【UPSET連動記事】「子どもたちを笑顔に、地域と共に夢と感動を」ヴィアティン三重 ハイライト動画解説企画⑥
B.LEAGUEへの参入を目指し、各地に中期・長期的な展望と運営体制を備えた社会人チームの発足が増えてきました。
本稿では、三重県のバスケットボールの発展への熱い想いと共に着々と活動を積み重ねているヴィアティン三重バスケットボールを題材に、ハイライト動画の解説記事を投稿します。
主な対象は、クリニック等でヴィアティン三重バスケットボールの選手と接する機会のあった育成世代の選手や、コーチングを初めて間もないコーチ、及び、同チームの活動に関心のある三重県の選手田コーチであり、極めて狭い範囲に対象者を絞っている。馴染みのある地元チームの選手のハイライト映像を、いつもより深い視点で見ることを通じ、NBAやB.LEAGUE等のハイライト映像を見る際の発見や学びに繋がる事を目標に制作されています。※玄人の方は本稿はスルーしてください。
ヴィアティン三重バスケットボールでは、三重県バスケットボール協会が主催する「リフレッシュ講習会」にも中西HC、及び、B.LEAGUEでのプレー経験のある選手が講師として参加。三重県成人世代の男子トップチームの1つとして、精力的に活動をされている。
GSL編集長の片岡が勤務する株式会社アップセットにて、同チームのオフィシャルサプライヤーを務めている縁で制作をした記事となります。
目次
「子どもたちを笑顔に、地域と共に夢と感動を」ヴィアティン三重 ハイライト動画解説企画⑥
UPSETは、Bリーグ入りを目指すヴィアティン三重バスケットボールのオフィシャルウェアサプライヤーを務めております。
同クラブは地域総合型クラブ内にあるバスケットボールクラブです。Jリーグ百年構想クラブに承認され、J3ライセンスを保有するサッカークラブの他、女子サッカーチーム、バレーボール、ビーチバレーチームなども保有され、「子どもたちを笑顔に、地域と共に夢と感動を」をCLUB IDENTITYとし、地域と連携した様々な活動を展開しています。
◇B.LEAGUEクラブの存在しない都道府県の中で、少年・少女の環境格差を少しでも解消したい
特に、小学校の訪問や、地域へのバスケットボール教室なども積極的に開催され、コロナ禍名の中では、今後に向けて計画されています。
その理由の一つには、三重県の少年・少女を取り巻く、バスケットボール環境が関係しています。現在、全国各都道府県にB.LEAGUE所属のプロチームが増え、様々な形で良質なバスケットボールに触れる機会が格段に増えています。
定期的なクリニック以外にも、ユースチーム、スクール事業の活動等が各地域で盛んであり、バスケットボールを愛する選手にとっては貴重な選択肢の一つになっています。必然的に、プロクラブを持たない都道府県は、バスケットボール競技体験の機会が少なくなります。
ヴィアティン三重バスケットボールが少年・少女向けのバスケットボール普及活動を時間の許す限り重視しているのも、上記のような理由があると言います。
◇数多く存在するハイライト動画を見る「目」を養い、バスケIQを高めて欲しい
そこで、UPSETでは、三重県でバスケットボールに励む少年・少女のプレイヤーの競技人生に彩りを加えられるよう、ヴィアティン三重バスケットボールの中西HCとの協力の元、本企画を構想しました。活用する動画はヴィアティン三重バスケットボール応援大使を務め、4.7万人のTwitterのフォロワーを持ち、4.4万人のインスタグラムフォロワー、約4.7万人のYoutubeチャンネル登録者数チャンネル登録者を誇る「まぐろさん」です。
昨今、SNSや動画投稿サイトで世界各国のバスケットボールの映像を見るすることが出来ます。動画を見る際の「目」を養う事で、発想力を拡げ、競技中の判断力向上等に貢献する事が本企画の目的となります。
ヴィアティン三重バスケットボール×UPSET ハイライト解説記事⑥
#15 粂 辰弥 選手
(178cm/桜丘高校→中京大学 卒)#まぐコレ
1、コートの高い位置で、#15 粂 辰弥 選手はボールを保持しています。今回も、#16川尻政宏選手とのPnR(ピック&ロール)でプレーがスタートします。
2、粂選手がPnRを活用する場面で、粂選手をマークしていたDFは、スクリナーの上側を通ってボールマンを追いかけようと試みます。#16川尻政宏選手をマークしていたDFは、粂選手のドリブルを防ごうと、ボールマンをマークをする様子を見せています。
DFの選手がスクリナーの上側を通過しようと、スクリナーのDFがボールマンのマークに動いたした瞬間、#16川尻政宏はフロントターンでゴール下へと素早くで向かいました。その様子を見て、元々の粂選手のマークマンのDF選手は、一瞬、#16川尻政宏選手をマークします。元々のセンターのDF選手と合わせ、どちらが粂選手をマークし、どちらが#16川尻選手をマークするのか、非常に曖昧な状況となります。
3、今回も、DF側の困惑によって誕生した一瞬の隙を見逃しませんでした。DF側の選手が困惑をしている隙に、粂選手がドリブルをしていたまま、ボールを転がすようなパスの方法で、ゴール下へとパスを通過させました。#16川尻政宏選手がゴール下でシュートを打てる状況へと『ボールを移動させる』事に成功しました。
2、記事制作の意図
前回の記事制作の際にヴィアティン三重 中西康介HCに伺った話が追加記事制作の背景にございます。中西HCは、三重県の育成世代の選手が触れている情報について、近隣他県に比べ、危機感を抱かれていました。具体的に言うと、ピック&ロールの攻防を経験する機会や、トップカテゴリーの試合観戦等で攻防に触れる機会が少ないという内容です。
バスケットボールには様々なスタイルや戦術があります。戦術に変化があれば、必要とされるスキルも変わってきます。特に、現代のバスケットボールでは、本動画のプレーのようなピック&ロールの攻防はゲームの行方を左右する大切な攻防となってきています。
勿論、育成世代の場合は、「個人で状況を打開する能力」や「個人で相手オフェンスを守る能力」の向上が大切です。スペイン等の他国では、15歳まではピック&ロールを実際のゲームで採用しない方針を持たれている事などもよく耳にします。また、選手育成の方針は各国、各地域、各チームよって様々です。
しかし、例えば、プロクラブを複数保有する愛知県等の地域に比べ、三重県の育成世代の選手は、ピック&ロールの攻防を見るケースも少ないのではないか、という懸念を持たれていました。戦術として、育成世代で取り組むかどうかは別として、プロクラブの試合等を観戦していれば、少なくとも、バスケットボールを競技する上で必要なスキルであるピック&ロールについて「見た事がある」・「知っている」と認識する事が可能です。
スペイン等についても、ゲームの中での戦術としてピック&ロールを使わずとも、一貫指導をされている各クラブの世代別・習熟度別のカリキュラムがあり、実際にピック&ロールを使った戦術を使用する際の素地や準備は進めているという現地プロコーチのお話も伺った事があります。本稿が、主に、三重県の育成世代の選手、特に、ヴィアティン三重バスケットボールのクリニック等を受講された事のある選手にとって、次のカテゴリーで必要になる可能性のある攻防の駆け引きの1つを知る契機になれば幸いです。
3、ヴィアティン三重 中西康介HCコメント
前回のコメントを踏まえ、本プレーについて三重県の育成世代の選手向けのメッセージをいただきました。
『チャンスを作るプレーと堅実なプレーの両立が重要。自分自身で振り返り、研究をし、プレーの精度を高める努力の積み重ねの賜物です』
今回もハイライト映像であるという事は強調しておきたいです。前回と同様のコメントですが、粂選手は、堅実なプレーもします。そして、試合ですから、ターンオーバーになる事もあります。ただ、ミスになったプレーについても良く振り返って分析をしていますし、選手自身でも研究をしています。そういう時間の積み重ねが合って成立しているプレーである事は知っていただけると嬉しいです。
現在、チームには、阿部 祐也(171㎝・三重県桑名市出身)、高松 勇介(169㎝)という素晴らしいPG選手がいます。粂選手も178cmですので、さらに高いレベルでプレーするにはPGとしてのプレーも必要になりますので、PGの練習もしています。チャンスを作るプレーと、ミスをしないプレーの両立が求められます。是非、ヴィアティン三重の試合を観戦して下さる際には、その部分にも注目していただけると嬉しいです。
B.LEAGUEでも、宇都宮ブレックスのテーブス海選手は、自分自身で攻めながら、味方のチャンスを作り、華麗なアシストをするケース等が数多く見られます。B.LEAGUEの中でもオリジナリティのある選手として存在感を増しているように感じます。桜丘高校時代には全国大会の上位でも活躍した選手でもあり、知名度も高い選手です。是非、粂選手のさらなる進化にもご注目下さい!
―三重県の育成世代の選手について
『育成世代の選手は、様々なスタイルに対応できるように準備する事が重要。ヴィアティン三重のバスケットボールが、三重県の選手のバスケ観を拡げる契機になるように精進していきます』
「バスケットボールには様々なスタイルや戦術があります。育成世代の間に、様々なスタイルに対応できるように準備しておく事が重要になると感じています。
例えば、高校バスケ界でいうと、隣県の愛知県には、全国大会上位の強豪チームが凌ぎを削っています。両チームともに留学生選手が在学されているケースも多く、日本人のアウトサイド選手は、ピック&ロールの攻防や、ゴール下でのフィニッシュ等で非常に多くの工夫が必要となります。
U15、U12世代の選手やコーチも、県内の試合等を観戦されているものです。試合を観戦された選手、コーチの方々の発見等が、日頃の練習に活かされていきます。例えば、実際に育成世代の中でピック&ロールを使わないとしても、スクリナーのDFの守り方の種類や、ドリブラーの技術等の議論が活性化され、草の根のレベルが高まっていくと感じます。
また、現在は、B.LEAGUEのU15チームでは、専任のプロコーチによって、様々なスキルや戦術について、中期・長期的な計画の中で指導されています。こちらも、愛知県には、4つのU15ユースチームがあります。交流のある各チームにも様々な刺激等を与えている事を見聞きします。
このような環境格差を少しでも解消したいという想いは、ヴィアティン三重バスケットボールの使命の一つでもあります。三重県には、三重県のバスケットボール文化や、継承されてきたスタイルがあります。それらを大切にしつつ、他の地域や国際的なバスケットの世界で主流となっている戦術やスキルも把握できる環境が重要であると考えました。
今回の#15 粂 辰弥選手、#16川尻政宏選手、及び、周りの選手のスペーシング等から、何か一つでも三重県の育成世代の選手に、バスケットボールの駆け引きや、面白さが伝われば嬉しく思います。
この記事の著者
-
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。
宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。