名将ボブ・ナイトから学ぶコーチングのための34のヒント
今週の更新は、名将ボブ・ナイトのコーチング哲学の一端が分かる言葉の数々を集めた記事の翻訳です。バスケットボールというゲームの本質、これをいかに考え抜いているのかということが見て取れます。
- The single most important aspect of coaching is running effective practices.
唯一にして最も重要なコーチとしての役割は、効果的な練習を実行することだ。 - The goal is to make practice more difficult, physically and mentally, than anything your players will face during a game.
コーチとしてやるべきは、選手が実際の試合で直面するどんな場面よりも、肉体的かつ精神的に厳しい練習を作り上げることだ。 - I always designed my practice plans the night before and then made tweaks a few hours before practice began.
私はいつも前日に練習計画を立てたうえで、練習が始まる数時間前に微調整を行っている。 - I never let a player shoot by himself; he had to have a rebounder. Shooting by yourself is not game specific.
私は選手に1人でシューティングをさせない。必ずリバウンダー(兼パッサー)をつけて行わせる。1人でやるシューティングはゲームライクではないからだ。 - I hate casual shooting. Working to get open and catch and shoot must precede every shot under game like conditions.
私は好き勝手にやらせるシューティングが大嫌いだ。どんなシュートを打つときでも、ゲームライクの状況を作って、オープンになる動きからキャッチをした後でシュートをするようにさせるべきだ。 - Everything in my practices were designed for advantage vs. disadvantage. Putting players in a disadvantage forces them to communicate and concentrate.
私の練習は全て、意図的に有利な側と不利な側が戦うようにしている。選手を不利な状況に置くことで、協調や集中せざるを得ない状況に追い込んでいるのだ。 - I began every practice for 40 years with simple 4 corner passing drill that required absolute concentration.
40年以上も、私の練習は細心の注意を必要とする4コーナーからのシンプルなパスドリルから始めている。 - Coach Knight to player, “Son, if you can’t listen and follow instructions then you can’t play.”
私はいつもこう話す。「諸君、私の話を聞かず従わない奴にはプレーはさせないからな」。 - My practices were not set up to be easy or enjoyed.
私の練習は、簡単にできたり、楽しんだりするために作られてはいない。 - The shot fake is the least used skill on offense. Why would you ever shoot under pressure? An effective shot fake creates an offensive advantage.
シュートフェイクはオフェンスで最も使われていないスキルだ。どうしてわざわざプレッシャーのある状況でいつもシュートを打つんだ? 効果的なシュートフェイクは、オフェンスのアドバンテージを作り出すのだ。 - We did partner shot fake drills for a few minutes every practice.
私のチームでは、毎回の練習で、2人組のシュートフェイクのドリルを数分間行っている。 - Offensively, stay away from the baseline. The baseline is the best defender in the game!
オフェンスでは、ベースラインから離れてプレイしろ。ベースラインはバスケットボールという競技において最高のディフェンダーだからだ。 - What is the best thing you can do in a close game? Drive to the basket and put pressure on the defense! Not jack up jump shots.
接戦になったときの最高の選択とは何か? それはゴールにドライブをしかけることとディフェンスでプレッシャーをかけることだ。ジャンプシュートに逃げるなんてことは絶対にするな。 - Driving to the basket creates easier shots, better passing angles, and puts the other team in foul trouble.
ゴールにドライブすれば、より容易なシュート、よりよいパスアングル、相手のファウルトラブルにつながる。 - 90% of all defensive fouls are committed with the hands. We do several drills every practice with the players’ hands behind their backs.
ファウルの90%は手が関係している。だから私たちのドリルでは全て、手を後ろにして行っている。 - Defense should be played with your feet and your brain, not your hands.
ディフェンスは脚と頭でするものだ。決して手ではない。 - Every drill we do involves full court transition. Even if we are working on half-court offense, the defense will go in transition after a rebound or made shot.
私たちのドリルは全て、トランジションを視野に入れている。たとえハーフコートオフェンスの練習だとしても、ディフェンスがリバウンドをとるか、シュートを決められるかした後のトランジションのところまで練習をさせている。 - Basketball is a full court game, so every drill must be done full court.
バスケットボールはフルコートのゲームだ。だから全てのドリルはフルコートで行うべきだ。 - At any point during practice, call a time-out. Huddle the players and give them 4 or 5 specific instructions. Then send them back on the court. Wait 15 seconds and then ask them to write down the 4 or 5 things you asked them to do. It is scary how little they will recall.
練習のどんなタイミングでもタイムアウトを挟む。選手を集めて、4つか5つの具体的な指示を出す。選手がコートに戻して、15秒が経ってから、やるように指示したことを選手たちに書き出させるようにしている。そうすると、選手たちが全然思い出せないことに寒気を覚えるものだ。 - Players must be able to carry out simple instructions from the bench to the court. If they can’t, then they can’t play.
選手は誰でもベンチからコートへの単純な指示を伝えられるようでなければならない。それができない選手は、プレーすることはできない。 - Defense 101: When the ball hits the floor, defensive help is mandatory.
ディフェンスの基本。ボールが床に着いたら、ヘルプの義務が生じる。 - Shoot FT’s at scheduled intervals during practice, not before/after. Do it when they are tired. Add pressure to every FT (run sprints, etc.).
フリースローの練習は、練習の前でも後でもなく、計画的に練習の途中に挟むようにする。フリースローを打たせるのは選手が疲れたときだ。そして、外したら走らせるなどプレッシャーを与えて打たせる。 - First stat I look at after the game – did we make more FT’s than our opponent shot? If so, we usually won.
試合後にまず注目するのは、自分たちは相手よりも多くのフリースローを打ったかどうかだ。もしそうなら、大抵は試合に勝っている。 - Every halftime, find something the team needs to improve. Also acknowledge something they did well.
ハーフタイムではいつも、改善すべき所を指摘しなさい。そして、うまくやったところも選手たちに伝えてあげなさい。 - From October to Christmas break, our practices were 2 hours and 15 minutes. Every practice after that was 1 hour and 30 minutes tops.
10月からクリスマス休暇の時期には、練習は通常2時間15分行うが、その後の時期になったら1時間半が最長である。 - Offense 101: Move the ball against the zone. Move players against man to man.
オフェンスの基本。ゾーンに対してはボールを動かせ。マンツーマンに対しては選手が動け。 - Offense 101: Passing is your best weapon against man to man. Dribble penetration is your best weapon against zone.
オフェンスの基本。パスはマンツーマンに対する最強の武器だ。ペネトレイトはゾーンに対する最強の武器だ。 - When playing vs. man to man, the defense decides who guards who. When playing against zone, the offense decides who guards who.
マンツーマンを使うチームと戦う場合には、ディフェンスの側が、誰が誰のディフェンスをするのかを決定する。ゾーンの相手と戦う場合には、逆に、オフェンスの側が、誰が誰のディフェンスをするのかを決定することになる。 - Pass fakes make the zone move. Use them!
パスフェイクを使えば、ゾーンを揺さぶることができる。だから、どんどんパスフェイクを使え。 - Coach Knight to player, “Son, you should try thinking sometime. It’s really a neat experience.”
私はいつもこう話す。「君は常に考えようと努力しなければならない。それが真に素晴らしい経験になるからだ」。 - Screening is the most underutilized, yet most effective weapon an offense has.
スクリーンは最も活用されていないが、元来オフェンスにとっては最も効果的な武器である。 - The toughest offense to guard is one that has 5 players constantly moving. 5 players that must be guarded.
守ることが難しいのは、五人が常に動き続けるオフェンスだ。ディフェンスからしてみれば五人全員を守らなければならないからだ。 - Don’t complicate winning.
勝つことを複雑なことだと考えてはいけない。 - More games are lost by dumb than are won by smart.
バスケットボールの試合では、大抵の場合、賢いほうが勝つというよりも、むしろ愚かな方が敗けると言える。
出典:34 Knight-isms for Coaches|Stronger team
※本記事は出典元の許諾を得た上で、全文翻訳の形で掲載しております。
この記事の著者
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1981年川崎市生まれ。現在、上智大学哲学研究科特別研究員(専門はギリシア哲学・倫理学)、日本バスケットボール学会理事。2005-07年には、上智大学男子バスケットボール部アシスタントコーチを務めた。
主な訳書
マイク・シャシェフスキー著『コーチKのバスケットボール勝利哲学』(イースト・プレス)
同著『ゴールドスタンダード 世界一のチームを作ったコーチKの哲学』(スタジオタッククリエイティブ)
アダム・フィリッピー著『バスケットボール シュート大全 プロスキルコーチが教える「シュート」のテクニック・ドリル・方法論』(同)
ジョルジオ・ガンドルフィ編『NBA バスケットボールコーチングプレイブック』(同)
フィル・ジャクソン著『イレブンリングス 勝利の神髄』(同)
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