今さら聞けないゴールデンエイジ理論

今さら聞けないゴールデンエイジ理論

追記あり(2017.1.30)

先週の2つの投稿「子どもの発達に合わせた7段階の指導モデル」と「体の賢さ(フィジカルリテラシー)の重要性」と、今ではよく知られるようになったゴールデンエイジ理論は深い関連があります。ご存じの方も多いと思いますが、念のためまとめておきたいと思います。

ゴールデンエイジとは黄金世代と使われる場合もありますが(奇しくも私は1984年生まれの石崎・竹内兄弟を筆頭とするゴールデンエイジ世代です)、ここで使われるのは「成長年代のどの時期に、どの体力要素が伸びやすいのか」という指標として使われる理論の話です。

体力要素とは単に「持久力」ということではなく、アジリティ(敏捷性)やバランス、コーディネーション(巧緻性)、心肺機能、筋力といったあらゆる身体の機能のことを指しています。この理論を説明する際には「スキャモンの発育曲線」がよく使われます。

スキャモンによると、神経系の発達は生まれてから5歳頃までに80パーセントほど形成され、12歳をピークにほぼ100パーセント形成されます。神経系とはバランス能力や巧緻性といった、身体を思い通りに動かす能力に必要な要素です。ここまでに習得した動作は、将来に渡って消えることはほとんどありません。よって、12歳までに様々な動きを経験させておくことが重要だと考えられます。また日本では単種目という環境が一般的ですが、様々な競技を行なわせることも重要です。

このように、ゴールデンエイジとは個人差はありますが概ね11〜12歳の時期を指し、「即座の習得」が可能な年代のことを指します。当然この時期に何もしなければ効果はありませんが、この時期と前後に沿って、計画的にトレーニングを実行することで将来的に大きな効果が期待できます。

そしてこの「前後」というのが重要で、メジャーリーグなどでトレーナーを務めた立花龍司氏は、プレゴールデンエイジ前期と後期、そしてゴールデンエイジ後のポストゴールデンエイジに分類し、それぞれで実施すべき内容を下記の通り述べています。

プレゴールデンエイジ前期(4〜6歳)

プレーニング、巧緻性、敏捷性、バランス

この時期からは神経系の成長が顕著に見られます。そのため、様々な動作を経験させるために、1つに限定せずに様々な競技を行なわせましょう。さらにこの時期は、無理に押し付けてもうまくいきません。両親や周りの人自身が、楽しんで遊んでいる姿を見せることで、子どもたちは興味を引きつけられ、一緒に取り組むようになります。このことを、筑波大学の長谷川聖修教授は「遊び(プレイ)+トレーニング=プレーニング」と呼んでいます。スポーツへの興味関心を引き出し、身体を動かすことの楽しさを教えながら、「即座の習得」ができるゴールデンエイジへ向かうための準備をしましょう。

プレゴールデンエイジ後期(7〜10歳)

プレーニング、巧緻性、敏捷性、バランス

直後に「即座の習得」を得るゴールデンエイジを控え、非常に大事な時期と考えられます。実際に特定のスポーツチームへ参加する子どもも増えることでしょう。しかしプレゴールデンエイジの前期と同様に、様々な競技(あそび)を経験することも必要です。この時期では、神経系の発達に合わせて、巧緻性や俊敏性のトレーニングを重視して行ないます。

ゴールデンエイジ(11〜12歳)

巧緻性、安定性、可動性、柔軟性

「即座の習得」が可能な年代で、競技特有の動きはもちろん、投げる、蹴る、跳ぶなど動作そのものの習得に対しても効果が見られます。バスケットボール特有の動きに加えて、全身を使う運動を心がけるとよいでしょう。キャッチボールができないサッカー選手や、脚を上手く使えないバスケットボール選手も多いです。

彼の場合はサッカーでこれ以上ないレベルですが、これが身体の賢さ(フィジカルリテラシー)で述べたことの本質と関連してきます。そしてこの後に第二次成長期に入ると、身長の急激な伸びにより柔軟性が低下することがあります。そのため、ここまでの時期で柔軟性の向上にも取り組んでおくとよいでしょう。これに付随して安定性と可動性を向上させるファンクショナルトレーニングというものが最近になって注目されていますが、これについての詳細はまた改めてまとめたいと思います。

    

ポストゴールデンエイジ(13〜15歳)

持久力(心肺機能)、筋力

ゴールデンエイジを過ぎると、第二次成長期に入ります。身体が成長するにつれ、運動神経とのアンバランスが生じ、動作をうまく表現できなくなることがあります。また柔軟性も低下する傾向にあります。柔軟性や巧緻性、俊敏性のためのトレーニングは適宜継続することが必要です。そして中学生に入ると心肺機能に著しい向上が見られますので、走る練習はこの時期にうんとやったほうがよいでしょう。

またこの時期の終盤には、身体の成長に合わせて軽い負荷での筋力トレーニングをはじめます。高校生に入って身体の成長が止まるとほぼ大人と同様の身体になります。高校生に入ってすぐに筋力トレーニングに取り組めるように、準備段階として行ないましょう。

合理的なことばかりがスポーツに必要なことではないかもしれませんが、「どの時期に何をやれば最大効果を得られるのか」を理解した上で取り組むことも重要だと思います。後は各国の取り組み方なんかの事例を見てみたいですね。以上、是非あなたのチームの練習の参考にしていただければと思います!

・参考書籍

追記:ゴールデンエイジ理論を疑え(2017.11.30)

近年になり、このゴールデンエイジ理論、特にスキャモンの成長曲線に対する議論が起こっています。内容については下記の記事が詳しいので、ぜひ一読をお勧めします。

スポーツ指導の常識「ゴールデンエイジ理論」を疑え

ただし、成長年代でさまざまな動作を伴う運動を経験させることに対する効果は共通している部分が多々ありますので、皆様それぞれ文献などを参照し、咀嚼していただければと思います。

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この記事の著者

岩田 塁
岩田 塁GSL編集長
元・スポーツ書籍編集者。担当書籍は『バスケ筋シリーズ』『ゴールドスタンダード』『シュート大全』『NBAバスケットボールコーチングプレイブック』『ギャノン・ベイカーDVDシリーズ』『リレントレス』他