【特別寄稿】「チームのケミストリー」と「同じ釜の飯を食う」ことの効用|taiyomikuni (TM)
(アトランタの好調の理由を分析した「ホークスはNBAファイナルまで進めるか(Can The Atlanta Hawks Get To The Finals?)」と題する動画。マイク・バデンホルツァーHCがインタビューに登場するのはめずらしい?途中で何気に後ろを通り過ぎるのが今季売り出し 中のデニス・シュローダー)
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先週火曜日(13日)のフェニックス・サンズ戦に敗れ、6連敗となったクリーブランド・キャバリアーズ。その翌日、ヘッドコーチのデヴィッド・ブラットは練習を急遽休みにして、選手らをボウリングに連れて行ったらしい。
この息抜き=気晴らしの甲斐あってか、その後ステープルズ・センターでレイカーズ、クリッパーズに連勝。21勝20敗と勝率5割を回復して、ホーム に戻れることになった。ただし、ブルズ(19日)、サンダー(25日)、ピストンズ(27日、アウェイ)、ブレイザーズ(28日)などなかなか厳しい相手 との試合が続くから、もうしばらくは気を許せない状況が続くかと思われる。
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ところで。現在絶好調のアトランタ・ホークス(1/17時点で33勝8敗、12月以降は24勝2敗)では、昨シーズンにマイク・バデンホルツァーが ヘッドコーチに就任したのをきっかけに、「アウェイの試合終了後にチーム全員で夕飯を食べる」という習慣が定着しているらしい。
これは、バデンホルツァーが長く在籍していたスパーズ(SAS)のやり方を見倣ったもの、ただしグレッグ・ポポヴィッチ(SASのHC)はコーチ陣 しか夕食のテーブルに呼ばなかったということで、選手まで含めてというアトランタの取り組みはそれだけ画期的・・・みたいなことが上記の記事には書かれてある。ホークスの大黒柱で、かつ縁の下の力持ち的存在であるアル・ホーフォードに焦点を当てたこの記事には、ホーフォードがジョアキム・ノア(CHI)、 コーリー・ブリュワー(HOU)らとNCAAトーナメントで2連覇したフロリダ大学Gators時代から、コート外でのチームメイトとの付き合いを好み、それがコート上での勝利にも役立っていた(”I really believe it’s good to get to know your teammates off the court. It was one of the reasons we were successful at Florida”)と考えていたものの、NBAに入ってみると、そうした考え方が受け入れられなかった、といったことも記されている。
いっぽう、ホークスの好調さについて分析したCBSSportsの下記の記事には、「攻撃の際にボールを回し合い、全員がボールに触ることがとても大切で、それがそのままデフェンス面にもいい影響を与えている」云々とするエルトン・ブランドのコメントが紹介されている。
「特定の選手がボールを独り占めしていると、ほかの選手のやる気が削がれる。しかし、ボールが回って来ていれば、たとえ自分がシュートしなくとも、 攻撃の一部となっていると感じられ、それが守備でも『参加したい』という気持ちにつながる」などとするこのブランドのコメント、ジョー・ジョンソン(アイソのジョー)やジョシュ・スミスといった選手ーーならびに彼らを重用したマイク・ウッドソンやラリー・ドリューといったHCがいたホークスの過去を思うと尚更重みが感じられる。
なお、オールスター戦まであと1ヶ月をきったせいもあり、「今年はアトランタから何人選ばれるか」といった話もすでに出ている(このまま行けばバデ ンホルツァーがイーストのHCだから自分のチームから何人選ぶか、ということになろう)。ブランドは「ジェフ・テーグ、ポール・ミルサップ、ホーフォー ド、それにカイル・コーヴァーの4人を出させてやりたい」などとコメント。
それに対して、ジェイレン・ローズ(現ESPN解説者)あたりは「テーグ、ホーフォード、ミルサップの3人はオールスターに価する」などと最近のポッドキャストのなかでコメント(個人的には、ホーフォードのことをとくに高く評価しているらしい)
(44分20秒あたりからATLのことがしばらく話題に)
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なお、アトランタと同じくらいの快進撃を続けるゴールデンステート・ウォリアーズ(GSW)でも、やはりボールがうまく回っているーーアンセル フィッシュ(unselfish)なプレイスタイルがうまく浸透しているらしい。Grantlandのザック・ロウは12月半ばに公開していた記事で、下掲動画にあるドレイモンド・グリーンからレアンドロ・バルボッサへのアシストパスを例にとり、「自分の得点の機会を見送って、オープンなチームメイトにパ スを出すこうした非利己的なプレイが毎試合6個くらいある」などと賞賛している。
Basketball Referenceを みると、この両チームがアシスト数で全体の1&2位になっている。これもそうしたunselfishさの現れだろうか。ホークス(1059アシスト)は FG成功本数が1555本で第10位、ウォリアーズ(1027アシスト)も1578本(第8位)で、いずれもFG数がとび抜けて多い、というわけでもな い。
Golden State Warriors in love with the CoCo (ft. O.T. Genasis)
遠征用チャーター機のなかで盛り上がるGWSの面々。マリース・スペイツ(@mspeights5)撮影の11月後半のもの。若手が中心で、しかも負け知らずとなれば、コート外でも盛り上がらないはずはない・・・)
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「仲良しクラブだから強い」わけでもなく、実際にはチームが好調だから自然と仲も良くなり、さらに仲間を信頼できるようになり、それで・・・という 好循環が働くのだろうが・・・(逆にうまくいっていないチームは負の連鎖が生じて不思議はない)。ただ、いっぽうでスポーツ・アナリティクスのようなもの が存在感を増すなか、それでも「同じ釜の飯を食う」といったこともたぶん無視できない要素であり続けている、というのが妙に印象的に思えた次第。
この記事の著者
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オンラインニュース(IT&経営系)編集者。NBAファン歴二十数年。
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