新年度の決意を後押しする「伝説のトレーナー」ティム・グローバーの言葉

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まもなく4月も半分を過ぎようとしています。4月からは新年度ということで、新しい環境での生活やチャレンジに挑む方も多いことでしょう。

新年度の抱負や目標はもう決まりましたか? まだという方のために、まず目標設定についての秘訣を記すことにします。そしてすでに決意したことがあるという方は、マイケル・ジョーダンの専属トレーナーとして伝説になったトレーナー「ティム・グローバー」の著書から、あなたの決意をさらに確固たるものにするための珠玉の言葉の数々をご紹介しましょう。

目標設定のポイント

スポーツにおいてはもちろん、勉強や仕事においても、正しく目標を設定することはパフォーマンス向上に優位に働きます。これは単に目標を達成するために行なうのではなく、最も大切なことは、目標を設定することによってやる気を高めることにあります。従って、あまりに簡単に達成できうる目標は適切とは言えません。ここでいくつかの実験の例を見てみましょう。

東京学芸大学教育学部の杉原隆教授と、宇都宮大学教育学部の海野孝教授による『立ち幅跳びの成績に及ぼす目標の効果』によれば、110%の記録を目標に設定したグループ」が最も記録を伸ばしたとされています。

小学生に立ち幅跳びを2回行なわせ、1回目の記録を100としました。そして2回目は小学生を五つのグループに分け、グループAには目標を設定せず、B、C、D、Eのグループには、それぞれ1回目の記録の100%、110%、120%、130%の目標を設定しました。この図では、1回目の記録に対して2回目の記録がどれくらい変化したかを折れ線グラフで示しています。目標を設定しなかったグループAの記録は、1回目よりも平均して記録が下がっています。これに対して、グループBは2.3%伸び、グループCは5.5%、グループDは4.5%、グループEは3.4%と、それぞれ記録を伸ばしていることが分かります。

mokuhyo引用:『バスケ脳力』ブライアン・マコーミック、 真下一策、児玉光雄著(スタジオタッククリエイティブ、2012)より

そしてもう1つ、ハーバード大学のデビッド・マクルランド教授が行なった、輪投げを用いた実験をご紹介します。

学生に輪投げをさせ、的までの距離を自由に設定してよいことにしました。いくつものグループに分けて行なった結果、5回中3回入る程度の距離に設定したグループのやる気が、最も高いということが分かりました。そして5回中5回と、5回中1回入るか入らないかという距離のグループが、最もやる気が低いという結果も得ました。つまり5回中3回、6割程度の確率で達成できるような目標を設定するとやる気が高まるということです。

引用:同上

これらのことから、「自分にとって確実に達成できるような目標は意味をなさないということ」が分かります。自分が達成しうるレベルよりも少し大きな目標を設定することで、やる気を高め、それを達成するための努力がパフォーマンスの向上に繋がるということです。

目標達成のための「超一流」の思考法

さて、4月25日前後と発売が迫っていることもありますので、新刊『リレントレス 結果を出す人の13の法則』ティム・グローバー著 栗野譲訳(スタジオタッククリエイティブ、2014)の中から、いくつか印象的な言葉を引用してみます。

本書は唯一無二の超一流トレーナーであるティム・グローバーが、「成功とは何か」「超一流の人間はどのように考え行動するのか」といったことを記した、人生のバイブルとなりえる1冊です。「リレントレス=Relentless」とは、「容赦ないほどに」「執拗に」「非情なほどに」といった意味で、「迷わず、とにかく『やる』のだ」という本書の主題を表した言葉です。詳しい説明については以前もブログに綴っていますのでそちらをご確認ください。

まず本書は導入の後に、13の考え方についてそれぞれの章がありますので、それぞれの章で印象的な言葉を引用します。その前に、度々引用文に出てくるであろう「クリーナー」という造語については、上記のリンクを参照してください。

他人が満足しているときに、自身をより高め続けなければならない

毎日、我々はやりたくないことをしなければならない。毎日不愉快なことに挑戦し、無気力、怠惰、そして恐怖を押しのけなければならない。そうしなければ、次の日にはやりたくないことが2つに増え、その後も3つ、4つ、そして5つに増え、しばらくすると最初の位置に戻れなくなってしまう。

不快になることに快適さを感じるか、そうでなければどこか違う所へ行って負け犬になればいい。

ゾーンに入り、外部を全て遮断しコントロールできないものを全てコントロールする

マイケルとほかの選手を比較して1つだけ違っている要素があるとすれば、それは雑音や他人の声を退ける圧倒的な能力を持っていたということだ。彼は凍りついているかのようで、彼の頭の中には何者も入り込むことができない。観衆、マスコミ、父親の死、どんなことが起きても、コートに立ったときは、攻撃をしてゲームを支配することしか頭になかったのだ。自分から入れたいと思う情報以外、全てを排除できる完璧なバリアを作れるのは彼しかいない。

自分が何者かを熟知しているだろう

何があなたを邪魔しているのだろうか? 言われた指示に従い、決められたレールの上で過ごして、それなりの成功を収めることができるのだろうか?

自分がすでに分かっていることを、教えられるまで待つのは終わりにしよう。ダイエットや運動に関する本が、年間で一体何冊発売されているだろうか。断言しよう。こうした本を手にする人々は、もっと健康的な食生活を送って身体を動かせばよいという答えを、全員がすでに知っているのだ。どのやり方で食事制限しようと、どのやり方で運動をしようと、最終的な結果はほとんど変わらないということを自覚しているはずだ。自分で何をすべきかを知っているのにその本を買う。それは単純に、他人に発破をかけてもらいたいだけにすぎないのだ。

あなたは利口になることを拒むダークサイドを持っている

自分の秘密、自分を手助けしてくれたもの、欲求、貪欲さ、エゴ…本当は感じてはならない渇望。それがあなたのダークサイドであり、あなたにはそれが必要なのだ。それこそがゾーンに接続するためのリンクであり、達成したい目標を成し得るための要素だからだ。

もし、いつも利口に規則を守って賭けに出ることがなければ、あなたは今程成功できただろうか? きっとあなたは、ほかの人々と同じように失敗を恐れて、誰かに気に入られることばかりを気にかけていただろう。

プレッシャーを避けるのではなく、作り出すのだ

私は「プレッシャーに耐えられない」という言葉を聞きたくはない。どのような人間でもプレッシャーに耐えることはできる。多くの人々は楽をしたいため負けることを選択するのだ。もし成功したければ、日陰から出て日の光を浴びなければならない。太陽の熱さと比べて、日陰は涼しく快適なので、それが容易ではないことは理解できる。しかし不快な環境に耐えられなければリレントレスになることはできないし、仕方なくプレッシャーに対応しているようではアンストッパブルになることもできない。

皆が緊急ボタンを押しているとき、それはあなたを探しているということだ

ほとんどの成功者は、どんな状況でも反応できる本能を兼ね揃えている。振り出しに戻ったり、もっと動画を観たり、会議を計画したり、会議で語ったことを復習するためにまた会議を計画したり、多くの人がするように難しい決断を先延ばしにするようなことはしない。

誰かと競争するのではなく、相手の弱点を見つけて攻撃する

マイケルがそこに入ったとき、スコットはハムストリングの治療をするためにテーブルの上で横になっていた。マイケルはテーブルを掴み、スコットを乗せたままひっくり返しのだ。「俺は昨日48分も出たんだぞ!」と彼は怒った。「俺は身体中ボロボロなのに、お前はたかがハムストリングが痛いだと? 今すぐ練習するぞこの野郎!」。マイケルは自分のレベルに合わせるか、さもなくば退けと言いたかったのだろう。

あなたは提案するのでなく決断を下す。皆がまだ質問しているときに、あなたはすでに答えを知っている

コービーが行なうワークアウトは1回につき90分に渡るものであり、そのうちの30分間は手首、指、そして足首に費やす。全て細部だ。最高峰に君臨する人間は、細かい部分に重点を置くことによって向上を果たす。毎回のワークアウトで、彼は私を睨みながら聞いてくる。「後は何が残っているんだ?」。厳しくて退屈な練習であるため、時にはリングが地上300メートルの所にあり、鉛でできたブーツを履いているような感覚になるようだ。しかし彼は、シュートを決められなくなったら全てを失うためその作業を繰り返す。そう、自らが選択したことなのだ。

その仕事に愛着を持つ必要はないが、結果にはこだわる

もし自分が…何だ? もっと時間を費やして努力をしていたら? 成功しているあの人と同じように決心できていたら? あの人と同じ代償を払っていたら? その人はあなたができないことをしているのだろうか。思った通りだ。あなたは同じように頑張れる。いや、むしろもっと頑張れるはずだ。何があなたの邪魔をしているのだろうか。そして、そうした人と同じ方法でできないならば、何故自分のやり方で行動しないのだろうか。

周りに好かれるよりも恐れられることを好む

あなたは心配する側になりたいか、それとも沈黙によって相手を不安にさせる側になりたいだろうか。この要素が、コービーを歴代トップ選手の1人にさせているのだ。彼は、自分が何を考えているのか、何をしようとしているのかを語らない。ただやるのだ。次の行動で相手を恐れさせ、実行力で尊敬を得るのだ。

あなたは少数の人間しか信じず、その信頼している人たちは絶対にあなたをがっかりさせてはならない

自分の夢を追いかけない人間であれば、恐らくあなたに夢を追いかけることを薦めないだろう。自分に対するネガティブな言葉をあなたにも投げかけるだろう。クリーナーは数少ない人しか信頼しない。彼らはほとんど毎回自分の本能に従い、問題があれば後で状況を改善する。他人を信頼した後で、自分の直感に従わなかったことに対して後悔したくないのだ。もし失敗するのであれば、他人に言われたことに従ったからではなく、自分が決断したことで失敗したいのだ。

あなたは失敗を認識することはなく、欲するものを手にするための手段が1つ以上あることを理解している

もし卓越性を求めるのなら、何かを犠牲にする意志を持っていなければならない。それが成功するための代償なのだ。初めて苦汁を飲まされるまで、自分がどれほどそれを欲しているか実感できないものだ。しかし、一度味わったらもう二度と飲みたくないと必死になることだろう。ベンチに座るか、お金を失うか、または誰かが自分より先に出世するかもしれない。ほかの人間なら諦めて、あなたにも同じように勧めてくるかもしれない。しかし、あなたは他人に勧められたからといって諦めるのか、それとも自分の意思で諦めるのだろうか? ほかにできることはないのか? 状況を打破するための怒りは心の中に残っているか?

あなたはより多くを求めるため、達成したことを祝うことはない

私がコービーと一緒に仕事を始めた頃、ジュワン・ハワードがある試合の後にコービーに会いに行き、私と一緒に仕事をしてきた経歴を話し、そのおかげで長くプレイできているのだと伝えた。そして彼はコービーに後何年プレイしたいのかを聞いた。その答えは「6つ目を手にするまでだ」だった。

いかがでしたか? 本書の引用は皆さんの背中を押してくれるであろう言葉と、バスケ好きなら詳細が気になってしまうようなエピソードの中から抜粋しました。これらの言葉が少しでも皆さんの力になればと思います。

この記事の著者

岩田 塁GSL編集長
元・スポーツ書籍編集者。担当書籍は『バスケ筋シリーズ』『ゴールドスタンダード』『シュート大全』『NBAバスケットボールコーチングプレイブック』『ギャノン・ベイカーDVDシリーズ』『リレントレス』他