インタビュー:佐々木瑛(デイトリックつくば)

インタビュー:佐々木瑛(デイトリックつくば)

『ゴールドスタンダード』を通じて考えたこと、発見、学び、疑問などを考える連続シリーズ。第3弾は、JBL2のデイトリックつくばで活躍する佐々木瑛選手。文武両道を実践するアスリートとして注目を集めている。

『ゴールドスタンダード』との出会いは、どのような経緯だったでしょうか?

私がよく行く近所の書店で偶然見かけたのがきっかけです。ちょうどロンドン五輪が終わったばかりの頃で、北京五輪との連覇を成し遂げたアメリカ代表のヘッドコーチであるコーチKがどのような考えに基づいてチームを率いていったのかについて興味を持ったからです。

コーチKさんのことは、どれぐらいに知っていたか? また、筑波大学は緻密なバスケットをやるイメージがありますが、アメリカの大学バスケのNCAAの映像などは見ていましたか?

コーチKさんの名前は知っていましたし、デューク大の試合の映像も見た事がありました。しかし、コーチKさんに関する書籍などを読んだのはゴールドスタンダードが初めてでした。NCAAの映像は毎年のように見ています。また、筑波大学の吉田健司先生はノースカロライナ大に行って勉強されていた経験を持っており、戦術などはノースカロライナ大の考え方を多く取り入れていますので、特にノースカロライナ大の試合はよく見ていました。

北京五輪の前に、アメリカ代表はアテネ五輪で屈辱的な敗戦を経験しています。その時の様子はテレビなどで見ていましたでしょうか?

アテネ五輪の敗戦も世界選手権の敗戦も見ていました。アテネ五輪の敗戦は衝撃を受けました。しかし、世界各国が長年かけて代表チームを強化してチームとしてのレベルが上がっていたのに対し、アメリカは個人能力の高い選手を集めただけという印象で、チームとしてきちんと強化しないと勝てない時代になってきたのだと感じました。

世界選手権の時には、アテネ五輪の時よりはチームプレイが良くなった感じがしましたが、それでもまだチームの熟成度は低かったと思いますし、ゾーンへの対策やピックプレイに対するディフェンスなど戦術的な課題が多かったと思います。しかし、北京五輪の時には、雰囲気も良くなり、一人一人の選手がきちんとそれぞれの役割を果たし、戦術的な課題も克服されて、確実に「チーム」になったという印象を受けました。

著作の中で、特に印象に残ったエピソードには何がありますか?

アメリカ代表のスタンダードを構築するミーティングでジェイソン・キッドが「時間を守ることはとても大きなことだと思います」といった場面。スーパースターが集まったアメリカ代表でも、そういった細かい部分を大切にしているのだと驚いたから。僕自身の経験の中でも、時間に守らない選手がいると、その選手への信頼が薄くなっていくし、チーム全体の行動が乱れてフラストーレーションが溜まると感じていて、時間を守ることはとても大切だと思っていたので共感できました。

佐々木選手はこれまでに高校、県選抜、国体チーム、ジュニア代表のチーム、大学、茨城県成年男子チーム、デイトリックなどなど、数多くのチームで活動を積み重ねてきたと思われますが、チームの結束が強くなっていく瞬間、結果の出せる組織になっていくプロセスには何が大切だと考えていますでしょうか?

僕自身の経験の中では小さな目標でも良いので、何か目標を達成するとチームの結束力が高まると感じています。一番最近の話題では、デイトリックでボーンズカップで優勝した時ですかね。

また、挫折をした時に、そこから逃げずに向き合って克服出来た時も結束力を強くしてくれます。そして、チームとして決めたルールをきちんと徹底していく事も大事だと思います。ルールを徹底できないと、逆にチームメイトとの信頼関係が崩れ、結束が失われる事になります。

※茨城県で開催されている北関東最大級のオープン大会。デイトリックつくばも過去二回、日本人選手のみで参戦している(ともに優勝)。佐々木選手自身、第10回大会では準決勝・決勝戦の勝負所で連続得点を沈めてMVPに輝いた。

組織の中にいる選手として、目的や目標の為に自分が行おうとしている自分の中でのスタンダードには何がありますでしょうか?

僕自身は「常に全力を尽くす事」「現状に満足しないこと」「他人のせいにしないこと」「能動的に行動する事」を大切にしています。

上記のスタンダードを課したのには、それが必要だと考える理由があると思います。なぜ、上記の4項目を自身のスタンダードとして設定されたのでしょうか?

僕自身は良いチームになるためには、まず個人が自立する必要があると思っています。その上で、一人一人の能力を活かし、一人ではできない事をチームで補い合う相互依存の関係を築く事で良いチームができるのだと思います。そのため、個人が自立していくためのスタンダードを自分に課しています。

佐々木瑛(ササキ ヒカル)
1987年5月2日 宮城県出身。東北学院中・高校を卒業後、筑波大学に進学。その後、茨城県クラブ連盟の谷田部クラブを経てデイトリックつくばと契約。学生時代にはIHや全日本ジュニアの舞台で活躍し、大学でも強豪である筑波大学でプレイ。今季、初参戦となったJBL2では前半戦を終えて2位。見事、全日本総合選手権の出場を決めた。来シーズンよりNBLへの参戦も決まっているチームである。自身のブログでも『ゴールドスタンダード』を取り上げる。更新頻度の高いブログでは、プロ選手としての活動報告のみならず、心構えや、読んだ本の紹介など多岐に渡る内容で好評を博している。

この記事の著者

片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
1982年生まれ。埼玉県草加市出身。株式会社アップセット勤務の傍ら、ゴールドスタンダード・ラボの編集員として活動。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。クリニックなどの企画運営も多く手掛け、EURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。一般社団法人 Next Big Pivot アソシエイトとして、バスケを通して世界を知る!シリーズ 第1回セルビア共和国編では、コーディネーターとして企画運営に携わりモデレーターも務めた。 J SPORTSでB.LEAGUE記事も連載中。

宮城クラブ(埼玉県クラブ連盟所属)ではチーム運営と共に競技に励んでいたが、2016年夏頃に引退。HCに就任。これまで、埼玉県国体予選優勝、関東選抜クラブ選手権準優勝、関東クラブ選手権出場、BONESCUP優勝などの戦績があるが、全国クラブ選手権での優勝を目標に、奮闘中。