ステフェン・カリーのエレベーションシュートとスティーブ・ナッシュのローシュート

Stephen Curry

ステフォン・カリーのエレベーションシュート

今季も相変わらず好調のカリー。彼のシュートをよく見ると、最高到達点でリリースしていると言うよりは、ジャンプの途中でリリースしているように見えます。書籍『シュート大全』の著者アダムによれば、これは「エレベーションシュート」と呼ばれ、ヨーロッパの選手によく見られる打ち方だそうです。

いわゆる「セットシュート」と「ジャンプシュート」の中間のシュートで、自分の足がわずかに床を離れる時にリリースします。高さはないかもしれませんが、スムーズなリズムとクイックさをもたらし、さらにシュートレンジも広がるだろう。

ヨーロッパの選手しかり、彼のアスレチック能力はずば抜けているとはいえません。そのため考えだされたのがこの方法なのかもしれません。より高く、速い選手を相手にする場合、この方法を取り入れることを考えてもよいかもしれませんね。

ついでにこんな動画をご紹介します。

Sport ScienceというESPNの番組が分析した模様です。大事なポイントを要約すると以下の通り。

  1. カリーのドリブルスピードは時速10マイルとのこと。16.0935 kmですね。そこから突如ストップしてシュートを打てる。それまでの間わずか0.33秒(でいいのかな?)
  2. 利き腕は約5°右に傾いている
  3. ジャンプしてから0.06秒でリリースしてるってことかな?
  4. リリースの角度は50〜55°。NBAのシューターの平均身長と比べてカリーはだいぶ背が低いので、DFをかわすために高くリリースしているってことかな?
  5. そして特筆すべきは、ドリブルからシュートを打つまでの速さ。これがわずか0.4秒。NBAのほかのシューターの平均は0.54秒らしい

スティーブ・ナッシュのローシュートテクニック

Steve Nash

「彼は低いシューティングポケットからシュートモーションをはじめて、低いリリースポイントからシュートを放つ。このテクニックによって、ナッシュは省エネをすると同時に、スムーズなリズムと、クイックリリースを得ることができた。」

「だから、もしそれによってあなたが正しくシュートを打てるようになるなら、自分のシュートを低くすることを恐れてはならない。」

シュート大全より

両者に共通するのは、身長が190cm前後と、NBAの中では小柄であること、類まれなアスレチック能力を持っているわけではないことです。スムーズなリズムとクイックネスによってシュートを打つために考えぬかれた結果なのだろうと推測されます。

またローシュートは、若い年代のような筋力が弱い選手にも有効だとアダムは述べています。こうした選手の誤りは、プロの選手のように高い打点で打とうとしてしまうことで、それによってアライメントが崩れたり、バランスハンドが返ってしまったり、不安定なリズムを引き起こしてしまうとのことです。

ローシュートを取り入れることによって、自分が成長して力をつけたときに、それほど修正を必要としない正しいテクニックを身につけることができます。筋力が足りない故に、両手で打ったり、頭上や肩で担ぐように打つことで、悪い習慣が身についてしまい、成長後に全く新しいテクニックを再構築しなければならなくなります。ローシュートであれば、打点を高く修正するだけで済むのです。

参考動画はこちら↓

クイックなシュートを身につけたい選手、あるいはシュートの安定性に不安を感じている選手は、一度試してみても良いかもしれませんよ。

今回ご紹介した参考文献はこちら↓

この記事の著者

岩田 塁GSL編集長
元・スポーツ書籍編集者。担当書籍は『バスケ筋シリーズ』『ゴールドスタンダード』『シュート大全』『NBAバスケットボールコーチングプレイブック』『ギャノン・ベイカーDVDシリーズ』『リレントレス』他