『ジュニア期のバスケットボール現場をより良いものにするため』JUNIOR BASKETBALL SUMMIT の取り組みについて

株式会社ERUTLUCは、『ジュニア期のバスケットボール現場をより良いものにするため』の取り組みとしてJUNIOR BASKETBALL SUMMITを10年近く開催している。今回は、同プロジェクトの紹介記事となる。(写真提供:株式会社ERUTLUC)

*筆者に上手く編集する力が欠けている為、箇条書き方式となる。

0、前提となる諸情報について

・「バスケットボールの家庭教師」を展開する株式会社ERUTLUCは3つのミッションとして「より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する」・「チームスポーツだからこそできることで教育に貢献する」・「世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」を掲げている。同社内の事業や各プロジェクトはミッションの実現に密接に紐づいた活動となっている。

・また、同社の鈴木良和代表は行動指針として「ベストを尽くす」事を非常に大切にされている。御本人の言葉によると『最後に、「満足した!」と思える人生にする』という人生観があるようだ。上記ミッションの1つとも関連が深く、同社のカルチャーとして息づいている。

・「自分のなりうる最高の自分を目指そう」という考えは、ジョン・ウッデン氏の語る成功の定義「成功とは、なりうる最高の自分になるためにベストを尽くしたと自覚し満足することによって得られる心の平和なのである」への共感や共鳴に由来するという。「バスケットボールの家庭教師」として活動の初期、前提条件の異なる選手を指導する際に着想。悩み、辿り着いた考えであると過去のインタビュー記事などで紹介されている。

・同社主催のJUNIOR BASKETBALL SUMMITは、3つのミッション実現に向けた非常に意欲的で、挑戦的な取り組みだ。イベント全体の設計や狙いが非常に面白く、運営上の工夫も多い。外部(来場者)や、内部(ERUTLUC)の両方に様々な価値を創出しているように感じる。『ベストを尽くそう』と意気込みも滲み出ている。過去、イベントに参加した際に深い感銘を受けた。

・本稿の筆者は、同プロジェクトの歴史を辿り、各時代のバスケットボール界の諸状況を振り返る時間を設け、また関係者に話を聞いた。その中で、JUNIOR BASKETBALL SUMMITが全体像や、含有する大きな物語を感じ取る事が出来た。おこがましいかもしれないが、本質の一端に近づくことが出来たような感触がある。

・本記事は、挑戦的なプロジェクトの全体像や歴史、運営のコンセプトを明らかにすることを試みている。多くの人に価値を届け、自分達の成長にも繋げている本取り組みには、関係者の情熱、決意、工夫が詰め込まれていた。それを発信する事を通じ、全国各地でバスケットボールの環境整備に尽力されている方々にインスピレーションや刺激を与えられるという確信したからである。

 

1、JUNIOR BASKETBALL SUMMITとは

・JUNIOR BASKETBALL SUMMITの開催目的は「ジュニア期のバスケットボール現場をより良いものにするために、全国各地の英知を結集し、選手・指導者・保護者の「なりうる最高の自分を目指す」をサポートすること」となっている。

・2009年より現在まで形や姿を変えて、継続的に開催されている。

・数年前より、全国各地のコーチが集まる形式で運営されている。イベント登壇の諸条件を整え、コーチを公募した。その基本的な流れで、2017年度まで続いている。

・2017年度(2018年3月頃)は、ERUTLUCの法人設立10周年、「バスケットボールの家庭教師」事業スタートから15周年の節目の年でもあるという。全国各地で活躍するコーチに加え、男女日本代表の各スタッフ(AC、テクニカルスタッフ、ストレングストレーナー、アスレティックトレーナー)が集結した。

・「ERUTLUCの本気」という文言もイベントページには使用された。選手や、コーチ、保護者にとっては非常に魅力的なコンテンツとなった。

・クリニックを受講できる選手は、エルトラックの各教室に通う選手も、そうではない選手も広く募集された。コーチは参加費が無料である事も特徴で、保護者向けの講座や、選手の妹・弟も参加できるキッズ向けのアトラクションも用意された。

JUNIOR BASKETBALL SUMMIT 2017

<コーチ/テーマ一覧>*敬称略。順不同。

*元々、各講師は公募を通じてJUNIOR BASKETBALL SUMMITに登壇をされた経緯がある。2017年度は『今回のスキルコーチ(トレーニング・戦術コーチ以外)は「事前に行われましたサイト内における他薦と投票」で確定致しました。得票数の多い方から順番に弊社よりオファーを出し、そのオファーを受けて頂いたスキルコーチにクリニックを担当して頂きました』とHP上に記載されている。

◇バスケットボールのスキル指導 *選手参加型

・ルンゲ 春香「1on1が上達するドリブルスキルアップトレーニング」」
・石杜 駿 「ハンドリングの奥義!ボールが身体の一部になるテクニック」
・大野 慎子「スペーシングとタイミングを学んでチームオフェンスを楽しもう」
・廣畑 知也「1on1ディフェンス」
・今倉 定男「ナチュラルパーフェクトシュート」
・東 信克「教えない→夢中にさせる→ハッとさせる」
・阿部 勝彦 「変動性の高い動きに対応するウォームアップ」
・竹原 勝也 コーチ「ディフェンスのプレッシャーに負けないボールミートからのスキル 1.Stop separation 2.Shimmy Jab 3.Down hill」
・栗原 祐太 「STOP 強弱」

◇トレーナーセッション *選手参加型

・佐藤 晃一「動きのチェックリスト」
・佐藤 晃一 コーチ&阿部 勝彦 コーチ「バスケットボール選手に必要なアスレチックパフォーマンス」
・星川 精豪 コーチ「身長が伸びている時に大切な事」

◇コーチ向けの戦術系セッション
*東京成徳大学女子バスケットボール部、つくば秀英高校男子バスケットボール部がモデルチームを務めた。コーチ向けに複雑な戦術を扱った内容

・伊藤 拓摩「戦術から日々の練習を考える」
・恩塚 亨「チームオフェンスの考え方・ファンダメンタルの強化」
・ERUTLUC ID事業部 ×鈴木良和 「ジュニアの現場でゲーム分析から練習に落とし込む工夫」
・前田 浩行「ジュニアから深めるピック&ロールディフェンス」

◇保護者向けのイベント *イベント会場の会議室などで開催された

・宮内 彩 氏『ケガが起きた時に保護者ができること』
・一柳 武男 氏『受傷(ケガ)から競技復帰への心得』
・森 毅 氏 『成長期の毎日の食事・いいパフォーマンスにつながる試合日の食事』

◇チビッコ向け *各セッション間の休憩時間を活用しての取り組み
・スキルチャレンジ(ドリブル競争など)

*イベント終了後には、直ぐに参加者向けにアンケートのメールが届いた。冒頭には、「来年の開催に向けて最善の準備をする為に」という言葉が書かれておりイベント全体の感想や、良かった事、そして不具合や意見などをヒアリングする項目が設けられていた。

2、JUNIOR BASKETBALL SUMMITの歴史


・JUNIOR BASKETBALL SUMMITが開催されたのは2009年より。初期に企画されたのは、見学希望者に広く参加をオープンにした上での、強豪中学校同士の練習試合だ。試合前の準備、試合中のコーチングに触れる機会を通じ、コーチに対して学びの場を創出する事が意図されていた。コーチ同士の繋がりや、コミニティ創りが非常に早い段階から着手されていた。

*こちらにて、過去の歴史を振り返る事が出来る。

・以降も、ジュニア世代のバスケット指導に実績のあるゲストコーチによるクリニックや、有識者の講演が実施された。エルトラックの指導員によるスピーチ大会(TED)も開催された事や、WJBLのトップリーグの選手が参加し、来場のジュニア選手へサイン会を行った事もある。

・全国各地や、海外からコーチを招き、一同に介する中で同時展開的なクリニックが実施されているのは2015年より。これは2017年まで継続して採用されている。

・JUNIOR BASKETBALL SUMMIT 2016のHPには下記のような文言が掲載されている。

「全国各地で開催されているバスケットボールスクール。それぞれ、独自の魅力的なプログラムで地域の子どもたちの成長を支えています。勉強しに行きたくても、全国各地を飛び回るのはとても大変。そのスキルを学びたい子ども達にとってもそれは同じです。そんな声に応えるべく、今年も行われるジュニアバスケットの祭典。全国各地を回らなくても、ここに来れば全国を回らなくてもスキルコーチングを学べます」

・JUNIOR BASKETBALL SUMMITは、バスケットボールを取り巻く環境、いわば、外的要因の変化を捉えて企画運営されている。また、ERUTLUCの大切にしたい価値観をいち早く表現されているように感じる。この時期は、全国各地で、様々なバスケットボールスクールや、アカデミー活動が拡がりを見せた事、また、SNSの発達によって、それらの情報が動画と共に拡散される機会も増えた時期、そして、スキルコーチの必要性が高まりつつある時期と重なるのではないか。

・2009年からの活動の履歴を振り返ると、開催されている内容には変化がある。上記の通り、時代や、外的環境、そしてエルトラック側のテーマに応じて開催内容は様々だ。しかし、元々の開催理念『ジュニア期のバスケットボール現場をより良いものにするために、全国各地の英知を結集し、選手・指導者・保護者の「なりうる最高の自分を目指す」をサポートすること』は変わらずに貫かれている。

・鈴木代表は以前、とある講演会にて『ビジョナリーカンパニー』より下記の考えを紹介した。

「基本理念を変えることは決してしてはいけない。しかし、基本理念以外はどんな点でも変えられると考えるべきだ。」(『ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の原則』著:ジェームズ・C. コリンズ)

進化、変化していく本イベントは、まさにその通り。非常に興味深い。

・JUNIOR BASKETBALL SUMMIT 2017は上記一覧のように多様性に富む、非常に豪華な講師陣が集結した。2015年から続く同じ開催方式の中、全国各地で活躍するコーチ、日本代表の各コーチ、トレーナーが集結した格好だ。

・ERUTLUCの鈴木良和代表は、男子日本代表のサポートコーチや、日本バスケットボール協会 技術委員会の各部会のメンバーとしても活躍中だ。その繋がりの延長で、様々なコーチが集ったのだろう。

・JUNIOR BASKETBALL SUMMITは、ある種、その時々の育成世代を取り巻くバスケットボールの環境、そしてERUTLUCの活動領域とを反映しているように感じる。かつ、その時代の中でERUTLUCが大切にしている価値観や意思表示の場にもなり、参加者に様々な示唆を与えているように感じる。

3、筆者が感じた事、疑問に思った事。そこに対する仮説

*疑問や仮説を踏まえ、関係者に質問をした。その解答は4の項目にて記載している。

疑問① JUNIOR BASKETBALL SUMMITを通じ、『より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する』は実現する。しかし、リスクも大きいのではないか?

・ERUTLUCは、バスケットボールの出張指導者の事業の一つにしている。主な拠点は関東とし、各地域、長年の信頼関係をベースに運営をされている。また、コーチの育成にも精力的に取り組んでいる。育成制度設計、カリキュラムの構築に時間を費やしている。本プロジェクトは、プレイヤー、コーチの両面について、少なからずリスクがあるのではないか。

a,プレイヤーについて
・登壇するコーチには関東近郊でスクールを運営しているコーチも多い。いわば、事業としては、同じ商圏にあり、競合相手でもあるともいえる。確かに、『より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する』という同社の理念に基づく場所は作るが、他のコーチの指導を受ける環境を創るのはリスクになるのではないか

・登壇コーチに新鮮さや魅力を感じ、主たる活動場所などを移してしまうケースもあれば事業としてはマイナスになるのではないか。

b,コーチについて
・ERUTLUCでは、コーチの育成に多くの時間とエネルギーを使っている。また、目先の利益に流されて規模を拡大させるのではなく、非常に慎重かつ丁寧にコーチ育成に取り組んでいる。過去のスピーチからも、コーチ育成に対するこだわりは垣間見えている。

「世界で最もビジョナリーなコーチチーム」へ。株式会社ERUTLUCのイヤーエンドパーティーレポート

・本イベントに登壇するコーチも、各地で実績があり、ご自身の得意とするスキル指導に強い自信と信念のあるコーチ陣だ。その中には、ときに独自の考え方も存在する。エルトラック内で推奨している指導理論とは異なる部分も出てくるのではないか。そんな時はどうするのか?

◇①に対する仮説
『より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する』というミッションの達成を第一義に考えたのではないか。また、様々なコーチが色々な刺激や力を結集し、若い選手を育んでいくイメージをもたれているのではないか?

・近年は、各地区で、特色のあるバスケットボール指導が活発になっている。その中には、エルトラックの主エリアである関東地区も含まれる。懸念や葛藤をあったかもしれないが、多様な考え方が集まる事で、プレイヤーにとっても成長に繋がる刺激を受け取れる空間を作る事を優先したのではないか?
・「ベストを尽くす」ことの価値をジュニア選手に説くだけではなく、イベントを企画・運営をする同社自身も『より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する』というミッションに対しというミッションに「ベストを尽くし」た結果が、本イベントの運営方式に繋がったのではないか。目の前の小さな競争よりも、ミッションを広義の意味で実現する事を優先した。その上で、このような環境設定となったのではないか。

疑問②
『日本代表の各スタッフ、あそこまで協力をしてくれたのはなぜか?』

*JBA技術委員会 テクニカルハウス部会 部会長 前田浩行氏も登壇。同氏は、ドイツ1部リーグ、MHP Riesen Ludwigsburgにてアシスタントコーチ兼ビデオコーディネーターを務めた経験を持つ。Pick&RollのDFを考える際、オフェンスの残り3選手のスペーシングが非常に重要。前田氏は、オフェンス側のスペーシングを分類した上で、欧州のバスケシーン、FIBAの国際大会で用いられるDFの考え方の一部を提示。非常に専門性の高いクリニックとなったが、前田氏の明瞭なコーチングもあって、トップレベルの戦術の奥深さを実感すると共に、コーチにとっても多くの学びを得られるクリニックとなった。

・日本代表のスタッフを務める方々は、各専門領域でのスペシャリストであり、著名な方も多い。クリニックなどの経験も豊富で、オファーも多いはずだ。本プロジェクトの話があった際にも、断るという選択肢もあったはずである。分かりやすく言えば、「趣旨に魅力を感じない」・「ERUTLUCのブランディングに利用される」と思えば、登壇されなかっただろう。

・鈴木良和代表は、男子日本代表チームでサポートコーチとして活動されている。その中で、各スタッフの方と交流などもある事は推察できる。しかし、それだけで、あれだけの方々が勢揃いするだろうか。その背景には、どのような関係性があるのだろうか。

②に対する仮説

・豪華は講師陣が集結した背景には、シンプルに、鈴木氏との信頼関係と、ERUTLUCの活動への共感があったからこそではないか。個々人に参加理由を聞いたわけではないので定かではない。あくまでも仮説である。しかし、忙しい中で、日程などを調整して登壇をするには、信頼関係が無ければ成立しない。そして、それは代表チームで時間を共にする中で、ゆっくりと培われた関係性ではないか。

・鈴木良和氏は、2016年頃より男子代表チームのサポートコーチとして合宿に帯同している。男子日本代表のテクニカルアドバイザーとしてルカ・パヴィチェヴィッチ氏が指導をしている時期は「世界基準のバスケットボールの植え付け、個の育成」などをテーマに、数多くの候補所選手を招いて全体の底上げに取り組んだ。その後、正式なHCとしてフリオ・ラマス氏が就任した現在まで続いている。

・サポートコーチとしての鈴木良和氏の活動は多岐に渡る。一つは、文字通り、他のコーチと連携し、HCの意図する練習の正確度を高めるべくサポートをする事だ。また、代表チームでの強化活動の最前線を記録する役割もあるという。現在の代表チームの取り組みを、次世代へのLegacyとしていく為だ。JBAコーチカンファレンス2018の中で東野技術委員長からも言及された。

・加えて、期待されているのはトップの世代と「育成世代の懸け橋」になる事だという。トップ(大人の世代、日本代表)で取り組まれている練習は、日本人選手に不足している部分を補う内容だ。しかし、そのまま育成世代にはあてはまらない。年代や習熟度に応じた、緻密なカリキュラムを組むことが必要だ。育成世代の選手指導に造詣が深く、長年の経験を持つ鈴木良和氏の見識を活かし、トップと育成世代とのあるギャップを埋める為の道筋を考え、洞察、伝えていく役割も担っているという。

・事実、JBAコーチカンファレンス2018年では「2016年からの男子日本代表の取り組みから、今後の選手育成を考える」というテーマで鈴木良和氏も登壇。ルカ・パヴィチェヴィッチ氏、そこからバトンタッチしたフリオ・ラマス両氏の取り組みと、育成世代への落とし込みに向けた考察やアイデアが提案された。

・代表チームは、選手、スタッフとで、共通の目的と、それぞれの役割を持つチームだ。代表活動で多くの時間を共にし、役割を果たす事で、鈴木良和氏は各スタッフと信頼関係を構築したのではないか。その上で、JUNIOR BASKETBALL SUMMITの取り組みや趣旨を説明、打診、する事で登壇が実現したのではないか。

・また、この点においても、「ベストを尽くす」という心構えがあるからこそ、代表チームで行動を共にする方々にも打診をし、素晴らしい環境を構築する準備を着々と進められたのではないか。

ビジョンスピーチ2016の中でも「日本バスケットボール協会の発展に貢献することは、未来の子どもたちへの貢献につながる」というコメントもあった。

疑問③「指導者の参加費が無料なのはなぜか??」

・JUNIOR BASKETBALL SUMMITは、コーチにとって非常に多くの学びを得られる催しである。特に、戦術セッションは完全にコーチ向けの催しになっている。代表クラスのコーチが登壇し、強豪高校の選手がプレーをする事で進行もスムーズだ。非常に濃密な空間となっている。この場をセッティングする為の準備にも時間が掛かっている。それでも、本イベントでコーチの参加を無料にしているのは何故なのか?

③に対する仮説
「より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する」というミッションを優先したのではないか。素晴らしいコーチから考えを学び、それを的確に自チームの固有の背景に落とし込めば、バスケットボールを通じて代えがたい経験を積める選手は増えるはずだ。また、「世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」を掲げるERUTLUCでは指導員向けに学びの場が多数用意されている。その思考の射程を関わり合いのあるコーチにも拡げ、学びの場を提供されたのではないか。

疑問④ 運営がスムーズ。どのような運営体制だったのか?
・ハーフコート4面で同時にクリニックが運営され、会議室では保護者向けのイベントがある。各セッションの合間にはキッズ向けのアトラクションも実施された。同時進行で、非常に多くのプロジェクトが組み込まれている。「やれる事は全てやろう」というエネルギーを強く感じる催しで、総来場者数は649名と大規模なイベントとなっている。

その中、各セクションはきめ細かく運営され、非常にスムーズに進行した。大きなトラブルも無かった。どのような運営体制であれば、これだけの催しが可能なのか?

④に対する仮説
鈴木良和氏は、ドラッガーのマネジメント論や、「ビジョナリーカンパニー」シリーズなど、チームビルディングやマネジメントにも非常に造詣が深い。事実、『バスケットボールの教科書<3><4>』でも、組織のマネジメント(コーチにとってのチーム運営)にも多くの項が割かれている。同社では、組織の風土やカルチャーを滋養していく為の制度や仕組みも緻密に構築されている。日頃からのチームのスタンダードの高さが根底にあり、その上で、本イベントに向けた的確な役割分担があったのではないか。

 

4、各疑問点に対する回答

3で記載した疑問や仮説として考えていた部分を含め、メールや直接にお会いした際に鈴木良和代表、及び、運営の責任者を務めた中田和秀さん、保護者向けイベントを担当した板橋勇斗さんにお話を伺った。

①鈴木良和氏

インタビュー:鈴木良和(株式会社ERUTRUC・バスケットボールの家庭教師) 前編
Q1、本イベントは指導者の方々の参加費は無料という設計になっている事が印象に残りました。その意図は何処にありますか?
「より多くの方々に、情報を届けたいからです。運営として、講師の方々には謝礼を支払うため、その分はコート上で直接指導を受けるクリニック参加者から参加費を受け取っています。ある意味、そこで開催自体は担保できるわけですから、あとは見学参加の方々から参加費をとることは不要だということです。
ある意味では、指導者として投資をしてでも学ぶ姿勢を持つことは大事なので、そういったメッセージをこめて参加費をいただくこともできます。
それはまた別のイベントなどで実行できるので、このサミットに関しては「より多くの子どもたちに」というミッションに純粋に向き合って、より多くの指導者が来場しやすくすることに徹することにしています。」

Q2「エルトラックの本気」という言葉も納得の催しでした。良質なコンテンツというだけではなく、非常にパワフルなエナジーを感じました。根底に流れるメッセージがあるとすれば、何でしょうか?

→「子どもたちにとって価値ある時間を提供するためにも、我々は学び続けなければならないということです。」・「そして、自分が信じたい情報だけではなく、様々な情報の中から本質を見抜くということです。色々な価値観、色々な指導法に触れることで、自分自身の価値観、自分自身が大事にしていることが何なのか、考える機会を得ることができます。自分の指導というものを深く見つめる機会になるのです。自分が信じたいものばかりを取り入れていても、自分の概念が深まることはあまりないからです。」

<参考>
JBS2017のHPには下記のメッセージが事後で掲載されている。

『ジュニアのバスケットボール環境は大きく変わりつつあります。様々な考え方をお持ちのスキルコーチが全国にいらっしゃり、多様性に富んでいます。私達はその様々な考え方に触れ、自身で咀嚼し理解を深める事が成長に繋がると考えます。この「JUNIOR BASKETBALL SUMMIT」が選手・指導者の皆様にとって、そのような成長の機会となると信じ、今後も挑戦を続けてまいります。』

Q3,「世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」というミッションと本サミットの位置付けについて。

ジュニアサミット内、エルトラックの各コーチは多くの役割を担っている。運営をするだけではなく、日本最前線のコーチの方と触れ合う機会も数多く存在している。クリニックの準備段階での担当者制度など。事後のレポート製作などがある。

イヤーエンドパーティー2017では下記の言葉を発せられていた。『エルトラックの創るコミニティに集う子供たちが、沢山の影響を受け取れるコミニティでありたい。小さな星があるよりも、大きな星がある事に意味がある。一つの星のコーチが大きくなるには、勉強したり、いろんなことを経験したり、色々な人に出会ったりする事が必要。エルトラックは、そういう機会を提供できる存在でありたい。』

まさに、このような場を通じ、指導員の方々にも刺激を受け取れ、成長の機会を創出しようとする意図と推察します。いかがでしょうか?

「これは、まさしく推察のとおりです。ERUTLUCのコーチ陣を育てる機能としても、このサミットは意味が大きいと考えています。ERUTLUCの中だけで影響を受けるのではなく、様々な地域や領域でベストを尽くしている講師の方々と間近に触れることで、彼らにも多くを感じ、学んでほしいと考えています。

『「必要な時に、必要な刺激を受け取れる環境を創っていきたい 」ERUTLUC YEAR END PARTY 2017 鈴木良和氏によるVISION SPEECHレポート』

 

*本イベントには全国各地からコーチが集結。各セッションの合間にはコーチ同士で意見交換や情報交換をする場も数多く見受けられた。ジュニア選手や、スポーツを取り巻く環境が変わっている。様々な背景を持つ選手のニーズに対応していく為にはコーチ自身の研鑽や、コーチ同士の交流を通じたレベルアップが欠かせない。コーチの参加費を無料としているのは『少しでも多く情報を届けたい』という想いに由来するという。

②運営担当者 中田 和秀氏

 

Q4、プロジェクトが多岐に渡る中、各セクションできめ細かなく催しが運営された。また事後には「翌年に向けて最高の準備をするために」という言葉と共に直ぐにアンケートも参加者に送付された。JBSは、選手、引率しているコーチ、引率の父兄、勉強したいコーチなど、様々なカテゴリーの方が一同に集う催し。どのようなイベントにしたく、その為に、どのような配慮や準備を心掛けられていたか。どのような役割分担、指針で運営の準備をされていたか?
*下記、項目別に箇条書き方式で記載。

「ERUTLUCでは、行動を決める際に「「し・あ・わ・せ行動指針」があります。『信頼を得られる』『安全を担保する』『わくわくできる『成長できる』を得られるかどうかをベースに考えようという内容です。このイベントは、ジュニアバスケットボールに関わる全ての人、具体的には、選手・保護者・指導者が、楽しみ、そして学べる環境を目指してのイベントでした。

背景の違う方全ての方に満足してもらうため、それぞれの対象に対して責任者が置かれました。それぞれに企画を出し、他担当と調整をしました。各責任者が、参加者の皆さんが「し・あ・わ・せ」になれるように全担当が準備を進めていきました。」

Q5、当日の様子、出来事などで、「狙い通り!準備/配慮しておいてよかった!」と思った出来事など

各担当がそれぞれの対象にとってどうなれば満足かを考えていたことが、よい準備になったのではないかと思います。

①講師担当の関谷コーチの例
→「クリニックの参加人数・使えるコートやリングの数など、講師の皆さんが疑問無くスムーズにクリニックを進められるように連絡を取り合っていました。事前の確認や報告の徹底で、当日の急な案件や要望にも早めに対応できたと思います。

それは、クリニックに参加する子ども達や見学する指導者の皆さんに満足してもらうためには、講師の皆さんにベストな指導をしてもらうことが大切と考えた為です

②ちびっ子ブース・セッション間イベントを担当した加賀屋コーチの例
→参加者の方が多いということは、クリニックに参加する子ども達の他にも弟さん・妹さんといった小さいお子さんもたくさんいらっしゃいます。小さいお子さんはただ見ているだけでは飽きてしまいますので、セッション間のイベントやキッズスペースを設けていました。

・本人曰く「怪我のリスクを最小限におさえることに十分配慮しながら、楽しく参加できるようなイベントを考えられたとのことです」

・全体を通して、その他にも、事前の案内、イベント中、事後の連絡とそれぞれが状況を想定しながらロールプレイング出来たのもよかったと思います。

*保護者向けの催しについては、板橋勇斗指導員が担当。会場に来場する保護者向けの催しを企画、運営された。

Q6,来年への準備
イベントの翌日頃に、既に「来年に向けて最高の準備をするために・・」というアンケートフォームが届き、成長や進化に向けた力強い意思を強く感じました。その中、アンケートの確認、集計、振り返り、イベントの評価、次に向けた準備の計画やサイクルについて。

・アンケートや各担当からの反省も踏まえて「同じ失敗を繰り返さないリスト」の作成があります。それ以外にも、新しいものを追加する為のやめることリストの作成が行われ、イベントのブラッシュアップが図られています。その後、来年への準備が始まります。

・今年(2018年3月実施分)は昨年に引き続きスキルコーチキャラバンというイベント形式を行いました。非常にご好評を頂きうれしく思っています。ただ、来年も同じようなイベントになるとは断言できません。

・昨年も今年もネーミングこそ同じですが、内容には変化があります。佐古さん・三上さんのトークショー、戦術系セッションの追加、パフォーマンスコーチのみのコース追加、保護者イベントなど昨年から比べてかなりボリュームアップしています。

・本イベントは新しい価値を提供したいという願いも込められています。昨年、今年はスキルコーチの必要性について考える機会というのが一つのテーマでした。来年はどんなテーマにするかを代表である鈴木を中心に練っているところですので、ぜひ来年も楽しみにしていてください。
*結果、JUNIOR BASKETBALL SUMMIT2018は『伝承』を意識した内容となった。GSLのFBにてラフに記載。

③保護者向けの講習会を担当した板橋 勇斗さん


◇ジュニア向けの企画の3コンテンツには、ナショナルチームのスタッフや育成キャンプでも活躍される方々が登壇されました。保護者向けの企画は非常に面白いと思いましたが、どのような意図で企画されましたでしょうか?

ジュニア選手向けのクリニックには引率で多くの保護者の方がいらっしゃります。「」というミッションもありますので、保護者の方が体育館にいる時間を活用し、有益な情報をお届けしたいと考えました。それが、3つのコンテンツ)を企画した理由です。JBS以外でも、日頃から保護者の方とはエルトラックとしてもコミュニケーションを取り、不安に思っている事、ニーズを把握するようにしています。実際、保護者向けの講座なども実施し、多くの方々に参加していただいていた事も背景にありました。

<参考>
((宮内彩氏『ケガが起きた時に保護者ができること』、一柳武男 氏『受傷(ケガ)から競技復帰への心得』、森毅氏『成長期の毎日の食事・いいパフォーマンスにつながる試合日の食事』)

◇実際に運営してみて

どの講師も素晴らしい講義を実施して下さりました。参加者の満足も非常に高く、理念を実現できたと思います。同時に、実は、そこまで保護者の方の教室への参加者が少なかったという反省もあります。アンケートなどを通じ、お子さんがクリニックに参加している最中の様子を見たいという希望がある事も分かりました。実施して見て初めて分かる事でもありました。次回以降の活動に活かしていきたいです。

 

この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。