【UPSET連動記事】「子どもたちを笑顔に、地域と共に夢と感動を」ヴィアティン三重 ハイライト動画解説企画③

B.LEAGUEへの参入を目指し、各地に中期・長期的な展望と運営体制を備えた社会人チームの発足が増えてきました。

本稿では、三重県のバスケットボールの発展への熱い想いと共に着々と活動を積み重ねているヴィアティン三重バスケットボールを題材に、ハイライト動画の解説記事を投稿します。

クリニック等でヴィアティン三重バスケットボールの選手と接する機会のあった育成世代の選手や、コーチングを初めて間もないコーチの方が主な対象とする記事です。馴染みのある地元チームの選手のハイライト映像を、いつもより深い視点で見ることを通じ、NBAやB.LEAGUE等のハイライト映像を見る際の発見や学びに繋がる事を目標に制作されています。※玄人の方は本稿はスルーしてください。

GSL編集長の片岡が勤務する株式会社アップセットにて、同チームのオフィシャルサプライヤーを務めている縁で制作をした記事となります。

「子どもたちを笑顔に、地域と共に夢と感動を」ヴィアティン三重 ハイライト動画解説企画③

UPSETは、Bリーグ入りを目指すヴィアティン三重バスケットボールのオフィシャルウェアサプライヤーを務めております。

ヴィアティン三重

同クラブは地域総合型クラブ内にあるバスケットボールクラブです。Jリーグ百年構想クラブに承認され、J3ライセンスを保有するサッカークラブの他、女子サッカーチーム、バレーボール、ビーチバレーチームなども保有され、「子どもたちを笑顔に、地域と共に夢と感動を」をCLUB IDENTITYとし、地域と連携した様々な活動を展開しています。

◇B.LEAGUEクラブの存在しない都道府県の中で、少年・少女の環境格差を少しでも解消したい

特に、小学校の訪問や、地域へのバスケットボール教室なども積極的に開催され、コロナ禍名の中では、今後に向けて計画されています。

その理由の一つには、三重県の少年・少女を取り巻く、バスケットボール環境が関係しています。現在、全国各都道府県にB.LEAGUE所属のプロチームが増え、様々な形で良質なバスケットボールに触れる機会が格段に増えています。

定期的なクリニック以外にも、ユースチーム、スクール事業の活動等が各地域で盛んであり、バスケットボールを愛する選手にとっては貴重な選択肢の一つになっています。必然的に、プロクラブを持たない都道府県は、バスケットボール競技体験の機会が少なくなります。

ヴィアティン三重バスケットボールが少年・少女向けのバスケットボール普及活動を時間の許す限り重視しているのも、上記のような理由があると言います。

◇数多く存在するハイライト動画を見る「目」を養い、バスケIQを高めて欲しい

そこで、UPSETでは、三重県でバスケットボールに励む少年・少女のプレイヤーの競技人生に彩りを加えられるよう、ヴィアティン三重バスケットボールの中西HCとの協力の元、本企画を構想しました。活用する動画はヴィアティン三重バスケットボール応援大使を務め、4.7万人のTwitterのフォロワーを持ち、4.4万人のインスタグラムフォロワー、約4.7万人のYoutubeチャンネル登録者数チャンネル登録者を誇る「まぐろさん」です。

昨今、SNSや動画投稿サイトで世界各国のバスケットボールの映像を見るすることが出来ます。動画を見る際の「目」を養う事で、発想力を拡げ、競技中の判断力向上等に貢献する事が本企画の目的となります。

ヴィアティン三重バスケットボール×UPSET ハイライト解説記事③

<登場する選手>

・#0 阿部 祐也 選手

(171cm/三重県立四日市工業高校→中京大学 卒) ※三重県桑名市出身

・#13 福岡 博貴選手

(体重195cm|86kg 中部大学第一高等学校―名古屋学院大学)

◇プレーの解説

※バスケット用語等は『』内に記載しています。

1、今回のシチュエーションは、意図したプレー等が上手くいかないオフェンス局面でのプレーとなります。状況を打開する為、チームのポイントガードである阿部選手がボールを預かります。ここで、阿部選手は自分のマークマンが大型選手であり、スピードで優位な状況(『スピードのミスマッチ』)に気が付き、積極的にゴール下へと攻め込んでいきます。

2、阿部選手のドライブインに対し、相手DFも侵入を阻むべく守ってきます。しかし、ヴィアティン三重は、残りの選手が3Pエリアの外に出て広いスペースを取っていました。結果、DFの隙間(『GAP』)をすり抜け、ドリブルで侵入するエリアが十分にありました。中西HCも、「ヴィアティン三重では、PnRについてはスクリナーのDFの特徴やスクリーン角度、DFの位置を把握する事を大切にしています。そもそも、PnRはアドバンテージを作るために行うので工夫は必要になってきますし、周りの選手の理解や適切なスペーシングの徹底が不可欠です。」と以前の記事で紹介しています。

3、次に、インサイドの#13 福岡 博貴(図#4) 選手をマークするX4との駆け引きとなります。リングに近づいた阿部選手は、一度、自分のスピードを減速させます。同時に、#13 福岡選手にパスを出すかのような素振りを見せます。

4、このプレーにより、X4の選手を困惑させる事に成功しました。#13 福岡選手へのパスコースを守るのか、阿部選手のドリブルを守るのかで迷いが見られます。元々、阿部選手のリングへの侵入を防ぐべくDFの位置を変えました。が、阿部選手がリングへと向かう道筋を開けてしまう結果となりました。これは、3の場面で、阿部選手が#13 福岡選手へパスをする可能性を見せていて、X4の選手の方を困惑させていたからだといえるでしょう。「高松選手をマークすれば#4にパスを出されてしまうという恐れや迷い」があった為ではないでしょうか。

5、若い選手になればなるだけ、ドリブルでペイントエリアに侵入した際に、自動的にランニングステップを踏んでしまうケースが多く見られます。結果、ゴール下でレイアップをした際にはブロックをされてしまうケースも良く見られます。また、慌ててパスをしようとし、インサイドの選手へのパスをカットされるケースや、出し手と受け手のお互いの意思疎通が上手くいかずにパスが成功しないケースも多いです。(三重県の出身で、現在は長崎ヴェルカのGMを務めている伊藤拓摩氏は「No Automatic 1.2 Step」というフレーズで、ペイントエリア付近での駆け引きの重要性を述べています。(参考:トヨタバスケットボールアカデミー参加レポート 第1弾 )

<まとめ>

本プレーは、阿部選手、及び、周りの選手が『スピードのミスマッチ』に気が付いて積極的にドライブを選択した事、及び、ペイントエリアで素晴らしい駆け引きをしたからこそ成功したプレーといえるでしょう。

チームプレーというと、味方へのパスを優先する事ばかりを考えてしまうケースが数多く見られます。ただし、本プレーのように、自分の目の前の選手が優位であれば、ドリブルで突破を目指す事もチームの得点チャンスを作るという意味で「チームプレー」と言えるでしょう。

NBA、国際ゲーム、B.LEAGUE等でも、スピード、またはパワーで優位なマッチアップになった際、その選手へボールを預け、強みを突くプレーは数多く見られます。一見すると、個人技で状況を打開しているように見えるかもしれません。しかし、これも素晴らしいチームプレーであり、賢いプレーと言っても差し支えないと思います。

ハイライト等では、マッチアップの状況等は確認しずらい背景もあります。もし、ハイライト映像等を見る際には、マッチアップにも注目いただけると、ご自身のプレーに役立つ事も多いと思います。

◇ヴィアティン三重 中西康介HCコメント

ボールマンを周りの選手がミスマッチに気が付くことが大切

「ハイライト場面以外にも、ガードの選手に相手のX5(センター)がスイッチして、スピードのミスマッチになっているケースがありました。別のシーンでも、ガードの選手がドライブを仕掛けて、何回か成功させていました。このプレーの背景には、そのような経緯もあります。基本的な考え方は、ミスマッチ(スピード、またはサイズやパワー)になっていたら、そこを有効活用する事を考えます。ボールマンと、周りの選手の両方が理解する事が大切です。特に、自チーム(ヴィアティン三重)の場合、ガードがペイントエリアにドライブしてからのキックアウトをした際、シューター陣が高確率で決めてくれるデータも出ています。また、それをチームの特徴の一つにしている為、確率の高いプレーに繋がるかどうかも判断基準にしています。」

ペイントエリアでは「一つ余分に」ドリブルをする感覚を

「ペイントエリアでは、すぐにステップを踏んでしまうと相手のDFにブロックされたり、プレーの選択肢が少なくなってしまいます。この表現が正しいかどうかは分からないのですが、私としては、『1つ余分にドリブルをする』という感覚が大切ではないかと考えています。そういう心がけを持つと、プレーが上手くいく事も増えるのではないでしょうか。三重県のジュニア世代の選手にも参考になれば幸いです」

<参考>

https://twitter.com/baskemaguro/status/1309046671557496833?s=20
https://twitter.com/baskemaguro/status/1142364366781575168?s=20

この記事の著者

片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。