セルビア大使館インタビュー その2 〜混じりっけなしのプライドこそが強さの証〜

先月投稿したセルビア大使館インタビューその1では、大変大きな反響を頂きました。世界屈指の強豪国の強さの秘密は、「将来目指せる場所や、それを目指すべく自身を磨ける場所があること」が、1つの要因ではないかと推測することができました。さて後編では、もっと細かい部分に突っ込んでいきたいと思います。

バスケットボールへの国からのサポートは?

ゴールドスタンダード・ラボメンバー(以下GS):セルビアでは、国はどのようなかたちでバスケットボールを支援しているのでしょうか?

ネマニャ・グルビッチ氏(以下NG):例えば地方自治体がチームを経営していたりしますが、国や企業がサポートしてくれる場合もあります。地方自治体がチームの経営をしているのは、社会主義だったユーゴスラビアの伝統を受け継いでいるという側面もあります。公的な機関がスポーツを助けるという伝統があるんです。ただ、段々と状況は変わってきていて、経済的にもクラブ経営は難しいこともあるので、少しずつ民営化した方がよいのではないかという議論もありますね。外国のクラブと争うために高いサラリーを払ったりと、なかなか難しい状況もあるようです。

GS:なるほど。このあたりは日本ともさして変わらない状況があるようですね。ほかにセルビアのバスケ界で問題になっていることなどはありますか?

NG:やはり経済的な問題ですね。レッドスター ・ベオグラードパルチザン・ベオグラードとかの強豪チームも経済的にかなり厳しい状態です。ただ問題ばかりではなく、バスケットボールが僕たちに勇気を与えてくれている部分もあります。セルビアのリーグはそんなに大きくなく、レッドスターやパ ルチザンのライバルになるようなチームがなかなかいないこともあり、ボスニア、クロアチア、スロベニアといった旧ユーゴの国々と一緒にリーグを作って試合をしています。とても興味深いことですが、色々あってバラバラになった国々が、スポーツを通じてまたひとつになっているんです。これは本当に素 晴らしいことですよね。

GS:現在、セルビアのコーチは世界中に進出しているという現状がありますが、これは国の政策なのでしょうか?

NG:面白い話なのですが、 セルビアではコーチを”輸出”しているんです。みんな冗談半分で「セルビアの一番の輸出品はコーチだ」なんて言っていますが、実際コーチが海外で高い給料をもらって、セルビアに帰ってきたりしています。日本だと車を輸出したりすると思いますが、セルビアはコーチを輸出しているんです。僕たちはスポーツの強豪国っていうことに誇りを持っていますから、それを活かしているという部分もありますね。

どうしても聞きたかったこと。シューター王国セルビアの秘密

GS:少し話は飛びますが、なぜセルビアの選手はシュートが上手いのでしょうか?(編集部注:セルビアといえばシューターのペジャ・ストヤコビッチが浮かぶ。彼やラドマノビッチ、そしてディバッツといったセルビアの選手らは、皆高身長ながらシュートも上手いといった共通点があった。余談だが筆者はNBAライブでシューターチームを作る際には、ストヤコビッチとラドマノビッチは非常に重宝した記憶がある

NG:確かにシュートがうまい選手が多いですね。確固たる答えは出せないのですが、シューターを育てる伝統みたいなものがあって、それが功を奏しているんだと思います。正確な理由を挙げるのは難しいですが。

GS:グルビッチさん自身、セルビアの選手ではどの選手が好きですか?

NV:僕が好きなのは、ニコラ・カリニッチですね。後はデヤン・ボディロガも好きです。身体能力はあまりなくて派手なプレーは少ないけど、頭がいいし、見ていてすごく楽しめますね。

GS:カリニッチは今回のワールドカップでも活躍していましたね。ちなみにセルビアの代表チームにとって、ユニフォームに使われている赤はどのような意味があるのですか?

NG:赤は国旗の色にも使われていて、王室の色なのです。実際ユニフォームでは青が好きな人が多いんですけどね(笑)。それより、bjリーグのチームのユニフォームを記念に買いたいんだけど、どこで手に入るんですか?(セルビアの代表チームのユニフォームは買わないんですかと聞かれて)中国のピークという会社が作っていて、買うことができないんです。

GS:ここでもう一回聞かせてください。なんでセルビアは強いんですか、やっぱりなんか隠しているじゃないですか?(笑)

NG:(笑顔で)強いて言えば、バスケットボールの伝統があるからじゃないでしょうか。バスケットボールやスポーツが盛んで強豪国であることを、みんなが本当に誇りに思っているんです(編集部注:ほかには、サッカーでは日本人にも馴染みのあるピクシーこと「ドラガン・ストイコビッチ」。またちょうど先日錦織圭選手を撃破したテニスの「ノバク・ジョコビッチ」らが有名)。もちろんセルビア人は背が高い人が多い点で有利ということもありますが、個人的な印象だと、セルビアのバスケが強い理由は、ブラジルのサッカーが強い理由とどこか似ていると思います。

日本×セルビア。バスケットボールをもっと前に……

GS:グルビッチさんは日本のバスケはご覧になりますか?

NG:bjリーグを見に行きたいとは思っていますが、実はまだ見に行ったことはないんです。サッカーはセレッソ大阪の試合を見に行ったことがあります。セルビアはキンチョーとのつながりがあるので、そのつながりで見に行ったことがあるんです(編集部注:キンチョー 大日本除虫菊株式会社は大阪に本社があり、セレッソのオフィシャルスポンサーになっている。キンチョーとセルビアの関係は「除虫菊が結ぶセルビア共和国と金鳥」を参照のこと)。だから、ぜひ今度バスケの試合に誘ってください。

GS:今後、日本とセルビアのバスケット界で何か協力的な関係を築いていけるでしょうか?

NG:色々協力していけると思います。例えば、もっとセルビアの選手を日本のリーグに呼んでもいいと思います。サッカーだとピクシーを筆頭にたくさんの選手が来ているのですから、コーチや選手をもっと連れてきてもよいのではないでしょうか。(スペインコーチがたくさん来日していることを聞いて)スペインのコーチが来ているのなら、セルビアのコーチも来てもいいと思いますね。

GS:逆に日本人がセルビアにコーチの勉強をしにいくことは可能ですか?

NG:もし興味があれば紹介しますよ。なにかあればどんどん連絡してほしいですね。

GS:今日は本当にお忙しい中ありがとうございました。最後にグルビッチさんの普段のお仕事についても少しお聞かせいただけますか。

NG:もともとは2010〜11年に、8ヶ月間大阪に留学していました。その後一度セルビアに戻ったときに、この駐日大使館の職があったので応募したんです。現在の所属はセルビアの外務省で、この大使館での仕事は任期が4年あります。今は3年目なので、あともう1年いる予定です。その後セルビアに戻って何年か仕事をしたら、他の国に行くことになると思います。日本はとても素晴らしい国だから、最初の仕事がこの日本でできて、とても光栄に思っています。20年後くらいに、大使とかになって(偉くなって)また帰ってきたいですね(笑)。

セルビア バスケ
グルビッチさん、そしてセルビア大使館の皆様、本当にありがとうございました

 

最後に

今回、全2回に渡り「セルビアバスケの強さを探る」ためのインタビューをお届けしました。まずは今回のようなとんでもない依頼を快諾してくださったセルビア共和国大使館の皆様に、厚く御礼申し上げます。

細かい話は直接バスケットボールのコーチに聞いてみないと分からない部分もありますが、「誇り」であるとか「目指すべき手本があること」が強さの秘密として挙げられたのは正直驚きでした。戦略や戦術、育成システム等はあくまで上モノであって、強くあるために根本になくてはならないものは何かということを、改めて教えられた気がします。そしてその根本を固めるのは、我々大人にしかできない役割だと気付かされました。

一転、今の日本のバスケットボールの現状。執筆時点でFIBAからの通告はありませんが、これを機に、個人的には「行動できる」大人になりたいと感じました。そして早速我々の仲間が動いています。今回は1時間程度の短い取材時間で、聞きたいことを全て聞くことができませんでした。しかし来る12/17。バスケットボールの誕生日のイベントにて、グルビッチの特別講演が実施されます。これを機に日本のバスケットが発展し、セルビアとのより友好な関係が築けたら素晴らしいことですね。詳細はこちらよりご覧ください。それではまた。

この記事の著者

岩田 塁
岩田 塁バリュードライブ株式会社/インパクトM株式会社(ディレクター)
デジタル/コンテンツマーケティング支援のバリュードライブ株式会社/インパクトM株式会社ディレクター。企業様のデジタルマーケティング/コンテンツ戦略を支援させて頂いております。

元・スポーツ書籍編集者。担当書籍は『バスケ筋シリーズ』『ゴールドスタンダード』『シュート大全』『NBAバスケットボールコーチングプレイブック』『ギャノン・ベイカーDVDシリーズ』『リレントレス』他

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