インタビュー:塚本鋼平(能代市バスケの街づくり推進委員会 副委員長) その1

インタビュー:塚本鋼平(能代市バスケの街づくり推進委員会 副委員長) その1

秋田県能代市で「世界のコーチから学ぶ」という勉強会を開催している塚本 鋼平氏。プリンストンオフェンスにも造詣が深く、コーチKに対しても深い洞察と知識を誇る。

ゴールドスタンダードの前に、塚本さんの背景について。NCAAのコーチやアメリカのプロコーチのことを幅広く勉強されていますが、NCAAの文化にどんな経緯で影響を受けたのでしょうか?

私が大学2年生のとき、札幌大学男子バスケットボール部がインカレに向かう1週間前に、チームミーティングが開かれ、対戦相手の筑波大学の分析と対策を行いました。当時のヘッドコーチだった倉島 武徳先生が配布した大量の資料の中に、ジョン・ウッデン(John Wooden)氏の『成功のピラミッド』がありました。私はこの『成功のピラミッド』に大きな衝撃を受けました。それまで私は「気合い」や「根性」だけで困難を乗り切ることが美徳であると信じていたので、成功までの自分の在り方を初めて見つめることができた瞬間でした。

それからジョン・ウッデンの指導哲学の本を図書館で読みあさりました。その後に見つけたUCLAのオフェンスの解説本にコーチK(Mike Krzyzewski)氏(以下コーチK)が前書きをしていたのですが「アメージング! アメージング!」と連発して、尊敬するジョン・ウッデンの本に前書きできる喜びを表現していました。コーチKは前書きを担当できるほどの人物だったのだと感動しました。

そして大学2年生のとき、当時アリゾナ大学にコーチ留学されていた内海 知秀先生が帰国し、再びヘッドコーチとして始動しますが、ルート・オールソン(Lute Olson)氏の下で勉強されてきた内海先生のお話を聞くたびにNCAAへの憧れと知的好奇心が高まりました。そこでもコーチKの話題となり、やはり素晴らしい人物であるということを再確認しました。

2008年の鹿屋体育大学(※注1)の活躍から、日本に必要とされているオフェンスは「プリンストンオフェンス」なのではないかと考え『プリンストンスタイルオフェンス』を翻訳して出版しました。

私が生まれ育った秋田県能代市は、全国的にも有名な「バスケットの街」です。能代工業高校の全国大会V58という金字塔は市民の誇りとも言える大記録です。そして合言葉のように語られる「高さへの挑戦」は、立体を平面が征す、高さを速さで凌駕するという日本のバスケの根底を作り上げました。しかしながら現在では高さを速さで凌駕してきたスタイルは基本となってきました。高さも速さも両方求められる時代になったのではないかと感じています。また、違う軸も加わった3次元のバスケットでなければ戦えない時代になってきたのではないかとも感じています。

そこで、こういった時代にも通用するオフェンスの1つは、高さを速さで倒すのではなく、選手の状況判断によって動き合う、高いチームワークと個人技術が求められるピート・キャリル(Pete Carril)氏の「プリンストンオフェンス」だと信じています。

様々な探求や、思索を経て、その後、コーチKさんの書籍とはどのような接点がありましたでしょうか?

実は、アメリカで『BEYOND BASKETBALL(邦訳:コーチKのバスケットボール勝利哲学)』と『The Gold Standard(邦訳:ゴールドスタンダード 世界一のチームを作ったコーチKの哲学)』が発売されたとき、「この本は絶対に翻訳したい!」と思い、すぐに購入しました。当然、出版したいという気持ちで読みすすめていました。しかし私の乏しい英語力では、これらの本をすぐに読み終えることができませんでしたが……。

そういった中で、2010年8月に札幌大学男子バスケットボール部が北海道の女満別で、日本体育大学や大阪産業大学や東京成徳大学と合宿をさせて頂いたとき、日本体育大学の藤田ヘッドコーチとお話させていただいた話題が、プリンストンオフェンスとコーチKでした。藤田さんには、とても熱くコーチKを教えていただきました。ジョン・ウッデンの「成功のピラミッド」が全ての根底だと信じていた私にとって、日本の著名な指導者も注目するコーチKという人物をもっと知りたいと思った瞬間でした。

そこで、はっきりと自分の中のコーチK熱が高まりました。コーチKに関連する本のほとんどをアメリカから取り寄せて読みました。そうしているうちに、佐良土さんが翻訳された「コーチKの勝利哲学」が書店に並びました。正直、悔しい思いも少しありましたが、完成度が高すぎて逆に感動してしまいました。

バスケットの哲学書がもっと欲しいと思っていた私には待望の出版だったのですから。コーチKがゴールネットを切った勝利の瞬間、誰かに指をさしている表紙の写真が書棚にある優越感は忘れることができません。私は夜を忘れて読みました。車の運転中に気になって、信号待ちの時間も読んでしまうほど読みました。

塚本 鋼平 ツカモト コウヘイ
1977年7月16日生まれ、秋田県出身。藤里中学校‐鷹巣高校‐札幌大学‐札幌大学大学院経営学研究科。小学校からバスケットを始め、進学した札幌大学では3年次、4年次と主務を務め、4年次には北海道学生バスケットボール連盟委員長を務める。卒業後、秋田県の高校に勤務し、能代西高校、大館高校(定時制、全日制)、市立合川高校の男子バスケットボール部、由利高校、市立能代商業高校の女子バスケットボール部を指導。2009年~2011年札幌大学男子バスケットボール部A・コーチ。2010年7月に『プリンストンスタイルオフェンス』を編訳し出版。2011年にMBA(経営学修士)を取得。JBA公認C-2コーチ。特定非営利活動法人スポーツ指導者支援協会正会員。2012年7月~バスケの街能代推進副委員長。所属学会:経営行動科学学会,産業・組織心理学会,日本コーチング学会。

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この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。