TTC 2017 supported by UPSET、即興チームに共通理解を植え付けた佐野智郎氏のアプローチ<1>

TTC 2017 supported by UPSET、即興チームに共通理解を植え付けた佐野智郎氏のアプローチ<1>

Tamagawa Training Camp supported by UPSET(以下、TTC)は、株式会社 PHYSIOFLEXの主催によって、5年程前より開催されているイベント。例年、6月の中旬、下旬頃に開催されており、オフシーズンのプロバスケットボール選手に良質な環境を提供する事、学生とプロ選手の交流機会を提供する事を目的に開催されている。同趣旨に賛同し、ゴールドスタンダード・ラボでも数年前より協力をしている。

TTCの特徴は、2日間にわたって、専門性の高いストレングストレーナーによるウェイトトレーニングや、フロアトレーニング、オフシーズンならではの取り組みである測定(測定協力:一般社団法人スポーツおきなわ )や、メディカルスタッフによるコンディショニングなどの充実したカリキュラムにある。本年もPHYSIOFLEX presents Tamagawa Training Camp 2018 supported by UPSETとして、6月23日・24日に開催予定である。

「Bチームの選手にとっては、プロ選手とマッチアップをする機会は、1生に1度あるかどうか」

また、両日の午後に締めくくりとして実施されるのが玉川大学バスケットボール部とのスクリメージだ。プロ選手にとっては、即興チームの中で、コミュニケーションを取りながらプレーをする事は勿論、コンディションアップにもつながる。

また、開催協力を頂いている玉川大学バスケットボール部にとっても、プロ選手とマッチアップをする事で、春のトーナメント、新人戦を終え、夏場の練習を迎える前の、一つのイベントとして友好的に活用して頂いているという。練習試合という形式ではなく、10分単位で点数を区切り、4本から6本ほどのゲームを実施する形式を採用。

その為、Aチーム、Bチームに関わらず、ゲーム単位でコンセプトを決め、数多くの選手がゲームに登場し、プロ選手へと立ち向かってくる。同大学の林監督も「特に、Bチームの選手にとっては、プロ選手とマッチアップをする機会は、1生に1度あるかどうか」と学生の成長機会として非常に価値を感じて下さっている。ご協力を頂けているのも、本イベントが成立する背景だ。

即席プロチーム対学生チーム。プロコーチに総括を依頼し、交流機会の価値を最大化

TTC運営事務局としても、プロと学生の交流機会の価値を最大化すべく、即席チームの総括役として、プロリーグで活躍するコーチに依頼してきた。過去には、元安陽一コーチ(東京サンレーヴス、秋田ノーザンハピネッツ、大阪エヴェッサなどを経て現在は大学で活躍)、尺野将太コーチ(横浜ビー・コルセアーズAC、HCなど)などが総括コーチとして参加。チーム分けや、即席チームのコンセプト作り、ゲーム毎での選手とのコミュニケーションなどで演出をした。

TTC 2017 supported by UPSETでは、B3リーグに参戦している東京海上日動BIGBLUEのアシスタントコーチを務める佐野智郎氏、東京八王子トレインズAC薄井大樹氏が総括コーチを担当。例年に比べ、今年は若い選手が多かったこともあり、総括コーチ側で基本的なコンセプトや、オフェンスのフォーメーション、ディフェンスのルールを具体的に用意。学生チームのアジャストに対応しながら、段階的な変化を加えたオフェンスを導き、プロ選手の表現力も相まって非常に鮮やかに決まった。

本稿では、佐野氏のコメントや、段階的に変化を加えたオフェンスシステムや、佐野コーチのコメントなどを関連情報を紹介していく事を試みたい。

Tamagawa Training Camp 2017 supported by UPSET 初日の参加選手

  • 矢代雪次郎(群馬クレインサンダース→愛媛オレンジバイキングス)
  • 伊良部勝志(アースフレンズ東京Z→現役引退後、シーホース三河U15HC)
  • 伴晃生(愛媛オレンジバイキングス→ Hornsby Spiders/オーストラリアWaratar League)
  • 清水隆平(東京サンレーヴス→東京サンレーヴス)
  • 師玉祐一(東京サンレーヴス→埼玉ブロンコス)
  • 喜久山貴一(横浜ビー・コルセアーズ→バンビシャス奈良)
  • Huner Cort(ハンター・コート)(Yokota High School→広島ドラゴンフライズ)
  • 草野佑太(東京サンレーヴス→東京サンレーヴス)
    ※レギュラーシーズン終了後、スペインへ武者修行へ
  • Andrew Jones(University of California Santa Cruz在籍中、St Mary International school出身)

※カッコ内、左はTTC 2017開催当時、右が2017-18シーズンの所属チームなど

※インターナショナルスクール時代には関東地区のリーグ戦でMVPにも輝き、広島ドラゴンフライズでプロ選手としてのキャリアをスタートさせたハンター・コート選手。188センチの長身ながら、視野の広さとパススキルが武器としPGを主戦場とする。2018年現在、ウィリアム・ジョーンズ カップに挑む日本代表チームの候補合宿にも呼ばれ、二次合宿にも名を連ねている。

オフェンスについて、HORNSの形から、ドリブルでエントリーするケースと、パスでエントリーするケースの2種類をベースにスタートされた。

HORNS(ドリブルスタート)でのオフェンスの形

メモ

  • ドリブルでスタートするプレーを採用。海外での競技経験も豊富な矢代、伴選手らが起点となって、ピック&ロールを有効的に活用した。
  • スクリナーとしては、ベテランの師玉選手、オールラウンダーの伊良部選手、Huner Cort、Andream JONESら、参加選手の中ではサイズのある選手が務めた。
  • 基本的な狙いは、ピック&ロールを使ってドリブラーがゴール下へ侵入するプレーである。スクリナーのDFがShowなどで反応した際には、スクリナーがDiveをしてペイントを狙った。
  • 5のDiveに対し、4は自動的にPoP。X4が5へのHelpで対応した瞬間に、4へのパスでクローズアウトシチュエーションが発生させた。普段は3Pシューターとして活躍する師玉選手、本来はPG/SGを務めるHunter Cort選手のドライブなどが目立った。

※上記のプレーは、U-19ワールドカップで日本も対戦をしたSPAIN代表が非常に効果的に活用していたプレーである。シンプルなプレーであるが、技巧的で得点力のあるPG、高確率の3Pシュートを武器とする素晴らしいPF選手の特徴を上手く活かしていた。3:00頃の映像で同オフェンスあり。

  • HORNS EARLYとして2:50頃から紹介されている。(下記動画では、POPする選手はペリメーターのケースが多い。得点期待値の考え方や、スペースを拡げる意味合いでも、3PエリアにPOPアウトするケースが近年の類似プレーでは非常に多いと思われる)

オプションの紹介<その1>

メモ

  • Diveをする選手に対して、X4がスイッチ、X5がポップした選手に対してクローズアウトをして守るケース。少しでもミスマッチならばハイローを狙う。
    ※スイッチをしていない場合でも、5番ポジションが優位なポジションを確保すればハイロープレーのような形式でパスを狙やすい。

オプションの紹介<その2>

メモ

  • ドリブラーについて、ドライブやシュートが上手い選手の場合はX5の選手が強めのShow Deffenceで対応を狙うケースも考えらる。
  • その際、反対サイドの選手(X2)がヘルプディフェンスに寄る場面では、コーナーへのスキップパスを狙う。DFの状況に応じて状況判断(decision making)が重要になる。
    ※Deffence側としては、Show Hardで守ろうとするからには、コーナーへの鋭いスキップパスは出させないようにする意識が必要となるだろう。責任領域を明確にした守り方が必要になると思われる。

参考

下記動画にて、5:20秒頃からHORNS HALFでは、DFの位置を見抜いての、コーナーへのスキップパスが紹介されている。

TTC 2017 supported by UPSETを通じて、B1でプレーした選手ならではのフィジカルの強さを見せた喜久山貴一選手。昨年はバンビシャス奈良で活躍した
TTC 2017 supported by UPSETを通じて、B1でプレーした選手ならではのフィジカルの強さを見せた喜久山貴一選手。昨年はバンビシャス奈良で活躍した

<その2>に続く。

この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。