サンアントニオ・スパーズの強さの秘密を探る 〜③チーム作り編〜

spurs3ようやく書けた第3弾は、スパーズのチーム作りについてまとめました。スパーズの強さの秘密を戦術の中に探していたのですが、根本的にはサンアントニオという地であったこそ生まれたチーム作りに対する戦略があったのではないかという意見がたくさん見られました。NBAと皆さんの現状は大きく違うでしょうが、皆さんのチーム作りに役立つことも中にはあるかもしれません。

まだの方はこちらもご覧ください。

全てはティム・ダンカンから

ご存知の通り、スパーズ王朝が生まれたのは1997年のドラフトでティム・ダンカンが加入したことによります(それ以前の提督期はあまり知りません)。ダンカン入団2年目にして、短縮シーズンだったとはいえ早速NBAチャンピオンを獲得(私事ですが、このときミラクルニックスに魅せられた私としてはとても歯がゆい思いをしたものです)。

そして2003年には早くも2回めの優勝。このときパーカーはまだ2年目。ジノビリも初年度でした。その後はこの3人がビッグ3を形成して隔年で優勝するというウエスタンの雄となりました。そして長らく優勝からは遠ざかったいたもののプレイオフは常連で、2014年にようやく5回めの優勝を果たしました。

ここまでの間、コーチポポビッチはずっと指揮を執り続け、そして同じウエスタンの強豪がお金にものを言わせて大型補強を繰り返す中、スパーズはスター選手を補強するということはありませんでした。今でこそビッグ3と呼ばれているものの、パーカーは1巡目28位で何とか「拾われた」選手。ジノビリも2巡目57位という大きな期待をされているとは到底思えないスタートでした。まずこれは、好きで選んだことではなく、仕方ない側面もあったのだと思います。

スパーズ=広島カープ、レイカーズ=巨人

広島というのは言い過ぎかもしれませんが、スパーズの本拠地であるサンアントニオは、所謂「スモールマーケット」です。フォーブスによると、スパーズのホーム人口は約220万人、一方同じウエスタンのレイカーズは約1640万人と言われその差は歴然です。現在資産価値にするとスパーズはNBA全30チーム中10位と高いように見えますが、それは近年の活躍があってのこと。同資料による最も古いデータの2005年の資産額は108万ドル(現在は167万ドル)、レイカーズは2005年の時点で170万ドル(現在は295万ドル)です。プレイヤーの人件費もスパーズ77万ドルに対しレイカーズは110万ドル。

資金面で到底太刀打ちできない。つまりいい選手をトレードなどで引っ張ってくることができない。選手からの人気もない? そしてダンカン1人でなまじ強いものだからいいドラフト指名権もとれないという状況の中でチーム作りを強いられていたのです。しかしプレイヤーのコストに対する勝利の割合指数はスパーズが188に対してレイカーズは67と大きく差を広げています。スパーズは一体どのような戦略を用いたのでしょうか。

これに対する答えは明白だといいます。

「失ったもの、欠けているものを嘆いても仕方ない」

「Maximize what you ’ve got.(持っているものを最大化しなさい)」

San Antonio Spurs provide a blueprint for NBA’s small-market teams ワシントンポストより

答えは世界にあった

そうして得た1つの答えが、インターナショナルプレイヤーを探すことでした。ここ15年の間にそのための予算は増え続けていたそうで、パーカーにしろジノビリにしろ、ドラフトした後に彼らを訓練することに注力したのです。パーカーがドラフトされた2001年の1巡目1位はクワミ・ブラウン。彼より上位で指名された中で今も活躍している選手は片手で足りるくらいです。1999年のジノビリのときも同様ですね。

またこの戦略の成功を裏付けるこんなデータもあります。数字の出し方は詳しく分かりませんが、スパーズに所属するインターナショナルプレイヤー(ダンカンはアメリカ人扱い)がどれだけ勝利に寄与したかという数字で、2013-14シーズンの全62勝のうち32試合が、インターナショナルプレイヤーによる勝利だと書かれています。

イタリアのマルコ・ベリネリが6.7勝。アルゼンチンのジノビリが6勝、オーストラリアのパティ・ミルズが5勝、ブラジルのティアゴ・スプリッターが4勝、フランスのボリス・ディアウが3.8とトニー・パーカーが3.6勝、カナダのコーリー・ジョセフが2.8勝とのこと。San Antonio Spurs Show Globalization Is A Winning Strategy フォーブスより

そしてオクラホマシティ・サンダーのGMであるサ ・プレスティはこのように述べています。

スパーズのインターナショナルプレイヤーをスカウトすることに対する投資という先見性と、彼らにプレーする機会を与えることは賞賛に値する。そして彼らが成功するための環境とシステムを作るという大きな仕事をした。

スパーズが持つシステムというのは、ポポビッチの前HCであるラリー・ブラウンから継承したものであるとし、「チームを優先する現実的なプレイヤー」が必要であるとのことです。スパーズのロスターには常にスターというよりは「ジャーニーマン」か「職人」ばかりが名を連ねていました。僕が知るかぎりでも、マリオ・エリーやショーン・エリオットの役割は現在ダニー・グリーンやゲイリー・ニールが埋めていますし、レナードのようなオールラウンダーも過去にリチャード・ジェファーソンやスティーブン・ジャクソン、ロバート・オーリーといった選手がその役割を担っていました。

確かにティム・ダンカンという稀代のスターがいることは事実です。以前にはデビッド・ロビンソンもいました。それはもちろん幸運ではありましたが、彼らがしたことはそれでも「持っているものを最大化」したことだったのです。
     

この記事の著者

岩田 塁
岩田 塁GSL編集長
元・スポーツ書籍編集者。担当書籍は『バスケ筋シリーズ』『ゴールドスタンダード』『シュート大全』『NBAバスケットボールコーチングプレイブック』『ギャノン・ベイカーDVDシリーズ』『リレントレス』他