コーチがセットプレイを組み立てる時に陥りがちな罠

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今回は「プレイを組み立てる時に陥りがちな罠」について考えたいと思います。

コーチはチームの戦術をデザイン、組み立てることが多くあるかと思います。プレイの基本的な組み上げ方を大まかに説明すると、まず2人や3人での「アクション」があり、それを5人で組み合わせることが多いかと思います例えばアクションとしては、

  • カット系
    • バックカット
    • フレアカット
    • カールカット
    • フラッシュなど
  • オンボールスクリーン系
    • ボールスクリーン
    • ハンドオフスクリーンなど
  • オフボールスクリーン系
    • ダウンスクリーン
    • バックスクリーン
    • クロススクリーン
    • スマッシュカット(UCLAカット)
    • フレアスクリーン
    • フレックススクリーン
    • シャッフルスクリーン(エイトスクリーン)など

が個々の「アクション」と考えられます。またそれらを組み合わせる方法にも種類があり、

  • スタガード(2枚別々に、同じ方向へかける
  • ダブル(2枚、別の方向へかける、もしくは2枚並べてかける
  • スクリーンスクリナースクリナーに対してすぐに別のスクリーンをかける

などがあります。ちなみにスタガードスクリーンはビッグマンを2枚目に置くのが定石です。スタガードの場合スイッチが起きるとしたら2枚目であり、スイッチが起きた時にミスマッチを生み出すことが目的です(多くの場合ユーザーはビッグマンではないため)。また2枚目のスクリナーは、ユーザーのディフェンスが1枚目の上と下のどちらを通ったかでスクリーンの位置を細かくアジャストします。そうすることでより大回りをさせたり、ズレを作り出せたりするのがスタガードスクリーンの利点です。

このように組み上げられたものがセットプレイになります。まずは個々のアクションを知った上で、それをどう組み合わせるかを研究することが多いです。このように書くと、「各アクションをつなげればとりあえずセットらしいものになる」という結論になりそうですが、こうしたフレームワークを知っている方ほどよく陥りがちなミスがあります。

それは「ボールの位置」です。

当たり前のことかもしれませんが、特にスクリーンを使う場合は、相手のディフェンスの位置の関係上、ボールの位置がかなり重要になってきます。

具体的に言えば、「ボールサイド」もしくは「コートの中央(できればハイポスト)」にボールに置くことがポイントになりますハイポストであれば全てのプレイヤーが1パスアウェイ(1本のパスでパスを通せる距離)に収まるので特にお勧めです

例えば下のようなフレックススクリーンの場合、ボールが中央にあれば非常に有効なアクションになります。きちんと遂行できればゴール下でどちらかがオープンになる、非常に頼れるアクションです。

しかし全く同じフレックスのアクションでも、ボールがヘルプサイドにある場合は全く無意味になってしまいます。ディフェンスが正しくポジション取りをすれば、スクリナーよりも内側にポジショニングしているからです。

同じことはシャッフルスクリーン(エイトスクリーン)やダウンスクリーンでも言えます。シャッフルスクリーンの場合は、ボールを中央からスイングした直後などディフェンスが中央に来る前に仕掛けられれば有効ですが、先に中央を取られた時点で無効になってしまいます。

唯一ヘルプサイド側でかけることができるのがフレアスクリーンですが、これもパスの距離が長くなりすぎるのが難点です。フレアをかけるにしても、ボールが真ん中に帰ってきたタイミングでかけるのがベストです。

このように意外とありがちなのが、「ディフェンスの位置を考えずにデザインしてしまうこと」です。ヘルプサイドにボールがあるのに仕掛けるアクションは、机上の空論で終わってしまいます。アクションを有効に活用するためにも「できるだけボールをハイポストエリア(真ん中)に運び、そこにボールがある状態でアクションを仕掛ける」ことが1つのヒントになります

  • ハイポストフラッシュ
  • ダウンスクリーン
  • UCLAカットの後のスクリナーのポップアウト
  • オンボールスクリーンを使ったミドルドライブ

などがハイポストエリアにボールを運ぶ手段として用いられることが多いです。

これに加えて「チャンスとなるシュートの時のリバウンドポジション」なども考えられると尚よいでしょう。具体的にはチャンスとなるシュート時に、シューターと反対側にビッグマンが来れるようにするとベストです。NCAAのセット集を見ていると、ボールの位置やリバウンダーの位置まで細かく計算されていることが分かるようになってきました。やっぱりカレッジレベルのコーチはすごいと感心する日々です。

以上、皆様が戦術を組み立てる際の手助けになれば幸いです。何かご質問やご意見があれば、ぜひコメントをお願いします!

この記事の著者

森 高大
1989年生まれ、香川県出身。香東中学校-高松高校-東京大学-ウェストバージニア大学大学院アスレティックコーチング専攻。小学校からバスケを始め、大学3年次までプレイヤー4年次には学生コーチと主務を兼任しながら、株式会社Erutlucで小中学生の指導にあたる。現在はアメリカDivision I 所属のウェストバージニア大学大学院でコーチングを専攻しながら、男子バスケ部でマネージャーとして活動中。
コーチMのブログ http://ameblo.jp/tamorimorimori83/