「観客席で応援をしている選手も本当はプレーをしたい。コーチ同士で力を合わせ、皆で若い選手を大切に育んでいく事が重要です」Euro Basketball Academy Coaching Clinic(2018年11月15日)レポート

2018年11月15日、大宮北高校にて、トーステン・ロイブル氏が講師を務めるEuro Basketball Academy Coaching Clinicが開催された。

今回は“3×3 – the new tool for skill developmentーHow to use 3×3 in daily practice to develop important skills for the basketball game-”がテーマ。3×3を競技単体で捉えるのではなく、5人制フルコートバスケットボールでの選手強化という視点から考える事がポイントだ。その見地から3x3という競技を眺めた際に見えてくる活用方法や特徴について紹介された。

講義の中、トーステン・ロイブル氏は、3×3について「選手育成の為の非常に素晴らしいツールである。ドイツ、セルビアなどでは3×3の有効性に気が付いて、積極的に活用している」と欧州各国での状況を述べた。続けて「3×3はバスケットボールの楽しさや醍醐味を味わえる競技である。コーチの皆様には、若い選手にこそ、3×3に積極的に取り組ませて欲しい」と参加コーチに呼びかけた。

◇3×3は普及、強化の両面で非常に有効なツール

勿論、3×3をただ単に取り組む事だけで直ぐに5対5への効果が見込めるわけではない。まずは、3×3と5対5の共通点、相違点などの特性をコーチが理解する事が必要だ。それを選手にも伝えた上で中期的な視点を持って取り組む事が重要だ。そこをクリアすれば、3×3は普及、強化の両面で日本バスケットボール界の発展に貢献する素晴らしいツールになるとロイブル氏は確信を得ている様子であった。上記の条件が揃った際、選手は『競技の持つ本質的な楽しさ』を享受できる、という。

国際バスケットボール連盟(FIBA)が正式なルールを設け3×3という競技を発足させたのは2007年とある。近年、日本各地域、3×3の大会運営は非常に盛んだ。各団体の運営努力により、特に成人以降の世代で競技愛好家を着々と増やしているように感じる。2020年東京五輪で正式競技として採択された後押しもあり、普及速度が加速している。「やるスポーツ」としても勿論、「見るスポーツ」・「支える・運営するスポーツ」としても規模を拡大中だ。新規運営法人や、スポンサー企業などが数多くバスケットとの関わり合いを増やしている。

◇「3×3の存在は知っている。しかし、良く分からない。」

反面、育成世代のコーチに対する3×3認知度は決して高くは無いように感じる。Euro Basketball Academy Coaching Clinic開催時、コーチの方々にヒアリングすると、「3×3の存在は知っている。しかし、生で観戦した事が無く、良く分からないのが現状」、「自分自身も競技経験も無く、競技の実感を掴みにくい。3×3を学ぶ機会も少ない。その為、指導の中で取り入れた経験も無い」、「(U12、U15の世代で)3×3の大会も少なく、対外試合をした事も無い。知識や経験もアップデートされていかず、どうしても5対5の指導の為の勉強などを優先していた」という声が聞かれた。

反面、続く言葉では「3×3をどのように練習の中で活用するのかに強い興味があった」、「非常に面白そうな競技なので、体系的に知識を学び、指導に活かしたい」という声も聞かれた。いわば、本クリニックへの参加動機である。

諸々を踏まえると『3×3が好きか嫌いか、有効だと思うか、そうは思わないか』という議論の前に、まだまだ育成世代には馴染みが薄い競技であるのが現状ではないか。前述の通り、トーステン・ロイブル氏の言葉からは3×3に大きな可能性を感じている事が推察された。3×3を有効的に使えば、普及にも強化にも素晴らしいツールになると確信を得ている事が分かった。反面、育成世代のコーチ、特に、選手に質の高い指導を提供したいと願う勉強熱心なコーチにも、その魅力は十分に伝わっていない様子であった。

現状を踏まえ、GSLではクリニックで紹介された概要を共有する事は意義のあることであると考えた。WEB記事という性質上、オンコートクリニックでの内容は割愛した形になる。「正しい指針と共に3x3を通じて数多くの経験を積めば」という単語が数多く登場するが、技術的な事は本稿では表現しきれていない事はご了承いただきたい。下記、項目別にキーワードを中心に箇条書きで投稿とする。

記事後半では、育成世代の選手を取り巻く競技環境を踏まえ、一人一人のバスケットボール選手の競技人生に向けたトーステン・ロイブル氏の想いも記載している。コーチ同士が連携、協力する事が、より良い競技環境の構築に繋がっていくとGSLでも信じている。是非、目を通していただければ幸いです。

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Euro Basketball Academy Coaching Clinic
3×3 – the new tool for skill development
How to use 3×3 in daily practice to develop important skills for the basketball game
スキル指導の為の新しいツールとしての3×3について。
~重要なスキルを習得する為、日々の練習の中での3×3活用方法~

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0、オープニング

 

・報道にもあった通り、3×3のディレクターコーチ / ヘッドコーチという役割をいただきました。2020年東京五輪に向けた強化体制の構築、素晴らしい準備が出来るように全力を尽くしたいと思っています。以前とは日本バスケットボール協会での役職が変わりましたが、引き続きビッグマンエリートアカデミーなどで5対5にも関わっています。

・普段と異なる3×3というテーマの中で、多くの方に参加いただいて大変嬉しく思っています。3×3のPRに来たわけではありません。これまでのEuro Basketball Academy Coaching Clinicを踏まえ、5対5を意識した内容です。タイトルの通り、3×3と5対5へ展開する中で有効な方法や考え方についてお話したいと思っています。皆様に、クリニックに参加したこと後悔させないように頑張りたいと思います。宜しくお願いします。

 

1、3×3の特徴。競技適性のあるパーソナリティーについて

ます、3×3の特性や、3×3という競技に適性のある選手の特徴を紹介します。それは同時に、3×3を通じて伸ばす事が出来る能力という風に言い換えられる事が出来ます。

・Positionは2~4番(SG~PF)
3×3を通じて、いわゆる正統派のPGを育成する事は難しいです。3×3のショットクロックは12秒と非常に短く、ゲームをコントロールしたり、オフェンスをコーディネートしたり、そういう能力を発揮できず、伸ばせない。まず、その事を最初に知ってほしいと思います。また、一般的にPGはサイズが小さい選手が多いが、3×3ではサイズの小さい選手が5対5よりも不利になる。なので、比較的にサイズのある選手が活躍しやすい競技です。

・伸ばせる能力はSG、F、PFのプレー領域
3×3の競技に取り組む事で、伸ばせる能力はSG、F、PFのプレー領域です。サイズのない選手が不利になる事も書いたが、12秒という短いショットクロックの中で攻防が繰り返される為、「サイズがあるが、機動力に欠けるサイズのある」選手も、どちらかというと3×3には向きません。

※記事制作者注
「冒頭、この事を御伝えしておきたい」という前置きと共に上記内容が紹介された。5対5への強化に向けて3×3を活用しようとする際には、前提条件の理解が重要。「3×3の特徴を正しく理解して」というフレーズも随所に発せられた。

・Contact game
・3×3では、Contact Game(身体接触)への耐性がある選手が望ましい。コンタクトを好む選手が活躍できるし、そこの部分を向上させることが出来る。元々、3×3はストリートバスケットボールから派生し、ルールが整備され、現在の形に至った。その背景もあり、とてもコンタクトが多く、それも激しい特徴がある。

・1on1 SKILL
多くの場合、アイソレーション、そしてポストアップがプレーの起点になる。3×3ではチームディフェンスで個人の弱みを誤魔化したり、隠したり、カバーする事が出来ない。必然的に1対1のスキルが必要になる。

Transition Ability
12秒のショットクロックという非常に速い中でゲームが展開される。クローズアウトに出ないといけない。オフェンス終了後、直ぐに切り替えてマッチアップをしないといけない。結果、とてもタフな競技になり、トランジション能力が磨かれる。

STRESS RESISTANT
短いショットクロックで展開が目まぐるしくなる。狭いコートで激しいコンタクトが何度も発生し、とても強いストレスにさらされる。それが選手をタフに、メンタル的にも強くする。

・LOWER GAME IQ TOLERABLE(寛容)
5対5では賢い選手が非常に重要。3×3でも賢い選手がいる事に越したことはないが、いわば、そうではなくても戦える競技です。それは、ゲームがとてもシンプルで、必要以上に複雑ではない為。細かな事を気にせずに、シンプルな勝負を繰り返す事が出来る。なので、競技経験が浅く、GAME IQが低い選手でも楽しめ、活躍できます。若い選手にとっては、とにかく競技を経験し、そこから学んでいく事が重要。その繰り返しで、タフで、そしてSMARTな選手の育成する事が出来ます。

2、BENEFITS OF INDIVIDUAL(個人スキル向上へ期待できる部分)

・SKILL LEVEL UP
3×3では何度も勝負の局面が訪れ、選手は10分間の中で場数を踏む機会が多い。何度も挑戦し、または相手に挑戦される事で、ある程度の部分までは、自動的にスキルアップをさせる事が可能です。

・1 on 1 POST DEFENSE
個人技能向上という観点では、3×3はPost Deffense能力向上に向けた優れたツールでもある。広いスペースを3人で競い合う事が理由。3×3の国際大会を見ているとOff/On ball screenでは多くの場合、Switchで守るケースが多くなる。Miss Matchを狙ってPost attackをされるケースが多く、それが選手の実戦経験を育むことになる。

例えば、日本のU-22世代と、同世代の欧州と比べると、Post Deffenseに対する戦略性で差があると感じる事もある。身体の当て方、手の使い方、ハンドワークとステップワークなど、多くの要素があるが、そもそもゲームの中で経験則が少ないように感じる。

・多くの場合、皆さんのチームは、ビッグマンが少ない中で苦戦しているでしょう。もし、チームに3人も4人もビッグマンがいるのであれば、、、それは素晴らしい事で、祝福の言葉を伝えたいほどです(笑)。当たり前のことですが、ビッグマンが少ないとしても、守れる選手がいれば良い。F、PF選手のポストディフェンスも同様に重要で、3×3を通じて経験値を積み上げる事が出来る。Post Deffenseの向上は5対5でも確実に活きてくるスキルです。

 

・LEARN CONTACT GAME

3×3はコンタクトが非常に多い競技※です。ハーフコートで実施され、12秒というショットクロックがゆえに、短い時間の中、何度も接触で勝負をする機会がある。ドライブへのDFと同様に、5対5では、コンタクトの弱さをチームで誤魔化したり、助け合うことが出来る。しかし、3対3の場合は、そうもいかない。それを通じ、コンタクトの重要性や、コンタクトへの耐性を学ぶことが出来る。バスケっとプレイヤーはソフトではいけない。強くある必要性がある。

※同時に、3×3におけるファールの基準で多くの方が困惑している現状についての言及があった。3×3はコンタクトが多い競技であるだけに、ファールの基準については慎重な議論が必要。今後の活動を通じて皆様にも理解しやすい形でお届けできるようにしたいと語っていた。

また、あくまでも個人的な見解、と前置きされた上で、コンタクトに対する考え方が紹介された。まず、欧州のゲームは非常にコンタクトが激しいという前提の上で、「DFが、正しいポジションに、正しいタイミング、正しい姿勢だったか否か」について考察する事が競技の理解を深める助けになる、という。

・HANDLE STRESS
3×3をプレーする選手は様々なプレッシャーを味わう。重複になりますが、12秒のショットクロックプレッシャー、コートの狭さゆえにボールマンディフェンスのプレッシャーも非常に激しくなり、その中でプレーする必要がある。パニックにならないように、ストレスを扱って、それを乗りこなす必要性がある。まず、過酷な状況を経験する事で、耐性が身に付く。早いショットクロック、タフなコンタクト、それらを乗り越え事でタフなメンタリティを習得する助けになる。NBA経験もあり、3×3にも取り組んでいる選手は「通常の5対5はフルマラソンのようなもので、3×3はいわば”10 minutes Sprint”(10分間のスプリント競技)であると感じる」と表現もしていた。

上記の項目を改めて見てください。5対5でも生きるプレーではないですか??3×3という項目を消してみてください。何か異なる部分はありますか?上記の要素が向上すれば、5対5のゲームでも10-15点近くの上乗せが期待できるのではないでしょうか??

続いて、5対5のチームプレーの向上の観点から期待できる部分を紹介します。

3、FOR 5on5 GAME TEAM(5対5において向上が期待できる部分)

・Spacing and Cut Timing

3×3の基本戦術はDRIVE&KICKとポストアップのゲーム。Driveに対する合わせのSpacing,DFが目線を切っているときのCutting,Backdoorなどの判断を要する場面が非常に多い。3×3と5対5で人数の違いはあるが、基本的な原理・原則は同じ。それらの経験はゲームでも生きてくる。

ゲームの中で、何度も何度も、Spacingや、Cuttingについて判断や実行を要する場面が発生し、オフェンスでもディフェンスでも数多く経験する。それを通じて学ぶことが出来る。その経験は5対5でも活きてくる。*本稿では割愛するが、クリニックの冒頭では、ドライブへの合わせのSpacingなどを整理した上で実戦形式の練習へと移行した。

・Drive & KICK GAME
特に、多くの場合、ドライブインのシチュエーションが発生する。自分でシュートするケースもあれば、Helpが出てきた際にキックアウトし、キャッチ&シュートかカウンタードライブという攻防になる事が多い。凄くシンプルなゲームで、その攻防を何度も味わう事は、5対5でも非常に重要な事。Hellpとの駆け引き、Kick pass、さらにはインサイドの選手へのdish pass ,lap passの判断力を磨くことが出来る。DFにとってもHelpディフェンスの練習、Close outの練習を何度も積むことが出来る。

・ATTACK SWITCH
3×3では、on ball screen、off ball scren問わず、Switchを基本戦術とするケースが多い※1。Big(インサイドの選手) vs Small(アウトサイドの選手)のMiss Matchを狙ったインサイドの攻防だけではなく、アウトサイドでの、Small vs BIGの攻防も発生する。

近年、on ball screenに対し、Switchで対応するケースも非常に多くなってきている。その為、アウトサイドの選手が、インサイドの選手を1対1で仕掛けてクリエイトする能力は非常に重要なスキルになる。DFにとってもBIGマンがアウトサイドの選手を1対1で守る能力があれば戦術の幅が拡がる。

さらには、スペイン、カナダ、ドイツ、イタリアなどの国では、ショットクロックが少なくなった際のon ball screenに対してはSwtichで対応※2をするなど、状況に応じた細かな戦術なども見受けられる。それらの練習を、10分間のゲームで何度も経験できる。その経験は5対5でも活きてくる貴重な経験である。

※1
on ball screenへHard Showで対応をした際、 ボールマンの自由を奪う反面、ゴール周辺にSpaceを与えてしまうリスクがある。5対5の場合は、残り3選手の連動性でスペースを潰し、リスクを軽減できる。Show Hardが効いて、苦し紛れのパスとなれば、そのボールをスティールする事も出来る。しかし、3×3の場合は人数の関係で対応が難しくなる。実際、ロイブル氏が視察、観戦している3×3の試合でも、on ball screenに対し、Switchで対応しているケースが多かったという。

※2
10秒以下でon Ball screenが行われた際、上記の国ではSwitchで対応する理由にはショットクロックが大きく影響する。理由は、ミスマッチが発生したとしても、組み立てる時間が少ない都合、オフェンスの成功率が下がるという考え方より。勿論、その戦術を想定し、Big(インサイドの選手)がSmall(アウトサイドの選手)にマークする練習が必要であるし、SmallがBigのポストプレーを守る為の訓練も必要で、練習カリキュラムに加えて準備しておく必要性がある。U-19ワールドカップでもスペインが上記の戦術を多用してきた。日本代表とスペインの対戦では、スペインのBigマンがボールマンに対してSwitchして来た際、西田優大などが冷静に対処。Switchした事を確認すると、リトリートドリブルなどでスペースを取り、十分な間合いを図った上でプルアップからの3Pシュートを沈めた。

・SCREENING SKILLS

3×3はドライブ&キック、ポストプレーのゲームを基本戦術とするが、勿論、スクリーンプレー(Off ball Screen)をきちんと使えれば、非常に有効である。

日本の試合を見ていると、多くの場合、エアスクリーンになってしまっているケースが多い。強豪国に比べ、セットする側、ユーザー側、双方の知識も経験も不足している。きちんとした知識を学び※3、それを実戦で繰り返す事で、細かな部分で経験を積むことが出来る。

※3
オフェンス側にとっては、Off Ball Screenプレーからの一連の動作で的確なSEAL PLAYを遂行する事で得点に繋がる(SEAL AUTOMATICと表現)と強調した。本稿では割愛するが、オンコートでのクリニックでは具体的なシチュエーション、身体の使い方、スキル説明まで細かく言及された。Spacing(コートと人数)の都合、Switchが多くなるのであれば、的確なSeal playが出来れば非常に有効。それは5対5でも活かされる大切なスキルである事を強調されていた。

・LEADERSHIP(no coach on Coourt!!)

3×3を通じ、リーダーシップを育むことが出来ます。これが、何よりも素晴らしいと私が感じる要素です。テニスと同じように、3×3では試合中はコートにコーチが立てません。コートサイドや観客席からの指示も出来ません。勿論、試合と試合の合間には指示が出来ますが、試合中のコーチングは許されていません。交代やタイムアウトも選手自身で行う必要性があります。

その為、選手の自主性が重要です。自分達でコミュニケーションを取り、問題解決をする事が大切になります。プレーで示すだけではなく、言語能力を駆使して問題解決をする事も重要になります。それらを通じ、リーダーシップを育むことが出来ると言えるでしょう。

以前、知り合いのコーチが、自チームの選手を3×3の大会に出場させた事がありました。試合中、選手同士で話し合い、とても上手くプレーする選手を見て「なんてことだ、、と僕がいなくても良いプレーをしているじゃないか・・」と、半ば冗談で嘆いたことがありました(笑)。

でも、それこそが良いじゃないですか?

3×3には、5対5に活きるスキルが習得する為の要素も非常に多い。その競技に、主体的に選手同士が取り組み、場数を踏む。スキルだけではなく、心と身体のタフさや、リーダーシップも育まれる。何か悪い事はありますか? 何も悪い事は無いのではないでしょうか?

・2nd Offence
若い世代になればなるだけ、オフェンスリバウンド後の組み立てがグチャグチャな傾向があります。戦略性に考えたり、適切に状況を判断する能力をもっと伸ばす必要性があります。しっかりと指針を与えた上で、事前に選手同士で話し合い、3×3の試合の中で、12秒のショットクロックのオフェンスを何度も何度も経験する。それも5対5に活きる貴重な経験になります。

※補足
コートクリニックの際、Transition Abilityに関連し、「5対5におけるフルコートDF向上に向けた、3×3の着眼点・活用方法」についての言及有り。3×3では、シュート後に直ぐに切り替えてマッチアップをしないといけない。肉体的な負荷だけではなく、マッチアップの声を出したり、マークマンの指示を味方に伝えたりすることが必要になる。その能力はフルコートディフェンスをチームで挑戦する際にも生きる能力。フルコートディフェンスが突破されたり、時間を掛けさせずに運ばれたりした際、多くの問題はコミュニケーションや切り替え能力の部分にある。3×3を通じ、瞬時のコミュニケーションの基礎、連携を鍛錬する事が出来る。サイドステップやスプリントなどの脚力的な要素に原因を求めて改善を試みるケースも多いが、コミュニケーションの部分も見つめ直すべきである、と説明された。

4、実技クリニックの内容(大宮北高校、春日部高校)

※細かな内容は本稿では割愛する。


・ドライブ&キック
・スペーシング
・トランジションからのスぺーシング →上記内容での3×3
・4ダウン、4アップと呼ばれるプレーコールの際、Off Ball screenを絡め、SEALの説明と練習
・上記内容を踏まえての実際の3×3のゲーム。春日部対大宮北という構成で4コートで実施

5、クロージング

・春日部高校が3×3に精力的に取り組んでいると聞き、とても嬉しい。感慨深い。

私が日本にはじめて来た頃に、春日部高校にクリニックにも行ったことがある。

当時、春日部高校バスケットボール部には小藤保男さん(※)という凄く明るいコーチがいて、大きい選手が沢山在籍しており、チームも非常に強く、全国大会にも出場していた。5対5のPOWER HOUSEだと思っていた。ある時、さいたまスーパーアリーナのこけら落としイベントで埼玉県の決勝戦が開催された際には、ファイナリストとして春日部高校が戦う試合も観戦したことがある。

当時、春日部高校の他には、白岡高校、大宮北高校、蕨第一中学校などに定期的にクリニックをし、日本の若い選手と共にバスケットに励んだ。日本で活動を始めた初期の記憶であり、私が大切にしている、特別な想い出の1つです。

今回、そんな春日部高校が3×3にも積極的に取り組んでいて、埼玉県の3×3選手権でも優勝している(※GSL内のFB記事参照)という知らせを聞いて、とても驚いた。

※以前、トーステン・ロイブル氏は小藤保男先生を「世界のコーチの中でも、最もポジティブで、元気なコーチの1人」と称賛していた事がある。実際、この日も「小藤保男先生」という名前がロイブル氏から発せられた際、同先生を知るコーチの方々を中心に、会場から笑い声が発生した。名前が出るだけで笑いが取れるという事も同先生が多くの方に慕われている事が伺える(←本稿著者の内輪ネタ)

・U-15世代でゾーンディフェンスを禁止しているのは、1対1を増やし、ファンダメンタルのレベルアップへと繋げる事が狙い。

※大宮北高校男子バスケットボール部と共に、デモンストレーションとして参加した春日部高校バスケ部の選手へトーステン・ロイブル氏が質問をする形式でクロージングの一部を実施。「3×3は面白かったですか?」「エキサイティングでしたか?」「ペースはどうですか?自分のスキルアップに繋がりそうですか?それは何故ですか??」という問いに対し「自分で仕掛ける場面が多い、及び、仕掛けてくる相手を守らないといけない為」と返答に対して下記のメッセージが伝えられた。

・3×3の特徴は1対1の多さです。今、JBAでU-15世代でゾーンディフェンスを禁止しているのも、1対1を増やし、ファンダメンタルのレベルアップへと繋げる事が狙いです。3×3のルールは、1on1が沢山発生するように設計されています。そして、それが選手の技能向上に非常に有効的です。シンプルに、1対1を通じ、バスケットの駆け引きを何度も何度も味わってほしい。それを通じて、楽しみ、成長してほしいと思います。

 

・3×3の競技特性は”Non Stop Competition”である事。悔しい想いを何度も味わい、感情が剥き出しになり、選手の闘争本能を滾らせる。それが成長に必要

3×3の特性は”Non Stop Competition”である事。自分のマッチアップマンが強力な選手であれば10分間のゲームの中で、ドライブされ、ポストアップされ何度も得点される。悔しい想いを何度も味わう。やがて、感情が剥き出しになる。選手の闘争本能が滾っていきます。それが良いんです。

3×3は責任が明確で、誤魔化す事が出来ない。短い時間の中で、何度も何度も標的にされる。やられ続けている選手は、相手と向かい合った際や、ポジション取りで相手を払いのけたり、大声を上げたりする。顔を近づけて闘志を剥き出しにすることもある。勿論、暴力は駄目だが、そういう経験が若い選手の闘争心を呼び覚ます。それはバスケットを楽しんだり、成長の為には必要不可欠な事。コーチの方に伝えたいのは、選手がコート上で、感情を表現する事を許してほしい(allow Emotions)という事です。

6、個人的な想いについて

・応援をしている選手も本当はプレーがしたい。あくまでも個人的な想いだが、”DNP”を日本中から無くしたい

これは個人的な想いですが、私は、3×3の魅力や価値を伝える事を通じ、日本中からDNPを無くしたいと考えています。1つのチームに30-40人と大勢の選手が所属し、試合に出場できるのは7-8人、大多数はベンチまたは観客席で、非常に熱心に、チームの為に応援をする。従来の競技文化を否定するつもりはないが、応援をしている選手も本当はプレーしたいはず。3×3であれば、1人1人に勝負の機会、成長の機会を提供できます。

・一人一人の成長が成長できる環境

JBAも、2020年の東京五輪に向けてどんどん3×3の大会を企画していくはずです。春日部高校バスケ部は、U18 3×3埼玉県選手権に複数チームでエントリーをしたと聞きました。そのように、どんどん試合に出場し、一人一人が成長できる環境を創りましょう。その後、バスケの楽しさを味わい、タフになった選手がチームに戻り、また5対5に向けた練習プログラムを組むことで、きっとチームは強くなっているはずです。

・コーチは試合中にコーチできない。選手が自分で考えて行動していく。それが良い。

講義でも説明したように、3×3はコーチが試合中に指示を出せません。ポイントを理解し、適切な考えと共にプレーすれば、心身ともに成長の格好の機会です。選手だけで試合に挑み、考えて、解決していかなければならない。良い事です。バスケットに励む若い選手の一人一人が成長していくことが大切。皆で、若い選手を大切に育てていきましょう。その積み重ねで、日本のバスケットは、今よりももっと成長できるはずです。

・一人一人を育んでいく事が重要。ドイツやセルビアは、その重要性に気が付いて、既に積極的に取り組んでいる。

1人1人がバスケットを楽しみ、成長し、皆で土台を育んでいくことが大切。その後、チームに戻って、また5対5を強くしていけば良い。強化の面でも、普及の面でも、一人一人を大切に育んでいく事が大切。ドイツやセルビアなどは、そこを凄く重視している。その中で3・3の秘めたる力に気が付き、既に積極的に3・3に取り組んでいる。皆で、若い選手を大切に育てていきましょう。その積み重ねで、日本のバスケットは、今よりももっと成長できるはずです。」

7、質疑応答

今回、クリニックの場を有効活用する事、個別質問の際にトーステン氏が同じ質問へ何度も返答する手間を省くため、「疑問・質問がある際には、全体の中で質問をしていただき、様々な視点や疑問を共有する事で、クリニックの場を有効活用したい」という旨の投げ掛けの上で行いました。多くの方が挙手をして質問をして下さり、時間の許す限り返答をする中で、様々な視点やアイデアが共有されました。この場を借りて御礼申し上げます。

<質疑応答>
質問①3×3から5対5への疎通について、オフェンスの部分では本日のクリニックで良く理解できました。ディフェンスについて質問です。ロイブルさんのU16~U19男子代表チームはドライブに対して両手を挙げて胸でしっかりと受け止め、とてもクリーンなDFを徹底されていたと感じています。反面、3×3の場合は、そこまでファールが鳴りません。この部分についての考えをお聞かせください。

「おっしゃる通り、3×3では、激しいコンタクトや、ときにダーティーなハンドチェッキングも鳴らない傾向があります。オフェンスにとっては、コンタクトへの免疫になり、良い事だと感じています。特に、日本の選手はドライブでもフィニッシュでも強豪国と比べてソフトな傾向があります。3×3のファールの基準の中で仕掛ける事で、タフで強い選手に成長する事が出来ます。
ディフェンスの指導をする際には、コーチがしっかりと指針を出して指導をしてあげて下さい。3×3では笛が鳴らないからといってダーティーなハンドチェッキングはすべきではないと個人的には思います。5対5になった際に悪い癖がついてしまう為です。」

 

質問② 今、ジュニア世代では、選手の将来性を伸ばす為にも4out1inなどが推奨されていると認識しています。今日のクリニックではポストプレーも組み込まれていましたが、3×3で推奨するスペーシングはありますか?

「基本的には3outを考えています。勿論、サイズが優位な選手がいればポストから入る事もありますが、基本は3outでアウトサイドからのプレーを伸ばすことが重要です。3outの場合も、4UP、4DOWN※のoff ball screenからSEALの流れでポストアップをすれば、2out 1inになります。3outだからといってポストアップをしないという事ではない。5対5の時も、5outからball side cutをした流れでポストアップをする事はありますよね?それと同様の考えです。※クリニックでは、4番(PF)の選手へのoff ball screenを駆使し、Switchをした際にはSEALをしてインサイドでのeasy shotを狙うプレーを重点的に練習していた。

 

質問③ ポストディフェンスについて冒頭で語っていました。今日のクリニックでは紹介しきれないという事でしたが、何かポイントがあれば教えて欲しいです。
「指導するポイントは非常にたくさんある。ポジション取りの際に良いポジションを取らせない練習、パスのドリルもある。チームDFの要素では、HELPポジションをなるべく高く位置してフラットなトライアングルを形成する事。SEAL PLAYで押し込まれてしまうためだ。そういう風に、何個も具体的なティーチンポイントがある。が、それはまた、もっともっと時間が必要ですね。改めて別の機会にしましょう(笑)」

8、おまけ

春日部高校バスケットボール部の選手へ質問をする際、ロイブル氏は悪戯な笑みを浮かべながら「コーチがいない(指示を出せない)中でプレーする事は楽しかったですか?」と質問をした。同高校の顧問である根岸優コーチが同会場にいた事を知った上での発言だ。同選手は、一瞬の空白の後に「・・とても難しかったです」と回答する。ロイブル氏は満面の笑みで「素晴らしい!そこに先生がいらっしゃるからね。気遣いが出来る、とても聡明で素晴らしい生徒ですね(笑)」と応じた。回答に困惑しつつも、見事な切り返しを見せた選手とのやり取りに、会場は笑いに包まれた。

上記のように、同氏のクリニックでは、全体の雰囲気が明るくなるような工夫が多い。例えば、ドリルのデモンストレーションを行う選手がeasy shotミスを繰り返す※際に発動する。「君のコーチは来ているか?」と笑みを浮かべながら質問し、当該コーチを見つけると、「次も外したら君のコーチがプッシュアップだ!」と冗談を交えながら進行する事も多い。「次も外したら私がプッシュアップをする」とトーステン氏自身も本人もプッシュアップをする事もあるし、「会場の全コーチがプッシュアップだ」会場全体に及ぶ場合もある。勿論、選手に過度にプレッシャーを与えないように、絶妙な空気感を演出されている。要求もゴール下のノーマークショットなどの簡単なケースがほとんどだ。情熱に溢れ、真剣な中にも、明るい雰囲気が絶えない同氏のクリニックの特徴の一つである。

※ドリルにおけるティーチングポイントはクリアしているが最後の詰めが甘い時など。

<参考>
3×3日本代表チーム 新強化体制発表ページ内にある、
2020東京五輪に向けた3×3強化体制資料(公開資料)
http://www.japanbasketball.jp/wp-content/uploads/3x3_media-briefing_0918.pdf

②2018年度 全国マンツーマンディレクター会議 開催報告
http://www.japanbasketball.jp/training-news/48334

この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。