インタビュー:鍵冨善宏(ファミリーテンス)その2

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鍵冨善宏氏のインタビュー第2弾。日本と海外におけるチームビルディングの違い、そして今後の日本における課題について、グローバル企業に勤務する鍵冨氏ならではの目線で語って頂いています。

第1弾はこちら⇒「 インタビュー:鍵冨善宏(ファミリーテンス)その1

 

◇グローバルに展開する日本企業の海外拠点での経験から、 日本にいる時の企業の中やプロジェクトのチームビルディングと、米国にいた時の同企業の中でのチームビルディングなどで特に顕著な違いはありましたか?

自分はアメリカで仕事をしていたと言っても、日系企業の米国現地法人での勤務経験ですので、 完全なアメリカ企業での仕事の経験とは若干異なる部分もあるとは思いますが、それでも日本での仕事の進め方とは違いを感じることは多かったです。そもそも組織構造と雇用制度の違いがあります。 日本でも表向きは”pay for performance”型賃金体系(成果主義)への変化や、中途採用のマーケットの流動化の流れはあるものの、日本の大企業のほとんどは、依然として終身雇用をモデルとした年功序列型の組織構造のままです。

kagitomi03一方でアメリカは、転職をすることでステップアップをしたり、仕事ができなければ解雇されることもある反面、能力が高く上司からの受けが良ければ大抜擢人事などもありえます。こういった事情もあって、アメリカのリーダーの方がスタッフのモチベーションという点に関して、より注意してチーム構築、運営をしていると思います。 日本ではなあなあで済まされることもある、ゴール設定や人事評価のフィードバックなどは懇切丁寧に行われます。優秀なスタッフへの昇給、プロモーションなどもモチベーションを高く持ってもらうための大切な手段になっています。

ですので、チームビルディングにおいても、目的、各人の役割、期日、レポーティングルートを明確にして、各人に納得してもらった上でプロジェクトチームを構築します。日本のように辞令が出たらそれに従えというスタイルではありません。 ただ、アメリカ人も自分を評価する上司に対しては基本的には忠実なので、そうそう私やりませんというような状況は起こりませんが、リーダーとしては、メンバーの納得感とモチベーションを日本での仕事の進め方以上に考えて仕事をしていると思います。

 

◇それ以外に、チームビルディングにおける文化の違いを感じることはありましたか?

話が若干横にそれますが、アメリカでは子供のころから発言をすること、自分の意見を言うことが大切だという教育を受けています。発言しない子は意見のない子、わかっていない子と思われてしまいます。会議においてもチーム内での意見交換においても日本人よりも積極的に発言します。リーダーはメンバーに意見を求めたり、あえて自分の代わりに発言してもらったりするのだと思います。

こういったアメリカ文化の背景があるので、コーチKも、個人のエゴをチームのエゴへと昇華させ絆を構築することを目指したり、逆に時には個人のエゴを出すように個人的に話をしたり、チーム内に自分以外にも何人かのリーダー的役割を持った人を養成したり、スーパースター軍団のモチベーションを上げるために色々と策を練ったりしたのだと思います。でもこういったリーダシップ、チームビルディングは、別にアメリカだけでの話ではなく、日本においても絶対に有用な方法だと思います。◇「これは日本人がこれからグローバルな世界で勝負していくためには我々もグローバルスタンダード構築に参加して、いつも他人の土俵ばかりでなく自分たちの土俵でも相撲をとれるような仕組み作りにもっと注力していく必要があると思います」という点に関して、まず必要不可欠な部分(最低限、備えておくべき事柄)と、日本人のメンタリティ/文化/慣習の中でグローバルスタンダード構築の際に、通用しそうだなと感じている事柄はありますでしょうか?

前述の通り、日本人は決められたルールを守ろうとするメンタリティが強いと思います。ルールを守るということは、信頼を得るために大切なことですし、これは日本人が誇りに思っても良い部分だと思います。一方で、世界をリードをしていくためには、ルールを守ることよりもルールまたはスタンダードを作ることのほうがより大きな意味を持つと思います。kagitomi05自分は商社で会計関係の仕事をしていますが、会計基準をひとつとっても、各国まちまちの基準をIFRS(国際財務報告基準)に統一するという流れではありますが、IFRSの議論は欧州を中心になされ、アメリカは言語と同じく自国の会計基準を世界標準にしようと頑張っています。日本はと言うと、独自の会計基準を持つものの、国際社会で利益を獲得する日本企業に対してはIFRS、米国会計基準の使用を認めています。つまりは、日本国内では自分たちの信念を持ってはいるものの、グローバルなレベルでは自ら世界標準になろう、もしくは作ろうではなく、従おうというスタンスで臨んでいるということが言えると思います。スポーツでも、日本がルール改正に苦しめられたりしますが、 真面目に従うだけでは世界でリーダーシップをとっていくことはできないと思います。

一方で、世界の中でここまで勤勉な民族は少ないと思います。この点は負けていないのですからトップが正しい方向性さえ示すことができれば、一致団結してグローバルスタンダード構築に突き進むことも可能だとは思っています。ただいつまでも島国根性で生きていてはいけないし、これからどんどんボーダーレスになっていくことを受け入れて変わっていかなくては世界から取り残されてしまうリスクがあるとも思っています。

 

鍵冨善宏(Kagitomi Yoshihiro)
1973.11.27生まれ。新潟県出身。197㎝ 83㎏。
柏崎高⇒明治大⇒丸紅⇒ファミリー・テンス⇒Dream League All Stars

この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。