「一人バスケットボール学会の歩き方:第69回日本体育学会」小谷究(流通経済大学バスケットボール部HC)
GSLの読者でもファンの多い、あの!!(※)、小谷究さんより寄稿記事が届きました!
※小谷究さんは、流通経済大学スポーツ健康科学部スポーツコミュニケーション学科 助教、流通経済大学バスケットボール部ヘッドコーチ、日本バスケットボール学会理事&事務局や、『バスケットボール用語辞典』・『バスケットボール学入門』・『ボールマンがすべてではない: バスケの複雑な戦術が明らかになる本』の著者(編者も含む)などの書籍を通じ、バスケットボールを取り巻く環境や情報整備の為に幅広く取り組まれている。2/28に開催した『バスケットボールサイエンス』も小谷さんの様々な協力もあって成立した催しである。
前回記事「2/28(水)『バスケットボールサイエンス』開催!『研究は、コーチを続けるための手段だった』小谷究氏が自身の経験を赤裸々に語る」に続き、今回のテーマは「1人バスケットボール学会の歩き方」。徳島大学を会場に8月24日(金)から26日(日)までの期間で開催される第69回日本体育学会について。
『バスケットボールサイエンス』のイベント内では、登壇者の1人であった網野友雄氏(白鴎大学)が語った「コーチと研究者が別の世界で生きるのではなく、お互いに交流を深め、意見交換をしていくことが重要」というメッセージが多くの参加者に強いインパクトを与えたが、小谷究氏も、研究現場と競技現場が有機的な繋がりを構築する事で、日本のバスケットボール界がさらにポジティブな世界になっていくと信じ、前述のような多岐に渡る活動を展開されている熱血漢。小谷氏のEnthusiasm(何かに取りつかれたかのような深く熱い、激しい情熱 ※塚本氏の講演などを踏まえ、GSL意訳)を感じ取れる内容となっている。是非、ご覧ください!
写真:「バスケットボールの誕生日を祝おう!」という趣旨で開催されているBasketball Birthday Classic 2017内の特別講演『ジェームズ・ネイスミス博士の理念に基づくコーチング』より
「一人バスケットボール学会の歩き方:第69回日本体育学会」
小谷究(流通経済大学バスケットボール部HC)
8/24-26 @徳島大学
第69回日本体育学会が8月24日(金)から26日(日)にかけて徳島大学で開催される。日本体育学会は哲学や歴史学といった人文系からバイオメカニクスや生理学といった自然科学系まで数多くの研究分野が一堂に会する日本最大の体育系学会である。日本体育学会では、大会全体の企画の他に研究発表がそれぞれの研究分野ごとに各会場に分かれて行われる。発表内容は筋や腱、血液などを対象としたもの、政府や組織、コミュニティなどを対象としたもの、バスケットボールやバレーボールといった各競技を対象としたものなど様々である。
通常、参加者は自身が専門とする研究分野の会場で研究発表を聞く。筆者の場合、体育史の会場もしくは体育方法の会場で研究発表を聞くことになる。しかし、筆者は「バスケットボール」が好きでたまらない。したがって、バスケットボールに関する組織やコミュニティであったり、筋、腱、血液などの発表が聞きたいのである。ところが、一つの会場にとどまっていてはバスケットボールに関する情報を効率的に得ることとはできない。そこで、筆者は毎年、「一人バスケットボール学会」と称して、バスケットボールに関する発表を効率良く聞くためのスケジュールをたてている。ここでは、筆者のような研究分野は「バスケットボール」であるといった方に向けて、今年の「一人バスケットボール学会の歩き方」を紹介することとする。
◇8/24(金)
13:15-13:35
体育経営管理 ポスター発表
@2号館 地域連携大ホール
本間翔太郎(新潟医療福祉大学大学院) No.4
VR 技術によるバスケットボール指導者の状況認知
13:35-15:00
体育方法 ポスター発表
@2号館 地域連携大ホール
- 長谷川 巽(日本体育大学大学院)No.1
コーチングの変化がもたらすアスリートへの影響:バスケットボール競技に着目して - 栗原 俊之(立命館大学) No.9
バスケットボールの勝敗を決定する 4 要因(Four Factors)とレギュラーシーズンの勝率の関係 - 中嶽 誠(順天堂大学) No.19
バスケットボール競技のシュート成功確率に関する検討 - 川面 剛(九州共立大学スポーツ学部) No.34
ミニバスケットボールゲームにおけるファーストブレイクのあり方について - 濱口 祐實(神戸大学大学院) No.40
バスケットボールのシュート位置の違いが投射条件やボール軌道に及ぼす影響 - 池田 英治(山形大学) No.54
バスケットボール選手におけるスポーツ傷害と精神健康度についての縦断的検証 - 三浦 健(鹿屋体育大学) No.58
バスケットボールにおけるバレーボールのブロック技術の習得が勝利に影響を及ぼした一事例
15:25-15:50
体育社会学 口頭発表
@4号館301
- 千葉 直樹(北翔大学)
アメリカ人バスケットボールコーチの指導観に関する研究:日本人バスケットボールコーチとの指導観の違いに着目して
16:00-17:00
体育心理学 ポスター発表
@2号館 地域連携大ホール
- 牛来千穂子(筑波大学大学院) No.21
バスケットボール競技の長距離シュートにおけるパフォーマンスと心理状態の関係:連続スリーポイントシュートによる検証 - 生野 勝彦(畿央大学) No.60
中高年バスケットボール競技者のプレイに影響を及ぼす要因の検討
◇8/25(土)
10:15-11:00
発育発達 ポスター発表
@2号館 地域連携大ホール
- 禿 隆一(朝日大学)No.31
バスケットボールフリースロー時の重心動揺について
11:00-11:20
体育科教育学 ポスター発表
@2号館 地域連携大ホール
- 大山 泰史(佐世保工業高等専門学校) No.22
テキストマニングを用いた体育におけるバスケットボールの授業評価分析
11:36-11:39
バイオメカニクス ポスター口頭発表
@共通講義棟K302.K303
- 渡邉 修希(鹿屋体育大学大学院) No.21
バスケットボールのロングチェストパスの投距離獲得に関する研究:熟練者と未熟練者との比較検討
12:10-13:10
日本バスケットボール学会企画 ランチョンセミナー
@共通講義棟 K302・K303
テーマ:バッシュとスポーツ科学
座 長:飯田 祥明(南山大学)
演 者:中山 修一(JR 東京総合病院、日本オリンピック委員会医学サポート部門員)
仲谷 政剛(アシックススポーツ工学研究所)
稲葉 優希(国立スポーツ科学センター)
13:30-14:00
測定評価 ポスター発表
@2号館 地域連携大ホール
- 岩見 雅人(東京農工大学先端健康科学部門) No.8
バスケットボール授業における簡易スキルテストの有用性
14:00-14:30 運動生理学 ポスター発表
@2号館 地域連携大ホール
- 稲葉 泰嗣(中京大学大学院)No.17
寒冷環境下におけるウォームアップ後の経過時間がエネルギー代謝に及ぼす影響:バスケットボールの試合時間を想定して
14:50-15:05
体育方法 口頭発表
@共通講義棟K502
- 八板 昭仁(九州共立大学スポーツ学部)
バスケットボールのゲーム中のショットの類型化:選手の身長、ショット前のプレイ、試行エリア、難易度の関連
15:05-15:20
- 中瀬 雄三(東京成徳大学)
バスケットボールにおける育成年代を対象とした指導者の促発指導能力に関する考察:選手の戦術力を対象とした指導に焦点を当てて
以上が、今年の「一人バスケットボール学会の歩き方」である。しかし、時間が重なっているバスケットボールの発表もあるため、回ることが可能な発表を選択した。したがって、日本体育学会においてバスケットボールの発表を全て網羅することは物理的に不可能である。この問題を解決した学会が「日本バスケットボール学会」である。日本バスケットボール学会の研究発表は全てバスケットボールに関する発表であり、今のところ、全ての発表を聞くことが可能である。また、「日本バスケットボール学会」は研究者だけでなく、中高の教員やメディア関係、コーチといった様々な分野の方が集まるといった特徴がある。研究者以外の方で最新のバスケットボールに関する研究成果を得たい方には「日本バスケットボール学会」に参加することをオススメする。
【注意点】
- 発表時間や場所が変更されることもあるので直前に日本体育学会のHPを確認することが必要である。http://www.jspe69.jp/
- 前の発表により時間が若干ずれることがある。
- 発表者が日本バスケットボール学会の会員であったり、発表者のこれまでの研究を考えると演題名にバスケットボールが入っていないもののバスケットボールに関する発表の可能性があるものがある。
- 前の発表者の発表中に入室することが難しい会場もあるので早めに会場前にスタンバイし、発表の合間のタイミングを逃さないように入室することをオススメする。
- 「一人バスケットボール学会」は会場の入退室を繰り返すことになるので、入り口近くの通路側の座席を確保すると他の参加者に迷惑をかけないですむだろう。
※ 筆者自身は8月25日(土)の12:45-14:00に共通講義棟K507で体育方法の座長を務めているので、もし会場にいらした方は是非、その後の時間でバスケットボールの研究について意見交換をさせて頂ければ幸いである。
小谷 究
1980年石川県生まれ。流通経済大学バスケットボール部ヘッドコーチ。流通経済大学スポーツコミュニケーション学科助教。日本バスケットボール学会理事。2003年、日本体育大学体育学部体育学科卒業。日本体育大学大学院博士後期課程を経て博士(体育科学)。専門はバスケットボール競技の戦術研究。大学ではコーチング学の授業を担当。マッスルスキンスーツを用いた授業は好評を得ている。2007~2009年、日本体育大学男子バスケットボール部ヘッドコーチ。
この記事の著者
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1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。
宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。