ヨーロッパの地で、学び、成長し続けた選手たち:ドイツアルバートシュバイツァートーナメント観戦レポート

ヨーロッパの地で、学び、成長し続けた選手たち:ドイツアルバートシュバイツァートーナメント観戦レポート

文・写真 藤澤潤

約1年前にGSLのFBページにて公開したレポート記事です。現在(2017年7月2日)、U-19ワールドカップに参戦している男子代表チームは、2016年3月下旬に、アルバートシュバイツァートーナメントに参戦し、アジア選手権へ向けた強化に取り組んでいました。本レポートは、ドイツのハイデルベルク大学へ短期留学中の藤澤潤さんによる、アルバート・シュバイツァー・トーナメントの現地観戦レポートとなります。

アルバートシュバイツァートーナメントとは?

3月27日から4月2日にかけて行われていたDBB(Deutschland Basketball Bund・ドイツバスケットボール連盟)主催のアルバートシュバイツァートーナメント。1958年から基本的に2年に1度開催されている大会で、今年で28回目を数える歴史ある大会です。毎回、アンダーカテゴリーの代表チームが12〜16チーム参加しています(今大会は12チーム)。

結果として、大会は開催国ドイツU18代表の初優勝で幕を閉じました。この大会には、前回大会から日本代表のユース世代も招待されており、今回もU18代表がアジア選手権に向けて実践強化を図ることを目的として参加していました。

この大会には多くのスター選手もジュニアの頃に参加しており、代表的な選手としては、大会プログラムに、以下の選手(元選手)が記されていました。

マジック・ジョンソン、ビンス・カーター、ケビン・ガーネット、カルロス・ブーザー、ティム・ダンカン、トニー・パーカー、ボリス・ディアウ、ルディ・ゴーベルト、ニコラス・バテューム、アントニー・ディオ、パウ・ガソル、パティ・ミルズ、ダーク・ノビツキーなど。

プログラムの中では、ダークノビツキ-もコメントを寄稿しており、以下のように述べています。
「このマンハイムでのアルバートシュバイツァートーナメントは、若い世代の多くのプレイヤーにとって、彼らが成功していく過程において、とても重要な段階の大会であるといえます。私にとっては、1996年大会のドイツチームでの試合であったといえます。私は、この体育館で行われる大会の雰囲気にとてもいい思い出があります(筆者訳)」

※1996年の出場選手でもあるDirk Nowitzki選手による動画、メッセージが公開されています。

第28回となる今年は3月26日~4月2日までの1週間(29日は休息日)にわたって、予選リーグと順位決定トーナメントが実施され、12の国が闘いに挑みました。今大会のエントリーについて、ドイツやトルコはベストメンバーではないという情報もありました。しかし、夏には、各大陸のU18選手権(U18世界選手権大陸予選)が控えており、それも見据えて、各国がチーム強化を1つの目的にしていると考えられます。

※アメリカは正式な代表チームではなく、ニューイングランドの選抜チームが参加とのこと。

第28回 アルバートシュバイツァートーナメント 1日目会場の様子

日本が属するグループAの会場である、Mannheim(マンハイム)GBG Halleを訪ねました!
マンハイムはフランクフルトから特急電車で40分程の市街で、近くにはHeidelberg(ハイデルベルク) などの観光都市があります。体育館は、さらにトラム(路面電車)もしくはバスで15分かかる場所にありました。基本的にドイツ国内から来られる方はみなさん車で来ていたようでした。

入口で荷物チェックを含めた簡単なセキュリティーチェックを受けて入場します。また、ペットボトルを持ち込むことはできませんでした(先日ユーロリーグを観戦に行ったときも同様。安全面への配慮からヨーロッパでは当たり前なのかもしれません……)。

そして、入口脇にはドイツ代表のユニフォーム、シューティングシャツ等の販売、ドイツ代表グッズの販売、そして軽食やコーヒー等の販売もされています。もちろん、ドイツと言えば「ウインナーソーセージ!」ということで、ホットドッグも販売していました。聞いてみたところ、ビーフとポークが選べるらしいです。

大会が行われている、GBG Halle(マンハイム)。手前はどちらもホットドッグ販売店。中にも、記念Tシャツ、ドイツのユニフォームレプリカ等の販売ブースや、軽食のブースも
大会が行われている、GBG Halle(マンハイム)。手前はどちらもホットドッグ販売店。中にも、記念Tシャツ、ドイツのユニフォームレプリカ等の販売ブースや、軽食のブースも

体育館に入ると、すでに第1試合のセルビア対オーストラリアの試合が始まっていました。会場にはすでに300人近くの観客が訪れていたようです(大会主催者報告より)。セルビアは大応援団が訪れ、サッカーのように太鼓を使って常に歌い続けていました(なぜかオーストラリア側のベンチ側で応援していました)。

また、オーストラリアから来ている方もいたようで、ユニフォームを着て応援していました。さらに、ドイツ人の熱心なバスケットボールファンも多く来場しており、1試合目からじっくりと試合観戦している様子が見受けられました。おじいちゃん、おばあちゃんから、家族連れ、友達となど様々……。そして、両チームの良いプレーには、惜しみない拍手を送り、会場を盛り上げていました!

入口に建ててある、アルバートシュバイツァートーナメントの創設について。1958年大会から、ここマンハイムで開催されており、2012年から隣の町のフィールンハイムも共同開催になったとのこと。さらに、大会創設者の名前と、これまでのドイツバスケットボール界において重要な人物を取り上げている
入口に建ててある、アルバートシュバイツァートーナメントの創設について。1958年大会から、ここマンハイムで開催されており、2012年から隣の町のフィールンハイムも共同開催になったとのこと。さらに、大会創設者の名前と、これまでのドイツバスケットボール界において重要な人物を取り上げている

次からは、日本代表の試合を振り返り、気づいたことをまとめたいと思います。

U18日本代表が「国際舞台で闘うことを通して」得た収穫と課題

1.日々、学び、成長していった選手たち

開幕戦であるドイツ戦のアップ中の選手の姿は、どこか頼りない様子でした。アップでも選手間で声の掛け合いが見られず、周りの様子を伺いながらアップしているように見えました。それもそのはず、彼らの初戦は開催国ドイツであり、会場にはドイツバスケの将来を担う選手たちを見ようと多くの人が訪れており(主催者発表では1,300人)、さらにチアリーダーも登場し、ゲームのMCもドイツ側につくような盛り上げ方であったからです。つまり、このチームで国際試合を初めて闘う日本にとっては、いきなり完全アウェーの雰囲気でした。

そのような雰囲気の中で始まった1Q、ドイツのファーストショットに対し、ハードコンタクトができなかった日本は、リバウンドダンクなどを喫するスタート。オフェンスでは、2線のディナイディフェンスが厳しく、ハイウイングからのエントリーになってしまい、良いシュートチャンスが作れません。彼らは試合序盤、トライしていなかった、いや、トライさせてもらえなかったように見えました。

すかさず、トステン・ロイブルHCは、タイムアウトの中で、ディフェンスリバウンドとチャレンジすることを指示します。試合が進むにつれて、ハードコンタクトからディフェンスリバウンドを獲得したり、オンボールスクリーン主体のモーションオフェンスからガードがペネトレイトを仕掛け、そこからの合わせ(インサイドのペリメーター、アウトサイドシューター)で得点を決めたりと、随所でGood playが見られるようになってきました。

彼らが試合序盤に突きつけられた課題を、解決していく場面が出てきたのです。選手に直接話を聞くことは今大会できませんでしたが、彼らは、ワンプレイワンプレイ闘い、課題を見つけ、解決し、学んでいったように思います。点差は大敗でしたが、内容としては点差以上に国内試合では得られない経験を積むことができたのではないでしょうか。

また、予選ラウンド第4戦アルゼンチン戦では、激しいディフェンスで後半に流れをつかみ、初勝利をつかみました。さらに、予選最終戦のトルコ戦、順位決定戦のアメリカ戦(ニューイングランド選抜)では、第4クォーターまでもつれる展開に持ち込めるなど、内容と結果が徐々にかみ合うようになってきたようにも思えました。

2.ユース世代で闘う機会があったからこそ、活かされる収穫と課題

以上で述べたように、日本のU18代表は試合を通して、日々模索しながらも、得た課題から学び、解決し、変容していったように見えます。つまり選手たちはこの大会で国際舞台での日本チームとしての、さらに個々人の闘い方を学んでいったように思うのです。しかしながら、この大会に参加することを意味付けるものは、この期間だけでなく、今後彼らが国内でいかにプレーするかに懸かってくると考えます。

次に私が現地で見ていて感じたこと・今後自分自身が考えていきたいと思ったことを3点述べたいと思います。

日本代表の試合を通して感じたこと

1.ディフェンスの厳しさが、日本の高校生とは大きく異なっている

これは、後日プレイヤーに聞いてみたいと思っているのですが、ドイツチームのボールマンへの圧力(特にポイントガードに対して)が激しいと、見ていて感じました。ワンアーム以上離れることが非常に少なく、常にプレッシャー状態の中で、ガードは状況判断していくことが求められていました。その中で、エントリーがスムーズにいかないことが多かったように思います。さらに日本と大きく異なる点が、「2線目のディフェンスの厳しさ」です。インバウンズのスローイン場面、さらには、エントリープレーのウイングへのパス、ホーンズセットプレーのハイポストへのパスはとにかくディナイが厳しかったです。よって、ウイングプレイヤーがフリースローラインより高い位置でボールをうけることが多く、なかなか有効なピックロールのオフェンスに繋げることができませんでした。

ウイングでボールをもらうのも容易ではなく、日本の高校生の試合とは大きく異なるスタンダードがこの大会には存在していた
ウイングでボールをもらうのも容易ではなく、日本の高校生の試合とは大きく異なるスタンダードがこの大会には存在していた

2.ディフェンスリバウンドを獲るまでの過程

日本代表が世界と闘う時の永遠の課題と言われている、「リバウンド」について、その場面に至るまでの過程に課題があるのではないかと考えました。ドイツチームをはじめ、セルビア、トルコ、オーストラリアなどの国は、リバウンドへの意欲がとても高いです。よって、彼らのオフェンス時には、相手がボックスアウトをしていないことを瞬時に把握し、どんどんランニングリバウンドに飛び込んできますし、インサイド陣の後ろからのコンタクトが相当重いです。

ディフェンス時には、必ず相手をつかまえて(Catch up)、コンタクト(Make contact)し、跳ね(Jump・Get rebound)ます。しかし、日本のドイツ戦・オーストラリア戦の1Q開始から数回のディフェンスリバウンドは、コンタクトがソフトないしは、なされていませんでした。そのことによって、後ろから獲られ、ファールで止めざるをえませんでした。

しかし、ロイブルHCは、途中のタイムアウトで、このことを修正し選手に伝えたことで、このあとは徐々にハードコンタクトし、ディフェンスリバウンドを獲るようになっていきました。このリバウンド時のコンタクトに関しては、日々の習慣によって鍛えていくことができると思いますし、オフェンスは常にリバウンドに飛び込むことを意識し、コンタクトの激しいリバウンド争いをしていくことが必要だと考えます。私たちは日頃からこのレベルのインテンシティを選手に求めていくことが必要になってくると思いました。

3.P&Rのズレで、ドリブルペネトレートからキックアウトからの得点

日本代表は、この試合点差こそつくものの、数種類のエントリープレイを使い、トライし続けています。どの国もピックの2メンゲーム中心の組み立てが多く見られ、日本もオンボールスクリーンを中心に攻撃していました。その中で、アウトサイドプレイヤーが、2メンゲームでできたズレを活かして、ペネトレイトし、ジャンプシュート。さらにはキックアウトからのシュートから良いシュートチャンスを作れることが試合を積むにつれて増えていったように思います。アルゼンチン戦、トルコ戦ではアウトサイド陣が機能し、アルゼンチン戦では勝利、さらにはトルコ戦では、4Q中盤まで勝負できる展開まで持ち込めました。

ユース世代で、国際舞台を経験することができたことで、得られた収穫と課題は、今後(国内での高校生の大会~大学生~クラブチーム~A代表)に活かすチャンスがまだまだ残されています。これまで欧米圏を中心とした国際舞台において、闘う経験を積むことがなかなかできなかった日本のユース世代において、このような課題を持ち帰れることは、まさに財産であり、この課題を少しずつ(Step by Step)でも解決していくことが育成強化には欠かせないと思います。

各国、日本代表をスカウティングし、オンボールスクリーンに対する対応を変えてきた。そこに対する、対応/状況判断は今後の課題である
各国、日本代表をスカウティングし、オンボールスクリーンに対する対応を変えてきた。そこに対する、対応/状況判断は今後の課題である

この経験を伝えていき、強化に繋げるために

U18日本代表は、この大会を通して、ヨーロッパ・南米・オセアニアとそれぞれ違うタイプのチームと闘ってきました。ペップ・グアルディオラ(現バイエルンミュンヘン監督)の言葉を借りれば、彼らは世界レベルで闘う中で、毎試合「新しいバスケットボールの言語(イデオマ)」を学んできた(マルティ・パラルナウ、2015)のです。

新しい(バスケットボールの)言語を学び続けた選手たち。ここで学んだことが今後いかに活かされるのか注目するとともに、私たちもこの経験を日本の指導者全体にどう共有し、日本バスケ界へと還元していくか、考えていかなければならない
新しい(バスケットボールの)言語を学び続けた選手たち。ここで学んだことが今後いかに活かされるのか注目するとともに、私たちもこの経験を日本の指導者全体にどう共有し、日本バスケ界へと還元していくか、考えていかなければならない

また、今大会に日本代表が出場できたことで、ユース世代における、世界の中での立ち位置を確認することができました。その上で、国際大会のレベル/スタンダードを選手たち自身が知り、また日本代表「らしさ」も大会期間を通して、出せるようになってきました。フランスのフットボール界では、よく「育成は実を結ぶまでにだいたい10年かかる」と言われています(結城、2014)が、今日本のバスケットボール界が大きく動き出している中で、このような舞台での経験を選手だけでなく、指導者といった日本のバスケットボールファミリーで是非とも共有し、育成の実に水と肥料を確実にまいていくことが必要であると考えます。

今夏に行われる、U18アジア選手権に向けて、スタッフ陣は、さらに強化を図っていくと思いますし、今後の日本の育成世代の発展に向けて、私たち全員で日本のバスケットボールについてさらに熱く語り合って、高めあっていくことが大事なのではないかと考えた大会でした。

まだまだバスケットボールコーチ勉強中の身ですので、どんどん厳しいご意見ご感想いただけると大変勉強になります。よろしくお願いいたします。


【参考】

アルバートシュバイツァートーナメント大会ホームページ

決勝戦のフル動画


寄稿者
藤澤 潤(ふじさわ じゅん)
1992年生。石川県出身、東京学芸大学-東京学芸大学大学院。ドイツ、ハイデルベルク大学へ短期留学を経て、現在は帰国中。将来は地元石川県で、教員とバスケットボールの指導者を目指して、勉強中。

 

この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。