講演レポート【コーチKに学ぶコーチング哲学勉強会】

Mike Krzyzewski talks to his team during a timeout

2014年2月7日。NCAAの名門DUKE大学、及び、アメリカ代表チームの監督を務めるコーチKのコーチング哲学を学ぶ勉強会(主催:株式会社UPSETきゅぽらスポーツコミニティ 協力:ゴールドスタンダード・ラボ)が開催されました。講師は、書籍翻訳者として活躍し、当ラボ運営者の1人である佐良土茂樹が行ないました。

  

全体の開催レポートについては、上記UPSETのHPに掲載していますが、ここでは、『チーム』についての項目の内容を紹介します。当日の資料やコーチKの言葉(原文)・翻訳と共にご覧ください。

リンク:コーチKの勉強会 開催レポート

コーチKの言葉

原文と訳文

Never set a goal that involves number of wins―never. Set goals that revolve around playing together as a team. Doing so will put you in a position to win every game.

「絶対に勝利数を目標にしてはなりません。絶対に! むしろ、チームとして一丸になってプレイする事を中心に据えた目標を立ててください。そうすることで、あなたたちは毎試合で勝てるようになるのです。」

We have five new managers in this team. Do you know their names? If you own the program, you know every person on the bus. Who cleans our locker room? Felipe does. Who cleans our practice facility? Stephanie does. Who cleans our offices? Celestina does.

「うちのチームには5人のマネージャーがいる。君は、彼らの名前を知っているか?もし君がこの部に対して当事者意識を持っているなら、チームにいる全員のことを知っているはずだ。誰がロッカールームを掃除してくれる? フェリペだ。誰が練習の道具を管理してくれる? ステファニーだ。誰が部室の部屋を掃除してくれる? セレスティーナだ。」

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I genuinely care for each and every one of them, and after our time together while they are at Duke, I will continue to care about them.

「私は選手ひとりひとりを本当に心から大切にしたいと思っています。彼らとデューク大で一緒にいる期間が過ぎ去ったあとでも、彼らのことをずっと気にかけることでしょう」

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The five individuals on the court must act as one. A fist is far more powerful than five fingers held outstretched.

「コート上で5人は『こぶし』のように、ひとつにならなければなりません。『こぶし』は5本の指が伸びている状態よりもはるかに強いもの
なのです。」

Our students actually feel like they are part of the team. They are truly our “Sixth man”.

「デューク大の学生たちは、実際に自分たちがチームの一員であると感じています。チームが彼らを楽しませるのではなく、彼らのチームの一員なのです。…応援してくれる人々はまさにチームの『シックスマン』なのです」

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訳文

「あなたは、チームというものによって、自分だけでは成し遂げる事ができない数多くの事を達成しうる可能性を手にする。それゆえ、誰もがチームの一員になるのは特権だと理解し、その考えをチームに浸透させるべきである」

「チームは私たちみんなのものです。そして、わたしたちみんなに、チームを支えて、チームが持っている価値観を守り抜く責任があります」

「わたしはマネージャーたちにも自分の仕事に対して『負けたくない』という気持ちをもってもらいたいと思っています」

「コミュニケーションのシステムを構築しようとする時に、私が強調しているのは『誠実さ』だ」

「コミュニケーション、信頼、尊敬が時間をかけて育っていくと、あなたのチームはよりいっそう強固になっていく」

「信頼し合える関係を構築する為に欠かせないのは『対立』です。私はそれを否定多岐なものとはとらえていません。それにとって、結果的に真正面から真実に向き合えるようになります」

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講義の途中には、上記の一覧にもあります「うちのチームには5人のマネージャーがいる。君は、彼らの名前を知っているか?」について参加者からも質問がありました。

一般的に、バスケットボールが上手い選手には、そのような道徳性の強い話をしすぎると、逆にソッポを向かれるケースもあると思う。強い個性を持った選手に対して、そのような周辺の人間への感謝の気持ちを持つ事の重要性を持ってもらう為、コーチKの取り組みで知っている事はありますか?

それに対しては「まず、コーチK自身が、誰よりもチームの活動を支えてくれる人に敬意を持って接しているし、実際、選手やスタッフの誰との関係を比べても、清掃員やマネージャーの方との人間的な結ぶ付きが深い」と返答があり、質問者だけではなく、参加者一同、腑に落ちたような表情が印象的でした。

元々、翻訳者の佐良土は、米国留学中にDUKE大学のチームワークに衝撃を受け、その中心にいるコーチKという人物に関心を持っており、自身の哲学の研究と合わせ、「尊敬するコーチの考えを自分の母国語でもっと深く探究したい」と翻訳を進めていたことが書籍化のきっかけとなった。これを機に、名コーチの書籍や、原著を読んでみてはいかがでしょうか。

下記、講義の中で紹介された書籍、英語学習用としても活用できる音声ブック、また、他のコーチ翻訳本を列挙します。

言語に限らず(どの言語でも!)、優れたバスケットボールコーチの書籍がありましたら当ラボまで御連絡の程、宜しくお願い致します。

【参考】

講演の中で紹介された文献

   

音声資料

※英語の勉強としてもお勧め(講師談)

 

それ以外の海外コートなどによるバスケットボール書籍

   

この記事の著者

片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。