【ドイツアルバートシュバイツァートーナメント 観戦レポート】
ドイツ、ハイデルベルク大学へ短期留学中の藤澤潤さんに、U-18日本代表チームのアルバートシュバイツァートーナメントの観戦レポートを寄稿して頂きました。
以前、#AST2016 関係の記事での協力者として記載した某大学院生Fさんとは、本記事の寄稿者、藤澤さんでした。記事末尾に連絡先も記載されていますので、問い合わせや質問などがある方はそちらまで。
若きコーチの熱き血潮を感じられる内容です。
後編も震えてお待ちください!!!
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「ヨーロッパの地で、学び、成長し続けた選手たち ~Step by Step~」
文・写真 藤澤潤
3月27日から4月2日にかけて行われていたDBB(Deutschland Basketball Bund・ドイツバスケットボール連盟)主催のアルバートシュバイツァートーナメントは、開催国ドイツU18代表の初優勝で幕を閉じました。この大会には、前回大会から日本代表のユース世代も招待されており、今回もU18代表がアジア選手権に向けて実践強化を図ることを目的として、参加していました。今大会の様子を2回にわたってお伝えしたいと思います。
前編 ~U18日本代表が「国際舞台で闘うことを通して」得た収穫と課題~
1. 日々、学び、成長していった選手たち
開幕戦であるドイツ戦のアップ中の選手の姿はどこか頼りない様子であった。アップでも選手間で声の掛け合いがみられず、よく周りの様子を伺いながらアップしているように見えました。それもそのはず、彼らの初戦は開催国ドイツであり、会場にはドイツバスケの将来を担う選手達を見ようと多くの人が訪れており(主催者発表では1300人)、さらにチアリーダーも登場し、ゲームのMCもドイツ側につくような盛り上げ方であったからです。つまり、このチームで国際試合を初めて闘う日本にとっては、いきなり完全アウェーの雰囲気でした。
そのような雰囲気の中で始まった1Q、ドイツのファーストショットに対し、ハードコンタクトができなかった日本は、リバウンドダンクなどを喫するスタート。オフェンスでは、2線のディナイディフェンスが厳しく、ハイウイングからのエントリーになってしまい、良いシュートチャンスが作れません。彼らは試合序盤、トライしていなかった、いや、トライさせてもらえなかったように見えました。すかさず、トーステンロイブルHCは、タイムアウトの中で、Defリバウンドとチャレンジすることを指示します。試合が進むにつれて、ハードコンタクトからDefリバウンドを獲得したり、オンボールスクリーン主体のモーションオフェンスからガードがペネトレートをしかけ、そこからの合わせ(インサイドのペリメーター、アウトサイドシューター)で得点を決めたりと、随所でGood play が見られるようになってきました。
彼らが試合序盤に突きつけられた課題を、解決していく場面が出てきたのです。選手に直接話を聞くことは今大会出来なかったが、彼らは、ワンプレイワンプレイ闘い、課題を見つけ、解決し、学んでいったように思います。点差は大敗であったが、内容としては点差以上に国内試合では得られない経験を積むことができたのでしょうか。
また、予選ラウンド第4戦アルゼンチン戦では、激しいディフェンスで後半に流れをつかみ、初勝利をつかみました。さらに、予選最終戦のトルコ戦、順位決定戦のアメリカ戦(New England選抜)では、第4クォーターまでもつれる展開に持ち込めるなど、内容と結果が徐々にかみ合うようになってきたようにも思えました。
2. ユース世代で闘う機会があったからこそ、活かされる収穫と課題
以上で述べたように、日本のU18代表は試合を通して、日々模索しながらも、得た課題から学び、解決し、変容していったように見えます。つまり選手たちはこの大会で国際舞台での日本チームとしての、さらに個々人の闘い方を学んでいったように思うのです。しかしながら、この大会に参加することを意味付けるものは、この期間だけでなく、今後彼らが国内でいかにプレーするかに懸かってくると考えます。
私が現地で見ていて感じたこと・今後自分自身が考えていきたいと思ったことを3点述べたいと思います。
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【日本代表の試合を通して感じたこと】
(1) ディフェンスの厳しさが、日本の高校生とは大きく異なっている。
これは、後日プレイヤーに聞いてみたいと思っているのですが、ドイツチームのボールマンへの圧力(特にポイントガードに対して)、が激しいと、見ていて感じました。ワンアーム以上離れることが非常に少なく、常にプレッシャー状態の中で、ガードは状況判断していくことが求められていました。その中で、エントリーがスムーズにいかないことが多かったように思います。さらに日本と大きく異なる点が、「2線目のディフェンスの厳しさ」です。インバウンズのスローイン場面、さらには、エントリープレーのウイングへのパス、ホーンズセットプレーのハイポストへのパスはとにかくディナイが厳しかったです。よって、ウイングプレイヤーがフリースローラインより高い位置でボールをうけることが多く、なかなか有効なピックロールのオフェンスに繋げることが出来ませんでした。
(2) ディフェンスリバウンドを獲るまでの過程
日本代表が世界と闘う時の永遠の課題と言われている、「リバウンド」について、その場面に至るまでの過程に課題があるのではないかと考えました。ドイツチームをはじめ、セルビア、トルコ、オーストラリアなどの国は、リバウンドへの意欲がとても高いです。よって、彼らのオフェンス時には、相手がボックスアウトをしていないことを瞬時に把握し、どんどんランニングリバウンドに飛び込んできますし、インサイド陣の後ろからのコンタクトが相当重いです。ディフェンス時には、必ず相手をつかまえて(Catch up)、コンタクト(make contact)し、跳ね(jump・get rebound)ます。しかし、日本のドイツ戦・オーストラリア戦の1Q開始から数回のディフェンスリバウンドは、コンタクトがソフトないしは、なされていませんでした。そのことによって、後ろから獲られ、ファールで止めざるをえませんでした。
しかし、トーステンロイブルHCは、途中のタイムアウトで、このことを修正し選手に伝えたことで、このあとは徐々にハードコンタクトし、ディフェンスリバウンドを獲るようになっていきました。このリバウンド時のコンタクトに関しては、日々の習慣によって鍛えていくことができると思いますし、オフェンスは常にリバウンドに飛び込むことを意識し、コンタクトの激しいリバウンド争いをしていくことが必要だと考えます。私達は日頃からこのレベルのインテンシティを選手に求めていくことが必要になってくると思いました。
(3) P&Rのズレで、ドリブルペネトレートからキックアウトからの得点
日本代表は、この試合点差こそつくものの、数種類のエントリープレーを使い、トライし続けています。どの国もピックの2メンゲーム中心の組み立てが、多く見られ、日本もオンボールスクリーンを中心に攻撃していました。その中で、アウトサイドプレイヤーが、2メンゲームでできたズレを活かして、ペネトレートし、ジャンプシュート、さらにはキックアウトからのシュートがよいシュートチャンスを作れることが試合を積むにつれて増えていったように思います。アルゼンチン戦、トルコ戦ではアウトサイド陣が機能し、アルゼンチン戦では勝利、さらにはトルコ戦では、4Q中盤まで勝負できる展開まで持ち込めました。
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ユース世代で、国際舞台を経験することができたことで、得られた収穫と課題は、今後(国内での高校生の大会~大学生~クラブチーム~A代表)に活かすチャンスがまだまだ残されています。これまで欧米圏を中心とした国際舞台において、闘う経験を積むことがなかなかできなかった日本のユース世代において、このような課題を持ち帰れることは、まさに財産であり、この課題を少しずつ(Step by Step)でも解決していくことが育成強化には欠かせないと思います。
※本日(3月14日@大宮北高校)行われるクリニック(GSL主催)では、トーステンロイブルHCから多くの実話や、国際チームのユース世代の実情が聞けると思います。その中で、日本代表の収穫と課題について話を聴くことが出来るかもしれません!!要注目です!
※本寄稿記事の到着タイミングの都合、クリニック事後での掲載。3/14(水)クリニックについて後日掲載。
3. この経験を伝えていき、強化に繋げるために・・・。
U18日本代表は、この大会を通して、ヨーロッパ・南米・オセアニアとそれぞれ違うタイプのチームと闘ってきました。ペップグアルディオラ(現バイエルンミュンヘン監督)の言葉を借りれば、彼らは世界レベルで闘う中で、毎試合「新しいバスケットボールの言語(イデオマ)」を学んできた(マルティ・パラルナウ、2015)のです。また、今大会に日本代表が出場できたことで、ユース世代における、世界の中での立ち位置を確認することができました。その上で、国際大会のレベル・スタンダードを選手達自身が知り、また日本代表「らしさ」も大会期間を通して、出せるようになってきました。フランスのフットボール界では、よく「育成は実を結ぶまでにだいたい10年かかる」と言われています(結城、2014)が、今、日本のバスケットボール界が大きく動き出している中で、このような舞台での経験を選手だけでなく、指導者といった日本のバスケットボールファミリーで是非とも共有し、育成の実に水と肥料を確実にまいていくことが必要であると考えます。
今夏に行われる、U18アジア選手権に向けて、スタッフ陣は、さらに強化を図っていくと思いますし、今後の日本の育成世代の発展に向けて、私たち全員で日本のバスケットボールについてさらに熱く語り合って、高めあっていくことが大事なのではないかと考えた大会でした。
後編は日本代表以外の参加チームについて述べてみたいと思います。お読みいただきありがとうございました。
※詳しくは、大会ホームページにスタッツ、さらにはフルゲームのアーカイブもご覧になることができますので、こちらを是非みていただき、ユース世代の奮闘をぜひご覧いただきながら、これから日本が世界と闘うために私達がすべきことを議論していただきたいと思います。
アルバートシュバイツァートーナメント大会ホームページ
【スタッツ】
http://www.basketball-bund.de/…/game-statsstandings-ast-2016
【フルゲームアーカイブ】
http://www.basketball-bund.de/livestream
※まだまだバスケットボールコーチ勉強中の身ですので、どんどん厳しいご意見ご感想いただけると大変勉強になります。よろしくお願いいたします。
アドレス:fjtgu.bas01@gmail.com
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<寄稿者>
藤澤潤(ふじさわじゅん)
1992年生
石川県出身、東京学芸大学-東京学芸大学大学院-現在、ドイツ、ハイデルベルク大学へ短期留学中。将来は地元石川県で、教員とバスケットボールの指導者を目指して、勉強中。
<写真1>
新しい(バスケットボールの)言語を学びつづけた選手達。ここで学んだことが今後いかに活かされるのか注目するとともに、私たちもこの経験を日本に指導者全体にどう共有し、日本バスケ界へと還元していくか、考えていかなければならない。
<写真2>
ウイングでボールをもらうのも容易ではなく、日本の高校生の試合とは大きく異なるスタンダードがこの大会には存在していた。
<写真3>
各国、日本代表をスカウティングし、オンボールスクリーンに対する対応を変えてきた。そこに対する、対応、状況判断は今後の課題である。
※写真は寄稿者による現地での撮影