【通算得点歴代3位】コービー・ブライアントは何故偉大になれたのか?

コービーが偉大な理由

マイケル・ジョーダンとコービー・ブライアント。バスケットボールをしている者ならこの名前を知らない人はいないと思いますが、常に比較をされてきた2人。身長もポジションも同じ。神様を超えることは簡単ではないと考えられていましたが、得点に関してはついにその時がきました。マイケル・ジョーダンも最初から順風満帆だったわけではありませんが、コービーはもっと険しい道を歩んできたかもしれません。

常に偉大な選手と比較され、自己中心的だと批判され、ルーキーシーズンには3本連続でエアボールを放ちました。今思えば、これら全てがこの度の偉業の単なるスパイスに思えます。そしてコービーにとってみれば、これこそがモチベーションの源泉だったのかもしれません。

さてモチベーションと言っても、高いモチベーションを持ち続けるのは容易ではありません。「コービーのすごいところはどこか?」と聞かれたら、多くの人はスキルや運動能力と答えるでしょう。そして残りの何割かは常に高いモチベーションを持ち続けられる、彼のメンタリティについて言及すると思います。前置きが長くなりましたが、今回はそんなコービーのメンタリティに迫ってみたいと思います。

リレントレス=情け容赦のない

これこそがコービーの偉大さを紐解くキーワードでしょう。コービーやジョーダンをはじめ、ドウェイン・ウェイドなどトップアスリートの専属トレーナーである、ティム・グローバーの著書『リレントレス 結果を出す人の13の法則』では、コービーに関する記述がたくさん見られます。その中からいくつかを引用していきます。

コービーのように1日3回体育館に入ってシュートを打ち、細かい部分まで磨く意識があれば、どんな状況でも対応することができるはずだ。彼は無数の動画を観るし、シュートを一つひとつ細かく分析する。つまり執拗なほどに学習する。

ドワイト・ハワードとスティーブ・ナッシュが2012-13シーズン開始前にレイカーズへの加入が決まったとき、彼らがコービーとフィットするかどうかを皆が注目していた。スターとしての役割を分担できるか? コービーがリーダーとしての役割を譲り渡すか? 新生レイカーズが以前のチームより注目を集められるか? コービーはすぐさまそうした疑問を打ち消した。「『ああ、役割を皆で分け合っている』と言うつもりはないよ。これは俺のチームだ」と、コービーはメディアに宣言したのだ。

ドワイト・ハワードがレイカーズに入団し、2012年のプレシーズン中にコービーと電話で会話したときの面白い話がある。彼はコービーに「調子が良く、腰の手術の回復も順調で85%の状態だ」と伝えた。ところがコービーは「それは良かった。俺には100%のお前が必要だ。俺はリングが欲しいんだ。じゃあな」と述べて電話を切ったのだ。

コービーには本来曲がってはいけない方向に曲がる指がある。普通の人なら手術をして治していただろう。しかし、指が後ろまで曲げられなくなるくらいで、ほかに不便なことはないだろう。手術をすれば9ヵ月間もバスケから離れなければならなくなる。手術することにそれほどの価値はあるのだろうか。

コービーも同じで、努力するために飽きることのない野心を燃やし続けている。日中に2回、そして夜に1回体育館へ行き、相手より優位に立つために様々なことを試している。(…)現在、最高のコンディションを保つために努力し、自分の身体に投資し、周りに適切なサポート陣を揃えている彼以上の選手は存在しない。

コービーが行なうワークアウトは1回につき90分に渡るものであり、そのうちの30分間は手首、指、そして足首に費やす。全て細部だ。最高峰に君臨する人間は、細かい部分に重点を置くことによって向上を果たす。毎回のワークアウトで、彼は私を睨みながら聞いてくる。「後は何が残っているんだ?」。厳しくて退屈な練習であるため、時にはリングが地上300メートルの所にあり、鉛でできたブーツを履いているような感覚になるようだ。しかし彼は、シュートを決められなくなったら全てを失うためその作業を繰り返す。そう、自らが選択したことなのだ。

ドウェインがオールスター戦でコービーの鼻を折り、脳震盪を起こさせたとき、コービーは病院へ行く前に相手のロッカールームへ連れて行けと要求した。このとき彼は復讐を企てていたわけではない。彼はジャングルの法則に則り、本能的に対立する2匹の動物のように戦い、ライオンキングのように岩の上まで登って誰が統治者であるかを群衆に伝えたかったのだ。

コービーはチームメイトたちと出かけるよりも、ワークアウトをしたり、試合の動画を観て研究をしたりしたがる。そして友情を深めるよりも尊敬されることを求める。マイケル、そしてラリー・バードも同様だった。

私がコービーと一緒に仕事を始めた頃、ジュワン・ハワードがある試合の後にコービーに会いに行き、私と一緒に仕事をしてきた経歴を話し、そのおかげで長くプレイできているのだと伝えた。そして彼はコービーに後何年プレイしたいのかを聞いた。その答えは「6つ目を手にするまでだ」だった。ほとんどの選手が年齢や契約期間で返事をするのに対して、彼はジュワンが聞いていた何年という質問には答えなかった。彼は優勝リングの数で返事をしたのだ。

いかがでしたか? ジョーダンやウェイドといったトップアスリートを見てきたグローバーが語る言葉には信ぴょう性があります。これらのエピソードから見えるのは、リレントレス(執拗さ)であり、向上し続ける意思であり、万全の準備をすることと言えるでしょう。私自身あまりコービーは好きではありませんでした。こうした背景をあまり知らず、ただ自己中心的なのかと思っていたからです。しかしこの本を読んだことで、コービーに対する評価は180度変わりました。コービーのような真の競争心溢れるアスリートは多くいません。スキルを学ぶことと同様に、こうしたメンタリティも実践してみてはいかがでしょうか。

コービー・ブライアントの動画集もぜひご覧ください。
『【動画集】NBA現役最強スコアラー コービー・ブライアント』

コービー・ブライアント

この記事の著者

岩田 塁GSL編集長
元・スポーツ書籍編集者。担当書籍は『バスケ筋シリーズ』『ゴールドスタンダード』『シュート大全』『NBAバスケットボールコーチングプレイブック』『ギャノン・ベイカーDVDシリーズ』『リレントレス』他