【書評】バスケットボールの教科書<1>技術を再定義する

『バスケットボールの教科書<1>技術を再定義する』の第9刷(累計15000部)が決定したという知らせが株式会社ERUTLUC(エルトラック)のHP上で公開されていた(2019年12月22日)。

GSLでは、共同編集長の片岡秀一が個人のSNS内(2017年頃)で同書籍の書評を公開している。下記、以前の投稿内容をGSL内で投稿。同様の内容は、鈴木良和氏のブログ内でも公開されている。

【書評】バスケットボールの教科書<1>技術を再定義する

「バスケットボールの家庭教師」で知られる株式会社ERUTLUC代表である鈴木良和氏による書籍。全4部作は、ご本人のブログによると「起・承・転・結」を意識して構成され、「技術を再定義する」「戦術と戦略の核心」「チームマネジメント基礎」「指導者の哲学と美学」というテーマで紐づけられているという。

株式会社ERUTLUCの活動は、青少年に対するバスケットボールの指導だけではなく、コーチの為の学習機会の提供や、コーチ同士のコミニティ創り、海外のコーチを招いてのクリニック事業など多岐に渡る。有難いことに自分もウェアメーカーという立場から、何度か一緒に協働させていただく機会に恵まれたが、常に企業としてのミッションを果たす活動であるかどうかを意識していることを強く感じている。3つのミッション「より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する」・「チームスポーツだからこそできることで教育に貢献する」・「世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」は、言葉として非常にパワフルだ。同時に、部外者の自分の中でさえも、同社の活動に触れる度に、実際の取り組みにミッションが反映されている事を強く感じる。

そんな個人的な経験や感慨もあり、この書籍も、ミッションを果たすための手段の一つなのだろうというスタンスで読み進めた。

第一弾の特徴は、タイトル通り、技術の再定義にある。巻末、「ここまで説明してきたことが全て正しい定義であるというつもりはありません」と注意書きを加えてスタンスを明確にしているが、これまでのバスケット界での基準や考え方に疑問を呈する問題提起も少なくない。それは、「日本人は勤勉と言われているが、何に勤勉になるかが重要。質の低い練習に勤勉だったり、古い習慣に固執していては、せっかくの勤勉さを成果に繋げる事が出来ません」という巻頭の提言からも読み取れる。

書籍では、「良いコーチの定義」に始まり、「そもそも、なぜ定義が必要なのか」という問い出発する。「ファンダメンタルの定義」を「技術の不足が状況への対応を妨げないようにすること」と定める。生命論パラダイム、機械論パラダイムという2軸を活用して、既存のファンダメンタル習得の為のプログラムに一石を投じる。「基本が大事」という言葉はスポーツ界で広く言われる言葉である。それでも、ここまで明瞭に言語化をしている人は少ないのではないだろうか。まず、この部分が気になる方は、特に、本書籍を手に取ってほしい。

本コラム著者にとって印象的だったのは、少年期での鍛錬の必要性が叫ばれるコーディネーショントレーニングについての筆者の分析である。「リズム能力」「バランス能力」「連結能力(カップリング)」「反応能力(リアクション)」「定位能力(オリエンテーション)」「変換能力(アダプタリティ)」「識別能力(ディファレンシング)」の7つの能力で語られる各種能力について、階層構造のピラミッドで各能力を説明。「変換能力(アダプタビリティ)」を「相手の対応に、対応する能力」と定義し、7つの能力のピラミッドの最上位に配置。その選定理由、バスケットボールという競技との関りを平易な言葉で説明をしている。コーディネーション能力の7要素は知っていたが、それぞれの関係性にまでは思考が及ばなかった私には非常に興味深い考察であった。

「技術を再定義する」は6つの章、計169のトピックスから構成される。各トピックスの説明は300文字程度に分かりやすく整理されている。移動時間などでトピックスを読み、考え、また読む、というサイクルにも向いている。

第2弾のテーマは「戦術と戦略の核心」へと続き、チームマネジメントや指導者の在り方へと発展していく。本四部作は、「技術と戦術はチームマネジメントのほんの一側面でしかない」という発見から着想したという。続編が非常に楽しみである。

 

この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。