シグネチャームーブシリーズ① カイリー・アービングのスキル解説
おはようございます! 以前に書き上がっていたストックしていたものですが、NBAオールスターで見事アービングがMVPを獲ったというタイムリーな話題なので急遽繰り上げてお送りします。
今回はシグネチャームーブシリーズと題しまして(ナイキさんのパクリみたいですが)、様々な選手のスキル解説をするシリーズとなっています。またこのシリーズは『バスケットボール「1対1」に強くなるトレーニングブック―ミニバスから中学・高校バスケまでー実戦に役立つテク』(マイナビ)の著者である、岩井貞憲さんが寄稿してくれることになりました。
目次
カイリー・アービングのスキル解説
今回はカイル・アービングのプレーについて解説を行っていきます。デューク大学から2011年のNBAドラフトにアーリーエントリーし、1位指名を受けてクリーブランド・キャバリアーズに入団した選手です。今シーズンで3年目になりますが、すでにNBAトップクラスのガードとして知られています。NBAを知らなくても、もしかしたらペプシのCMで知っている人がいるかもしれません。
こちらはアービングが特殊メイクで老人に扮して周りを驚かすといった内容です。実際の試合でのプレーはこちらの動画をご覧ください。
このように、とても技術のバリエーションが多い選手です。今回はその一部を僕なりに解説していきたいと思います。
1on1を構成する4つの状況
技術を紹介する前に1on1における基礎知識を紹介していきます。今回はアウトサイドからのオフェンスは4つの状況に分けて整理をした考えを紹介します。
状況① ペネトレイト
ディフェンスと対峙している状態から抜きに行く状況です。これはキャッチ、ボール保持(デッドボール)、そしてドリブルからの状況に分けることができます。
状況② ドリブルワーク
ゴールに向かいながらドリブルしている状況です。これは競り合っている状況、抜き去っている状況に分けることができます。
状況③ ステップ&ストップ
フィニッシュに行く前のステップ・ストップを行う状況です。ボールマンディフェンダーに対して技術を使う状況、ヘルプディフェンスに対して技術を使う状況に分けることができます。
状況④ フィニッシュ
ステップ・ストップを行ったあとのフィニッシュに行く状況です。これもボールマンディフェンダーに対して技術を使う状況、ヘルプディフェンスに対して技術を使う状況に分けることができます。
【状況①ペネトレイト】レッグスルードライブ
①アービングレッグスルー
※1分40秒辺りの動き
レッグスルーを行うと同時にボール側(ドリブルチェンジを受け止めた側)の足を一歩分引くようにしてステップを踏みます。この時に身体の向きもボール側の進行方向に向けるようにします。引くことによりディフェンスと小さいスペースを作り、そこにディフェンスを引き寄せて反応させます。その瞬間にクロスオーバーなど逆をつくような技術を使います。
②スピードレッグスルー&ハーダウェイムーブ
またアービングはレッグスルーのチェンジと同時にストレートに加速する技術も多く使います。これをスピードレッグスルーと言います。最初のチェンジ後にスペースを開けるようなステップを踏む技術はスピードレッグスルーの派生になります。またレッグスルー後、すぐにクロスオーバーする技術(ハーダウェイムーブ・キラークロスオーバー)も使用したりします。こういったようにキラームーブに対していくつかのプレーの派生があります。
こういった選手たちは技術の選択肢をディフェンスの状況に応じて持っているということです。技術自体のバリエーションが多い選手もいれば、そこまで多くない選手もいます。ただ少ない選手でも自分のキラームーブが止められたら、それに対応するカウンタームーブを持っています。
例)ジョン・ウォールはレッグスルーからではないですが、ボール側の足を引いた状態からクロスオーバーを行うことが多いです。
【状況②ドリブルワーク】ドライブ&ロール
アービングは様々な状況でロールを使います。ロールといってもステップの踏み方やロール後にドリブルを継続する、保持するで目的が変わってきます。今回は5つのバリエーションのロールスキルを紹介していきます。
①カウンターロール
ペネトレイトの状況にてクロスオーバーやレッグスルー、インサイドアウトなどでドライブする瞬間に、ディフェンスがオーバーディフェンスだったり、間合いをつめてきた場合はロールにて逆をつきます。また自分から間合いをつめてロールを行う場合もあります。
ロールはディフェンスとの間合いが遠すぎるとあまり有効ではありませんが、間合いが近いときには有効な技術になります。アービングはディフェンスに対応された瞬間、自分から間合いをつめた瞬間にロールを行うシーンが多いです。
②ロールジャンプ(ストレートステップ)
ゴールに向かうドリブルワーク時にディフェンスがオーバーディフェンスだったり、間合いをつめてきたりした場合にロールを行います。この時にロールを行いながらボールを保持してフィニッシュに行く技術をロールジャンプと呼びます。リングまでのドライブコースが空いている場合はロールジャンプを行いながらリング方向にストレートステップを踏んでフィニッシュへと持ち込みます。
③ロールジャンプ(パウンドストップ)
②と同じ状況にてロールを行います。ただこの場合はロールを行いながらリングまでのドライブコースがない場合はロールを行いながらストップします。アービングはストップと同時にジャンプショットを行います。
④クイックチェンジ⇒クイックロール
ゴールに向かうドリブルワーク時にクイックチェンジを行い、ディフェンスを引き寄せながら間合いを詰めてロールを行います。トニー・パーカーもよく使う技術になります。この技術はボールマンディフェンスを抜き去ってヘルプディフェンスに対して使うことが多いです。
⑤プルバックチェンジ⇒カウンターロール
ゴールに向かうドリブルワーク時にディフェンスがオーバーディフェンスだったり、間合いをつめてきたりした場合にプルバックチェンジを行います。ディフェンスの間合いが変わらない場合はカウンターロールを行いゴールへ向かいます。アービングはレッグスルーやバックチェンジからカウンターロールを行うことが多いです。
【状況③ステップワーク】アービングステップ
フィニッシュに行く前のステップワークで、アービングがよく使うステップです。これはヘルプディフェンスをかわすときに有効なステップになります。
①スタートポジション
スタートポジションはランニングステップやユーロステップと同様で、ディフェンスに向かいながらドリブルしている状態です。ランニングステップ系のスキルは対ボールマンディフェンスにおいても、対ヘルプディフェンスにおいても前後の空間が離れすぎているとディフェンスが対応しやすくなってきます。
このステップを使う間合いは、1ステップ目がディフェンスの足の横(ワンステップアヘッド)に踏める間合いにてスタートします。
②1ステップ目
1ステップ目を踏むときは、ドリブルフットをディフェンスの前でクロスしながらステップを踏むようにします。その際に、ボールがディフェンスの近くを通らないように胸の前ではなく、頭の上をボールが通過するようにして動かします。このボールムーブをウィンドミルと呼んでいます。
1ステップ終了後はディフェンスに対してプロテクトポジション(身体の面が背中を向いている状態)になります。通常のランニングステップやユーロステップはドリブルフットがオープンスタンスになってステップ動作に入るのでここが違うところです。
③2ステップ目
2ステップ目を踏むときは、ドリブルフットとは逆の足を、1ステップ終了後にすぐさまゴールに向かってステップを踏むようにします。
【状況④フィニッシュバリエーション】
これはフックレイアップ、クロスレイバック、フローターと選手によって様々ですが、アービングはショットアングルの位置を変えるスキルが高いです。身体でボールをプロテクトしながら、1ステップ目をディフェンスの足の横に踏むステップになるので、スモールプレーヤーにも有効なステップになってくると考えます。
またユーロステップは2ステップ目が横にいくのに対し、アービングステップは2ステップ目でリングに向かいながらステップを踏むことができます。こういった点もアタックする際に有効なポイントになってくると思います。
以上、シリーズ第1回目の投稿でした。アービングの武器であるペネトレイトには、こうしたスキルの組み合わせだったり対応だったりがあるわけですね。今後も様々な選手を取り上げる予定ですので、是非リクエストなどお願いいたします!
この記事の著者
- 1987年生まれ。千葉県船橋市出身。千葉県立船橋芝山高等学校から東京YMCA社会体育・保育専門学校に進み、東京YMCA社会体育・保育専門学校ヘッドトレーナーなどを歴任。指導理念「バスケットボールを通じて、最善をつくす喜びを知る選手を育てたい」
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