【シグネチャームーブシリーズ】モンタ・エリスのスキル解説

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大好評のシグネチャームーブシリーズ。『バスケットボール「1対1」に強くなるトレーニングブック―ミニバスから中学・高校バスケまでー実戦に役立つテク』(ベースボール・マガジン社、2012)の著者でもある岩井 貞憲(イワイ テイケン)氏が、ドライブならNBA No.1と言っても過言ではないモンタ・エリスのスキルを解説してくれます。

モンタ・エリス

高校からNBA入りした選手の1人。ドラフト順位は全体40位(2巡目指名)でした。ウォリアーズからバックス、今シーズンからはマブスにて活躍している選手です! この選手のプレーを調べてみようと思ったのは、NBA全選手の中で合計ドライブ数・ドライブ得点がトップだったためです。詳しくはNBA Statsのサイトを参考にして頂ければと思います。

今回も私なりにこの選手のプレーを解説していきます。状況①から④はカイリー・アービングのプレー解説で説明した1on1を構成する4つの状況を参考にして頂ければと思います。

【状況①ペネトレイト】クイック・クロスオーバー

ボールの振り幅が小さいクロスオーバーが得意です。自身のスピードを活かしながらクロスオーバーからドライブを行います。クロスオーバーをより速く見せるために、クロスオーバー前にサイドジャンプやドリブルを溜める動作(フロート)などの予備動作を入れます。私達の活動ではこの予備動作をプリモーションと呼んでいます。このプリモーションはいくつかのバリエーションがあります。また機会があれば詳しく触れていきます。

ここでのポイントはギアを一気に変えるようにクロスオーバーを行います。プリモーション中はスローな状態を作り出します。クロスオーバー中はクイックなチェンジの状態を作り出します。この技術の境目にてリズムやスピードが段々に上がっていく、変わっていくとディフェンスはオフェンスの動きに対応しやすくなります。スローな状態からクイックな状態を一気に作り出せるように、変化の幅を大きくするのがスキルのポイントではないでしょうか。

練習するときのポイント!

動きの速さ自体を真似するのは難しいですが、リズムやギアの変え方は真似することができると思います。全て同じリズム、同じスピードのドリブルではなく、様々なリズム・スピードでドリブルスキルを磨いてみてください!

【状況②ドリブルワーク】ミドルドライブの有効性(スネークドライブ)

ミドルドライブはボードに対して自分の身体が平行になります。(ボードに対して自分の身体を広く見せるようにします)。そうすることにより二人目のディフェンスに対して、技術を発揮する際に左右の空間が広がります。

monta01ベースラインドライブは二人目のディフェンスに対して、さらにベースライン側のスペースは狭くて使えません。中央に向かうスペースのみになるため、左右の空間が狭くなります。

しかしディフェンスの多くはベースラインドライブを仕向けるようにします。エリスはベースラインドライブを行ったとしても、素早くミドルドライブ方向にコースを切り替えドライブを行います。蛇のように蛇行しながらドライブを行っていることから、私達の活動ではスネークドライブと呼んでいます。そうすることで、二人目のディフェンスに対して左右の空間を広く使うことができるので、オフェンスの選択肢を広げます。

ドライブからの得点数が多いのは、こういったドライブコースのとり方が上手であるのも理由の一つではないかと思います。

練習するときのポイント!

エリスはミドルドライブからフックレイアップ、ランナー、ダブルクラッチ、バンプショット、プルアップなど様々なショットスキルを使います。アタックエリアのスペースが広いため様々なスキルが使えるようになります。しかし練習で決められたドライブコース、ショットスキルの練習だとそのスキルしか使えなくなってしまいます。練習の中で多いのはベースラインドライブからのレイアップ練習ではないでしょうか? 是非ミドルドライブのコースからもレイアップやショットの練習を増やしてみてはいかがでしょうか。

【状況④ショットスキル】ベースラインドライブからのショットスキル

エリスはベースラインドライブからの得点スキルも高いです。前後の空間を上手く作りながらステップバックジャンパーや高い身体能力から繰り出されるクラッチリバース、クラッチスピンなどのショットスキルも持ち合わせています。



NBAシーズンも終盤ですね。プレーオフ争いのチームから目が離せません。
次回も違う選手に着目して技術を解説していきます。

この記事の著者

岩井 貞憲バスケットボール スキルコーチ
1987年生まれ。千葉県船橋市出身。千葉県立船橋芝山高等学校から東京YMCA社会体育・保育専門学校に進み、東京YMCA社会体育・保育専門学校ヘッドトレーナーなどを歴任。指導理念「バスケットボールを通じて、最善をつくす喜びを知る選手を育てたい」