あのNBAプレイヤー躍進の秘密-トレーニングの目的を明確に

Derrick Rose vs. Kyrie Irving

今季のNBAが開幕してからずっと書こうと思っていながら、なかなかタイミングを掴めずにいたトピックです。ちょうど昨日の試合で、フィラデルフィア・セブンティシクサーズのエバン・ターナーがブザービーターを決めてチームを勝利に導いたようです。

今季のMIP(昨シーズンから最も成長した選手)候補にもなり得るだろうこの選手。2010年のドラフトで全体2位という鳴り物入りで入団したにも関わらず、最初の2年ほどは物足りないスタッツしか残せませんでした。もちろんチーム事情もあるでしょうが。しかし昨シーズンから出場時間が10分ほど増えたことから、各部門のスタッツも軒並み上昇。そして今季は、昨シーズンとほとんど同じ出場時間にもかかわらず、平均得点は約18点と5点ほど増え、チームのエースと言える活躍を見せています。

そんな彼の活躍を支えていると思われるのが彼です。

ミカ・ランチェスター Micah Lancaster

micahwithmedball
https://www.iamtraining.org/

I’m Possible Trainingの創設者であり、アメリカで有数のスキルコーチとして活躍しており、過去にはアメリカ独立リーグのIBLでプロとしてプレーした経験もあります。またギャノン・ベイカーの下でスキルコーチをしていたこともあります。

      

動画を見てもらえれば分かる通り、とんでもないスキルを持っています。これが「曲芸」だという批判も一部あるようですが、ドウェイン・ウェイドやカイリー・アービング、マリオ・チャルマーズといったNBA選手からのオファーがあることからも分かるように、スキルの指導に関して一流と言えるでしょう。

カイリー・アービングにしても、スタッツは昨シーズンとさほど変わりませんが、今季はオールスターに選ばれるなどさらなる飛躍を遂げています。NBAでは、チームで個人練習をすることはほとんどなく、フィジカルトレーニングや個人スキルのトレーニングは全て個人で練習しなければなりません。だからスキルコーチという職業も成り立っていると言えます。下はカイリー・アービングのトレーニング。

ミカ・ランチェスターは一風変わったトレーニングで知られていますが、そうしたものを取り入れる際には、下記の要因をしっかりクリアしているかを精査しているようです。

  1. プログラムは自分にとって試合で有効か?
  2. プログラムは自分のファンダメンタルを向上させ、試合でも使えるものか?
  3. プログラムは効率的かつ有効か? 1つのドリルが試合の特定の場面、あるいは複数の場面で効果的に働くか?
  4. プログラムを使用した人々に、成功や改善が示された実績があるか?
  5. プログラムはトレーニングを適切かつ現実的に実行し、システムとして組み立てることが可能か?

彼のクライアントたちが、まさにこうしたプログラムの恩恵を受けていると言えますね。さてあなたのチームで、昔からずっとやっているからとか強いチームがやっているからといった理由で、何となくやっていたり目的が曖昧なままやっているメニューはありませんか?

もちろん真似をすることは大事です。テニスボールを使ったトレーニングなんて今や誰でもやっています。でも本当に大事なのは、どんな練習かという上っ面ではなくて、それを自分の中でどう消化して、何のためにどのように選手に伝えるかだと思います。それがなければ、メニューはただの言葉で終わってしまうような気がするのです。

またスキルコーチというのは日本ではまだ馴染みのない職業ですが、個人スキルをしっかりと教えられる指導者というのもあまり多くはないでしょうから、今後重要性が高まってくるとともにあって然るべしだとも思います。子どもたちの育成とともに、コーチの育成ということですね。

この記事の著者

岩田 塁GSL編集長
元・スポーツ書籍編集者。担当書籍は『バスケ筋シリーズ』『ゴールドスタンダード』『シュート大全』『NBAバスケットボールコーチングプレイブック』『ギャノン・ベイカーDVDシリーズ』『リレントレス』他