「必要な時に、必要な刺激を受け取れる環境を創っていきたい 」ERUTLUC YEAR END PARTY 2017 鈴木良和氏によるVISION SPEECHレポート

「バスケットボールの家庭教師」の事業を展開する株式会社ERUTLUCはバスケット界で幅広く認知されている存在だ。

バスケットボールの指導のみならず、同社の活動は非常に幅広い。米国、欧州のコーチを招聘してのクリニック活動、映像分析サービス、ジュニア指導をテーマにカテゴリーや地域を越えて国内最前線のコーチが集うJUNIOR BASKETBALL SUMMITの開催、スキルやチームビルディングまでを幅広く扱った出版事業や、コーチ向けの講習会など、その活動は多岐に渡る。

同社は、「より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する」・「チームスポーツだからこそできることで教育に貢献する」・「世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」という3つのミッションを掲げている。

様々なプロジェクトは、上記ミッションを達成する為の取り組みであるという。各プロジェクトのアプローチ方法は違えども、悪戯に規模を拡大しているのではなく、向かっている方向性が非常に明確だ。各々の取り組みには、上記の理念が色濃く反映されている。地域、カテゴリーを問わず、バスケットボール界で幅広い支持を得ている大きな理由の一つであると感じている。

そんなERUTLUCではYEAR END PARTYとして、年度末に社内外の関係者を招いた催しを実施している。本稿筆者が参加する機会をいただいた際(2017年3月末)には、上記ミッションの実現に貢献した各指導員の表彰、卒業するコーチの表彰と共に、同社代表取締役 鈴木良和氏からの挨拶があった。お世話になった関係会社の方への謝辞、今後の展望や方向性を共有する場が設けられ、パワフルなビジョンが紹介された。
<参考>「世界で最もビジョナリーなコーチチーム」へ。株式会社ERUTLUCのイヤーエンドパーティーレポート 

◇YEAR END PARTY 2017でのスピーチではERUTLUCの目指していく活動の方向性や、目指すコーチ像について語られた

2018年3月末(2017年度3月)に開催されたYEAR END PARTY 2017での鈴木良和氏のビジョンスピーチも、非常に興味深い内容であった。昨今の社会情勢を踏まえ、子供たちを取り巻く環境を分析した上で、ERUTLUCの目指していく活動の方向性や、目指すコーチ像について語られた。それは、バスケットボール、そしてスポーツの枠を超え、社会の変化の中で暮らす少年・少女の環境に寄り添った内容で、非常に温かく、穏やかな気持ちと、活力に満ちた気持ちにさせられる内容であった。

日本のバスケットボール界で大きな役割を担っていた部活動を取り巻く環境が大きく変わりつつある。現在、各地域でジュニアチームやスクール形式の活動が盛況だ。B.LEAGUEのU15チーム、スクール事業も活発になりつつある。そのどれもが、非常に重要な役割を担っている。その先駆者の1つであり、多くの方と関りのあるERUTLUCのビジョンが語られた鈴木良和氏のスピーチを紹介する事で、私が感じたように、各地域の活動に発見、刺激、活力を与えると考えた。本レポート記事が様々な相乗効果を発揮し、よりよい競技環境を構築する一助になれば幸いです。

本稿では、上記講演内容より、キーワードを中心に紹介していく。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ERUTLUC YEAR END PARTY 2017 VISION SPEECH
「子供たちが、必要な時に、必要な刺激を受け取れる環境を創っていきたい」 株式会社ERUTLUC 代表取締役 鈴木良和

※各写真、スライド資料はERUTLUCからの提供。

1、オープニング

・新しく起業した会社が10年以上継続して存在しているのは6%という統計データが出ている。そして、ERUTLUCのような、他の前例がない、先駆者的な事業の場合は尚更。実際、会社を経営するのは大変な事で、日々、その大変さを実感していますが、10周年を迎える事が出来たのは、ご来賓の皆様、この場にはいらっしゃらないが、支えてくださる皆様や、ここにいる指導員の皆様のおかげです。改めて、御礼申し上げます。
今日は、我々のビジョンを改めてお話をし、共感をして頂いた部分で、皆様と共に歩んでいければ幸いです。

2、10年ビジョン、20年ビジョン、30年ビジョンについて

・10年ビジョン『バスケットが好きな子に、バスケットボールの楽しさを伝える』
創業時より我々が一貫して取り組んでいる事柄。クリニックをしたり、キャンプをしたりするのは「既にバスケットに取り組んでいる子に、さらにバスケットボールの楽しさを伝える」為。「より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する」というミッションにも強く関係する部分。

・20年ビジョン『バスケットをやった事のない方に、競技の楽しさを伝える』
(株式会社設立10周年、事業開始から15年目)これが、15周年目の我々の立ち位置。「バスケットをやった事のない方に、競技の楽しさを伝える」為。例えば、加賀屋指導員には、ジュニア育成事業部として、特に、幼児教育に積極的に取り組んでもらい、頑張っていただいている。

ジュニアの選手で言うと、仮に、僕たちの活動が無かったら、一日中、スマホをいじっていたり、携帯ゲームばかりしていた子供たちに、スポーツの楽しさを伝えられたり、面白いなって思って頂ければ、成長に貢献できる「かも」しれない。そういうことを成功として取り組んでいます。

<参考>MEET BALL PROJECT 

 

『ボールに触れる楽しさ、ボールで遊ぶ楽しさを知ってもらうために始めた「ボールと出会う場」を提供するプロジェクトです』

 

 

・30年目ビジョン『他のジュニアスポーツの指導者、連携、提携をする』
30年ビジョンでは、バスケットという枠を超え、他の種目でジュニアの指導に関わっている指導者の方々と連携、提携をし、ジュニアのスポーツ環境へ貢献をしていきたいと考えています。

3、法人格ー人格。社会に貢献、教育へ

・人に人格があるようにも、法人にも『人格』がある。
なぜ、このような30年先のビジョンを考える必要があるのか?「僕は死ぬ前にベストを尽くした、満足した」と言える人生を歩みたいと考えており、常に、そこから物事を考えている。そういう人格がある。ERUTLUCという法人も、1人の人間が社会にいるのと同じ。社会に使命を受けて誕生した以上、役に立ち、社会に貢献し続けていくことが存在意義。

・ERUTLUCという人格は『教育』で社会に貢献したい
ERUTLUCとして、どの領域で社会に貢献していくかと考えた時に、医療でも、サイエンスでも、経済でも、テクノロジーでもなく、教育が自分たちのフィールドです。教育で社会に貢献をしたいと考えています。

4、目指していく活動、指導者像。


・「教育とは模倣。子供は、身近な大人から模倣して学んでいくものだ」
まず、教育の定義について深く考え直し、意義を考えた。ギルバード・ライル氏(Gilbert Ryle)は「教育とは模倣。子供は、身近な大人から模倣して学んでいくものだ」と見解を示している。その考えに共感した。

つまり、教育を通じて子供たちに貢献しようとしていけば、自分達の言葉、行動で、どういう手本を見せる事が出来るかが重要になる。

・我々のやれる教育のもっとも重要な事は、物事の考え方、見方を伝える事。これが一番大切ではないか
また、もう一つ、大事な考え方があると考えている。自己啓発系の書籍で紹介されることも多いが、バイオリズムや運気という考え方以外に、「正負の法則」という考え方がある。良い行動をすれば良い結果を得る。悪の因を蒔けば、悪の果実を得る。自分が蒔いた種の影響を受ける。因果応報という考え方。

また、良い事も悪い事も同じだけ起こるという考え方を提唱する人もいる。例えば、なにも良い事をしていないのに、良い事が起こった。そんな時は、それと同じぐらいの悪い事が起きる。なので、気を付けなければいけない。一生のバランスの中で、良い事と悪い事の総量はバランスが取れているという考え方です。

有名なコップ半分の絵がある。これを見て、もう半分と考える人もいるし、まだ半分という考え方もある。つまり、考え方や、モノの見方が、その人の人生の彩りを決める、と言ってもいい。 我々のやれる教育のもっとも重要な事は、物事の考え方、見方を伝える事。これが一番大切ではないか、と考えている。

・過去に子供たちが持っていたコミニティ(近所づきあいや、お祭り)にとって代わるコミニティ創りが重要ではないかと考えている。
また、これまでの社会には、兄弟も多かったし、近所付き合いも多かった。必要とあらば叱ってくれる近所の人もいた。子供は近所で育てるという意識もあり、近所づきあい、地域のお祭りなどのコミニティがあった。現在は、兄弟も少なく、人との関わり合いや、社会環境が変わりつつある。マンションの隣の人にも声を掛けられない、というケースも珍しくない。そんな社会の中、我々がおそらくやっていかなければならない事は、過去に子供たちが持っていたコミニティ(近所づきあいや、お祭り)にとって代わるコミニティをERUTLUCの活動を通じて創っていく事が重要ではないかと考えている。

毎週、大好きなバスケットで、お兄さん、お姉さんと一緒になる。その中でスポーツに励む中で、模範になる事も、ときには反面教師になる事もある。いずれにしても、何かしらの刺激を受け取れるコミニティ創りに励んでいきたい。

・色々な子がいても、子供たちが必要な時に、必要な刺激を受け取れる環境に
(そのように指導者が子供に影響を与えていく中で・・)我々の目指すコーチ育成とは、影響を与えていけるコーチである。教育しようとしてするのではなくて、子供たちが勝手に影響を受け取るという考えに基づいているので、イメージしているのは、自分というコーチとして、子供に与える影響を大きくしていけるコーチを育てたいと思っている。我々は指導者として正しい影響力・あり方、テンプレートがあるわけではない。子供が変われば、影響力も変わっていきます。

例えば、凄く真面目だけど自信のない子にバスケットボールで活躍できるようにしたいと思い、「失敗を恐れるな、挑戦しよう!」と声を掛ける。その影響を受けて、勇気を持って挑戦し、経験を通じて学び、目標に近づくかもしれない。反面、いつもお調子者で、すぐに手を抜く。褒められると図に乗る、怒られたら頑張らない、そんな子に「チャレンジしろう、勇気を持って」ますます増長してしまいます。

佐古さんのシアターでの話(対談講演「我々が忘れてはならないもの」)。いつ、どんな風に言うか、タイミングが大事。その通りだと思う。「僕はこう思う」と、強く思ってるコーチが数多くいれば、前提条件が異なる、色々な子がいても、子供たちが必要な時に、必要な刺激を受け取れる環境になる。


・いろいろな子が来ても、必要な時に必要な、価値ある影響を与えられる集まりに
ERUTLUCの組織は、必要な時に、必要な価値ある影響力を与えられるような、そういう若者、コーチ、熱い若者が参加している、空間でありたい。そうすれば、色々な前提、能力の違う子供が集まった際に、『なり得る最高の自分』になれる為の環境創りが出来るんじゃないかと思っています。

20年、30年と、長い年月をかけて取り組み、ビジョンを達成しながら、子供に価値のあるコミニティを提供し続ける。そこに集まる子にも良い影響がある。エルトラックの創るコミニティに集う子供たちが、沢山の影響を受け取れるコミニティでありたい。お互いに影響しあって、一つ一つの星が大きくなっていく。そんな風に会社組織を大きくしていきたい。

小さな星があるよりも、大きな星がある事に意味がある。一つの星のコーチが大きくなるには、勉強したり、いろんなことを経験したり、色々な人に出会ったりする事が必要。ERUTLUCは、そういう機会を提供できる存在でありたい。ERUTLUCに行くと、成長できる。コーチとして大きくなれる。そういう評判が広がって、熱意のある若者が集まってくる。様々な機会を通じて、1つの星が大きくなっていく。それらがお互いに影響しあって、一つ一つの星がさらに大きくなっていく。そんな風に会社組織を大きくしていきたい。

5、事業規模の件について

・なぜ、ディズニーランドがライバルか?
各家庭が、家賃、食費、光熱費とか、生活に必要なあらゆるお金の後に、残ったお金を何に使うか(可処分所得)が、ERUTLUCの事業の土俵。おもちゃ、ゲーム機、遊園地、学習塾と様々な選択肢がある。お金を払ってでも、スポーツをちゃんと教えてくれるコーチのとこに連れて行って、スポーツをやる事が意味がある。その価値を証明し続けないと行けない。その為、我々にとって、一番のライバルはディズニーランドであり、毎年、入場者数と、我々の参加者数の差を比較している。

・もう少しで10万人の来場者数という計算、指導員の皆さんがベストを尽くしてくれたな働きをしてくれたおかげ。
昨年度のディズニ(ランド・シー合計)の来場者は3000万人。エルトラック側は、会員数と来場回数を「来場者」として計算すると、もう少しで10万人の来場者数という計算。昨年よりも参加者が増えている傾向。「日本バスケットボール協会の発展に貢献することは、未来の子どもたちへの貢献につながる」という信念のもと、育成キャンプや、男子代表チームのサポートコーチとしての活動など、日本バスケットボール協会の様々な活動(※1)に精力的に取り組んでいる。例年以上に、会社の代表である僕自身のERUTLUCでの活動が少なかった。その中で上記の数字が達成できたのは、指導員の皆さんがベストな働きをしてくれたおかげ。

※1
2018年12月下旬に開催されたJBAコーチカンファレンスでも「2016年からの男子日本代表の取り組みから、今後の選手育成を考える」の講義を担当した。

・1週間に62万人の来場が近未来の目標

1年間は48週間なので、3000万人に到達するには。1週間に62万人の来場が必要。62万の教え子というのは、15歳以下の人口は1640万人。つまり、人口に17人に1人、学校に行くと1クラスに1人が教室に通っている子供という計算です。

上記は、30周年ビジョンにある、ジュニア期のスポーツ指導に取り組む他の団体と連動して理念を実現していく事になると予想している。

1つの教室に30人と計算し、達成する為には28000教室の立ち上げが必要。エルトラックでは、1人の社員につき、5個の教室を立ち上げられると決めているので(※2「規律の文化」)、4000人の社員が必要。4000人いれば、ディズニーに追いつける計算となります。

・子供たちにとって魅力的なコミニティを創り上げる事は、とても難しい事だし、責任がある事。
ERUTLUCは急成長しているね、と言っていただける。しかし、僕からすると牛歩の歩み。子供たちにとって魅力的なコミニティを創り上げる事は、とても難しい事だし、責任がある事なので、ERUTLUCでは指導員のランクも規定している。しかし、教室を立ち上げられるSランクの指導者(※3)も10人しか育っていない。まだまだ、です。

そんな中で、ディズニーに追いついていけるよう、これからも理念を達成しながら、邁進していきたい。今回、このような形で10周年を迎えられ、本当に感激している。次なる節目に向けて、毎日毎日、ベストを尽くし、皆様にご支援、ご指導をいただいて、邁進していきたいと思います。長くなりましたが、ビジョンスピーチを終わりにしたいと思います。ありがとうございました!!

※2、3
ERUTLUCでは、教室を立ち上げられる指導者のランク(自社内の制度)をSランクとしている。現在、社内の各種研修制度、指導回数、実績、などを経て、Sランクの指導者が10名在籍している。また、先輩指導員が後輩指導員を指導する形式(バディシステム)を採用しているが、担当できる人員も定められている。事業規模を拡大するだけではなく、理念を達成しながら事業を拡大していく事(「規律の文化」(『ビジョナリーカンパニー』より)が重要と考えている為であるという。

レポート製作者 雑感

ビジョンスピーチの最中、鈴木良和氏は「エルトラックの組織は、必要な時に、必要な価値ある影響力を与えられるような、そういう熱いコーチ、熱い若者が参加している、空間でありたい。そうすれば、色々な前提、能力の違う子供が集まった際に、『なり得る最高の自分になれる為の環境創り』が出来るんじゃないかと思っています。」と語られていた。

現在、例えば出版事業では同社の水野慎士氏が『バスケットボール パッシングゲーム トレーニングブック』を、谷中風次氏がバスケットボール ドライブスキル トレーニングブックなどを出版。その他にも、同社指導員により様々な題材を扱った書籍、映像教材なども豊富だ。既に、様々な指導員の方々が多方面で活躍されている。

「ERUTLUC の活動を通じ、一つの星が大きくなっていく。それらがお互いに影響しあって、一つ一つの星がさらに大きくなっていく。そんな風に会社組織を大きくしていきたい。」とも鈴木良和氏は語る。本催しと同時期に開催されていたJUNIOR BASKETBALL SUMMITも、参加者のみならず、指導員にとっても学びの場にもなるように、運営体制の中にも様々な工夫が散りばめられているという。「世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」というミッションに向けても着々と歩みを進めている。きっと、ERUTLUCからは、これからも影響力のあるコーチが数多く輩出されていく事だろう。

 

この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。