こんにちは。ピンクのおじさんです。前回の長文は、読んでいただけたでしょうか? その評判を待ってからにするつもりもありましたが、今の時期少し時間があるので連投させてもらいます(今回は結構短めにおさめるつもりです)。
注:タイトルのPNR=ピックアンドロール、あるいは文中のO=オフェンス、D=ディフェンス、その他番号でポジションを表すことなども含めて、一般的にバスケット界で通用している用語等には特に注釈を加えていません。
今回の内容はもしかしたら異論続出かもしれませんね。何せこのタイトルですから。日本でもこの神コンビの信奉者は多数いると思いますが、そういった方々にとっては「何言ってんだこいつ!」となるかもしれません(以下でも同様に「神コンビ」と記述します)。
もともと以下のサイトをフェイスブックから辿ったことがきっかけです。批判対象としてリンクさせてもらうことを断わっておきますが、他の記事も含めて、あくまで超初心者向けという印象を受けます。
【完璧に中がガラ空きだ!】キマりすぎて超気持ちいいオフェンス戦法!『ジョン・ストックトン』と『カール・マローン』の華麗すぎる芸術的なピック&ロール特集☆|スポーツlovers
加えてその文中にもあるYoutubeをリンクします。
この動画はかなり有名で、自分も以前から目にしていますが、近年ではやはり「現代バスケットでこのやり方そのままでは通用しない、ぶっちゃけ古い!」と思っていました。それどころか「これをそのまま日本の少年少女に紹介することは、日本のバスケットの発展にとってマイナスだ!」とまで感じていますので、今回の寄稿に至ったわけです。
短く済ませると書いておいて申し訳ないのですが、まずは余談になります。
自分くらいの年齢の方は、体育授業や部活動のランニングに関するトレーニングで、やたら「ももあげ」をやらされた記憶はありませんか? あくまで余談ですので話を端折りますが、そのももあげトレーニングというのは、マック式というトレーニング法を誤解して伝えたものが日本中に広まってしまったものだそうです。それ以外にも、日本にはどうも間違った(あるいはすでに古くなってしまった)方法を律儀に信じ込んで、しかも長期間継続して教えてしまっている傾向が強いと感じています。
神コンビの芸術的なPNRについても、このような事例と同じとらえ方をしています。過去の素晴らしいプレイとして参考にするのはよいのですが、これをそのまま現代、もっと言えばこれから世界に飛び出して行ってほしい日本の希望の星たちに教え込むのは、文字通り時代錯誤だと思うわけです。
ではその問題点を挙げます。簡潔に、2点プラス1の計3点。
- マローンのセットの角度が深すぎる
- マローンのロールがバックターンになっている
- (ストックトンが最終的にシュートするケースはまれである)
比較対象としては、この動画をリンクしてみます。
長い動画なので自分も全部は見ていないですが、最初に出てくるトニー・パーカーの部分で言えば、典型は0:42秒からのディアウのスクリーンセットの仕方です。横から近づいたにも関わらず、わざわざ背中をベースラインの方に向けて浅い角度でセットアップしているのが分かると思います。またそれ以外では、スリップしたり、当たるには当たるのですがガツンと行く前にスクリナーが走ったりというシーンが多く、明らかに神コンビのやり方とは違うのがお分かりでしょうか?
ここからが核心で、問題点として挙げたことの理由になります。
1.セットアップの角度
これに関しては、もしかしたら異論が続出するかもしれません。実際、日本でもこの「深いセットアップ」で成功している事例が近年までありました。それは女子のJALのエイトオフェンスの中での、特に岩村・矢代コンビのPNRです。彼女らの、というより彼女たちを指導した韓国人コーチの理論も自分は実際にレクチャーを受けましたが、それはそれで納得のいく内容ではあります。もしかしたら今でもそのまま通用するのかもしれません。
が、自分はその理論自体が成功のポイントではないと思っています。では、何か? それはずばり「韓国」、「岩村選手」この2つがキーワードです。要するに3Pがバシバシ入る選手であればこちらの方が正解、ということです。深くセットアップし、なおかつうまくスクリーンがかかれば、Dは自ずとUnderで守らざるを得ません。Overのスペースがないのですから。そうするといわゆるBehind Shotの場面が生じます。一般的にはこれは3Pエリアになります。つまり深いセットからはほぼUnderのケースが生まれ、それに対応した得点チャンスは、ドライブでも(より近いエリアでの)プルアップでもなく、3Pがほとんどということになっていきます。
しかし、そのBehind Shotの確率を実際に計上してみたことはあるでしょうか? 特に中高校生のレベルで。逆に(PNRを使う場合には限りませんが)、そういった外からのショットばかり打ってしまって自滅した試合の経験はありませんか? 要するに、この深いセットアップから生み出されるプレイは、3Pシュート頼みのギャンブルゲームになってしまうということです。
ここで神コンビの動画を見てみてください。特にDの方に注目してみると、言葉は悪いですが、Dの無能振りが随所に伺えます(以下、ストックトンを1、マローンを5とします。またそれぞれのDはX1、X5です)。X1にはすでにOverするスペースがないのに皆が皆、ほぼ無理やりOverしようとしているでしょう?(この動画はハイライト集かつ成功例なので顕著なのだとは思いますが、それにしても簡単に引っかかりすぎです)
この状況からしたら、ここはUnderしてX5のHedgeに頼った後うまくリカバーすべきです。もしくは、現代バスケットであればセットアップされる前にIce、あるいは同じUnderでもJam&UnderといってX5が5にくっついてその更に下を通る場合や、Sag&Underという昔ながらのスライドスルーに似ているけれどもより深い位置でX5が待ち受けるような、多様なDの展開も考えられるわけですが、神コンビの時代にはそういったDはまだ確立されていなかったんですね。
では逆に、浅くセットしたらどういう利点があるかについてですが、主に2つあります。1つ目は、次の図を見ていただければ一目瞭然で、UnderするのにX1がより長い距離を移動しなければならないことが分かると思います。
裏を返せばDは当たり前にOverしてくる(Overによる対処を試みる)はずだ、ということです。つまり、この浅いセットでは入りもしないBehind Shot を打たされるケースは減る、ということです。また逆説的ですが、Overされかけるということはこの動画集の神コンビの状況に勝手に近づくということにもなります(そうなれば、この動画のストックトンのパスワークなどはとても良い参考になりますね)。もちろん、Overされた結果そこで潰されてしまっては元も子もありません。いずれそのケースにどう対応するかも書きたいと思いますが、今回はこの説明に止めておきます。
2つ目は、サイドピックの場合は主に上記のIceをされた場合、ハイピックの場合ではそれ以外にもDが準備をして待ち構えていることが予想できる際の対応になりますが、それらに対しては現在ではAngle Changeによって裏をかくことが一つの対処法になっています。これは簡単に理解できますね? Angle Changeする場合は、浅くセットした方が容易になります。90度以下の鋭い角度の変化が、135度以上の緩い変化で済むことになります。
2.バックターン
これについては、一つは深いセットとの関連、そして上記の昔風の守り方からすればバックターンになるのは必然なのですが、お分かりでしょうか? つまり、深いセットアップした状態からUnderしてくる相手に対して、それを防ぐためにいわゆるSealするということです。また、ボールから常に目を離さない点でもバックターンが有効で、この二点によって過去にはバックターンが基本とされていたと思います。
二点のうち、まず「目を離さない」ということから書きますが、これについてもO・D問わず、やはり古い考え方だと思います。わかりやすいケースでDの例を挙げますが、昔はオフボール、特にヘルプポジションのDは「首を振るな」と言われていました。視点を固定して全体をソフトセンタリングで見るのが正解だったわけです。しかし現在では「首をどんどん振っていろんな方向を見よ」という教えが一般的になっています。
そしてPNRの際に「バックターンで目を離すな」といういうのも、単純にこのような発想から来ていたのだと、今となっては思います。「今」と書いたのは、これは経験して初めて分かったことだからです。実際やってみると(あるいは選手にやらせてみると)、バックターンでなくフロントターンをすることで確かに一度ボールから目を切らなければならないのですが、そのデメリットよりもメリットの方が大きいことに気づきました。
あっさり書きますが、そのメリットとは「スピード」です。バックターンからスタートするよりフロントターンの方が早いのは、どこのチームでもよくやっているシャトルラン(映画「コーチカーター」でやっていたいわゆる「自殺ラン」)でタイム計測してみれば一目瞭然ですが、絶対にフロントターンの方が速いです。そして現代バスケットでは、そのスピードの差、バックターンによる一瞬の遅れがプレイの失敗の原因になるケースがある、ということです。
二点目のSealについてですが、これはわかりやすいと思います。Underしてくる相手を背中で抑えるにはバックターンの方が自然で、自分もある一定のケースではバックターンでSealすることを否定はしません。もし厳格に使い分けることが出来れば、それがベストだと言えます。しかしながら、どちらを基本とすべきかは、やはり一つ目の理由を優先させて現代バスケットではフロントターンを徹底させるべきだと思います。まして、全てがバックターンというのは時代遅れだと思います。
ここでこのフロントターンを強調した動画をリンクします。また余談として、この動画の作者について少しコメントを加えますが、彼は元NBA、現NCAAD1の現役アシスタントコーチです。興味があったら彼の名前でググってみてください。いろいろと面白い情報が得られます。ちなみに、今回の自分の渡米でも時間さえ許せば彼と濃いトークをしにカレッジを訪ねるつもりでしたが、あいにく行く時間がありませんでした。
3.Userのシュートがほとんどない
これはストックトンとマローン、それぞれの選手の特徴(凄さ)として片づけるしかないかとも思います。Behind Shotを選ばなくても、その後マローンに預けさえすればなんとかなる点と、その預け方すなわちパスが絶妙なのは間違いのないところです。ただし、現代バスケットではこのことに対する答えも実はあります。特にUnderされた場合の対処としてBehind Shotをあえて選択せず、「Foot Race をしなさい」という教えが多くのコーチから出てきています。
これも図示した方が分かりやすいです。以下のように、特にUnderしてきたX1に対して文字通り「競争」を仕掛けるというものです。
このFoot Raceという考え方は、Under、Over、その他すべての場合に常に持っておくべき考え方です。是非理解して挑戦してみて下さい。
以上になりますが、ここまで読んで以前このゴールドスタンダード・ラボで同じような内容を目にしたと思われる方もいるかと思います。そうです。フロントターンや浅くかけるという点は、WVUに留学中の森コーチの考え方とほぼ同じですね。
要するに米国では現在この考え方がスタンダードになっているということです。私自身も、森コーチと話すまではここまで(つまり天下の神コンビを批判するほど)は考えがまとまっていませんでしたが、その後このような考えに落ち着いてきました。もちろん、今後新たな、全く違った理論にシフトしていくことも充分あります。それがバスケットボールの進化ということです。
コーチP(ピンクのおじさん)
公立学校教員につき、ペンネームにて寄稿。公開できる肩書きとしては、2015年2月をもって50歳、コーチ歴30年、関東一部リーグ校バスケットボール部出身、JBA公認B級コーチ、県高体連強化委員長等歴任。三大ライフワーク、バスケットボール・猫・ももいろクローバーZ。「ピンク」のペンネームはそちらからです。教員生活も残り10年、ここらでコーチとして最後の一勝負をしたいと考えています。投稿を読んで、興味のあるチーム(私立高校等)関係者がいらっしゃれば、是非連絡をお願いします。
※ご連絡希望の方は当サイトのお問い合わせよりご連絡ください。
この記事の著者











コメント
動画だけみりゃそうなるでしょう。
ジャズは95~00年くらいは、スターティングメンバーとベンチメンバーの得点平均がほぼ同じ。マローン以外も相当パス貰って得点するパターンが多かったのです。
デメリットはNBA1ターンオーバー多かった。
ジャズの戦術によるもので、相手の流れに左右されずに時間を使う戦術だったからです。わざとゆっくり攻めたり速攻したり。
1試合平均FG%は50%超える年もあった。
チーム3P%も40こえてる。
ストックトンがシュートすることが稀とか言いますが、ストックトンがパス貰いシュートするのが多くなって勝率高くなったのです。
かといって、1試合の出場時間も35分以内と決められていて年齢とともに数字も落ちてきて、1試合たった10アシスト10得点でした。
マローンも39歳で20点しか取れなくなって、リバウンドは10でしたが、ペイントエリア内でのシュートが入らないときが多くなってました。
全盛期23歳~36歳の頃は、ゴール下なんてほぼ外さない人でしたので、郵便配達人のようだと言われメールマンと言われました。
パワーでポジション取って自分のスペース確保するのがうまく、邪魔するやつはたとえ年上のスター選手だとしても、一歩も引きません。
そういう固い意志がある選手は少なく、レブロンやコービーですら思い通りにいかなくなると散漫なプレーしたり、大げさに吹っ飛ばされた演技をしたり態度に出しますが、マローンは怒りに燃えますがきっちり勝つために闘志を燃やします。行き過ぎて肘使うのも有名ですが。
それは固い意志があり、他人に左右されない鉄壁な気持ちの持ち主だからです。
その点はストックトン&マローン2人はNBAの中でも屈指のプレイヤーです。
ストックトンをアシストだけの選手と意言う若い世代が多いですが、20代の時は20点近い得点と15アシストを毎試合してました。
開幕直前足を骨折した時も2ヶ月ですぐ戻ってきたり、引退するまで勝ちに貪欲でした。
マローンは鉄人と言われる理由で、15年で欠場したのが1桁。出場停止を外すと4か5試合くらいです。
こんな二人の選手を当時見てしまうと、申し訳ないですが今の選手はダダこねたり、自分の価値をわからせるために少々の怪我で休んだりするスターと呼ばれる選手を見ると残念に思います。(シャック中心に点数取ると決めたチームに対して不満があり、当時は結構試合休んでた。)
今の選手では、カーメロが好きですが^^
25点以上取るセンターやパワーフォワードがいないのも寂しいです。
余談ですが、オラジュワンはシーズン中は平均25点前後、プレイオフになると平均35点取るという化け物もいます。
理由はシーズン中は平均32分出場。プレイオフは40分近く出場してくるからです。
こんなセンターいないのが寂しいですね。
提督ロビンソンなんかも1試合70点取ったことのあるセンターでした。
昔の選手ばかり誉めてる私ですが、今のバスケのほうが身体能力は上だと思います。
ベンチメンバーの能力も上がってると思います。3Pシュートも上手い選手が多くなりました。
が、メンタルやある分野に突出した選手が少なくなったような気がします。
出てきても1年のみ、よくて3年。10年くらいトップに居続ける選手が少ない。
ジョーダン・ロドマン・マローン・ストックトン・オラジュワン・ジャバー・マジック・バード
こういう突出したプレイヤーで強固な精神力の持った選手がでてきたらいいと思います。