『「選手はロボットではない。ロボットのように扱いたいならコーチをする資格はない」コーチ・ヤナイ氏からの教えを指導哲学の軸にしています』陸川章氏の講演会レポート
昨今、バスケットボール界では、全国各地でコーチが学びを得られる場が数多く企画されている。日本バスケットボール協会でもライセンス制度を整備し、各種の講習会や研修会を積極的に実施。競技力を高めたい層から、バスケットボールを楽しみたい層の両面で、プレイヤーのニーズに応え、充実したバスケットボール体験を積む事を導けるように環境整備に取り組んでいる。
2015年頃、一般社団法人トレジャーリングとNPO法人クライムウッズの共催により『地域指導者勉強会』という非常にユニークな取り組みがあった。名前の通り、地域の指導者へ学びの場を提供しようという取り組みだ。開催理念を「実際にはなかなか指導資格を取得し、勉強会に参加することが難しい地域の指導者の方々に、日本のトップレベルの指導者が持つノウハウ、フィロソフィーを学ぶ機会を作る事が目的。子供たちのためにまず地域の指導者から。」とし、小野秀二さん、内海知秀さん、長谷川健志さん、池内泰明さんら、日本バスケット界の最前線で活躍するコーチ陣が登壇した。
今回の記事では、上記プロジェクトから2015年6月に開催された一つの講演会を紹介したい。「志を共にするチーム作り」という題目で登壇をしたのは東海大学男子バスケットボール部の監督を務める陸川章さん。選手時代の経験、コーチとしての哲学などが、陸川氏らしい熱く、優しい語り口と共に惜しみなく紹介された。
講演内容の全てを網羅しているわけではなく、製作者がメモをきちんと取っている部分のみを記載している為、全てのエピソードや、エッセンスを紹介できているわけではない。その部分を予めにご了承いただきたい。
講演中、陸川氏は「コーチが選手に対して横柄に振舞ったり、暴力、暴言は勿論、威圧的な言動は好きではない」と言っていた。同時に、チームの中に規律や、ある種の厳しさがある事の重要性についても強調した。その上で、ご自身の経験談や、チーム作りの際に大切にしている価値観を紹介してくれた。過去、GSLのFB上でも簡易レポートを投稿した内容を再構成した格好だ。
本稿の筆者は、U12、U15世代を指導するコーチが、プレー中の選手の一挙手一投足に対し、コートサイドから過剰な激や、ときに暴言とも取れる言葉が飛び交う指導現場は好きではない。
固有の背景や状況を持つ中で、各チームのコーチが精力的にバスケットボールの指導に取り組んでいる。各コーチが直面する問題は人それぞれだ。しかし、陸川氏の歩みや、指導哲学、人生哲学、情熱の一部を伝える事で、コーチの方々、特に、選手の自主性、主体性、オリジナリティーを大切にしつつ、チームとしてのバスケットボールの構築に励んでいる方々にヒントを提供できるのではないかと信じている。
陸川章氏が監修を務めた『NBA バスケットボールコーチングプレイブック』。翻訳をした佐良土茂樹氏と共に。
「志を共にするチーム作り」 陸川章氏
一般社団法人トレジャーリングxNPO法人クライムウッズ
1、講演会で紹介されたエピソード
※本稿では、少年期、日本代表での活動、社業に専念されている時期のエピソードを中心に掲載。当日には、高校、大学での部活動、実業団チーム、東海大学の初期のエピソード、ユニバーシアード代表チームでHCを務めた時期のお話も紹介されましたが、メモが不明瞭の為に割愛します。ご了承ください。
人格形成に大きな影響を与えた少年期の経験「自慢、傲慢、馬鹿のうち!」・「しょぼくれるな!下に何がある! 負ける勝ちだ!」
新潟県で生まれ育つ。祖母が豪快、かつ、非常に厳しい人で、大きな影響を受けた。例えば、運動会の徒競走で 1 番になって鼻高々で自宅に帰ると「自慢、傲慢、馬鹿のうち!」と怒られる。逆に、何かの勝負に負けてしょぼくれて帰ると「しょぼくれるな!下に何がある! 負ける勝ちだ!」と熱弁してくる。
その積み重ねで、「勝って奢らず、負けてへこたれない、前向きで、ある種、単純な性格」が形成された。それらは、自分の周りの人にも褒めて頂ける部分で、自分としても長所だと思っている。奢った考え方をすると怒られる、へこたれていると怒られる。祖母の厳しい教育のおかげ。
また、父は「駄目だと思えば、駄目だがや」を口癖とする人だった。父の言動や、挑戦を奨励してくれる教育のおかげで、楽天的で、挑戦心が旺盛なマインドが育まれた。
日本代表の一員としてソウル五輪予選へ挑む
・「北原を表彰台に!」ソウル五輪の予選
若さ、ガッツ、サイズと走力を評価してもらい大学生の時から全日本に選んでもらった。当時の日本代表は主将の北原憲彦さんを中心に、小野秀二、内海知秀、池内さんらが名を連ねていた。チームはソウル五輪出場を目標にしていた。ほぼ同じメンバーで4年近く強化に取り組み、目標達成に向けて全力で努力をしていた。当時のメンバーの多くはソウル五輪出場を現役生活最後の戦いを決めている方も多く、決死の覚悟で挑んだ。
1987年アジア予選では、五輪出場権を賭けて準決勝で中国と対戦するも敗退。五輪出場をあと一歩で逃した喪失感、多くのメンバーが現役最後の挑戦が途絶えた事を意味する。この勝負に賭ける思いが強い分、悲しみも大きかった。ロッカールームは悲しみに暮れた。プレイヤー全員が泣いていた。
チームを率いていた小浜監督は「北原を表彰台に上げるんだ!」とチームに檄を飛ばした。4年近く代表チームのHCを務めた北原さんは誰もがリスペクトする存在。その言葉に、もう一度選手が奮起し、3位決定戦のフィリピン戦に挑んだ。
全力と尽くし、何とか勝利をつかみ取る。試合後、北原さんの両隣で先輩選手が泣いている姿を見た。ある人はソウル五輪にとたどり着けなかったお詫びを、ある人は、これまで一緒に戦ってきた御礼を北原さんに泣きながら伝えている。
・「日本代表の魂を継承しよう」と決意をする
中国戦に挑む姿、敗戦後も一致団結する姿を見て、これこそが日本代表のスピリット、魂なのだと強く感じた。先輩の多くは引退をする。自分の世代がナショナルチームの主軸になっていく中で、この魂を絶対に継承しなければならない。そう強く決意を固めた。常に全力でナショナルチームの活動に取り組んだ。実業団生活、代表活動を全うしていく。
佐良土氏が陸川氏にいただいたサインより。
ナショナルチームでも中堅からベテランに。
・「自分たちが代表の魂を継承していきます」の言葉に安堵
ナショナルチームの活動では、先輩たちのスピリッツを継承していこうと、全身全霊で取り組んできた。徐々に自分も中堅から、ベテランへと移行していく。当時の北原さんと同様に、自分もベテランになった。五輪出場をかけた最後の予選に挑む。しかし、夢は叶わず、敗戦する。
その時、試合終了後、若手の代表選手が自分の両隣に来て涙ながらに語ってくれた。「陸さんを五輪に連れて行けず、本当に申し訳ないです。これからは自分達が代表の魂をしっかりと継承します」。その瞬間、「自分の使命は果たすことが出来たのかもしれない」という想いが去来。悔しさと満足を入り混じる形でナショナルチームの活動に終止符。
*本稿筆者は、竹内譲次選手がナショナルチームについて語っている記事を読んだことがある。若手選手として代表チームの活動に加わっている際に、当時のベテラン選手である古田悟さんがバスケットボールに取り組む姿勢や心構えに感銘を受け、尊敬している。年長者となった現在、そのような姿勢や心構えを若い選手に継承するように心掛けている、という内容であった。また、現在、男女ナショナルチームでは、JAPAN PRIDEが掲げられているという。JBAコーチカンファレンスの中で東野技術委員長より紹介された。選手、スタッフでMTGをし、自ら考え、言語化した内容であり、自分達が大切にしたい信条や目標であるという。
<JAPAN PRIDE 男子代表チーム>
①毎日全力で出し惜しみしない
②魂を込めてコートに立つ
<JAPAN PRIDE 女子代表チーム>
①日本のバスケットに関わる全ての人たちを代表しているという誇り
②自信を持ってコートに立ち、最後までベストを尽くす
実業団選手としても引退。社業専念時代のエピソード
・「バスケ上がりに、現場の何が分かる!」スポーツで培った負けずキライの本領発揮
NKK 時代、実業団チームの選手引退後は社業に専念した。バスケ競技時代は内勤で、仕事も頑張っていたので、ある程度は評価もしていただいた思っている。引退後は、鉄鋼工場で課長を務めた。「バスケ上がりに、現場の何が分かるんだ!」と面と向かって言われた事もある。製造現場の人には相手にされない状況からのスタートだった。
ここで、生粋の負けず嫌いの性格や、祖母や父の教えを胸に頑張った。バスケ出身選手が馬鹿にされるのも、バスケを愛する身として、悔しかった。対話を重ね、工場の製造の流れ、人間関係を観察し、状況を理解し把握する事に努めた。一つ一つの仕事を誠実にやり、徐々に信頼してくれる人が増えてきた。朝早くから夜遅くまでの仕事は大変だったが、非常にやりがいがあった。
・「誰が何を知っているかを知る事の価値を知る」
この時期の経験を通じて、「誰が何を知っているかを知る事の価値」を知った。工程管理であれば、この人。製品のことは、この人。職場の人間関係は、この人、と各部門にキーマンがいる事を学んだ。自分自身で勉強をして知識を深めると同時に、素晴らしい知識や見識を持つ専門家の重要性を知った。その方々との信頼関係を大切にした。対話を重ね、状況を理解し、信頼関係を進め、工場の製造業務を円滑に組織運営できるようになった。
この考えは現在のコーチングの活動でも大変役に立っている。バスケットでいうと、世界各地に海外に信頼できる仲間がいる。アメリカ、ドイツにバスケのブレーンがいて、問題や課題の共有をし、意見を交換し、知恵を借り、自分の考えを深めている。 オフェンスのことで相談できる人、ディフェンスのことで相談できる人・・etc、と色々な人から学ぶことを大切にしている。
◇『四十にして惑わず』
論語の中に「四十にして惑わず」とある。いわゆる、不惑である。人生について考える機会が増えた。「やはりバスケットで自分は生きていきたい」・「人間の成長に貢献したい」という思いが一段と強くなる。自分自身は、ソウル五輪予選に挑んだナショナルチームでの経験が大きかった。同チームの特徴は、志を一つに、お互いを気遣いながら、艱難辛苦を乗り越え、最高のチームワークを構築していた事。そのチームの一員として目標に向かう中で、かけがえのない経験を積み、人間としての成長できた。あのような素晴らしいチームをコーチとして導き、人間の成長に貢献したいと思うようになる。
出来れば、大学生を指導したいと考えていた。少年が青年になり、大人になる世代であり、とても重要な時期。社会に出る前の時期に、自分が大好きなバスケットを通じて、バスケを通じて『一端の人間』に成長するように導く。そんな教育のできるコーチになりたいと思う。
◇勉強、アメリカへ
・「選手はロボットではない」コーチ・ヤナイ氏の教え
そのためには、勉強が必要。その時点で、どこかコーチとしての就職先が決まっていたわけではなかったが、会社を退職(休職??)して、アメリカへコーチ留学。
工場の方々には驚かれた。「陸さんの夢なんだから、頑張ってくれ!」と送り出してくれた。送別会では涙を流しながら別れを惜しんでくれた人もいた。とても感慨深い瞬間だった。
留学先は、小林高校卒の本郷謙二郎選手が留学していたCSLA(California State University, Los Angeles)カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校CSLAへ。
目的は、親交のあったコーチ・ヤナイ(日系人)の方に教わる為。師と仰ぎ、コーチングのエッセンスを教わりたかった。陸川氏を受け入れたヤナイ氏は「選手はロボットではない。ロボットのように扱いたいなら、コーチをするべきではない」と、真っ先に伝えてくれた。彼の指導するチームに帯同するなどをし、バスケットボールの戦術や、練習ドリル、プログラムの作り方など、多くの事を学んだ。しかし、この言葉が一番印象深い。実際、日頃からのコーチ・ヤナイ氏の選手への接し方や、一人一人を尊重した上で、的確にバスケットボールを教え、チームを導く指導法に感銘を受けた。現在でも、コーチとしての自分の指針であり、絶対的な軸になっている。
UCLAのアカウント
The #Bruins ended today's practice in Pauley by hearing from longtime college hoops coach Dave Yanai. pic.twitter.com/OERZimsBsV
— UCLA Basketball (@UCLAMBB) January 27, 2016
東海大学へ
・3部優勝、2部優勝、1部リーグ昇格、1部リーグで優勝!インカレ優勝
・縁あって、東海大学のバスケ部にコーチとして就任することになる。当時は関東大学リーグで3部。チームのカルチャーを作り出すことから着手した。
『3部優勝、2部優勝、1部リーグ昇格、1部リーグで優勝!インカレ優勝』と高い目標を選手へ投げかけた。HONDAの本田宗一郎は『世界一』という夢を掲げ、そこに向かって突き進んだ。その過程で多くの成長を遂げた。ついに目標も達成した。会社としても非常に業績を伸ばした。その物語が非常に好きで共感している。高い目標に全力で挑むからこそ、人間としても成長できると信じている。東海大学でも、高い目標を掲げてスタートさせてもらった。
・「選手はロボットではない」
東海大の指導でも、声を荒げたり、威圧的な態度で接したり、過剰な叱責はしないスタイルを基本としている。それは自分自身の信条や、コーチ・ヤナイ氏の教えである「選手はロボットではない」という考え方が影響している。
・激しいトレーニング、チーム内の競争を楽しめる環境創りに留意
身体を鍛える事はバスケットボールには絶対的に必要な事だと思っている。その為、トレーナーとの相談のもと、体力的に非常にエグイトレーニングもカリキュラムに織り込んでいる。そういう時期は、仲間と共に取り組め、会話をし、勝負を楽しめる環境創りに留意している。
例えば、激しいトレーニング練習の後には色々と工夫を凝らしている。普通、そういう練習が続くと選手のモチベーションも下がってきてしまう。環境創りや雰囲気作りを大切にしている。選手も、体を鍛える事や、体力的に厳しいトレーニングを乗り越えないといけない、必要な事であると分かってくれていると信じている。
・小手先だけの手法は通用しない。しかし、コーチは様々な引出しを持つ事が重要
一例として、練習の最後にファンドリルを織り込む事もある。「チームメイトと共に取り組むことは面白いな、バスケって楽しいな、練習は楽しいな、体育館に行きたいな」という余韻を選手の頭の中に残すことに繋って欲しいという願いもある。これは、少しズルイやり方や考え方かもしれません(笑)。勿論、小手先の手法は通用しません。チームの理念、目標、大切にしている価値観を明確にし、本当に色々な事に気を配って、誠実に選手一人一人に向き合ってチームを運営していく事がコーチには絶対に必要。ただし、土台に信頼関係がある上で、一つのアイデアとしてコーチは知っておくと良いはずです。色々な引出しを持つ事が重要です。
それ以外にも、選手同士でのコミュニケーションを活性化する方法にも取り組んでいる。例えば、2人1組にして、お互いの良いところを考え、褒めさせる。恥ずかしがる選手も多いが、こういう遊びも入れることで、組織の中での活動を円滑に進めるように工夫している。他にもシューティングを利用したファンドリルなども数多く勉強するようにしている。
*上記以外では、第26回ユニバーシアード競技大会(2011/深圳)での取り組み、東海大学での初期・中期のエピソードなども紹介された。メモが不十分で、誤解を招く部分もあるそれがある為、今回は割愛する。
『NBA バスケットボールコーチングプレイブック』の原著と共に。提供:千駄ヶ谷体育大学
2、好きな言葉 、大切にしている考え方(スポーツ界の事例より)
① Pounding the rock
SPURS のスローガンである。多国籍チームとしてNBAでも有名なチーム。ロッカールームには、それぞれの選手の母国語で飾られている言葉である。「常に最善の努力をする。目に見える結果が出なくても最善の努力を重ねる事の重要性を説く考え方に強く共感している。座右の銘の1つにしている。
“When nothing seems to help, I go look at a stonecutter hammering away at his rock, perhaps a hundred times without as much as a crack showing in it. Yet at the hundred and first blow it will split in two, and I know it was not that blow that did it, but all that had gone before.”
「救いがないと感じたとき、私は石切工が岩石を叩くのを見に行く。おそらく 100 回叩い ても亀裂さえできないだろう。しかしそれでも 100 と 1 回目で真っ二つに割れることもあ る。私は知っている。その最後の一打により岩石は割れたのではなく、それ以前に叩いた すべてによることを。」
Gregg Popovich just clinched his 22nd straight season with a winning record tonight.
TWENTY-TWO STRAIGHT. 🐐 pic.twitter.com/UteroLbOq0
— SLAM (@SLAMonline) 2019年3月19日
Greg Popovich on Winning and Losing…
💬 “If you win, act like you do it all the time and you didn’t do anything special. If you lose, go back to work. Try to figure it out.” pic.twitter.com/CKXT5ZzK91
— Coach Mac 🏀 (@BballCoachMac) 2019年3月19日
②Success is not forever and failure isn’t fatal.
「成功は永遠ではないし、敗北は終わりではない。」
NFL の名将、ドン・シュラーの発言。この言葉から、勝ったとしても、負けたとしても、やるべき事を、淡々と積み重ねる事の重要性を学んだ。それをせずに、次の試合や勝負の局面を迎えるとすると、勝負の瞬間に悔いが残る。そして、きっと良い結果も残せないと感じている。スポーツでも、ビジネスでも同じであると実感している、
それを踏まえ、東海大学バスケ部では 『24 時間ルール』として選手に伝えている。勝利の喜びや、その余韻に浸かるのも24時間だけ。敗戦に対して悲しみ、悔しむのも 24 時間だけ。24時間後は、また、いつものようにやるべき事を淡々とやり続ける。最善の努力を継続する事が重要であると信じており、選手に伝えている。よくよく考えると、これは祖母の教え「自慢、傲慢、馬鹿の内」・「しょぼくれるな、下に何がある、負けるが勝ちだ」と同じ考え方である。私の祖母はNFLの名将と同じ哲学を叩き込んでくれたのか、と感動をした。
I have no magic formula. The only way I know to win is through hard work. Success is not forever and failure isn’t fatal. /Don Shula
“Success is not forever and failure isn’t fatal.” – Don Shula pic.twitter.com/2NRmsdb7qL
— Bobby Tewksbary (@TewksHitting) January 29, 2016
③「なり得る最高の自分を目指す」・「自滅してはいけない」John Woodenの言葉
Kareem Abdul-Jabbar tells the story of his friendship with John Wooden: https://t.co/rzPj7OEhmT pic.twitter.com/ZwiSfQ1viE
— NPR's Only A Game (@OnlyAGameNPR) May 22, 2017
①、②とも関係の深い教えである。、NCAAの伝説的な名将であるジョン・ウッデンをとても尊敬している。多くの事を学んでいる。特に、下記2つの教えを大切にしている。全力を尽くす事、すべき事をしっかりとやる事が重要。自分自身も心掛けているし、選手にも伝えている。
A,成功の定義(なりうる最高の自分を目指す)
Success is peace of mind which is a direct result of self-satisfaction in knowing you did your best to become the best you are capable of becoming. /John Wooden
「成功とは、なりうる最高の自分になるためにベストを尽くしたと自覚し満足することに よって得られる心の平和なのである――ジョン・ウッデン」
B,自滅してはいけない
Beating Yourself
The very worst thing you can do is to beat yourself. By that I mean not function to your level of competency because you didn’t put your full effort in all ways. Maybe you stayed out too late last night. Maybe you were too concerned with individual statistics. Maybe you thought you could just “turn it on” without proper preparation.
Maybe you did some other things that were counterproductive, like being impatient. In other words, you beat yourself. The other guy didn’t have to beat you. Now you’ve got something worth being ashamed of. ~A Lifetime of observations and reflection on and off the court~自滅してはいけない
「人がなしうる最悪の行為は、自滅する事である。 自滅するというのは、最善の努力をせず、自分の能力を最大限に発揮しないという意味で ある。
前の晩に夜更かしをした、個人成績を気にしすぎた、十分な準備をしなくても全力を発揮 できると思った、あせって逆効果になることをやってしまった、などなど
要するに、自滅である。他の人間が手をくだすまでもなかった。 これは恥ずべきことだ。
3、好きな考え方など (ビジネス界など)
①ベクトルを自分に向ける
(参考) スピリッツ オブ デルタ(デルタ航空の物語)
・チームワークについて
3連覇を目指して挑んだ2014年のインカレでは筑波大学に敗戦した。翌春、2015年関東大学トーナメントで優勝した。形としては、インカレのリベンジを果たしたと言ってくれる人もいた。だが、その後、下級生が挑んだ関東大学新人戦では下位回戦で大東文化大学に敗退。
これを受けて選手とMTGをした。選手には「『上級生は勝利して下級生は負けた』。そう考えて欲しくない。東海大学 SEAGULLS の敗退と考え、それぞれの立場でベクトルを自分に向けて勝利の為に何が出来るかを考えよう。 HCの僕は、HCとしてもっと良いコーチングが出来るように勉強をして全力を尽くす。上級生は、下級生に対してもっと良い模範になる事は出来なかったのか。練習やトレーニングの際にもっとサポートやアドバイスが出来なかったのか、下級生は、目標達成のためにやり残したことはないか、もっとプレーで勝利のためのアクションが出来なかったのか。それぞれの立場で、今回の結果をSEAGULLSの敗戦と考え、行動を進化させれば、そう考えると、本当に強い組織、素晴らしいチームになるはずだ」と思いを伝えた。「選手が、どう思っているかが分からない。自分としては、選手に約束した通り、今回の敗戦を糧にさらに勉強をし、よりよいコーチングが出来るように努力をしている最中です」
<参考>
2015年6月17日、当時、東海大学在学中の寺園脩斗選手のSNSより。
*現在、B1no三遠ネオフェニックスでプレー。東海大学で主将も務めた。
勝ちを分かち合うのも、負けを分かち合うのもみんな一緒!新人戦の負けは下級生が負けたのではなくteam全員の負けだと真摯に受け止め、またゼロから頑張っていきましょ! pic.twitter.com/s8e8lHF5vV
— 寺園脩斗/ Shuto Terazono (@shuuto514) 2015年6月17日
上記、『ベクトルを自分に向ける』の考え方は『スピリッツ オブ デルタ(The Spirit of Delta)』の知ったときに感動をし、自分自身も心掛けている事。
*チームを大切にする価値観を選手に押し付けるわけではない。そう感じてくれるよう、日頃からのチーム作り、信頼関係、理念や目標に沿った日頃の活動の重要性、コーチとして求められる振る舞いや誠実さ、魅力的な組織づくりのために大切にしている考えも紹介された。本稿筆者には説明が難しく、本稿では割愛。「選手はロボットではない」の考えが根源にある事は感じ取る事が出来た。
②常に一番を目指す。catch up では駄目だ!他に追随してはいけない
これは、HONDAの創業者である本田宗一郎の信念。彼は、HONDAがまだまだ一流メーカー とは言えない時代から、オートバイの世界選手権で優勝を目指すと公言し、全力を尽くして挑戦を続けた。
世界一を目指す挑戦の過程、世界の一流メーカーと切磋琢磨する中での HONDA の技術を革新や、組織を進化させていく必要性があった。結果、7 年掛かったが、ついに 世界一を達成した。常にトップを目指すからこその学びや成長する機会があると信じている。自分の競技経験や人生経験からも非常に共感できる考え方である。
その為、東海大学でも、目標は常に1番。現在地や周りは関係無い。大学 3 部時代から「1 部昇格、リーグ優勝、インカレ優勝、全日本総合で JBL を倒す」を語り、取り組みをスタートした。
この本田宗一郎の考え方が大好き。書籍も沢山読んでいる。実際、本田宗一郎関係の書籍の数々を読破。 また、コーチの方々への推薦書籍として下記の書籍が紹介された。
(参考書籍)
・「育てる」技術(旧「まじめにいきるのをはじることではない」)
・「叱らない」育て方(池上正)
・叱らず、問いかける(池上正)
・本田宗一郎さんの関連書籍
・斉藤一人さんの関連書籍(『銀座まるかん』創設者)
4、その後の陸川さんの活動
陸川章氏は、その人柄やポジティブな人間性もあって、バスケット界でも様々な領域で活躍されている。また、各種のメディアにも多数登場する。ここでは、本講演内容と関係性の深い部分を紹介していく。
①ユニバシアード代表での目標設定『世界一を目指さなければ、頂点に近づく事も出来ない』
その後、第29回ユニバーシアード競技大会バスケットボール競技ユニバーシアード代表チームのHCに就任する。2016年2月頃の強化合宿では「世界一を目指さなければ、頂点に近づく事も出来ない」とコメントされている。これは、陸川氏自身も参戦した1985年の神戸ユニバーシアードでの経験が強く影響しているという。当時のチームは、6位入賞を目標とし、見事に6位入賞を果たした。しかし、陸川氏は「目標設定に失敗をした」・「ベスト4、優勝など、もっと高い目標設定をすべきだった」と今でもずっと後悔されているという。「喜びよりも後悔の方が強い」とも語っている。
講演会では、本田宗一郎の挑戦心、それに対してベストを尽くす事の価値を講演の中でも語っていた。『常に1番を目指し、それに向かって全力で努力をする。最善の努力を継続する』を陸川氏自身も体現されている。
<参考>
JAPAN PRIDE ~目標は世界一!~ 〈男子ユニバーシアード日本代表 陸川 章コーチ〉
②GREAT INTENSITY、GREAT AGGRESSIVE、GREAT SOLIDNESS
また、ユニバ代表の合宿には、当時JBAのテクニカル・アドバイザーであったルカ・パビチェビッチ氏も指導をされる機会もあった。ルカ氏が強調した各項目に対し「世界一を目指す」チームとして、キーワードに“GREAT”を加え、さらに強調されていたことが印象的であった。
2016年シーズンのユニバ代表チームのキーワード
・GREAT INTENSITY(プレイと気持ちの両面の激しさ)
・GREAT AGGRESSIVE(攻撃性・積極性)
・GREAT SOLIDNESS(ミスをしない堅さ)
参考
③『「これぐらいでいいかな、、」と、どうしても人間は安易になってしまう。そういう時に、良い結果にならない。全部出す。出し切る事が大切。』
2018年5月頃、李相佰杯争奪日韓学生バスケットボール競技大会で韓国代表との試合に挑むU-22日本代表チーム。試合前のロッカールーム、陸川氏の力強く、優しい語りを収録した動画が全日本大学バスケットボール連盟のSNSに投稿されて話題になった。B.LEAGUEで活躍をする東海大学バスケ部OB選手が「試合前にいつも勇気を貰った」・「多くの事を学んだ」等々、陸川氏へのコメントと共に本人らのアカウントでも紹介していたことが印象的であった。
🇯🇵U-22日本代表🇯🇵
今回、応援団長として帯同する陸川HC(東海大)から、後がない男子チームを鼓舞する言葉。#リソウハク #日韓大学代表戦 #大学バスケ pic.twitter.com/NFoDWXeVJO— 全日本大学バスケットボール連盟 (@jubf2014) 2018年5月19日
この記事の著者
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1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。
宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。