「グッドビジネスマンになれ!」トーステン・ロイブル氏 クリニックレポート−トランジションディフェンス
こんにちは。
株式会社ERUTLUC 指導員の池田親平(イケダチカヒラ)です。埼玉県で行われているトーステン・ロイブル氏の定例クリニックの内容を皆様にお届けします。お仕事などの時間の都合上、クリニックに参加したくても出来ない方に、少しでも濃密なクリニックの内容を共有できればと思います。私自身、常に勉強やコーチングの研鑽を重ねたいと思っています。質問や疑問点がありましたら、ぜひ、お問い合わせを頂けると幸いです。
今回(2015年4月23日)行われたクリニックのテーマはトランジションディフェンスでした。
昨年行われたu-17の世界選手権では、トランジションからの失点が日本のチームは1番多く、これから世界で戦っていくにはトランジションのディフェンスを強化していくことは必須になってきます。
身体能力、体格的に不利な日本人がどのようにトランジションからの失点を抑えていくのか紹介されました。
Buy time(時間を稼ぐ)
トーステン氏が考える2on1などのアウトナンバーの状況で最悪なパターンは、1人のオフェンスにプレッシャーを掛けに行って、あっさりカウンターをくらい簡単にレイアップを打たれてしまうことです。
まずアウトナンバーのディフェンスになった選手が考えることは ‘Buy time=時間を稼ぐ’ ことです。クリニックの中で紹介された2on1ドリルのポイントは5つ。
- フリースローラインまで3秒以内に戻る
- シュートのプレッシャーをかけながら、パスのケアをする→パッシングレーンを埋める(パスをケアをする側の手はアクティブハンドと言って常に動かす。)
- 相手を騙す動きをする
- 最悪ドリブルからのプルアップシュートは打たれてもよい(統計からするとあらゆるシュートの中で1番確率が悪く30%程度)
- ショーアップ※1、ラン、スプリント、コンタクト※2、リバウンドの流れ
- (ドリブラーのスピードを下げ、もう一人のオフェンスにパスされた場合、スプリントで移動しレイアップを打たれないように(最悪プルアップorタフショット)守る)
また、ショーアップ、バックペダル、スライドでの移動だと時間がかかってしまうので、とにかくスプリントでディフェンスからディフェンスまでの動きを早くするということでした。
これらのディフェンスをすることでオフェンスにパスを1、2回させることができれば、試合では味方のディフェンスが戻ってくるまでに充分時間を稼ぐことができます。
実際、このドリルを行ったオフェンスのシュートはほとんどがタフショットとなり、2on1というアウトナンバーながら確率としては50%を下回る程度まで効果的にディフェンスができていました。
※1ドリブラーを捕まえて片手でプレッシャーをかけながら、片方の手はパスのケアをする状態
※2トーステン氏がリバウンド指導をする際、相手とのコンタクトの方法にも細かな指導がある。FIBA動画や書籍参照。
ドリルルール
①がレイアップ後、すぐにディフェンスになる。45度にいる選手にパスをし、そのまま2対1。
STOP THE BALL
これは言葉の通りボールを止める、coast to coastを防ぐことが目的になります。アメリカなど海外のスピードガードはコートの端から端まで一気にドリブル3、4回でフィニッシュにいく能力を持っています。止めるポイントとしては、以下の4点になります。
- スピードガードをスローダウン
- ビッグマン以外のボールに1番近い選手がプレッシャーをかける
- 方向づけ、方向転換をさせて時間を掛けさせる(ディフェンスはボールの正面まで鼻の位置を持ってきてターンさせる)
- 前に押し出すドリブルをさせない(ボールの動いている方向が上下ならスピードドリブルができない為。スピードを落とさせたいので、ターンをさせることでボールマンのスピードを下げるということが狙い)
STOP THE LANE RUNNERS
サイドラインを走る選手を止める。速攻のアウトナンバーでディフェンスがサイドラインを走る選手(レーンランナー)にカットを狙ってプレッシャーをかけにいこうとすると、ギャンブルになってしまい簡単にパスを通されレイアップを打たれてしまうという現象が起こります。これらのことから、レーンランナーに対しては以下の3点がポイントになります。
- レイアップを打たせないこと
- ディフェンスは基本的にインサイドレーンを通りながら戻る
- 最初にゴールを守ってからプレッシャーをかける
またレーンランナーがボールをキャッチした際には、以下の2点を判断する力が必要となります。
- 悪いキャッチでシュートにいけそうになければプレッシャー
- 良いキャッチをしてシュートをすぐ打てそうならクローズアウト
これらのことをトーステン氏は‘Good business man (グッド ビジネスマン)になれ!!’と言っていました。優秀なビジネスマンは低いリスクからたくさんのリターンを得ようとするからです。
トランジションディフェンスも同様で、レイアップ(リスク)を打たれないように時間稼ぎ、味方のディフェンス(リターン)を待つことになります。
相手のオフェンスをどうマネジメントするかという点は、まさにビジネスの世界であるということが言えます。
BUMP CUTTER
トレーラー、逆サイドからのカットをバンプで止める。海外の大型選手がトレーラーで走り込んできた場合、その選手の走るコースに先回りしてバンプすることが必須になります。ポイントとしては、以下の2点になります。
- トレーラーカットをさせない(トレーラーはボールがハーフラインを越えたらカットしてくるので、それに対してバンプする)
- バンプしたらショートコーナー付近までディナイを続ける(ポストプレーをされない為に)
RUN&JUMP(番外編)
これは時間の関係で少しの紹介となりました。イメージとしてはトラップにいくのではなく、相手チームのNo. 1ガードにプレッシャーをかけて、ターンをされたらスイッチし本来ボール運びをする以外の選手に運ばせることで、相手チームのリズムを狂わせるということでした。
まとめ
今回トーステン氏がクリニックで強調されていたのは、トランジションのディフェンス(特にオフボール)は現場で中々指導されていることが少ないということでした。早く戻るというイメージはなんとなくあるものの、どこまで頑張ればいいのか、何をされてはいけないのかという基準が明確になっていないと、選手も闇雲にディフェンスするだけになってしまいます。日本人選手が身体能力や体格で上回るチームと戦っていくには、ディフェンスもより賢く、考えながら守る必要があるとこのクリニックを通して改めて感じました。
またクリニックでは、大宮北高校の選手の選手を中心に、高校、中学の様々な選手がデモンストレーターとして活躍されていました。それに負けじ劣らず、埼玉、関東圏を中心に50人近くの指導者がこのクリニックで学ばれていました。指導者の方々の学ぶ姿勢や指導者同士で練習についての意見交換をされている姿がとても印象的でした。
今日本のバスケットボール界は様々な改革がなされている中で、選手、そして指導者の情熱に明るい未来を感じるとトーステン氏も仰っていました! トーステン氏のクリニックは毎月1回のペースで行われてるので是非とも、指導者の方は足を運んでみてはいかがでしょうか?
次回以降の予定は、下記の通りです。是非、御確認下さい!
5月、6月の日程について
- 平成27年5月28日(木) 19:15~21:00@大宮北高校 テーマ:未定
- 平成27年6月25日(木) 19:15~21:00@大宮北高校 テーマ:未定
※学校へのお問い合わせはご遠慮ください。
詳細はこちらより http://goo.gl/zrMDt3
過去のクリニックテーマ
- 9月24日(水)Motion offence-2men/3men automatics)
- 10月23日(木)U-17 世界選手権を振り返って~強豪国の最新のファンダメンタル~
- 11月25日(火)Quickness and jumping training in basketball)
- 1月22日(木)Zone offense fanndamentals~Short corner zone offense~
- 2月25日(水)Press Break プレス。ディフェンスを攻める
- 3月12日(木)パスのファンダメンタル。プレスヘの対応
池田親平(イケダ チカヒラ)
株式会社ERUTLUC 指導員。1989年生まれ、山口県宇部市出身。藤山中-宇部工業高校-大東文化大学
現在、小中学生をメインに指導しながら、長身者育成プログラムの活動も行っている。
指導理念「私はバスケットボールを通じて、失敗することを恐れない選手を育てたい」
Bigman Treasure Project
http://treasueproject.jimdo.com/
池田指導員紹介ページ
http://www.basketballtutor.com/coach/536
この記事の著者
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