(ダミアン・リラードのクラッチシューターぶりを広く知らしめた(?)昨シーズンのプレイオフ、対ロケッツ・シリーズでのブザービーター)


「クランチタイム(ここ一番の勝負所)にめっぽう強い選手」との評判が定着した感のあるダミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ、 POR)。今シーズンには「クランチタイム(残り5分で5点差のゲーム)での得点数でリーグ1位」といった話も1月半ばに出ていた(Lillard saw Blazers’ success coming – ESPN)が、NBA3シーズンめに入ったこの「ブレイザーズの若大将」について、その成長ぶりを分析したカーク・ゴールズベリーのコラムがGrantlandで先ごろ公開されていた。

「ダミアン・リラードはいかにしてMVP候補になりしか」(How Damian Lillard Transformed Into an MVP Candidate)というタイトルのついたこのコラムには、別に「ダミアン・リラードを見限るな」(Do Not Cross Damian Lillard)という題名もあり、こちらは昨年夏にあったTeam USAメンバー選考の際に、コーチK(米国代表チームのHC)がカイリー・アービング(CLE)とデリック・ローズ(CHI)を優先する形でリラードを落 としたことに言及したもののようだ(候補選手の名前の上に「X」(バッテン)を引いた、という感じだろう)。

アービングやローズのようなサラブレッド(blue blood)ーー学生時代から大きな注目を集め、そのままNBA入りしたスター選手ーーとは異なり、リラードは「ほぼ無名の大学(リラードの出身校はユタ州のウェバーステート大という大学だそうだ)で4年間かけて着実に力をつけた」とか、2012年のドラフト順位も6位に過ぎなかったけれど、結局その年の 新人賞を獲得・・・といったリラードの「叩き上げ」的な面にも言及があり、またさまざまなチームを渡り歩き、いろんなスーパースター選手とともにブレイし てきた12年目の大ベテラン、クリス・ケイマン(PORで現在)によるお墨付きーー「ノビツキーやコービとも一緒にプレイした経験からいうと、あいつらが クランチタイムが大好きなのは明らか。しかし、大物選手(big-time names)のなかにも、ここぞというところで自分にボールが回ってくるのを好まないやつらもいる。リラードは間違いなく前者の部類で、勝負所で存在感を 増す選手」云々などもあって興味深い。「リラードは怖いもの知らずで、肩に羽が生えているかのよう」(”He’s fearless. He plays with a chip on his shoulder.”)というケイマンのコメントもある。

ただ、ゴールズベリーの本領が発揮されているのはやはりデータを駆使した分析のほうで、そのポイントをまとめると次の3つになる。

  1. 3ポイント・プレイのクリエイション能力/決定力の高さ
  2. 「弱点」を確実に強化
  3. ディフェンス力も向上=チーム全体に貢献

このうち、ポイント1)については、次の3つの比較がある。

アシストなしの3ポイントシュート成功本数(1月18日時点)

  1. ジェームズ・ハーデン(HOU):54本
  2. ダミアン・リラード(POR):49本
  3. ステファン・カリー(GSW):47本
  4. ブランドン・ジェニングス(DET):40本
  5. クリス・ポール(LAC)、カイル・ロウリー(TOR):31本

3ポイントプレイ(シュート+アシスト)による得点(1月18日時点)

  1. ジェームズ・ハーデン(HOU):243点
  2. ステファン・カリー(GSW):207点
  3. ダミアン・リラード(POR):200点
  4. カイル・ロウリー(TOR):167点
  5. クリス・ポール(LAC):167点

3ポイントプレイの得意なコンビのシュート成功本数(1月18日時点)

  1. ダミアン・リラードからウェズリー・マシューズ(POR):52本
  2. タイ・ローソンからウィルソン・チャンドラー(DEN):48本
  3. クリス・ポールからJ.J. レディック(LAC)::48本
  4. ステファン・カリーからクレイ・トンプソン(GSW):47本
  5. ジェームズ・ハーデンからトレバー・アリーザ(HOU:44本

この記事のなかにはたとえば「ウェズリー・マシューズが決めた118本の3ポイントシュートのうち、49本はリラードからのアシストパスによるも の」という記述もある。いずれにしても、リラード/マシューズの3ポイント得点能力が、GSWの「スプラッシュ・ブラザーズ」や、HOUのハーデン/ア リーザ・コンビのそれを上回るというのは大したもの。

従来のスタッツだとわかりづらいこうした数字ーーたとえば、リラードの場合、ポイントシュート成功本数は120本で第5位(成功率36.9%)、アシストは一試合平均6.2で15位となっている(いずれも1月24時点)にゴールズベリーが注目しているのは、ジェームズ・ハーデンの場合と 同じく、NBA全体で進む「3ポイントプレイならびにゴール下からのシュートの比重の高まり」といった流れを踏まえてのことだろう。なお、リラードの Real Plus/Minus(RPM)は5.63で全体7位、またWin Above Replacement(WAR)は7.4で5位となっている(いずれもトップはステファン・カリーで、RPM 8.74、WAR 9.37)。

ポイント2)については、昨シーズンと今シーズンのシュートセレクション/成功率を比較した2つのショットチャートが載っている。

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(2013-14)

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(2014-15)

2013-14シーズンに平均以下だったゴール下でのシュート確率が大幅に向上(今シーズンは56%)、また全体としてミッドレンジ・シュートが減っている(ほとんどなくなっている)点も目に付く。

3番目の、ディフェンス力向上については、「ペリメーター(外側)での個人のディフェンス能力については、ゴール下と違い、実はまだ決め手になる データがない」などとカークランドは説明しながら、その代用として、選手個人ではなくチーム全体のディフェンス力向上を挙げている。このグラフには、昨シーズン16位だったブレイザーズのディフェンス力(Defensive Efficiency)は今シーズン4位まで上昇している、とある。
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ちなみにこのランキング、1位ウォリアーズ、2位ロケッツ、3位バックス(MIL)、4位ブレイザーズ、5位ホークス(ATL)、6位スパーズ(SA)、 7位ウィザーズ(WAS)・・・27位キャブズ(CLE)、28位レイカーズ(LAL)、29位ニックス(NYK)、30位ティンバーウルブズ(MIN) などとなっている。やはりディフェンスのいいチームが成績もいい/ディフェンス力がある程度なくてはお話にならない(例外はあるにしていも)ということ か。


ところで。
先ごろ発表されたオールスター戦のファン投票の結果について、選手の「実力と人気の乖離」を指摘したグラフ付きの記事が(Grantlandと同じEPSN系列の)「FiveThirtyEight」(ネイト・シルバーのはじめたブログ)に出ていた。

この記事の趣旨は、ファン投票の結果は選手の「ネームバリュー」が大きく反映されており、「実力派」の選手がその分割を食っている、といった傾向を述べた もの。たとえば、今季は「引退の可能性」の噂ばかりが目立つコービがそれでも100万票を超える得票を集めてスターターに選ばれたことが話題になっていた と思うがーーあるいは中国からの組織票(コービ・ファンが投じたもの)の影響かもしれないーー、そういう大物選手の過剰な「人気ぶり」は、レブロン・ ジェームズ(CLE)やカーメロ・アンソニー(NYK)にしても多かれ少なかれみられるもの。

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いっぽう、「過小評価されている実力派」の代表格がリラードで、実際に集まった得票数(約36万5000票)はWARを規準にした期待得票数(78万6000票)より42万1000票も少ない、というチャートもある。

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この「過小評価組」のランキング(上記チャートの最下位から逆順)はちょっと興味深い・・・・。1位リラード、2位ポール・ミルサップ(ATL)、3位ドレイモンド・グリーン(GSW)、4位タイソン・チャンドラー(DAL)、5位サージ・イバカ(OKC)、6位クリス・ポール(LAC)、7位でアンドレ・ジョーダン(LAC)、8位ヤニス・アンテトクンポ(MIL)、9位ジェフ・ティーグ(ATL)、10位ルー・ウィリアムズ(TOR)などとなっている。逆に「過大評価」のほうは、1位レブロン、2位コービ、3位ポウ・ガソール(CHI)、4位アンソニー・デイヴィス(NOL)、5位ドウェイン・ウェイド(MIA)、6位マーク・ガソール(MEM)、7位ブレイク・グリフィン(LAC)、8位ステファン・カリー(GSW)、9位ジョン・ウォール(WAS)、10位マーシン・ゴータット(WAS)だそうだ。

なお、ブレイザーズでは大黒柱のラマーカス・オルドリッジ(”LMA”)が22日の対セルティクス戦で右手首を痛め、手術が必要(復帰までに6〜8週間の予想)とされるなか、なんと24日の対WAS戦には痛み止めをうって出場(26得点、9リバウンドの活躍)といった話も出ている。フロントコート陣がすでにふたりも故障欠場ーーロビン・ロペスとジョエル・フリードマンがそれぞれ復帰までもうしばらくかかる見通しで、LMAもいないとなると、あとはケイマンだけ、ということで、LMAもかなり無理をしての出場だったと思われるが、そうしたなかでこれまでのところ快調に飛ばしてきたリラード/マシューズらのバックコート陣が、今後どこまでがんばれるかも気に掛かるところだ。

(今季のMVP候補を「品定め」した分析。カリー、ポール、デイヴィス、リラード、ジミー・バトラー(CHI)、ハーデンなどと並んで、リラードの名前も)。

転載元:第3のMVP候補、ダミアン・リラード(POR)のどこがそんなにスゴイのか?(Grantland)

※本記事は、著作者の許諾を受けて全文転載の形で掲載しております。

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