インタビュー:塚本鋼平(能代市バスケの街づくり推進委員会 副委員長) その6

インタビュー:塚本鋼平(能代市バスケの街づくり推進委員会 副委員長) その6

それ以外の、部分ではどうですか??

そしてMotivation(モチベーション)です。ジョン・ウッデンは監督が選手の気持ちを無理やり高めてはいけないと言っていますが、現在は映像や音楽を用いて選手の気持ちを高揚させる時代となりました。

コーチKは『The Gold Standard』の中で、試合に望む際に一流ミュージシャンの音楽を使って映像を作成し、それを選手に見せて気持ちを高めていたことを書いています。コーチングだけでは高揚させられない心の管理も現在は重要なポイントになっています。

そしてStandards(意識の高さ)です。私は現在、能代市にある「能代バスケミュージアム」において、「世界のコーチから学ぶ“高さへの挑戦”」と題して勉強会を開催しています。能代バスケミュージアム」には、元月刊バスケットボール編集長の島本和彦さんから寄贈されたたくさんの貴重なバスケットの資料や有名選手のユニフォーム・サイン色紙・バスケットシューズなどが飾られています。このようなミュージアムは日本に1つしかありません。

勉強会は週に1回のペースで行っております。第1回目はジョン・ウッデン。第2回目はピート・キャリル。第3回目はバスケットボールの歴史。第4回目はフィル・ジャクソン。第5回目はコーチK(この回で『The Gold Standard』や『BEYOND BASKETBALL』の中からコーチKの哲学を学びたいと思います)。第6回目は加藤廣志先生。というような勉強会です。

毎回各コーチがどのようにしてチームを作り、どのように勝利したのかを各コーチの著書などから学ぼうという趣旨で始めました。島本さんから寄贈していただいた本の多くは洋書のため、来館していただいた方が読んでいくことが少ないです。そこで是非こういった資料の活用とミュージアムとしての機能を充実させるために勉強会を開催しました。各回平均で15名程、来ていただいております。現場で指導されている方から地元企業において責任ある地位にいらっしゃる方や高校生など、幅広い年齢層の方々に来ていただいております。

能代市には全国大会優勝58回の名門、能代工業高校バスケットボール部があります。能代工業高校のバスケットボール部は能代市民の誇りです。

5月3日~5月5日に開催される「能代カップ」は能代市の一大イベントになりました。この大会を見に帰省する人や観光客で会場は超満員です。前監督の加藤廣志先生の著書「高さへの挑戦」は私のバスケット人生の原点です。加藤先生と同じ町に生まれた私は、中学校1年生の時、中学校の体育館で聞いた、遠い先輩となる加藤先生の「高さへの挑戦」の講演は、未だに耳に残っています。今思い返すと、聞きながら震えていたと思います。

話を元に戻します。私が行っている勉強会は、能代では初めて行われることでした。ミュージアムができて、能代市はバスケットボールを柱に活性化をして、バスケットの首都になります。能代市は10年計画で「バスケの街づくり」を行うのです。そういった重大な計画がある中で、私は勉強会を開催し、競技だけではなく、「知」の部分でも日本一になれたらと願っています。「バスケのことを知りたければ能代に行こう!」「能代の人はみんなバスケのことを知っているよ!」という日が来ることを願っています。

しかし私がやっている勉強会がスペシャル(特別)ではいけないと思っています。能代には全国の高いレベルでバスケットを指導した方や競技されていた方がたくさんいます。

そういった方々を含めて、「知」を共有し、伝播していくことができれば「能代スタンダード」になっていくのではないかと思っています。これは日本一のスタンダードであり、ゴールドスタンダードです。

最後に、私はこのスタンダードへ挑戦しているのかもしれません。大学院では現代におけるスタンダードなコーチングを研究しました。

社会背景を軸として、求められている理想のコーチ像を明らかにしました。またプリンストンオフェンスを翻訳しようと思ったのも、現在翻訳中の「ドリブルドライブモーションオフェンス」にしてもそうなのかもしれません。

加藤先生が「激しく熱く燃えるような情熱(=Enthusiasm(熱い気持ち・情熱))」をもって能代工業高校を日本一へと導きました。そういった中で、都会のチームと田舎のチームの大きな違いである身長・体型の差を速さで撃破した、高さへの挑戦。「平面は立体を制す」という名言に、能代市民は活躍する高校生に生きる喜びすら感じていたのかもしれません。私もその1人でした。

最近は留学生の加入により、日本のバスケットも大きく変化しました。そこでプリンストンオフェンスやドリブルドライブモーションオフェンスなどで、新たな高さへの挑戦をしてくれるチームが出てくれればと新たなスタンダードの出現を期待しています。

(interview 2013.1.3 片岡秀一/UPSET)

全6回に渡ってお届けした本シリーズもこれで最終です。塚本さん、ご協力ありがとうございました。次回は(株)ERTLUC 国際事業部の水野氏の登場です。こうご期待を。

塚本 鋼平 ツカモト コウヘイ
1977年7月16日生まれ、秋田県出身。藤里中学校‐鷹巣高校‐札幌大学‐札幌大学大学院経営学研究科。小学校からバスケットを始め、進学した札幌大学では3年次、4年次と主務を務め、4年次には北海道学生バスケットボール連盟委員長を務める。卒業後、秋田県の高校に勤務し、能代西高校、大館高校(定時制、全日制)、市立合川高校の男子バスケットボール部、由利高校、市立能代商業高校の女子バスケットボール部を指導。2009年~2011年札幌大学男子バスケットボール部A・コーチ。2010年7月に『プリンストンスタイルオフェンス』を編訳し出版。2011年にMBA(経営学修士)を取得。JBA公認C-2コーチ。特定非営利活動法人スポーツ指導者支援協会正会員。2012年7月~バスケの街能代推進副委員長。所属学会:経営行動科学学会,産業・組織心理学会,日本コーチング学会。

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この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。