シグネチャームーブシリーズ② クリス・ポールのスキル解説

Chris Paul, Bradley Beal

今回はクリス・ポールのプレーについて解説を行なっていきます。

前回記事はこちら

ご存じの方も多いと思いますが、ポールは2005年のNBAドラフトでニューオーリンズ・ホーネッツから1巡目4位指名を受けて入団した選手です。ルーキシーズンは圧倒的な支持を受けて新人王を獲得しました。2011年にはクリッパーズに移籍し、NBA最高峰のPGとして活躍している選手です。

有名なエピソードとして、ポールの祖父が強盗に遭い殺害されるという惨劇が起きました。するとポールは祖父の葬儀に出席した翌日の試合で、祖父の年齢と同じ61得点をあげたというものです。

今回もクリス・ポールのプレーの一部を僕なりに解説していきたいと思います。

1on1における空間論【左右の空間】

前回1on1における基礎知識として、それぞれの場面状況について話をしました。今回は1on1における左右の空間について説明していきます。

オフェンスとディフェンスとの空間は3つの空間でできていると考えています。

  1. 左右の空間
  2. 前後の空間
  3. 上下の空間

この3つの空間が技術を発揮する場面と密接に関わってきます。

今回は左右の空間について少し触れていきます。1on1オフェンスにおける左右の空間とは、ディフェンスフットの真横の空間になります。つまりドリブルやステップで抜きに行く空間です。

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そしてこの空間の攻め方は大きく以下の3つに分類することができます。

  1. ディフェンスフットの真横を抜きにいく
  2. ディフェンスフットの一歩離れたところを抜きにいく
  3. オフェンスが真横に動いて抜きにいく

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①〜③いずれもオフェンスとディフェンスのズレを作ることが大事になっていきます。ズレの作り方としてはスピードやチェンジオブペースでズレを作るか、フェイクにてディフェンスを反応させズレを作るか、ドリブルにてオフェンス自らが横に動きズレを作るかに分けることができます。

そしてディフェンスを抜きに行く空間はオフェンスの能力、ディフェンスの状況に応じて変えていくことが大事になります。

【状況①ペネトレイト】インサイド・アウト

クリス・ポールのシグネチャームーブの1つ、インサイド・アウトです。フロントチェンジにいくと見せかけボールを内側に移動させ、外側にボールをバウンドさせる技術です。クリスポールのインサイド・アウトはボールを内側へ素早く移動させると同時に、ステップやボディフェイクでディフェンスを反応させペネトレイトを行ないます。

ちょっとした工夫として、ポールはインサイド・アウトにて若干ボール移動の幅を変えているように見えます。ドリブルフット分の小さい幅、オフドリブルフットまで動かす大きい幅と状況に応じて使い分けをします。この時インサイドアウトにてディフェンスが反応してきた場合はカウンタームーブが必要になります。

【状況2ドリブルワーク】サイドホップ・ジャンパー

続いてインサイド・アウトの応用編です。サイドホップ・ジャンパーとはドリブルチェンジを行ないながら真横にステップを踏みジャンプショットを打つ技術です。ポールはインサイド・アウトを行ないながらステップを踏み、ディフェンスとのズレを大きく作ってジャンプショットを打つことが多いです。状況としてはピック&ロールを行ない、ヘルプディフェンスとの1on1で使うことが多いです。

技術のポイントとしては、インサイド・アウトの終了動作時(外側にボールがバウンドする時)にクロスオーバーステップで1・2ステップを行ないます。そうすることによってチェンジとステップ分の幅を出すことができます。これには動きを分断する能力が必要になります。

ディフェンスが反応してきた場合は、クイックチェンジやストレートドライブのカウンターが必要になります。ゴールに向かうドリブルワークはただまっすぐに進むだけでなく、こういった変化の技術も必要になってくるのだと感じています。

この記事の著者

岩井 貞憲バスケットボール スキルコーチ
1987年生まれ。千葉県船橋市出身。千葉県立船橋芝山高等学校から東京YMCA社会体育・保育専門学校に進み、東京YMCA社会体育・保育専門学校ヘッドトレーナーなどを歴任。指導理念「バスケットボールを通じて、最善をつくす喜びを知る選手を育てたい」