インタビュー:鈴木良和(株式会社ERUTLUC・バスケットボールの家庭教師) 前編
株式会社ERUTLUCの鈴木良和氏も「ゴールドスタンダード」の愛読者。深い見識から繰り出される鈴木さんの「スタンダード」とは。数回に分けてお送りします。
目次
- 『ゴールドスタンダード』との出会いについて教えてください
- コーチKさんとの出会いにについて教えてください
- 『ゴールドスタンダード』の中で、特に印象に残っている部分を教えてください
- それは、なぜでしょうか? ご自身の指導経験や、普段の考えと合致する部分、探究していた部分の明確な答えになっていたという面もあると思いますが、どのような理由で印象に残ったかを教えてください
- 鈴木さんが事業としてやられている「バスケットボールの家庭教師」には「世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」という理念がありますが、それを実現させるために必要なコーチチームの「スタンダード」についてどのようなお考えをお持ちでしょうか?
- 上記の内容を、どのように組織の中で浸透、またはメンバーが共感できる内容として共有できるような工夫をされていますか?
『ゴールドスタンダード』との出会いについて教えてください
おそらく、佐良土さん(翻訳者)のTwitterか何かでこの本が発売されることを知ったのが最初だと思います。発売日前にはAmazonで予約注文していましたね。
コーチKさんとの出会いにについて教えてください
コーチKのことを最初に知ったのは、自分が大学生の頃だったと思います。大学のチームメイトにNCAAに詳しい後輩がいて、その後輩からDUKE大学のことを聞いたりしたのと、恩師である日高先生との話題にコーチKの話が出たのが最初の出会いだったと思います。
もちろん、その前に月バスなどで顔や名前を拝見していたと思いますが、あまり意識的に記憶に留めていなかったのだと思います。
『ゴールドスタンダード』の中で、特に印象に残っている部分を教えてください
いろいろありますが、最後のコーチKの言葉が一番です。
「こうした事柄には、公式も、レシピも、安易な段階を追ったプロセスなど存在しないということだ。私の物語は導き手として役立つだろう。しかし、それ以上でもそれ以下でもない。私が与えるいかなるアドバイスも、あなたに方向性を与えるかもしれないが、物事を容易にするものではない。チーム作りは大変な作業だ。だからこそしっかりと時間をかけてもらいたい」
それは、なぜでしょうか? ご自身の指導経験や、普段の考えと合致する部分、探究していた部分の明確な答えになっていたという面もあると思いますが、どのような理由で印象に残ったかを教えてください
これは、ブラックスワンという不確実性をテーマにしたビジネス書を読んだときにも腑に落ちたことだったからです。われわれは成功したチームから学ぼうとしますが、それは行きと帰りの誤りという落とし穴があるのです。
氷が10分後にどうなるかは予測しやすいのですが、水たまりが10分前にどんな状態だったかを当てるのは難しいのと同じで、結果的にそうなったというチームから成功の秘訣を学んだとしても、その秘訣から逆算的に自分のチームに同じ影響を期待できるかというと、そうではないということです。
これをリバースエンジニアリングというのですが、チーム作りや組織づくり、選手育成にはリバースエンジニアリングはあまり効果的ではないのです。このコーチKの言葉は、そのことをうまく言葉にしてくれてるなと感じました。
鈴木さんが事業としてやられている「バスケットボールの家庭教師」には「世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」という理念がありますが、それを実現させるために必要なコーチチームの「スタンダード」についてどのようなお考えをお持ちでしょうか?
「世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」の具体的なアクションというのをコーチ陣と共有しています。それをご紹介します。
- ビジョンを持っており、未来志向であり、先見的でありつづけること
(チャレンジにしりごみしたりしない。何かの成功例にしがみついたりしない。) - 子どものスポーツの業界で卓越した結果を残し、見識ある指導者に広く尊敬さ
れる存在になること
(世界のスポーツ界にインパクトを与えるようなことを達成する) - 世界のスポーツ界に消えることのない足跡を残していること
(インターネットやiPhoneやサグラダファミリアのような) - 主力技術(または戦術など)のlife cycleを超えて繁栄していること
(何かのテクニックや戦術がとりだたされたとしても、それで終わらない) - 設立以来50年以上を経過しても偉大な組織であること
- 代表が世代交代をしても偉大な組織であること
- 逆風や、過ちを犯しても、ずば抜けた回復力を持っていること
- ジュニアのコーチングで日々の暮らしに困らないような、充分な生活が送れるようあり続けること
上記の内容を、どのように組織の中で浸透、またはメンバーが共感できる内容として共有できるような工夫をされていますか?
今年からこの具体的な内容を共有し始めました。トップダウンで、僕からまずはフェイスブックや研修を通して各指導員に伝達されます。その後、こういった内容が社内のいろいろな仕組みの中に組み込まれていくことになります。
(interview 2012.12.29 /片岡秀一)
インタビュー後編はこちら
鈴木良和
1979年6月8日生まれ。株式会社ERUTLUC(エルトラック)代表取締役。社名の由来は、子どものスポーツ文化を変えていく、スポーツから教養・教育を考えていくという意味でCULTURE(カルチャー:文化・教養という意味)という単語を逆読みしたモノ。千葉大学在学中に日高哲朗氏の指導に感銘し、その教えを広く世の中に広めようと模索中に2002年にバスケットボールの家庭教師を立ち上げる。2007年株式会社ERUTLUC設立をし、2009年EURO BASKETBALL ACADEMY日本版を設立。DVD、及び著書も多数。
http://www.basketballtutor.com/
この記事の著者
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1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。
宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。