アメリカとヨーロッパの育成システムの違いについて:森高大氏寄稿

Last Words from the Coach

謹賀新年。明けましておめでとうございます。本年もゴールドスタンダード・ラボを何卒よろしくお願いいたします。さて本年より、アメリカのウェストバージニア大学にてコーチング修行をされている、森 高大(もり たかひろ)氏が、当ラボに寄稿していただけることになりました。日米のコーチングの違いについて、今後トピックを掲載していく予定です。以下本文。

今回はアメリカとヨーロッパの育成システムに触れながら、「日本にはどのような育成システムが適しているか」について考えたいと思います。

アメリカの育成システム

大きな特徴を3つ挙げて、概要を掴みたいと思います。

①トライアウト

アメリカの育成の仕方の大きな特徴として、「とにかく競争を重ね、ふるいにかけて選手を絞る」という点が挙げられると思います。チームに入るためにはトライアウトが小学校から課されますし、かなりシビアです。チームに入れないとストリートなどの「レクリエーションとしての」バスケしかできなくなり、「アスリートとして」生きることはかなり難しくなります。

また、トライアウトの難度もだんだん上がっていきます。例えば、各カテゴリーの枠がずっと同じ15人でも3つの小学校が1つの中学校に集まると、中学校でチームに入ることは難しくなります(各学校でロスター入りしていた15×3=45人が、15枠のロスターを争うため)。高校でも同じで、2つの中学校が1つの高校に集まると、それぞれの中学校でロスター入りしていた15人、合計30人が15の枠を争うわけですから、また受かるのが難しくなります。

②シーズンスポーツ制度

アメリカにおける主なジュニア期のスポーツの場は学校の部活です。これは日本と同じです。ただしアメリカではシーズンごとに取り組むスポーツが違います。例えば夏はフットボール、冬はバスケットボールといった具合です。つまり、フットボールをやっている間はバスケの練習はありません。

多くの子どもたちが複数のスポーツに取り組みます。オフシーズンにもキャンプであったりバスケットスクールであったりといったバスケをやる場はあるのですが、あくまでそのシーズンにあったスポーツに取り組むのがアメリカ流のようです。

③選手が所属するチームを選べるか

注目すべきは、公立校は高校も含めて住んでいる地区によって割り振られることです。これは日本と大きく違う部分だと思います。そのため私立校でない限り、選手が「どの高校でプレーしたい」かは選べません。これはどのカテゴリーでも同じです。

したがって、基本的にコーチは選べない状況です(アメリカ人の話を聞いていると、この「コーチを選べない」というのがかなりやっかいらしく、あまりよくないコーチにあたってもどうしようもないと嘆いていました)。

(編集部注:日本でも学区は設定されているが、越境入学が可能なことや、高校では比較的学区が広域に渡るため自由度はそれなりに高いといえる)

こういった選抜を繰り返す中で、スターが現れるのを待つのがアメリカ流なのだと思います。正直に言ってこれはプレイヤーの母体数が非常に多く、かつそれほど操作しなくてもそこらじゅうに才能のある選手が溢れているアメリカだからこそ機能するシステムだと思います。したがって育成システムに関しては、アメリカ流が日本にフィットするかといわれると疑問です。

ヨーロッパの育成システム

ここで日本のユース世代の育成を考える上で、ヨーロッパ流の育成に触れたいと思います。ヨーロッパ流の育成とアメリカ流の育成の最も大きい相違点は、ヨーロッパはクラブチーム主体だということです。何よりもこの点が一番アメリカとも、日本とも違う点だと思います。クラブチームは学校によらず入ることができるチームです。このクラブチーム制の利点としては

  1. 才能のある選手を集め、日常的に高いレベルで練習できるということ
  2. 選手が誰に指導されるかを選ぶことができること

が挙げられます。

選手がチームを選べない場合のデメリットとして、1つ目の利点が大きく関わってきます。選手は基本的に「いま面している状況で必要なこと」から吸収しようとします。例えば190cmの選手が1人だけいて、残りの選手が160cmしかない場合を想像してみてください。190cmの選手はチーム内の練習でブロックされることなどほとんどないでしょう。するとブロックをかわすための技術など、自分より大きい人に対しての技術を身に着ける必要もなく、結果としてそれらの技術を身に付けることは非常に難しくなります。

一方、もしその190cmの選手が2m越えの選手と毎日練習していたらどうでしょうか。きっと彼はブロックされないように様々な工夫を身に着けるでしょう。そういった状況を作り出すことができるのが、学校によらず選手が集まることのできるクラブチームの大きな魅力として挙げられます。特に日本のように才能ある選手がそれほどいない国にとっては、この点がかなり大きな影響を持つのではないでしょうか?

2つ目の選手がチームを選ぶことができるというのも大きな利点です。選手によって「自分を最も伸ばしてくれるコーチ」は異なります。強いリーダーシップでガンガン引っ張って行ってくれるコーチが適している選手もいますし、自分で考えさせる指導が適している選手もいます。それを選手が選択できることで、個々に合った指導が提供されることになります。これは「選ばれないとコーチする選手がいなくなる」という点で、コーチに自分のコーチング能力を磨くように仕向ける効果もあります。自分がよくならなければ、指導する選手がいなくなるわけですから。コーチング能力の向上という点からも効果が期待できるかと思います。

アメリカ流、ヨーロッパ流と見てきましたが、皆様が考える日本の育成の改善点などをシェアしていただければ幸いです。気づいたこと、日ごろ考えていることなど、日本の育成について思うところがあれば是非コメントをよろしくお願いします!

※本記事は寄稿者が自身のブログに書いた記事を再編集したものです。元の記事については下記ブログをご参照ください。

コーチMのブログ http://ameblo.jp/tamorimorimori83/

この記事の著者

森 高大
森 高大
1989年生まれ、香川県出身。香東中学校-高松高校-東京大学-ウェストバージニア大学大学院アスレティックコーチング専攻。小学校からバスケを始め、大学3年次までプレイヤー4年次には学生コーチと主務を兼任しながら、株式会社Erutlucで小中学生の指導にあたる。現在はアメリカDivision I 所属のウェストバージニア大学大学院でコーチングを専攻しながら、男子バスケ部でマネージャーとして活動中。
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