「将来待ち構えていることすべてに打ち勝てると信じている。そのために、ひたすら走り続けたい」トーステン・ロイブル氏の人生哲学に迫る

「将来待ち構えていることすべてに打ち勝てると信じている。そのために、ひたすら走り続けたい」トーステン・ロイブル氏の人生哲学に迫る

「FIBA U19バスケットボールワールドカップ2017」を過去最高となる世界10位で戦い終えた男子U19日本代表チーム。八村 塁選手(ゴンザガ大学2年)の攻守両面でのパフォーマンスや、新しいスター候補選手であるシェーファー アヴィ幸樹選手(NCAAディビジョンIの名門・ジョージア工科大学へ進学予定)、得点源として活躍した西田 優大選手(東海大学1年)の活躍にも注目が集まりました。

今回の大躍進には、代表チームが国際大会に挑むにあたっての、JBAの強化体制の充実が挙げられると思います。2016年10月より月1回の頻度での強化合宿、大会直前のドイツ遠征などが組み込まれていました。3年前、2014年のU17世界選手権では高校総体との日程の問題もあり、代表チームとして十分な練習を積めずに国際大会へと挑まざるを得なかったことを考えると、代表チームを取り巻く環境には大きな変化があります。

その上で、ヘッドコーチとしてチームを牽引したトーステン・ロイブル氏の手腕とが噛み合い、日本代表チームが世界の強豪相手に奮闘をする姿を見ることができました。GSLとしても、Euro basketball Academy Coaching Clinicの事務局としての活動や、各種レポートなどを通じ、ロイブル氏の指導哲学や戦術・技術論などを可能な範囲でレポートしていく所存です。

そんな中、以前に某雑誌に掲載されたトーステン・ロイブル氏の人生哲学や指導哲学に迫る濃密な記事がございます。雑誌掲載時の関係者様(コーディネート:有本有一(Mj EURO代表) 、取材&テキスト:堀内太陽(ラリーバード株式会社代表)※末尾にプロフィールあり)の承諾を頂き、GSLにてお届けします。

技術論や戦術論も勿論ですが、過去にレポート記事を掲載したチームビルディングの哲学や、選手起用やタイムアウト時の哲学なども大変好評でした。今回の記事でも、皆様の指導のヒントが見つかれば幸いです。

※写真はすべて2016年1月21日にさいたま市立大宮北高校で行われたコーチクリニック時に撮影

バスケットボール アンダーカテゴリー男子日本代表チームヘッドコーチ トーステン・ロイブルインタビュー(2016年1月下旬に収録)

道を切開いた男の言葉が優しく心を掴む

「将来待ち構えていることすべてに打ち勝てると信じている。そのために、ひたすら走り続けたい」

Q1.現在の仕事をお教えください。そして、現在、そのポジションに自身が就任している意味をどう捉えていらっしゃるかお教えください。

日本はその強い経済力や高い教育水準で、世界でも高く評価を受けている国です。日本のジュニアナショナルチームのヘッドコーチとして働けることは大変名誉なことですし、同時に私にとっては挑戦でもあります。一方で、主導的な立場で日本のバスケットボールを指導するだけの高い信頼を受けていることをとても光栄に思います。他方では、日本がまだトップに到達していない分野で、日本を国際的トップレベルにまで引き上げられるよう支援するということは挑戦でもあります。

日本のバスケットボールの未来は、次代を担う若い世代に託されています。この若者たちが将来大仕事を成し遂げるように備えることが私の仕事だと思っています。

Q2.“日本でコーチをすること”とはあなたにとってどういうことですか?

私は日本に外国人の友人がいません。日本でできたたくさんの友人は皆日本人です。友人たちはこれまで私のためにたくさんのことをしてくれ、今でも私のことを支えてくれています。また、日本ではコートの外でもたくさんのことを学び、すばらしい経験をしました。

日本バスケットボール協会のために働くことは、何かお返しができるいい機会でもあります。私が一生懸命働くことで日本の社会に何かを与え、将来、日本のバスケットボールがより成功する手助けになるような重要な変化をもたらすことができると信じています。

Torsten Loibl(トーステン・ロイブル)

Q3.仕事に対するこだわりをお教えください。

コーチとして選択を迫られることもあるでしょう。良い選択をするため、または、良い決定を下すため、コーチである私にとって常に重要な“5つの原則”というものがあります。

成功を引き寄せるには…

  • 不平不満を言うのではなく、あらゆる状況の中でも何かを得ること。
  • これで十分と思うよりも、もっとそれ以上のことをやること。
  • 何が結果として生じるか(どんな結果が待っているか)ではなく、何をすべきかに集中すること。
  • 問題を心配するのではなく、解決策を考えること。
  • ネガティブになるのではなく、ポジティブに考え、行動すること。

Q4.長くコーチをされてきて最も印象に残ったことは何でしょう?

コーチ人生において印象的な瞬間はたくさんありました。2007年、代々木第一体育館で開催されたオールジャパントーナメントで、当時私が指揮していたトヨタが優勝したときの、素晴らしい気分は忘れられません。東ドイツ出身のコーチとして初めて、ドイツでコーチ・オブ・ザ・イヤーを受賞したときもまた大変特別なことでした。しかし、もっとも重要な瞬間は、ベルリンの壁が崩壊したことです。東西ドイツが再統一されたことは、私にとって世界のバスケットボールへの扉が開かれた瞬間でもありました。

Q5.頑張っても結果が出ないときはどうしたらいいでしょう?

成功は私たちを駆り立てるものです。大抵の人々が成功したいと思っているでしょう。では、成功とはいったい何でしょうか? 成功そのものに明確な定義はあるのでしょうか? 答えはNoだと思います。明確に定義することはできないでしょう。例えば、チャンピオンシップでの勝利した数や、仕事で稼いだ金額、会社での地位で、成功したと評価することができるかもしれませんが、それぞれひとつひとつの要素だけで成功を説明することはできませんよね。

しかしながら、アメリカの伝説的なコーチ、ジョン・ウッデン氏は成功について素晴らしい定義を残しています。「成功とは、できる限りの最高の自分になるために努力をしたと自覚し、自分自身が満足することによって得られる心の平和である」。つまり、一生懸命努力して、あなた自身の限界に到達したときに、あなたは成功した!と言えるのです。私はそう思っています。

Q6.生きるパワーの源は何でしょうか?

エネルギーの源は2つあります。ひとつは家族です。結婚して、11歳の娘と4歳の息子がいますが、なかなか忙しくて会えません。しかし、会えたときには、たくさんのエネルギーをもらっています。

もうひとつは、前向きな生活態度です。いつでもポジティブに物事を捉えるようにしています。直面する問題を、自分自身をさらに高めてくれる自然からの贈り物だと思っています。失敗は学べる機会だと考えています。失敗は辛いものですが、私に強さを与えてくれます。成功は神様からの贈り物ではありませんが、成功を収めるために、人生は日々努力しなくてはいけないものだと思います。

Q7.今後の目標とその理由をお教えください。

アルベルト・アインシュタインの大ファンとして、彼の名言を支持しています。「人生は自転車のようなものだ。バランスを保つためには走り続けなければならない」。

行く末にどんな成功が待っているとしても、ひたすら走り続けることが私の目標です。自分の未来に対して好奇心を持ち続けていたいと思います。人生は冒険です。私は将来待ち構えていることすべてに打ち勝てると信じています。

Torsten Loibl(トーステン・ロイブル)

Torsten Loibl(トーステン・ロイブル)1972年5月1日生まれ、ドイツ・ケムニッツ出身。バスケットボール アンダーカテゴリー男子日本代表チームヘッドコーチ。若くして指導者に転身し、A-ライセンス(ヨーロッパ最高クラスのコーチライセンス)を史上最年少で取得(未だ破られていない)。日本・ドイツのバスケットボールリーグでコーチ・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、ユーロスタイルの一貫した指導で、数々のトップリーグチームを指揮してきた。2015年8月より現職。日本男子バスケットボールの若き世代を世界レベルに引き上げるべく、熱いコーチングを続けており、2017年7月にエジプトで開催されたU19世界大会では、日本男子バスケットボールの歴史上、最高位となる10位にチームを導いた。ちなみに、NBAのスーパースターとして活躍中のダーク・ノヴィツキー(ダラス・マーベリックス)はドイツ選抜コーチ時代の教え子。

 

コーディネート:有本有一( Mj EURO DEO : Design Executive Officer )

2005年頃よりバスケットボールの指導をはじめ、2008年の夏、トーステン・ロイブル氏との出会う。「ロイブル氏との出会いが全てを変えた」と語るほどに強い感動を覚え、ロイブル氏の講習会には通算で50回ほど参加。Mj Euro練習会として、ロイブル氏の教えをベースとした、ファンダメンタルの指導を重視している。U-19代表チームでも活躍したシャーファーの母校であるSt MaryにてTOKYO SAMURAI U-12とも練習試合を行うなど、国際的なバスケットに視野を広げた活動をしている。2017年春先には、埼玉県指導者講習会E2級の講師も務めるなど多方面で活躍中。

※本職は空間デザイナー。全ての活動をデザイン感覚でデベロップメントし、新たな空間を提案する指導者。

 

取材・執筆:堀内太陽(ラリーバード株式会社代表取締役)

長野県立上田高校バスケットボール班にて3年間バスケットボールを経験。大学卒業後の約20年間は雑誌編集者として数多くの著名人のインタビューを行い、その内、13年間は雑誌編集長を務めた。2013年よりバスケットボールのコーチとして数年ぶりにコートに戻り、現在、有本氏と共にMj EUROで活動中。2017年にはメディアの制作・運営、ブランディング&プロモーションを手掛けるラリーバード株式会社を設立。

※社名は言わずと知れたNBAボストンセルティックスのスーパースターだったラリー・バード氏の名前から。由縁は、バード氏がその昔、マイケル・ジョーダンを「彼はマイケル・ジョーダンの姿をした神だ!」と表現したことが鮮明に記憶にあり、メディアの人間として「彼はラリー・バードの姿をした表現することの神だ!」とリスペクトしているから。また、会社のロゴマークには、所属するチームのホームコートである川口市立南鳩ヶ谷小学校にちなみ、鳩をあしらっている。

 

※下記は紙面に掲載されていた英語でのインタビューです

Question 01

Could you tell me about your current job?

And, how do you feel about being at the current position?

Answer 01

Japan is highly respected country in the world because of it’s strong economy and high education standards. Working as a Junior National Team Head Coach in Japan is a big honor and challenge for me at the same time.

On the one hand I am very honored to receive such high trust to guide Japanese Basketball in a leading position. On the other hand it is a challenge to help Japan to get to the international top level on a field where Japan is not top yet. The future of Japanese Basketball is in the hands of the new upcoming generations. My job is to prepare this new generation for the big tasks in the future.

Question 02

What dose it mean for you to coach basketball in Japan?

Answer 02

I have no foreign friends in Japan. All friends I have made in Japan – and I made many – are Japanese. These people have done a lot for me in the past. They still support me. I also learned so much off the court in Japan and got amazing experiences.

Working for Japan Basketball Association is also a great opportunity to pay back something. I hope I can give something back to Japanese society by working hard and make some necessary changes to help Japan Basketball to be more successful in the future.

Question 03

What is your philosophy towards your job?

Answer 03

As a coach you always deal with choices. To make the good choices – or make good decisions 5 principles have always been important for me as a coach. Success comes if you get something out of all situations, rather than complain about them do more, rather than just enough concentrate on what to do, rather than what may result think about solutions, rather than worry about problems think and act positively, rather than negatively.

Question 04

What is the most impressive experience while working as a coach for a long time?

Answer 04

There were many impressive moments in my coaching career. I remember a great feeling when we won the All Japan Tournament in Yoyogi 1 Gymnasium with Toyota in 2007.

Receiving the Coach of the Year Award in Germany as the first East German Coach was also very special.

But the most important moment was the one when the Berlin Wall came down. When Germany got reunified the door to world basketball was open for me.

Question 05

What should we do when we couldn’t get a satisfactory result even if we did our best?

Answer 05

Success is the thing that drives us. Most people want to be successful but what is success? Is there a clear definition of success? No, there isn’t because success has more than one parameter. Can we rate success on the number of won championships, amount of money or positions in a company? Yes, but these things are not the only way to describe success. The legendary American coach John Wooden found a great definition of success:

“Success is peace of mind which is a direct result of self-satisfaction in knowing you made the effort to become the best that you are capable of becoming”– in simple words: If you work hard and you can reach your personal limit – you are successful!!

Question 06

What is your source of power to live?

Answer 06

There are two main energy resources for me. First one is my family (I am married and have two children – daughter 11 years and son 4 years old), which I don’t see so often due to my busy job. But whenever I see them I get a lot of energy.

Second one is my positive life attitude. I always try to see things positive. I see problems as gifts of the nature to make me better. I understand that faults are opportunity to learn. Failure is painful but it gives me strength. I know that success is not a god given gift, it is something I must work for every single day in my life.

Question 07

What is your goal from now on and please tell me the reason?

Answer 07

As a big fan of Albert Einstein I follow his slogan: “Life is like riding a bicycle. To keep your balance, you must keep moving.” My goal is to keep moving regardless how much success I have in the future. I want to stay curious about my future. Life is an adventure and I hope I can master all my future tasks.

この記事の著者

片岡 秀一
片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。