失敗を恐れる選手を育てるコーチたち
選手へ指導するとき、あなたが真に重要だと考えていることはなんですか? 本当に教えるべきことはなんですか? それはボールハンドリングやシューティングの中に存在しますか?
長い年月を通じて、私は選手の成長を助ける上で大きな成功を収めたと自負しています。NBAのオールスター選手らをはじめ、高校や大学、その他の育成年代の選手らとともに向上に励んだものです。私が成功していないとすれば、選手は私の指導を受けに戻ってこなかったでしょうし、新たな選手が私の指導を受けに来ることはないでしょう。
私はほかの誰よりもバスケットボールのことを知っているとは思いませんし、誰よりも優れているとも思いません。私はただ、私自身にとって効果的な方法を知っていただけです。私の指導スタイルは多くのそれとは異なります。異なる優先順位と異なる方法を持っています。それに同意する者もいれば、そうでない者も当然います。私の指導スタイルが誰よりも優れているというわけではなく、ただ単に異なっているのです。
ジャンプシュートやボールハンドリング、パスなどを教えるコーチがいますが、私は別のものを教えようとします。年齢や性別に関わらず、どんなレベルの選手であっても、私はただ1つのことを教えています。私は、それがどんな選手でも学ぶことができる、最も重要なスキルだと考えています。それは、失敗を恐れないことです。
私は、失敗への恐怖こそが、学習と改善に対する最大の障壁であると信じています。私は、教え方によって、選手に失敗への恐怖を植え付けることを手助けしてしまっている可能性を指摘したいと思います。
私は、ほかの皆がしてきたのと同じように、「練習が完璧をつくる」という価値観の中で育ちました。また「完璧な練習だけが完璧をつくる」という言葉も忘れられません。長い間、私はそれを全力で守りました。そう、私の選手が恐れていた「完璧な練習」に対して、とても意欲的だったのです。
選手が全てのシュートを決め、ターンオーバーを一切せず、相手に一切点を許さないことを私が選手に強制するほどに、選手は私から離れ、目的すら遠ざかっていきました。このとき私は、自身のメソッドを見直すべきだと決めました。
私が理解したことの1つとして、シュート確率が45%のシューターは、良いシューターだということです。野球の打者でいえば、70%を失敗したとしても、殿堂入りの可能性があります。史上最高のゴルファーであるタイガー・ウッズは、トーナメントの79%で負けています(史上2位の勝率を誇るジャック・ニクラスでさえ、勝率は9%です)。つまり、スポーツに失敗は付き物なのです。優れた選手かどうかの判断材料は、どう失敗へ対処するかにあります。選手は失敗を恐れることも、これがスポーツの一側面なのだと受け入れることもできます。
もし私が、いくつかシュートをミスしたためにフラストレーションや怒りを感じている選手を見たとしたら、私はこう尋ねるでしょう。「私のアドバイスに従えば、君は二度とシュートをミスすることはないだろう。聞きたいかい?」と。すると選手の返事は常に「Yes」です。そして私はこうアドバイスを送ります。「シュートを撃つな」。
シュートを撃たなければ外すことはありません。同様に、シュートを撃つ限り、外れることがあります。これは疑いようもなく、シュートの一部なのです。それを受け入れてください。選手はプレーする限り、ミスを犯すでしょう。その前提を受け入れて次に進み、次のプレーを実行するのです。
恐らくほとんどの人は、その考え方を受け入れると思います。しかし、コーチとして、私たちは失敗の恐怖を植え付けることに貢献してしまっていませんか? 「完璧な練習」を主張し、完璧ではないことを常に指摘してはいませんか? ミスが続くことにしびれを切らしていませんか? 選手がミスをするたびに叱責していませんか? 「私は君が自由にプレーすることを望んでいる。私を気にして脅えるようにプレーする必要はない」と伝えていますか?
コーチとして私たちは、恐怖心を打ち負かす選手を育てるという、共通の利益を理解しなければなりません。失敗を恐れるあまり、挑戦することを恐れる選手になってほしいと思うでしょうか。私たちが教える姿が、恐怖心を植え付けてはいないでしょうか。
完璧を求めるのは素晴らしい理想です。しかしそれを目標としても、制限のない欲求と怒りにつながるだけです。誰も完璧でないからです。あなたが完璧を期待するならば、常に失望することになるでしょう。
出典:Watch What You Teach|breakthroughbasketball.com
※本記事は出典元の許諾を得た上で、全文翻訳の形で掲載しております。
この記事の著者
- JeffとJoeのHaefner兄弟が2006年に開始。バスケットボールコーチ向けの情報サイトやDVD、キャンプやアプリなどのコンテンツを開発。これまでに200万以上の訪問者、1万以上の記事を公開するなど、バスケットボールコーチへのサポートを提供している。
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