全ての卒業生へ。「人生」を教えてくれる感動の名スピーチ

 jimmyv.png卒業の季節

最近街に出ると、袴を着た女性の姿が目につきます。大学、そして高校や中学校でも、すでに卒業式が終わったところもあるようですね。

中学生と高校生の卒業生は、ちょうどあの3.11後に入学したんですね。ただなんとなくの学生生活を送るのではなく、より一層強い決意で毎日を過ごしたことと思います。そして何でもいいから、一つでも一生の誇りに思えるものを手にできたのであれば素晴らしいですね。

新しい生活に対する希望もあるでしょうし、不安ももちろんあるでしょう。今日お伝えするのは、進学、就職、転職など、あらたな船出を迎える皆さんに送りたい、人生をどのように歩むのかというメッセージです。

ジム・バルバーノ

恐らくバスケットボールファンであってもこの名前を聞いたことがない方も多いでしょう。バルバーノは1946年ニューヨーク生まれ。いくつかの大学を経て、1980年からノースカロライナ州立大学のヘッドコーチに就任し、1983年にはNCAAトーナメントでチャンピオンに輝きました。

1990年以降にコーチ業から離れた後はESPNなどで解説者を務めました。そして1992年、治療が不可能な癌に冒されます(英語のサイトを調べると”bone cancer”と出るので、骨肉腫ということかもしれません)。10ヶ月の闘病の末、1993年8月、47歳という若さで亡くなりました。

今回紹介したいスピーチについては、本ラボ運営者の1人である佐良土が翻訳した『コーチKのバスケットボール勝利哲学』(イースト・プレス、マイク・シャシェフスキー著、島本和彦監修、2011)の194ページ、「情熱」の項でもこのエピソードが語られており、コーチKは「わたしが出会ってきた人のなかでも、人一倍情熱的であった」とバルバーノを評しています。そしてこのスピーチについては下記のように述べています。

わたしが「実際のところ、情熱とは一体どういうものであるか?」とあらためて問い直す必要があるときには、必ず1993年のESPYアワードにおけるジムのスピーチを収めたビデオを観ます。彼が「決して諦めてはならない。何があろうと絶対に諦めるな(Don’t give up, don’t ever give up)」という心を突く言葉でスピーチを締め括ると、わたしは『本当の情熱というものは、たとえどんなに大きなことであっても、それを成し遂げるための原動力となり得るのだ』と思い出して、武者震いにも似た感覚を覚えるのです。

 

Jimmy V “Never Give Up” Speech – 1993 ESPYs

前置きが長くなりました。このスピーチの一部をご紹介します。

ありがとう。本当にありがとう。
皆さんご存知のように、私は今癌と戦っています。人々はいつも私に、人生や日々をどう過ごしているのかと尋ねてきます。しかし何も変わっていません。ディックが述べたように、私はとても感情的かつ情熱的な人間です。これは変えようがありません。ロッコ・バルバーノとアンジェリーナ・バルバーノの息子として生まれたのですから、一生ついてまわるものです。我々は抱き合い、キスをして、そして愛します。そして人々が尋ねてきます。「人生や日々をどう過ごしているの?」と。同じことです。我々が毎日すべきことが3つあります。生きている限り毎日すべきことです。
1つ目は笑うことです。毎日笑って過ごさなければなりません。2つ目は考えることです。1日のうちいくらかは考えて過ごすべきです。そして3つ目は、感動して涙を流すことです。幸せや喜びの涙です。考えてみてください。笑い、考え、そして泣くことで1日が満たされれば、なんと素晴らしい一日でしょうか。それを1週間のうち7回行なえれば、あなたは何か特別なものを手にすることができるでしょう。
私は今日、良き友人でもあり素晴らしいコーチである、マイク・シャシェフスキーと飛行機に乗りました。皆さん彼が素晴らしいコーチであることをご存知だと思いますが、その10倍も素晴らしいコーチです。彼の存在は、この5ヵ月から6ヵ月間に及ぶ私の戦いの中で、大きな意味を持っていました。我々は選手として競い合いましたし、コーチとしては15年間も切磋琢磨しました。だから彼を見ると、私は人生で大切なことを考えさせられるのです。それは「どこから始まったのか」「今どこにいるのか」「これからどこへ向かうのか」の3つです。

<中略>

自分がどこにいるのかを知ることは非常に大切です。そして私が今自分がどこにいるのかを分かっています。今いる場所から行きたい場所へ行くにはどうしたら良いのか? それには人生に対する「激しい情熱」がなければなりません。夢と目標を持たなければなりません。そしてそのために喜んで努力しなければならないのです。
私は家族について話しました。家族というのはとても大切です。私はとても勇敢だと言われますが、その源泉は私の妻と3人の娘です。そして最後に、私はあなたたちにこう勧めたいのです。あなたの人生の貴重な時間を楽しんでください。笑って、考え、そして感情的になったりして毎日を過ごしてください。毎日情熱を持って過ごすことについて、ラルフ・ウォルドー・エマーソンは言いました。「情熱なくして偉業が達成されたことはない」。どんな問題があろうとも、夢を持ち続けてください。夢をかなえるために努力する力は、きっと夢を現実のものにするでしょう。
そして私は、今自分が置かれている状況を分かっていますし、どうしたいのかも理解しています。残された時間がどれほどか分かりませんが、人々に少しでも希望を与えたいと考えています。アーサー・アッシュ財団は素晴らしい団体です。エイズのための寄付金は決して充分ではありませんが、癌に対する寄付金はエイズのそれと比べて10分の1にしかすぎません。1年間に約50万人もの人々が癌によって亡くなります。4人に1人がこの病気で苦しむことになります。それなのに癌はいつも背景に隠れてしまいます。私はそれをもっと明るみに出したいのです。私たちはあなたの支援を必要としています。研究のための寄付を必要としています。それは私の命を救うことはないでしょう。しかし私の子どもの命を救うかもしれません。あなたの愛する人の命を救うかもしれません。これがとても大事なことなのです。
ESPNは私を支援してくれ、そのおかげで私は今夜ここでスピーチできたのです。彼らの金銭的援助を受けて、我々は癌の研究のためにJimmy V財団を設立します。我々のモットーは「決して諦めてはならない。何があろうと絶対に諦めるな」です。これは私が残された全ての時間で挑戦しようとすることです。そして残された日々の全てを神に感謝するでしょう。もし私に会ったなら、微笑みかけて、抱きしめてください。それは私にとって大事なことです。でも可能なら、癌でもエイズでも構わないので寄付をしてください。そのおかげで誰かが生き延びることができるかもしれません。成功するかもしれません。この恐ろしい病から回復するかもしれません。ESPNには感謝してもしきれません。私は努力し、そして何らかの治療法や研究の成果が得られるかもしれません。そして癌と戦い、来年のアーサー・アッシュ賞の受賞者に、私が賞を手渡したいと思っています。
最後に言いたいのは、先程もお話したことですがもう一度言わせてください。癌は私の身体を蝕み奪う去るでしょう。しかし私の精神を奪うことはできない。感情を奪うことはできない。魂を奪うことはできないのです。この3つは永遠に生き続けるのです。

 

このスピーチの約2ヵ月後にバルバーノは帰らぬ人となりました。彼は自身の病が治らないこと分かっていましたし、そう長くはないことも分かっていたはずです。コーチKは同著で下記のように記しています。

ジムは、自分自身は決して救われないとわかっていましたが、その現実を目の当たりにしても立ち止まることはありませんでした。勝利は自分の死後にしかやってこないとわかっていたにもかかわらず、彼の情熱が癌を打ち負かすこととなりました。

年を経るにつれ、人生には多くの、そして大きな困難が待ち受けています。それをどのように打開すればよいのか。明日が来ようが来まいが、燃えたぎるような情熱を持って生きるというヒントを胸に、今後の人生を強く歩んでいってほしいと思います。そして最後になりましたが、皆さん卒業おめでとうございます。今後の活躍を心よりお祈りしております。

ゴールドスタンダード・ラボ運営一同

この記事の著者

Gold Standard Lab
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「スポーツコーチングを普及啓蒙し、日本国内におけるコーチングの『ゴールドスタンダード』を構築する」ことが使命。選手や指導者の方に役立つ情報を発信します。