コーチが陥りやすい罠 -ブライアン・ショーから学ぶ-
先ほどNBA.jpさんのコラムに上がっていた記事を読んで一言。
[宮地陽子コラム第6回]ブライアン・ショーがフィル・ジャクソンから学んだこと
恐らく、日本で最も知名度の高いNBAのコーチであるフィル・ジャクソンの教え子(選手としてもコーチとしても)であるブライアン・ショーは、今季よりデンバー・ナゲッツで指揮を執り、(2014年1月15日)現在ウェスタンカンファレンス9位につけています。
偉大な先人の近くにいれば、そこで多くのものを得られるでしょうが、それ以上に全く「模倣」してしまってもおかしくありません。フィル・ジャクソンであれば禅だったり、トライアングル・オフェンスだったりです。
僕が同じことをやろうとしてもうまくいかない
しかしフィル・ジャクソンが負けているときにはお香を焚いていたという点に関して、ブライアンははっきりとこう述べています。
あれは彼が信じていたことであって、僕が同じことをやろうとしてもうまくいかない。
一方学んで自身の中に取り入れていることは「我慢強さ」という、実に本質的な事柄について述べています。多くのコーチが、いや多くの人びとが陥りやすい罠。それは他人の「成功体験」や「成功に至った手法」をそっくり真似をするだけで、自分が成功できると信じ込んでいることです。
「奇跡のオフェンス」
私が編集した『NBA バスケットボールコーチングプレイブック』には、実に多くのコーチが執筆者として名を連ねていますが、その中のほとんどがこうした点について警鐘を鳴らしています。
1つだけ例を挙げましょう。あいにくNBAのコーチではなく、アルゼンチン代表などを指揮した経験を持つ(現在はブラジル代表HC)ルーベン・マグナノ氏の言葉ですが、「Chaprer8 フレックスオフェンス」でこのように述べています。
多くのコーチたち、中でもキャリアの浅いコーチは特に、「奇跡のオフェンス」を探し求めている。彼らは、世界中の勝利しているコーチが、1つの特別なオフェンスを使用していると誤解しているのだ。彼らが見逃してしまっているのは、全てのチームは異なっており、あるチームにとって上手くいくことが他のチームにとってそうではないということである。これこそが、コーチ(いかなるレベルであろうと)が自分たちのオフェンスを独自のものに仕立てあげなければならない理由なのである。
オフェンスのシステムだったりリラックスの方法だったりといった「表面的」なことは、もちろん自分のチームに役立つことはあるでしょうが、実はそれほど大事なことではないのかもしれません。それよりも本質的な部分、選手との関わり方であったり、バスケットボールへの取り組み方といった部分では、先人たちの知恵は大いに役立つのだと思います。
この記事の著者
この著者のほかの記事
- コーチング2017.09.25バスケットボールにおけるインテンシティ(強度)の意味と高め方
- コーチング2017.08.14「文武両道あり得ない」下関国際・坂原監督から何を考えるべきか
- コーチング2017.07.04ペース&スペース オフェンス:「天才」コーチ ブラッド・スティーブンスの戦略
- インタビュー2015.10.05プロ選手のトレーニング論 〜bjリーグ 石谷聡選手〜