トヨタバスケットボールアカデミー参加レポート 第3弾

トヨタバスケットボールアカデミー参加レポート 第3弾

お待たせしました。トヨタバスケットボールアカデミーの参加レポート第3弾です。伊藤拓磨ACによるクリニックレポートシリーズの途中ではありますが、4/21に開催されたアカデミーではドナルド・ベックHCおよび伊藤拓磨コーチによって「トランジションディフェンス」「プレイオフに向けての戦い方」「トヨタ自動車アルバルク東京の理念」についての実技を交えての講義がありました。プレイオフの最中という事もあり、トヨタバスケットボールアカデミー2014/4/21の模様を先行して掲載します。

日本のバスケットをもっと良くしていきたい

NBLのレギュラーシーズンも週末の最終節を残すのみとなった4月21日。トヨタ府中スポーツセンターにて第6回目となるトヨタバスケットボールアカデミーが開講された。

先日にWJBLファイナルを制したJXサンフラワーズのACであるトム・ホーバス氏、西地区3位でNBLプレイオフ出場を決めている三菱自動車名古屋のHCアントニオ・ラング氏、そしてトヨタ自動車アルバルク東京の伊藤拓磨ACと多彩な顔触れが講師にも揃ったが、受講者の顔触れを見てもNBL、bjリーグ、都内大学の学生コーチ、大学コーチ、日本に在住する外国人のコーチ、そして教職の傍らに指導に情熱を注ぐ小・中・高校の部活動顧問教諭、メディア関係者に至るまで多岐にわたる。筆者が把握しているだけでも、千葉、茨城、栃木、埼玉と関東近郊からも多くの人間が集まり、受講中、および、受講後には意見交換を交していた。

BBスピリッツでの佐々木クリス氏のコラムでは「このセミナーがコーチ間のダイアログを形成して欲しい」というベック氏の言葉も紹介されている。
http://www.bbspirits.com/column/toy131204/

最終回となった今回では、まず、ベックHCによるアカデミーの理念の再確認。「日本のバスケットをもっと良くしていきたい」という言葉と共に、講義の最中には「あくまでも、これはトヨタのやり方であって必ずしもこれが正しいわけではない」という言葉が何度も繰り返される。

「コーチは常に学ばなければならない。他のチームのスカウティングをしている際に新しい発見もあるし、伊藤ACや他のコーチとのディスカッションで考えを改める事もある」と続けた中で「このやり方、システムを自分は好んで使う」と自身のコーチング哲学について確固たる自信も垣間見えた。他の戦術や、考え方を知っている中で、さらには、積極的に他の考え方を学んでいる中で、現在の自分の哲学として誇りを持って自身のバスケットボールの表現に取り組む姿は、柔軟ではあるが、ヤワではなく、ヘッドコーチとしての矜持を感じさせてくれた。

責任の所在を明確にする

“what you teach,what you demand,what you accept”

配布された簡易資料には指導哲学の一つとして上記の言葉が書かれていた。「何を教える、要求する、受け入れる」という訳語が書かれていたが、伊藤ACの言葉を借りれば「要求する、ではなく強制する」という単語が当てはまるようだ。

特に「強制する」という言葉の意味としては「責任の所在を明確にしている」とベックHCも語るトヨタのディフェンスシステムについて強く感じた。一例を挙げると、ベックHCのディフェンスシステムではインサイドの選手にも、ディフェンスのローテーションでアウトサイドの選手をマークするようになったとしても「2歩のスライドステップ」を”demand”(要求している、強制している)との事。その為に、毎日の練習で、基礎的なドリルを繰り返して選手に習得させる。

インサイドの選手がアウトサイド選手をマークするのは簡単な事ではないが、2歩のスライドステップも出来ずに手から抑えにいきファールを侵すことは「受け入れない」という。選手それぞれに特性がある中で、全てを要求するわけではなく細部に落とし込んでチームの基準を設け、選手に習得すべきスキルを”demand”する。

これが過去4年間のシーズンで、リーグの中でも非常に失点の少ないチームとしてタフなディフェンスを披露し続けたチームの秘訣の一つとも言えるかもしれない。
※詳しい最少失点ランキングは割愛します。2013-14年シーズン最少失点

トヨタ自動車アルバルク東京の基本理念は「Defense」「Rebound」「Execute」(実行する、遂行する)であり、この順番に優先度が増していく。日本人には馴染みの薄い”Execute”という単語。主にオフェンスでの考え方としても紹介もされていたが、選手にとって”Execute”すべき項目を明確かつ具体的に伝える事、これもコーチに求められる重要な資質のように感じた。

実際の講義では、”TRANSITION DEFENSE”というタイトルでオフェンスリバウンドについての考え方、ハリーバックの考え方、ボールマンを捕まえる為の考え方について具体的なキーワード共に解説され、また、”On the ball Screen deffence”としてトヨタ自動車アルバルク東京で採用している”BLUE”という考え方が紹介されたが、今レポートでは割愛する。

WJBLが閉幕し、NBL、及び、bjリーグもいよいよプレイオフを迎える。プレイオフでのトヨタ自動車アルバルクの戦い方を分析、研究し、来年度にも開講されるであろう本アカデミーにてベックHCに質問をしてみるのも一興。国内トップリーグのHCから、一般の指導者まで、万人に開かれた学びの場がバスケットボールの進化を加速させる。

最後に、このアカデミーは来年度以降も継続して実施したいという意向があるという事。また、講義の最中にベックHCも非常に好きな書籍として紹介されていた書籍のタイトルにもなっている言葉をを紹介して、簡易レポートを締めくくります。


『賢者は強者に優る―ピート・キャリルのコーチング哲学』
(原題:The Smart Take from the Strong)

※ベック氏の来年度以降の契約などについては現時点では不明です。あくまでも開催したいという意向になります。

この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。