりまえ体操」が流行しています。当たり前に行うために日々Disciplineを考えることが重要だと思います。私はこれからもABCDEを大切に指導していきたいと思います。

(interview 2013.1.03  片岡秀一/UPSET)

塚本 鋼平 ツカモト コウヘイ
1977年7月16日生まれ、秋田県出身。藤里中学校‐鷹巣高校‐札幌大学‐札幌大学大学院経営学研究科。小学校からバスケットを始め、進学した札幌大学では3年次、4年次と主務を務め、4年次には北海道学生バスケットボール連盟委員長を務める。卒業後、秋田県の高校に勤務し、能代西高校、大館高校(定時制、全日制)、市立合川高校の男子バスケットボール部、由利高校、市立能代商業高校の女子バスケットボール部を指導。2009年~2011年札幌大学男子バスケットボール部A・コーチ。2010年7月に『プリンストンスタイルオフェンス』を編訳し出版。2011年にMBA(経営学修士)を取得。JBA公認C-2コーチ。特定非営利活動法人スポーツ指導者支援協会正会員。2012年7月~バスケの街能代推進副委員長。所属学会:経営行動科学学会,産業・組織心理学会,日本コーチング学会。

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この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。