インタビュー:佐良土茂樹(ゴールドスタンダード翻訳者)後編

インタビュー
(写真は「万物の根源は火である」と語ったヘラクレイトスの出生地であるエファソスを訪れた際の一コマ)
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(写真は「万物の根源は火である」と語ったヘラクレイトスの出生地であるエファソスを訪れた際の一コマ)

(写真は「万物の根源は火である」と語ったヘラクレイトスの出生地であるエファソスを訪れた際の一コマ)

『ゴールドスタンダード』を通じて考えたこと、発見、学び、疑問などを考える連続シリーズ。第二弾は、翻訳者でもある佐良土茂樹氏(写真参照/ギリシャへの研究の際に撮影)。元々は、自分自身の研究の為にコーチKの書籍を翻訳したことが全ての始まりだったという。

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THE HARDWOOD CODE

THE HARDWOOD CODE「この言葉を、日常に。」

コーチKさんとの衝撃的な出会いがあり、その後、出版という形に至ったのはどのような経緯からでしょうか?

自分がコーチKの著作を訳したのは、元々は彼から色々なことを学びたいと思ったからです。以前自分がコーチをしていたときには、コーチ哲学を学ぼうとしても、自分が理想とするコーチ哲学が書いてある日本語文献はあまりありませんでした。そこでそれ以前から気になっていたコーチKの著作を読んでみると、自分がなんとなく理想としていたことがとても明確に描かれていました。

しかも、彼の考え方には自分が研究しているアリストテレスの倫理学と部分的に共通する点もあり、とても共感できるものでした。そこで、彼の著作を読んで、多くのことを学びたいと思うようになりました。しかし、勉強をするために、ただ彼の著作を読むだけではなく、わざわざ訳したのにはわけがあります。自分の本業である哲学研究の世界では、自分が研究している人(自分の場合は古代ギリシアのアリストテレスですが)を自分自身で翻訳するのは当たり前のことです。

というのも、その人が語った言葉を原語で理解し、自分の母国語に置き換えなければ、本当の理解には到達できないと考えられているからです。なので、自分にとっては、尊敬するコーチKの著作を読んで、自分の母国語である日本語に正確に訳すことは、彼の考えを全て学び尽くすためには必要不可欠なことだったのです。コーチK著作を翻訳することに関しては、なによりこうした背景がありました。そして、出版ということに関していえば、前作『コーチKのバスケットボール勝利哲学』の場合は、せっかく訳したのだから出来れば多くの人に読んでもらいたいと思って(あわよくば「共感してもらいたい」と思って)、NBA解説で有名な島本さんにご相談にいきました。すると、島本さんの多大なるご協力で上梓することができました。

また『ゴールドスタンダード』の方は、すでにほとんど訳してあったところに、出版社さんから依頼をいただいたので、2012年7月に出版させていただく運びになりました。ただ、『ゴールドスタンダード』は北京オリンピックでの話しなので、読者の皆様に読んでいただけるとしたら、次のオリンピックの前に読んでもらいたいという想いもあったので、なんとかロンドンオリンピック前での出版ということになりました。

こういう事情ですから、自分が尊敬するコーチKの本が、日本のバスケットボール界の発展に寄与できれば、自分にとってこれ以上にない喜びです。というのも、コーチKの本をみなさんに読んでもらうということは、自分が大切にしている二つのこと(コーチKへの尊敬とバスケット界への貢献)が軌を一にすることにほかならないからです。

『ゴールドスタンダード』という書籍を通じてバスケットの文化にどのように貢献していく事が理想でしょうか?

僕にとってゴールドスタンダードを訳したのは、ある意味個人的な理由からでしたが、自分としては、多くの人が注目するバスケのアメリカ代表の物語を通じて日本でコーチ学という分野にもっと光があてられるようになればと願っています。確かに日本のバスケは技術の面でも世界に遅れをとっていると思いますが、それはコーチ学という分野でも同じだと思っています。

自分は選手としても指導者としても特に優れているわけではないので、「コーチ学」という自分の本業(哲学)に近い部分で、日本のバスケット界に何らかの形で貢献できればとても嬉しい限りです。

かなり話は大きくなってしまいますが、日本のバスケット界が盛り上がらない一つの理由としてよく言われるのは「日本代表が勝てない」ということですけど、それは何も日本代表にかかわるコーチや選手たちだけの問題だけじゃなくて、日本のバスケットボールに関わっている人たち全員の問題だと思います。だから、自分がそれに何か貢献できる部分があって、それを果たすことができれば嬉しいことです。自分にとって、それはどうやらコーチ学への寄与ということみたいです。こういう形でみんながバスケットボールを良くしたいという気概を持っていれば、全体はいつか良い方向へと向かって行くのではないかと考えています。

そもそも、英語での文献などをどのように探すのでしょうか?

コーチKの著作については彼のサイトがあるので、Beyond BasketballやGold Standardなどはそこで知りました。他に英語文献の探し方としては、とりあえずその分野の基本となる文献を読んで、その中にある文献表などを見て目星をつけます。

あとは、ESPNとかのHPで宣伝されていものとか、逆に気に入ったコーチや選手が入れば、amazonとかで検索してみます。

既に翻訳されている本でお勧めのバスケット、スポーツ本はありますか?

バスケットボールの本では、東頭さん(デンソーアイリスのコーチ)も以前ツイッターで勧めていましたけど( http://bit.ly/O58ZGh )、フィル・ジャクソンの『シカゴブルズー勝利への意識革命』(PHP研究所)ですね。彼のユニークな考え方がたまりません。あとはその対極にあるものとして、デニス・ロッドマンの『デニス・ロッドマンのワルがままに』(徳間書店)ですね。日本でもこう破天荒な選手が出てくればバスケットに対する見る目も変わってくるのではないかと思います。ぜひご一読することをお勧めします。

あと現在絶版ですが、バスケットボールの発案者ジェームス・ネイスミスの『バスケットボールーその起源と発展』(水谷豊訳、日本YMCA同盟出版部、1980年)も、バスケットボールを愛する人にはぜひ読んでもらいたい一冊です。

文献の検索自体はとても簡単にできる時代なので、その辺は助かっています。

(interview 2012.12.05 片岡秀一/UPSET)

佐良土茂樹(サロウド シゲキ)
1981年川崎市生まれ。2000年アメリカ・マサチューセッツ州のセントバーナード・ハイスクールを卒業。学習院大学法学部を経て、上智大学大学院哲学研究科博士後期課程に在籍し(専門はギリシア哲学、倫理学)、文学部哲学科のリサーチ・アシスタントも務める。中学校からバスケを始め、学習院大学篭球部でプレーした後、2005‐07年には上智大学男子バスケットボール部アシスタントコーチを務めた。HOOP HYSTERIA会員。

この記事の著者

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片岡 秀一ゴールドスタンダード・ラボ特別編集員
埼玉県草加市出身。

埼玉県出身。B級コーチライセンス、コーチデベロッパー、ジュニアエキスパート保有。

ゴールドスタンダード・ラボ共同編集長。クリニックのレポート、記事の執筆・企画・編集を担当する。トーステン・ロイブル氏を講師とするコーチ向けEURO Basketball Academy coaching Clinicの事務局も務める。2023年4月より株式会社ERUTLUCに転職。

2016年より日本バスケ協会技術委員会・指導者養成委員会ワーキンググループや委員等も担当。様々な講習会のレポートや、JBAコーチカンファレンス質疑応答部分のモデレーター等を担当。

コーチ歴
宮城クラブ(社会人男子)
名古屋ダイヤモンドドルフィンズU15・U18 AC
Club Peace of Mind男女U15

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