ラマス・ジャパンも使うのか? アルゼンチン代表が用いた「フレックスオフェンス」完全ガイド:③コーナー、ポストへの展開とカウンター
『Basketball for Coaches』から紹介した「フレックスオフェンスの概要」の第3弾となります。今回はコーナー、ポストへの展開とカウンターを取り上げます。
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ラマス・ジャパンも使うのか? アルゼンチン代表が用いた「フレックスオフェンス」完全ガイド:②フレックスオフェンスの基礎とエントリー
フレックスオフェンスのコーナーオプション
フレックスの基本的な連続性には、シュートを打てるオープンなプレイヤーを探しながら、トップにいる2人のプレイヤーのパス交換が含まれています。しかし場合によっては、コーナーにパスを出すオプションが必要なケースがあります。
コンスタントなガードからガードへのパスが予測できてしまうため、フレックスへのディフェンスは、一般的にこのパスを防ぐことになります。このときコーナーへのオプションを知らなければ、パスを封じられ、フレックスは停滞してしまうでしょう。
コーナーへのオプションは多数に存在していますが、ここでは6つのオプションを紹介します。このうち2から3つのオプションに対して、コールを決めておくことをオススメします。
6つのオプションを全て教えようとしても、プレイヤーは覚えられないでしょうから、より効果的なオプションを2から3つ習得させるべきです。
ポイント:コーナーパスの際は、ポストプレイヤーにボールを入れられるかどうか確かめるために、ポストプレイヤーは1-2秒ほどポストアップしてポジションをとる必要があります。ペリメーターのプレイヤーも同じく、1-2秒間自身のポジションを保ってください。
オプション1:ギブ&ゴー(Give and Go)
最も学ぶのが簡単な動きで、若いプレイヤーでも確実に実行できるものの、確実な得点機会には結びつきません。その代わりに、プレッシャーから解放され、通常のフレックスに戻ることができます。
①は③にパスを出して、逆サイドのコーナーにカットします。ほかの2人のペリメーターのプレイヤーはボールに向かってローテーションし、フレックスのポジションに戻ります。
このオプションの問題点は、すでにポストアップしている⑤にパスを出せないことです。①がカッティングしているため、ペイント内には多くのディフェンダーがいるからです。しかしながら若いチームには有効です。
オプション2:UCLAカット(UCLA Cut)
別の簡単なオプションは、①がコーナーにパスをしたら、UCLAカットのために⑤が①にスクリーンをかけるものです。コーナーから①にパスを入れられなければ、③は⑤にパスを出すことができ、フレックスの陣形に戻ることができます。逆サイドでは、④が②にトップにカットするためのダウンスクリーンをセットします。
オプション3:ドリブルエントリー(Dribble Entry)
コーナーにパスを出す代わりに、コーナーに向かってドリブルすることでトラブルを回避します。このプレイの際は、「ドリブル!」というコールをして、コーナーのプレイヤーはローポストをカールしてトップに出ます。これでフレックスに戻ることができます。
オプション4:シングルスクリナー(Single Screener)
このオプションでは、コーナーにパスを出したプレイヤーがスクリナーとなります。まず①が①とポジションを変える④にクロススクリーンをかけ、④のディフェンダーが①のスクリーンを抜けたら、①はすぐに④のポジションを埋める②にダウンスクリーンをかけます。2つのスクリーンの後、①はコーナーでポジションを取ります。これでフレックスに戻ることができます。
オプション5:スタッガードスクリーン(Staggered Screen Option)
このオプションでは、トップにいる①と④がウィークサイドのコーナーにいる②にスタッガードスクリーンをかけます。②はスタッガードスクリーンを使ってボールサイドのシュートを狙える位置にカットします。①はスクリーンの後にトップに戻り、④はコーナーを埋めます。これでフレックスに戻ることができます。
オプション6:ホリゾンタルスクリーン(Horizontal Screens)
ボールがコーナーにパスされたら、ボールサイドにいる2人がそれぞれ逆サイドにいるプレイヤーにスクリーンをかけます。それぞれのスクリナーはディフェンスをしっかりと捕まえて強固なスクリーンをセットしなければなりません。カッターがフリーになれなければ、ボールをトップに戻してフレックスを開始することができます。
ポストを経由するオプション
4アウト1インのポジションで、かつスクリーンとスイッチが行われるフレックスでは、ポストにボールを入れ、プレイヤーにうまくプレイさせることは、素晴らしいオフェンスになりえます。
あなたのチームがすでにオフェンスを実行しているとき、プレイヤーが視線を上げてインサイドのマッチアップを見て、アドバンテージがあると判断した場合には、ポストにボールを入れることを推奨します。
ポストにパスを入れる最適のタイミングはコーナーにボールがあるときで、トップからポストにパスを入れるのはオススメしません。
このとき、ポストプレイヤーがトラップを仕掛けられたりしないようにするため、ペリメーターのディフェンダーをアウトサイドに張り付いたままにさせ、ポストプレイヤーが1対1を仕掛けられるオプションをこの後説明します。
以下2つのオプションでは、ポストにパスを入れた後のコールは必要ありません。パッサーの動きがオプションの指示となり、ペリメーターのプレイヤーは動きを読んでアジャストする必要があります。
オプション1:カット&ローテーション(Cut Through and Rotate)
ウィングのプレイヤーからポストにパスが出たとき、ポストプレイヤーはすぐに動き出さず、パッサーが逆サイドのウィングにカットしたら、ペリメーターのプレイヤーはローテーションします。
パッサーはポストプレイヤーのどちらサイドからでもカットすることができ、もしオープンならポストプレイヤーは短いパスや手渡しパス(hand-off)を出します。
ペリメーターのプレイヤーがローテーションすることで、ディフェンダーは彼らについていくことを余儀なくされます。また、ディフェンダーがつきすぎているならば、それはバックドアからイージーな得点を生み出す好機ともなります。
オプション2:ボールサイドスクリーン(Screen Ball-Side Guard)
ポストプレイヤーにパスを入れた後、トップにいるガードにスクリーンをかけることもできます。アウトサイドのシュートを打たせるリスクを避けるため、ディフェンダーはオフェンスについていかなければなりません。
ボールサイドのガードはポストプレイヤーからのキャッチ&シュートを狙うことができ、スクリナーはディフェンスの動きに応じて、開いてボールを貰うか、バックドアでゴールに向かうこともできます。
スクリナーがバックドアを狙ってボールを貰えなければ、ウィークサイドの2人がローテーションして、カッターは逆サイドのコーナーを埋めます。
ディフェンス戦術への対応
ここでは、一般的にフレックスを止めるために用いる戦術を2つ挙げ、それに対処する方法を説明します。
1.ガードからガードへのパスを防ぐ(Deny the Guard-to-Guard Pass)
これがフレックスを防ぐための主な戦術として用いられます。フレックスのトリガーとなるガードからガードへのパスができなければ、オフェンスは一度止まります。幸運なことに、いくつかの対処法があります。
1.バックドア(Backdoor Cut)
ガードに対してディナイを仕掛けてくるならば、オフェンスはバックドアを狙います。バックドアのカッターは、躊躇せずリングに向かいます。バックドアを使うフェイクを用いてはなりません。このときコーナーのプレイヤーはローテーションしてボールを受け、カッターはコーナーを埋めます。
2.ドリブルでのポジション交換(Dribble Exchange)
ガードからガードへのパスが難しい場合、単純にドリブルでポジションを交換するオプションがあります。この交換する動きがフレックスのトリガーとなります。
このときスクリーンをかけることを好むコーチもいますが、私はシンプルにポジションを交換する方が容易だと考えます。
2.スクリーンへのスイッチ(The Defense Switches All Screens)
もう1つのフレックスへの対処として、スクリーンへのスイッチが挙げられます。これによりポストのディフェンスはよりゴールに近く、ガードがペリメーターのディフェンスをすることができます。以下でスイッチに対する戦術を説明します。
1.ダックイン(Duck in on flex screen)
オフェンス⑤のディフェンス③へのフレックススクリーンに対し、ディフェンス⑤がスイッチしてオフェンス③のヘルプを行う場合、オフェンス⑤はディフェンス③をシールしてダックイン(編集部注:Duck inは色々解釈されていると思いますが、こちらのように低い姿勢でポストアップするようなニュアンスかと思います)します。ディフェンス⑤がオフェンス③を守ることにより、オフェンス⑤がペイント内でレイアップを打てる機会が生まれます。また、これによりファウルを誘発し、フリースローの機会を得ることもできます。
2.ミスマッチに対するアイソレーション(Isolate on mis-matches)
重要なことなので覚えてください。ディフェンスがスイッチしたら、誰が誰を守っているのかを確認してください。
誰がミスマッチになるかに応じて、あなたのチームのそれぞれのポジションのベストプレイヤーが快適にプレイするための練習時間をとってください。これには事前の練習計画と相手チームに対する知識が必要となります。
3.自身のディフェンダーへのダウンスクリーン(Down-screen own player)
フレックスのダウンスクリーンを行っている際、チームメイトのディフェンダーにダウンスクリーンをかける代わりに、自身のディフェンダーへダウンスクリーンをかけます。
ペリメーターのプレイヤーの位置に応じて、シュートを打たせるためのダウンスクリーンやフレアスクリーンをセットすることができます。スクリーンをかけたディフェンダーがファイトオーバーしたら、素早くボールにフラッシュします。
4. 我慢すること(Be patient)
シンプルですが非常に重要なTIPSです。数回のパス交換の青t、ディフェンスは必ずミスを犯します。2人のディフェンダーが1人のオフェンスについていってしまうようなミスが必ず起こります。
辛抱強く我慢して、アクシデントが起こることを待ち、アクシデントが起きたらそれを最大限活用する準備をしておかなければなりません。
5. ポイントガードがポストからスタートする(Start with point guard in the post)
通常スイッチをする前は、同じポジションでのマッチアップからスタートします。このときポイントガードがポストでポジションをとった状態からスタートしたらどうでしょうか? 相手がスイッチしたら、自チームのポストプレイヤーに相手のポイントガードがつかざるをえない状況が生まれます。
まとめ
誰かフレックスオフェンスを使うチームと対戦したことのある人に尋ねれば、どこでスクリーンをかけてくるかはわかります。しかしそれでも守るのは難しいでしょう。ディフェンスが相手を呼んでも、この記事で説明したように、オフェンス側には多くのカウンターが存在するからです。
私の意見では、フレックスを実行できる全てのプレイヤーは、高いバスケットボールIQを有したより優れたプレイヤーになると考えています。
ただ一点注意すべきは、プレイヤーがオフェンスを実行するロボットになってしまわないようにすることです。どこにスクリーンをかけるべきか、どこにパスを出すべきかといったことを、ゴールを見たりアタックすることを忘れることなく行えなければなりません。
彼らを攻撃的で得点機会を感じさせ続けることができれば、中高生以上のあらゆるレベルのバスケットボールでは、魅力的なオフェンスを作り出すことができるでしょう。
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出典:Flex Offense – Complete Coaching Guide|http://www.basketballforcoaches.com/
※本記事は出典元の許諾を得た上で、全文翻訳の形で掲載しております。
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